欧州委員会による会計指令の改訂案の公表

欧州委員会による会計指令の改訂案の公表

欧州委員会は、2013年4月16日、会計指令(第4次指令及び第7次指令)の改訂案を公表しました。この改訂案は、第4次指令(78/660/EEC)と第7次指令(83/349/EEC)を改訂するものであり、環境問題、社会や従業員に関する問題、人権尊重、腐敗防止や贈賄、取締役会の多様性に関する企業の情報開示の透明性を拡大することを意図したものです。これにより、「知識とイノベーション」、「より持続可能な経済」、「高雇用・社会的包括」をテーマとする欧州2020(2020年を目標年度とする欧州の成長戦略)の目的に従い、EUの長期的な経済成長と雇用促進へ貢献するとしています。

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環境や社会の側面に関する非財務情報の開示

改訂案では、従業員数が500人超の大企業は、重要な環境や社会の側面に関する非財務情報を年次財務報告書の中で開示することが求められています。現在、EU域内の約2,500社の企業が環境や社会に関する情報を定期的に開示していますが、新しい開示義務が課される企業の数は約18,000社となると想定されています。

現行の第4次指令でも、第46条(1)(b)により、大企業には、環境問題や従業員に関する情報を含む非財務情報を開示することが求められています。しかし、現行の規定が求めている内容は曖昧で、加盟国によって適用がまちまちであり、こうした非財務情報を実際に定期的に開示しているEU企業は10%に満たないというのが実態です。改訂案では、「少なくとも、環境、社会および従業員に関する事項、人権尊重、腐敗防止および贈賄に関する事項」に関連する非財務情報を開示することを求めており、具体的には、これらの事項に関連する会社の方針、方針の実施状況、こうした事項に関連するリスクおよびリスク管理方法について開示することを求めています。これらの事項に関する方針を有していない場合、その理由について説明することを求めています。但し、そもそも、会社の発展、業績またはポジションを理解する上では関係のない、重要性の低い情報を開示することは求められていません。

取締役会の多様性に関する開示

改訂案では、EUで上場している企業に対し、取締役会の構成の多様性に関する開示を求めています。具体的には、取締役会の多様性に関する方針、多様性方針の目的、方針の運用状況、報告期間における実績についての開示が求められています。「多様性」には様々な観点がありえますが、改訂案では、年齢、性別(ジェンダー)、地域、学歴や職歴といった観点からの多様性が示されています。この場合も、取締役会の多様性に関する方針を有していない場合、その理由について説明することを求めています。

統合報告との関係

奇しくも同じ2013年4月16日に、統合報告評議会(IIRC)が統合報告フレームワークの公開草案(Consultation Draft)を公表していますが、改訂案のFAQの中では、改訂案は企業に統合報告を行うことを求めているものではないとしながらも、欧州委員会としては特にIIRCによる統合報告の概念の進化について大きな関心をもって注視しているとしています。

日本企業への影響

会計指令の改訂によって直接影響を受ける日本企業は限定的と考えられますが、これまで、欧州企業による非財務情報の開示がこの領域における先導的な役割を果たしてきたことを考えれば、今回の改訂案が示す方向性は、世界の非財務情報の開示の流れに一定の影響を与えると考えられます。

また、日本企業の取締役会のモノカルチャー(性別や国籍といった多様性の欠如)はしばしば指摘されるところであり、日本経済の低迷と結び付けて語られることも少なくありません。安部首相が成長戦略の中核として「女性の活躍」を掲げ、経済団体に対して役員・管理職への積極的な女性の登用を求め、待機児童解消や職場復帰支援などの施策の方向性を打ち出すなど、会社組織におけるモノカルチャーの解消に向けた機運が日本でも高まっていると言えます。取締役会の多様性に関する取組や開示に対する日本企業への期待は今後ますます高まってくると考えられます。

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