CDSBフレームワーク公開草案の公表 | KPMG | JP

CDSBフレームワーク公開草案の公表

CDSBフレームワーク公開草案の公表

CDSB(Climate Disclosure Standards Board:気候変動開示基準委員会)は、2014年10月に「CDSBフレームワーク公開草案」を発表しました。

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CDSBは、日本の有価証券報告書や米国のForm 10-K等の制度開示書類(いわゆる「メインストリーム・レポート」)において企業の気候変動関連情報の開示を行うための国際的な枠組みの構築を目指し、2007年の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で設立されたコンソーシアムです。

CDSBフレームワーク開発の経緯

CDSBは、2010年9月に気候変動関連情報の報告枠組みである”Climate Change Reporting Framework Edition 1.0(CCRF 1.0)”を発行しています。以来、CCRFは改訂や補足資料などにより継続的にアップデートされ、 欧州における非財務情報開示の義務化の議論にも影響を与えてきましたが、IIRCによる統合報告フレームワークの開発や自然資本の利用に伴うリスク認識の広まりなどの流れを受け、2013年にはCDSBはそのミッションを、気候変動関連情報のみならず、より広範な環境およびその他の情報(以下、「環境情報」)に関する制度開示枠組みの開発に拡大しました。

今回草案が公開されたCDSBフレームワークは、報告組織に関する投資家等の資本提供者の意思決定に資する情報を提供するという財務報告の目的と整合的であることを前提とし、以下のことを目的としています。

  • 報告組織がメインストリーム・レポートにおいて明確・簡潔・比較可能で、なおかつ環境パフォーマンスと全体的な戦略、業績、見通しとを結び付けることができる環境情報開示を支援する
  • 環境保全を支援する活動への資本の配分に関する投資家の意思決定を支援する

今回の公開草案においては、温室効果ガス(GHG)の排出のほか、森林リスクコモディティ、水の3分野における開示情報の特性および報告の指針を示しています。

8つの指導原則

今回の公開草案では、メインストリーム・レポートにおける環境情報の開示が投資家に有用で、正確性・網羅性を満たし、適切な規準に基づくものとなることを意図して策定された8つの指導原則が示されています。原則は、すべての開示情報を後述の報告要件に従って集計・算定・報告する上で適用されるべきものと位置付けられています。以下に8原則の概略を示します。

原則1:関連性の高い環境情報が開示されなければならない

この原則は、組織がCDSBフレームワークの報告要件や投資家等の情報ニーズを考慮しながら、特に重要で関連性の高い環境情報をメインストリーム・レポートで開示することを促すものである。

関連性の高い情報とは以下のようなものである。

  • 情報利用者の意思決定に影響を与える
  • 経営者が経営を行うにあたって、あるいは、環境情報が組織の戦略に対してどのように影響を及ぼすか(及ぼしうるか)を評価するにあたって重要な情報を反映している
  • CDSBフレームワークの具体的な報告要件を考慮している
  • 制度開示の要件や環境情報開示の要件を満たしている
  • 組織のビジネスの実態を反映している
  • 組織の環境に関連するパフォーマンスや方針が財務状況にどのように結びつくかということについて理解を促す
  • 後述の報告要件REQ-01への対応を行う上での主題を取り上げている

原則2:マテリアルな環境情報が開示されなければならない

マテリアルな情報とは以下のようなものである。

  • 原則1に示すとおり関連性の高い情報が開示されており、網羅的であるが、組織にとって特に重要なトレンドや出来事をぼやかすような必要以上の詳細や重複は排除している
  • 組織によってマテリアリティは当然異なるものである。したがって、何らの分析も行わずに繰り返し記載される財務情報、組織固有の取組や状況と結びつかない一般的な開示、追加的な考察や理解、戦略を示すことなく財務報告から引用された記述情報などは、マテリアルな情報とは言えない

マテリアリティは、「投資家に対して、組織の財務状態や戦略の実現可能性に影響を及ぼすあるいは及ぼし得る環境情報に関する主要な動向や重要な出来事を可視化するための情報のフィルター」の役割を果たすものである。

マテリアリティを定義するための定量的な閾値を設定することは不可能であり、CDSBフレームワークにおいても開示すべき環境情報を判断するための定量的な基準は示さない。また、環境情報については、組織の属する産業、国や地域、社会制度や消費者行動などによって報告すべきマテリアルな情報は大きく異なる。

原則3:正確な環境情報が開示されなければならない

この原則は、開示される情報が網羅的であり、中立的であり、誤りがないものであることを確実にするためのものである。

組織の主張の内容を理解するために必要な情報はすべて開示すべきであり、情報利用者を特定の方向へ誘導するような偏った情報開示は避けるべきである。所定の結果を得ることを目的にした選択的な情報開示は中立的であるとは言えない。

しかし、正確な情報開示は、完全に誤りのない情報を意味しているわけではない。正確な情報開示とは、表明されている情報の根拠や省略、仮説や不確実性、推計の程度などを明示し、利用できる最良の情報を反映した中立的なデータに基づく予測を用いているものを指す。

原則4:他の情報と関連付けて環境情報が開示されなければならない

以下のように他の情報と関連付けて環境情報が開示されるべきである。

  • 投資家に対して開示されている情報と関連付け、組織の戦略、目標、目的などに関する社内での意思決定に利用されている情報を開示する
  • 財務報告、マネジメント・コメンタリー、ガバナンス報告等を補完する環境情報を開示する
  • 組織の戦略と環境パフォーマンスの関連性を説明する
  • 環境課題を管理することにより、どのように収益拡大、コスト削減、キャッシュフロー改善、ブランド価値向上、リスク管理強化が促されるかというストーリーや、企業の環境戦略と財務パフォーマンスや環境パフォーマンスとの関連性について説明する

原則5:開示される環境情報は一貫性があり、比較可能でなければならない

類似の組織、報告期間、業種間での比較を可能とする情報は、投資家にとっての有用性が高い。比較可能性とは、情報利用者が複数の組織あるいは同一組織の複数の報告期間の間での類似性や異質性を特定することのできる情報の質を指す。一貫性とは、同一組織の複数の報告期間、あるいは複数の組織の同一報告期間において、同一の方針や方法が用いられることを指す。

初期の段階では組織間・業種間での比較可能性は限定的にならざるを得ないが、同一の組織においては、報告アプローチは複数の報告期間を通じて一貫していることが望まれる。

原則6:情報の有用性が高まるように環境情報が表示されなければならない

明確で簡潔な記述、理解可能性、保証可能性は、情報の有用性を左右する重要な要素である。明確で簡潔な記述のためには、組織の過去のパフォーマンスと将来の見込みに関する洞察を含んでいることやマテリアルな環境情報にフォーカスした情報開示になっていること、理解可能性を高めるためには、情報利用者の理解を助けるような専門用語の解説を含めることなどがポイントとなる。また、保証可能性のためには、開示情報を原始データまで遡ることができることが必要である。

原則7:将来情報を開示しなければならない

有用な情報は、過去、現在、未来を見渡すものであり、組織の将来のパフォーマンス、ポジション、発展性に影響を及ぼす可能性の高い環境パフォーマンスの推移や環境情報に関連する要素を伝えることが求められる。
組織のビジネスモデルに対して、自然資本の継続的な利用可能性、品質、コストがどのように貢献するかを明確に示すことも、戦略的焦点や将来的な方向性の開示に含まれる。

原則8:情報開示はCDSBフレームワークの目的に適合していなければならない

端的にいえば、CDSBフレームワークの報告要件を満たすことが、CDSBフレームワークの目的に適うことになる。組織の環境に関連するパフォーマンス、インパクト、リスクおよび機会が、組織のイノベーションの促進/制限要因としてどのように作用するか、短期・中期・長期の価値創造の戦略にどのように影響するかについての経営者の分析を簡潔に説明することは、開示情報の有用性をより高めることにつながる。

報告要件

報告要件に関しては以下のような指針が示されています。

REQ-01 組織バウンダリ 環境情報は、メインストリーム・レポートと同じバウンダリ(単体あるいはグループ)で開示されなければならない。また、組織バウンダリ外の情報については、組織バウンダリ内の情報と識別して開示されなければならない。
REQ-02 方針 環境情報の作成にあたり、報告枠組み、基準、プロトコル等を用いている場合には、それらを引用しなければならない。また、過去の報告期間から首尾一貫してそれらを用いていることを表明しなければならない。
REQ-03 報告期間 毎年1回の報告としなければならない。
REQ-04 修正再表示 過年度報告の修正がある場合は、それについて説明しなければならない。
REQ-05 保証 CDSBフレームワークに準拠して報告されている環境情報について第三者保証を受けたか否かを報告しなければならない。
REQ-06 適合性 CDSBフレームワークへの適合性を表明しなければならない。
REQ-07 マテリアルな環境情報 マテリアルな環境情報を特定するために用いられたプロセスと結果について報告しなければならない。CDSBフレームワークの目的上、すべての開示において、温室効果ガス排出量はマテリアルな環境情報として開示されなければならない。
REQ-08 ガバナンス 環境情報に関する内部統制の状況を開示しなければならない。
REQ-09 環境に関連する方針、戦略、目標 環境に関連する方針、戦略、目標(パフォーマンスを評価するための指標、計画、スケジュールを含む)を開示しなければならない。
REQ-10 リスクと機会 組織に影響を及ぼす現在および将来予測される主要な環境上のリスクおよび機会を開示しなければならない。
REQ-11 環境負荷 マテリアルな環境負荷を反映した定量的・定性的な結果と算定に用いた方法論を開示しなければならない。
REQ-12 パフォーマンスと比較分析 REQ-11において開示された情報の分析(パフォーマンス目標との比較や前報告期間のパフォーマンスとの比較による分析)を含めなければならない。
REQ-13 非財務情報に関する表明 各国の法令に対応するため、非財務パフォーマンスに関する簡潔な声明を作成することができる。

今後のスケジュール

最終的なCDSBフレームワークは、今回の公開草案に対するパブリックコメント等の検討を経て、2015年3月に公表される予定です。CDSBはこのフレームワークを、EU指令により義務付けられた非財務情報開示の要求事項に対応する企業を支援するものとして開発する意向を明確にしています。

公開草案に対するパブリックコメントの受付は2014年12月14日までとなっています。

気候変動から、森林リスクコモディティ、水資源を含むより広範な自然資本関連のリスクと機会へ開示情報の拡大を要請する流れは、CDPにおける質問スコープ拡大の方向性と同様です。

このような世界的なトレンドが、持続可能な価値創造を実現する企業への投資意欲、およびそのような投資判断を可能にする情報ニーズの高まりを反映したものであるすれば、企業には、こうした制度開示における非財務情報の報告要件を把握し、自社の環境情報開示のアプローチを再検討することが求められると考えられます。

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