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新収益基準のインパクトと対応方法Part2

新収益基準のインパクトと対応方法Part2

新収益基準を導入すると、認識する認識単位、金額、タイミングが変わることがあります。本稿では、設例を使ってこの影響を解説します。

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平成29年7月20日、企業会計基準委員会(ASBJ)から、企業会計基準公開草案61号「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「基準案」という)および企業会計基準適用指針公開草案61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下まとめて「新収益基準の公開草案」という)が公表されました。新収益基準を導入すると、認識する認識単位、金額、タイミングが変わることがあります。従来、契約単位で売上計上していたものを、異なる「単位」、「金額」、「タイミング」で売上計上すれば、会計上の債権管理は契約上の請求管理と一致しなくなります。この結果、関係する業務やシステムの見直しも必要になるでしょう。本稿では、設例を使ってこの影響を解説します。

ポイント

  • 新収益基準の導入で、従来、契約単位で売上計上していたものを、異なる「単位」、「金額」、「タイミング」で売上計上するならば、会計上の債権管理は契約上の請求管理と一致しなくなる。
  • 履行義務の提供を行なって売上を計上する場合、代金の支払に期限以外の条件が付いていたら、売掛金の代わりに契約資産を計上する。
  • システム化に失敗すれば、経理業務は爆発的に膨らむ。

I.会計上の債権管理が変わる

会計上の債権管理とは、会計上で計上した売掛金(以降、本稿では基準案11項の「債権」を「売掛金」と表記します)と契約資産の管理をさします。これは、売掛金および契約資産の計上、消し込み、回収可能性の評価の3つです(契約負債の管理を含む)。
一方、契約上の請求管理とは、契約で定める顧客に対する請求権の管理のことです。新収益基準では、履行義務の単位で売上を認識し、売掛金や契約資産を計上します。
新収益基準の導入で、従来、契約単位で売上計上していたものを、異なる「単位」、「金額」、「タイミング」で売上計上するならば、会計上の債権管理は契約上の請求管理と一致しなくなります。このことを、簡単な設例で考えてみましょう(設例1参照)。


設例1
1つの契約(200円)に2つの履行義務(財の販売Aとその後のサービスの提供B。ステップ4※1の配分後の金額はAが160円、Bは40円と仮定)が含まれている。現行実務では、履行義務Aの提供が完了した4月30日に売上200円を計上している。同日に代金を請求し、予定どおり5月31日に入金があった。なお、履行義務Bは履行義務Aの提供後2か月にわたり提供され、6月30日に提供を完了した。

 

※1新収益認識の各ステップの詳細な説明については、KPMG Insight 2018年1月号Vol28をご参照ください。

1.いままでの管理

客先に対する請求や入金の確認など契約上の請求管理は、契約の定めに従って行います。設例1の場合で言うと、4月30日に200円を請求した時から契約上の請求管理が始まります。そして、これは5月31日に200円を回収した時に終わります。
では、会計上の債権管理はどうでしょうか。これも、契約の単位で売上を認識しているならば、請求額と同じ売掛金200円の計上で始まり、5月31日の売掛金200円の消し込みで終了します。つまり、契約上の請求管理と会計上の債権管理で扱う金額とタイミングに違いはありません(図表1参照)。

図表1 設例1におけるいままでの管理

2.これからの管理

(1)履行義務Aの売掛金160円の管理:4月30日
新収益基準を導入すると、何が起きるでしょうか。4月30日に履行義務Aの提供が完了すると、売上160円が計上されます。
一方で、契約上の請求管理は、従来どおり行います。設例1の場合、4月30日に請求した200円が契約どおり5月31日に入金されるかどうかを管理することです。
ところが、契約上の請求管理の対象であるこの200円は、会計帳簿には記帳されません。4月30日に計上したのは、履行義務Aの売上に対する売掛金160円だからです。


(2)履行義務Bの売掛金20円の管理:5月1日~5月31日
履行義務Bは、サービスの提供であるため、企業がサービスを提供するにつれて、売上が徐々に計上されます。請求期日が到来していないのであれば、売上の相手勘定は契約資産です。ところが、今回は既に4月30日に客先に対して対価を請求しています。ですから、ここは収益の認識と同時に確定債権である売掛金を認識する必要があるのです。つまり、5月1日から5月31日にかけて、売上と売掛金がそれぞれ20円計上されます。
余談ではありますが、このような細かな勘定科目の選択は、ダイレクトに業務プロセスとシステムに影響します。同じ取引タイプであっても、請求しているかどうかによって、(売掛金か、それとも契約資産か)勘定科目が変わるからです。企業の会計ルールを見直さず、伝票を起票する担当者がそれぞれ勝手に判断をすることになれば、ミスが発生する可能性があります。
たとえルールを決めても、請求金額とタイミングは契約によって変わるわけですから、これを正しく処理するには、履行義務Bの一部または全部が請求されているかどうかを把握しなければなりません。システム化に失敗すれば、経理業務は爆発的に膨らむでしょう。企業の契約実態に合わせて、会計ルールを見直し、業務プロセスとシステムを見直す必要があります。


(3)契約負債20円の管理開始:5月31日
客先から売上代金として5月31日に200円が振り込まれました。計上しているのは履行義務Aの売掛金160円と履行義務Bの売掛金20円ですから、これを超える部分は前受金(以降は、設例の説明にあたっては前受金を「契約負債」と表記します)です。会計上の債権管理としては、売掛金160円と売掛金20円の管理は終わりましたが、マイナスの債権である契約負債20円の管理が始まります。
一方で、契約上の請求管理はどうでしょうか。4月30日に請求した200円が5月31日に全額回収できていますから、これ以上、客先に対して請求するものはありません。請求管理はここで終わります。


(4)履行義務Bの売掛金20円の管理:6月1日~6月30日
ここは、(2)と同じ説明になります。6月1日から6月30日にかけて、売上と売掛金がそれぞれ20円計上されます。
なお、会計上の仕訳としては、売掛金を計上せずに契約負債を直接取り崩すという考え方もあるでしょう。この場合は、(借方)契約負債20円/(貸方)売上20円という仕訳になります。この場合は、(5)の契約負債の取り崩しと売掛金の消し込みという処理はなくなります。


(5)契約負債20円の管理終了:6月30日
6月30日には、一定の期間にわたって提供してきた履行義務Bの提供が完了します。売上代金は5月31日に既にもらっており、契約負債20円が計上されています。これを取り崩して、(4)で計上した売掛金20円を消し込みます。これで、ようやく会計上の債権管理は終了します。
なお、契約上の請求管理は既に5月31日に終了しているので、行うことは何もありません。

 

このように、いままでは契約上の請求管理と会計上の債権管理は一致していました。ところが、契約上の請求単位履行義務の単位が異なると、契約上の請求管理と会計上の債権管理で扱う金額とタイミングが違ってくるのです(図表2参照)。

図表2 設例1におけるこれからの管理

II.契約資産を管理する

設例1は、契約に履行義務AとBがあり、履行義務Aの提供が完了した4月30日に売上160を計上、代金を請求するというものです。それでは、履行義務Bの提供の完了が、履行義務Aの代金の支払い条件だとしたらどうなるでしょうか。このことを簡単な設例で考えてみましょう(設例2参照)。


設例2
1つの契約(200円)に2つの履行義務(財の販売Aとその後のサービスの提供B。ステップ4の配分後の金額は、Aが120円、Bは80円と仮定)が含まれている。現行実務では、履行義務Aは4月30日に提供を完了し、履行義務Bの提供が完了した6月30日に売上200円を計上している(履行義務が完了するまで契約全体の代金を客先に請求できないため)。6月30日に代金を請求し、予定どおり7月31日に入金があった。

1.いままでの管理

契約上の請求管理は、契約の定めに従って行います。設例2の場合で言うと、6月30日に200円を請求した時から契約上の請求管理が始まります。それでは、会計上の債権管理はどうでしょうか。従来、履行義務Aの提供が行われても、4月30日から6月29日までは会計処理を行いません。履行義務Bの提供が完了したところで、6月30日に売上を計上しますから、これが会計上の債権管理の始まりです。これは契約上の請求管理と一致します。
7月31日に客先から売上代金が支払われれば、売掛金の消し込みが行われ、会計上の債権管理は終わります。契約上の請求管理も、これをもって終了しますから、両者に違いはありません(図表3参照)。

図表3 設例2におけるいままでの管理

2.これからの管理

(1)契約資産120円の管理:4月30日
新収益基準を導入すると、どう変わるでしょうか。4月30日に履行義務Aの提供が完了しても、まだ客先には請求できません。契約に基づいて履行義務Bを提供する必要があるからです。契約上の請求管理はまだ始まらないのです。
一方、新収益基準のもとでは、履行義務Aの提供が行われた段階で売上120円を計上します。この場合、代金の支払に期限以外の条件(設例2の場合ですと、履行義務Bの提供)が付いていますから、売掛金の代わりに契約資産を計上します。会計上の債権管理はこの時から始まるのです。


(2)契約資産の管理:5月1日~6月30日
履行義務Bは、サービスの提供であるため、企業がサービスを提供するにつれて、売上が徐々に計上されます。本来、このようなケースでは売上の相手勘定は契約資産です。つまり、5月1日から6月30日にかけて、売上と契約資産がそれぞれ80円計上されます。


(3)売掛金200円の管理:6月30日
それでは、履行義務Bの提供が完了する6月30日はどうでしょうか。客先には契約に基づいて200円を請求します。ここで、ようやく契約上の請求管理が始まります。
この200円という金額には、履行義務Aの売上120円と履行義務Bの売上80円が含まれています。これらは契約資産としてすでに計上していますが、履行義務Bの提供完了によって、代金の支払い条件は「期限」だけになりました。会計上は、契約資産を売掛金に振り替えます。


(4)売掛金200円の管理終了:7月31日
7月31日はどうなるでしょうか。6月30日に請求した200円が7月31日に全額回収できたのですから、管理は終了です。この点において、契約上の請求管理と会計上の債権管理に違いはありません。
なお、細かいことではありますが、入金の消し込みの単位という点で考えると、契約上の請求管理と会計上の債権管理は異なってきます。契約上の請求管理では200円という単位で管理すれば十分ですが、会計上の請求管理は違います。履行義務Aは120円、履行義務Bは80円という具合に、履行義務単位で管理する必要があるからです。契約単位と履行義務の単位が異なると、やはり契約上の請求管理と会計上の債権管理で扱う金額に違いが生じます。この点については、次回でまた詳しく解説しましょう。
いずれにしても、新収益基準を導入すると、企業は、契約資産を計上し、代金の支払いについて「期限」以外の条件がなくなった段階で契約資産を消し込み、売掛金に振り替えるという管理が新たに増えます。これには、注意が必要です(図表4参照)。

図表4 設例2におけるこれからの管理

(5)債権と契約資産を分けるか
新収益基準では、契約資産、契約負債および債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示する(または残高を注記する)こと(基準案76項)とする一方で、経過措置として契約資産と債権を区分表示しないことも認められるとしています(基準案85項)。
しかし、IFRS導入企業は、IFRS15号への対応も必要になります。連結財務諸表を作成する段階で、結局、債権と契約資産を分けて表示することが求められるなら、個別財務諸表の段階から表示上も分けて対応するのがよいでしょう。

 

特に新収益基準の早期適用を検討している企業は、すでにIFRSを導入しているか、少なくとも近い将来のIFRSの導入に備えてこの新収益基準の導入を考えているものと思われます。であるならば、新収益基準の導入にあたって、債権と契約資産を分けて管理できるようにしておく必要があるでしょう。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
アカウンティングアドバイザリーサービス
マネージング・ディレクター 山本 浩二

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