混沌たる移行期 - 自動運転車と自動車保険の破壊的変化 | KPMG | JP

混沌たる移行期 - 自動運転車と自動車保険の破壊的変化

混沌たる移行期 - 自動運転車と自動車保険の破壊的変化

自動運転技術は近年急速に進化し、保険に及ぼす影響は広範囲かつ甚大になると予想されています。私たちは、保険業界の風景を変えることになる、「混沌たる移行期」に足を踏み入れようとしているのです。本レポートは、最新の調査から、自動車保険業界の破壊的変化と、その影響のモデリング推定、そして保険会社の経営者が直面する課題について考察します。

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自動運転車の浸透に向けた連携:変化の加速

KPMGから発行した前回のホワイトペーパー『変化する市場:自動運転車時代の自動車保険』では、自動運転車変革のための8つの主要要素(技術の統合、機能の搭載度合い、インフラの対応状況、規制当局の許可、法的責任、消費者による受入れ、モビリティサービス、データマネジメント)について述べました。この1年間で、これら8つの要素間、そして全体の相互作用が、完全自動運転の風景を変化させ、業界の変革を加速させています。
また、自動運転車の展望が開けてくるに従い、この技術分野に対する投資が拡大しています。ベンチャーキャピタルなどによる「スマートマネー」の波が自動運転機能の開発を増強し、業界の変革を加速させているほか、最近の大手株式上場企業による買収も自動運転機能の進化に寄与しています。General Motorsは自動運転車の開発を加速させるためにCruise Automationを5億8,000万ドル超で買収し話題になりました。このような最近の投資活動の活発化は、自動運転技術の開発スピードを向上させる幅広い基盤を提供することにつながり、ひいては高度に自動運転化した自動車が市場に出回るペースを速めることになります。
自動運転を支える技術の急速な進化により、自動車メーカーとハイテク企業は、数年以内に完全自動運転車を導入するという約束を果たそうとしています。業界各社の間のパートナーシップも、レベル4の完全自動運転が大方の予想よりも前倒しで実現される要因の1つになっています。このような提携関係は、ペースを上げてさらに多くの行動を起こす方向へと業界を駆り立てています。自動運転車普及の準備は、大方の予想よりもはるかに早く整いつつあります。変革が段階的に起きることに変わりはありませんが、変革は当初の予想より5年早まると予想しています。

自動車保険業界の混乱を招く3つの要因

現在の自動車保険業界においては、3つの潜在的な要因が重なって混乱が生じる可能性があります。
第一に、自動運転技術により自動車の安全性が大きく向上し、事故件数が大幅に減少します。迅速なブレーキやその他の回避行動により、事故の深刻度も低下することが考えられます。補償対象となる運転リスクが減少していくため、従来型の自動車保険業界の規模は縮小します。
第二に、自動車メーカーが顧客とデータの扱いにおける優位なポジションを利用して、保険会社に取って代わる可能性があります。自動運転技術が移動手段の中心的な存在になっていくにつれて、自動車メーカーが保険事業への参入を重要なものとして考慮することは十分に考えられます。そのとき、自動車メーカーは自動車の所有者と関係を持ち、新たな価値のあるドライビングデータを入手できる状態になるため、自動車メーカーは競争優位性を得ることになり、個人の保険契約加入方式が従来のものとは一変してしまう可能性があります。
第三に、モビリティオンデマンドとカーシェアリングを利用した新たなビジネスモデルが生まれ、個人がそれぞれ自動車を所有せず必要なときに利用できる車両群を用意しておく方式が発達しています。個人がそれぞれ自動車を所有するよりも共有する方向に向かうことは、自動車保険業界に深刻な影響を与えます。カーシェアリングが増えれば、結果として個人単位での自動車保険契約は減り、逆に各地に点在する配車サービス用自動車のための事業用保険が増えます。
したがって、リスクの減少を反映して自動車保険業界の規模も縮小し、保険事業の重点も個人保険から事業用自動車保険・製造物賠償責任保険へと移行していきます。大幅に縮小された個人保険の分野でも、自動車メーカーがシェアを伸ばすことが予想され、競争が激化します。

パーフェクトストーム:潜在的な影響のモデリング推定

自動車の利用方法が変われば、販売される保険商品の種類にも大きな影響が生じます。自動運転技術が普及していくにつれて、新しいタイプの補償に対応する製造物賠償責任保険が自動車保険業界の大きな部分を占めていくでしょう。
無人運転の時代には、サイバーリスクの補償が必要になると考えられます。2016年4月に開催されたRisk and Insurance Management Societyカンファレンス会場で行われたミュンヘン再保険の調査によると、リスク管理者の55%が、自動運転車に関連する保険の中で最大の関心事はサイバーセキュリティであると感じています。自動運転技術の発展に伴い、サイバーリスクとそれを補償対象とする保険の重要性はより一層高まります。
技術の発展、業界内の競争、新たな交通手段という、混乱をもたらす3つの要因が保険業界にどのような影響を及ぼすかによって、さまざまなシナリオがあり得ます。
KPMGの保険数理チームは、そうした状況を反映すべく、保険数理モデルを更新してきました。更新されたモデルでは、自動車保険業界で起こり得るさまざまなシナリオを反映できるように各種条件を変更できる柔軟性を備えています。最新版基本シナリオと、考えられる混乱要因の多くが同時に顕在化してしまう可能性を考慮したパーフェクトストーム型シナリオを作成し、これまで述べてきた3つの混乱要因が現実のものとなる時期とその重要性に応じて、発生し得るさまざまな結果を反映できるようにしています。新しいシナリオでも事故件数は大幅に減少することが継続して示されており、1台当たりの事故件数は2050年までに約90%減少する見通しです。個人用自動車保険の保険金は、基本シナリオで81%減少、パーフェクトストーム型シナリオで93%減少と推定しています。
本レポートでは、KPMGの最新版基本シナリオ、パーフェクトストーム型シナリオについて、それぞれ掘り下げて解説しています。

混沌たる移行期:保険会社が直面する2つの課題

KPMGは、自動車保険市場のほぼあらゆる面が流動化し、保険会社が変化への対応を吸収するまでの今後10~15年に「混沌たる移行期」があるとみています。この変革の時代、保険会社は2つの課題に直面します。
まず、自動車保険の規模が縮小するなか、保険会社の経営陣は、その縮小ペースを理解し、変化を切り抜ける事業運営を行っていく必要があります。それと同時に、経営陣は、自動車保険の保険料収入の減少によって失われた収益を埋め合わせるため、代替となる商品やサービスを見いだす必要があります。今後に向け2つの課題があるなかで、潜在的な破壊的変化に対して保険会社がこれまでどのように対応してきたかを理解することが重要だと考えます。
「微調整」ではないビジネスモデルの変革は間違いなく難題であり、従来の自動車保険会社はそれぞれのコアコンピテンシーを生かす必要があります。とはいえ、多くの保険会社は自ら考えるよりも多角的にうまく対応できるポジションにいます。例えば、現在市場には、潤沢な余剰資本があり、保険会社はそれを将来に向けた投資の原資として活用することができます。さらに、保険会社は膨大なデータを保有しており、このデータを新しい機会のために利用する分析能力があれば理想的です。保険会社は、ほとんどの場合に最終的な保険契約者に直接接することができるため、なじみの薄い、または知らないサービス業者というわけではありません。このように顧客と「接触」できることは、保険会社にとって、追加商品の販売を通じて保険契約者との関係を拡大する大きな機会になります。

業界は、混沌たる移行期に突入しており、自動車保険会社には引き続き戦略的取組みと戦術的取組みを組み合わせることを推奨します。本レポートではさらに、「次のステップ」として、こうした環境下にあって自動車保険会社に求められる行動を紹介しています。

 

レポートの全文についてはダウンロードPDFをご参照ください。

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