非財務情報開示を義務付けるEU指令案承認

欧州議会は、2014年2月26日、欧州委員会が2013年4月に提示していた企業の非財務情報開示の義務化に関する会計指令の改正案に合意しました。

欧州議会は、2014年2月26日、欧州委員会が2013年4月に提示していた企業の非財務情報開示の義務化に関する会計指令の改正案に合意しました。

「公益性の高い企業」による非財務情報開示の義務化

非財務情報開示の義務化に関するEU会計指令の改正案は、欧州委員会により2013年4月に提示されていました(改正案の内容は「欧州委員会による会計指令の改訂案の公表」をご参照ください)。今回合意された指令案では、従業員数500名以上の公益性の高いEU企業は、重要な環境や社会の側面に関する非財務情報を年次財務報告書の中で開示することが求められています。
「公益性の高い」とは、上場企業、金融機関および事業活動、規模、従業員数によって加盟各国で指定される企業とされており、EU域内の6,000の企業グループが該当すると見込まれています。費用便益分析の結果、中小企業への適用は見送られました。この結果、義務化の対象となる企業の数は2013年4月時点で想定されていた約18,000社よりも大幅に縮小したことになります。

非財務情報開示のガイドライン開発へ

開示内容は、詳細で網羅性の高い情報というよりは、当該企業の発展、業績、位置づけ、インパクトについて理解する上で必要な簡潔で有用性の高い情報とされ、企業グループ全体を対象とするものとなる見込みです。
指令の草案では、開示情報については開示企業が最も有用性が高いと考える情報を、最も有効な形態で開示するために自主性を発揮する余地が残されており、非財務情報を独立した報告書の形で開示することも妨げられません。
開示企業は、報告にあたり、国連グローバル・コンパクトやISO26000などの国際的なガイドラインの他、ドイツサステナビリティ原則(German Sustainability Code)などの域内国家の指針を利用することも可能です。
EU委員会は今後、企業による非財務情報開示を促進するためのガイドライン開発に着手する予定であり、ここには国際的な開示動向や関連するEU域内での取組、ベストプラクティスなどが盛り込まれる見込みです。

「comply or explain(遵守か説明か)」の原則

取締役会の多様性に関しては、大規模上場企業は、年齢、性別、学歴、職歴などに関する多様性の方針を開示することが求められることになります。開示によって、それらの方針の目標設定がなされ、それがどのように実施され、どのような成果が得られたかを明らかにすることが狙いとなっています。EUのコーポレートガバナンスの枠組み同様、ここでも「comply or explain(遵守か説明か)」の原則が適用され、多様性方針を持たない企業は、なぜ方針を持たないのかを説明しなければなりません。
2013年11月、欧州議会は上場企業の社外役員に占める女性の割合を2020年までに40%に引き上げる(クオータ制)指令案を賛成多数で可決しました。2014年3月現在、欧州連合理事会の決定を待っている状態ですが、今回合意された非財務情報開示の義務化に関する指令と合わせて企業における女性登用を促すものとなっています。

今後の見通し

今後のステップとして、改正案は2014年4月の欧州議会と加盟各国による欧州連合理事会の特定多数決による承認を経てEU指令として採択され、加盟国内での適切な法令の採択に向けた日程が示される見込みです。

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