退職給付会計

退職給付会計

企業年金や退職一時金など、企業が従業員に対して提供する退職給付制度について、費用や引当金を計上するための会計です。わが国には2000年4月から導入されました。現在の退職給付会計の特徴は以下のとおりです。

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1.退職一時金、企業年金制度を対象とする包括規定です。

従来は退職一時金と企業年金制度では会計上の取扱いが相違していましたが、現在の退職給付会計では原則としてすべての確定給付型の制度について同一の会計処理を求めています。ただし、確定拠出年金のように企業に追加負担のリスクがない制度については、引当金の計上が不要とされています。

2.発生主義により債務・費用の測定、認識を行います。

実際に支払った退職金や拠出した年金掛金ではなく、労働の提供に伴って生じる退職給付の増加額を毎期の人件費として計上する「発生主義」の考え方が採用されています。

3.債務と資産の時価を毎期測定し、差額を企業の負債に計上します。

退職給付債務(将来の退職給付見込み額のうち現在までに発生していると認められる額を現在価値に割り引いたもの)を「年金数理計算」によって見積もる一方、年金資産を時価で測定し、両者の差額を企業の負債に計上します。ただし、毎期の評価額や時価の変動等で生じる差額については、一定期間にわたって費用認識する「遅延認識」が認められています。なお、遅延認識されている額は「未認識数理計算上の差異」と呼ばれます。

現在の基準が導入されたことで、退職給付引当金や未認識数理計算上の差異が増加する企業が目立ちました。これらは、自己資本比率の低下や、企業格付の引き下げによる資金調達コストの上昇などにつながるため、基準の導入以降は年金資産運用の低迷と相まって、厚生年金基金の代行返上や確定拠出年金への移行など企業の積立不足圧縮の動きが加速されました。しかしながら、現時点でも多くの企業で退職給付会計の対象となる確定給付型の制度が採用されており、年金資産運用の低迷等によって新たな積立不足が発生するケースも見られます。

なお、海外においてもわが国同様の退職給付会計基準があり、米国基準においてはASC715(旧FAS87等)、国際財務報告基準においてはIAS19に基づいて退職給付に関する会計処理が行われています。

近年には、国際財務報告基準へのコンバージェンスの一環として、2012年5月に我が国の退職給付会計基準が大幅に改正されました。主な改正点は以下の3つです。

  1. これまでオフバランス処理であった未認識数理計算上の差異等を、連結財務諸表において負債に計上
  2. 開示の拡充
  3. 退職給付債務の算定方法の見直し

原則として、1.と2.については2013年4月1日以後開始する事業年度末から、3.については2014年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されることとなっています。
改正基準が適用されると、連結財務諸表において自己資本比率が低下する場合があることに加え、毎期の年金資産の時価変動が即時にバランスシートに影響を及ぼすため、退職給付制度設計や年金資産運用を見直す企業も増えるものと思われます。
この改正により我が国の退職給付会計基準はIAS19に近づきましたが、退職給付債務の算定方法の選択肢や数理計算上の差異の処理方法等において、依然として基準差異が残っていることに留意が必要です。

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