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現在の注目のニュース&トレンド情報:KPMG FAS Newsletter “Driver” Vol.09

現在の注目のニュース&トレンド情報:KPMG FAS Newsletter “Driver” Vol.09

M&A、事業再生、企業不正不祥事に関連するニュースや、業界のトレンドに着目した4つの記事を紹介

放送業界におけるデジタル・トランスフォーメーション始動

放送業界におけるデジタル・トランスフォーメーション始動

今年10 月、日本テレビ放送網によるインターネット同時配信『日テレ系ライブ配信』が始まった。最新技術を活用したインターネット経由の番組配信である。テレビ(受像機)がなくても、スマートフォンやタブレットと言ったデバイス(通信端末)があれば、全国どこでもテレビと同じ番組を見ることができる。ワンセグ放送における‘画質’、テレビチューナー内蔵パソコンにおける‘演算スペック’の難点を克服する画期的サービスである。

『放送』の場合は、電波の送受信距離と放送法(県域免許)との ‘ 壁’ により、地方では首都圏の番組を見ることはできないが、『配信』の場合は‘ 壁’がない。まさにデジタル・トランスフォーメーションである。先日、早速試してみた。同一番組で、放送と配信で全く別のCMが流れていた。視聴率は勿論のこと、視聴者属性が捕捉されているのであろう。どうやら放送局、広告代理店、タレントにとって垂涎のチャンスが出現したようだ。

今、そこにある不動産ESG投資

今、そこにある不動産ESG投資

今世界的なESGマネーの膨張により、国内の不動産投資の世界でもESGへの対応ニーズは確実に高まっている。ただ、現状、業界におけるその対応の実態は未だ手探り状態だ。現下の市場では、不動産のESG対応にかかる追加コストを直ちに賃料に反映できるわけではなく、実体として期待利回りや調達金利が有利に変化するというわけでもないためだ。

一方で視点を3~5年後に据えてみると、異なる状況が見えてくる。ESGフレンドリーな不動産に対する賃借ニーズは高まり、賃料と稼働率が相対的に上昇する。取引事例が蓄積され、期待利回りや金利のベンチマーキングが容易になり調達コストが低下する。即ち、ESGフレンドリーな不動産は数年後の投資出口で高値が期待されうる。足元でも、ESG意識の高い投資家から投資資金を集めやすいというメリットがあることを考慮すれば、不動産投資におけるESG投資は、単にIR的な効果だけでなく、既に経済合理性にもかなうものと言える。

独サプライチェーン法成立 法令順守とビジネス両面の対応急務

独サプライチェーン法成立 法令順守とビジネス両面の対応急務

ドイツでは今年6月、サプライチェーン・デューデリジェンス法が成立し、2023年からはドイツ国内に拠点を置く、従業員数3,000人以上(2024年以降は同1,000人以上)の企業は、人権侵害と環境負荷に関するデューデリジェンスの実施が義務付けられる。違反の場合には、80万ユーロ以下の罰金、年間平均売上高が400万ユーロを超える企業の場合は、最大、年間平均売上高の2%の罰金が科される。

同法は、企業のサプライチェーン・デューデリジェンスの導入を加速させ、様々な業種において、サプライチェーンの見直しによるコスト構造や、業界勢力図に変化をもたらす可能性があることから、日本企業においても、コンプライアンスおよびビジネスの両面からの戦略的な対応・対策が急務と考えられる。

欧州委員会も法制化を進めており、年末までに法案を公表する予定であることから、リスクと機会の両面から、今後のEU全体の動きにも留意が必要となる。

グループ通算制度 M&Aに新たな税負担リスクも

グループ通算制度 M&Aに新たな税負担リスクも

来年4月以降の事業年度より適用される新たな企業税制、グループ通算制度に関して、企業の機動的な事業再編にマイナスの影響が生じると懸念する声が上がっている。本制度での税金の計算方法では、企業がのれんを計上して買収した100%子会社を安値で売却する場合でも税負担が生じるケースがあるためだ。根拠となるのは、子会社売却の際の譲渡損益計算に使われる投資簿価が、のれん部分が切り捨てられた簿価純資産額に修正される点だ。

特に注意が必要なのは、高額のプレミアムを支払い買収した100%子会社の業績があがらず、その後同社を外部に売却するケースである。本制度では買収時ののれんが譲渡原価とならないため、仮に売却価額がゼロであったとしても譲渡益が認識される可能性がある。買収先の業績見通しや出口計画の状況次第では、売却時の税負担リスクを想定し、あえて100%子会社とせず本制度に加入させない選択肢も検討されよう。