2022年度版 監査委員会の重要課題

コロナ禍による2年間にわたる危機と混乱を脱しつつあるなか、我々は、信頼と透明性がいかに重要であるかということを実感しています。それは資本市場の機能に必要なだけではなく、顧客との関係やブランド・評判、従業員の健康や福祉のためにも重要となります。株主や(近年ではとくに)より幅広い利害関係者にとってその信頼性と透明性は、財務報告や開示情報の質に加え、企業が語れるストーリーと強く結びついています。そのため、監査委員会による監視の役割は、おそらくかつてないほどに重要課題となっています。

2020年から2021年にかけて私たちが経験した危機は、テクノロジー変革の加速から職場・事業モデル・経済において長く存在していた「ノーマル」の刷新に至るまで様々な破壊を生んできました。企業の財務報告プロセスやリスク・統制環境には、こうした危機や変化により大きな負荷がかかっています。このプレッシャーは、気候変動および環境・社会・ガバナンス(Environment, Social, Governance, ESG)に関する報告書の質的・量的改善の増加、税務・規制環境の急速な変化、そしてコロナ禍の動向などの世界的なリスク環境に影響を与える要因を考慮すると、今後も続く可能性が高いです。

我々の独自調査研究、知見、そして監査委員会や産業界のリーダーとの意見交換を活かし、監査委員会が2022年度の重要課題を検討・実行する際に留意すべき8項目を以下に提起します。

  • 財務報告および関連する内部統制リスクを最重要業務とし、引き続き注力する
  • 気候変動・ESG情報の開示に関する米国証券取引委員会(SEC)の規則制定活動をモニタリングし、関連する監査委員会の監視責任を明確にする
  • 税務の世界的な動向およびリスクを常に把握し、税務がESGの重要な要素となったことを認識する
  • 企業倫理およびコンプライアンスのより一層の重視に向けた支援・指導をおこなう
  • 監査品質を強化するとともに外部監査人に対する期待を明確に設定する
  • テクノロジーが経理・財務部門の人材、効率性、および価値向上にどのような影響を与えるかを理解する
  • 内部監査が会社の重要リスクに確実に焦点をあてられるよう働きかける
  • 監査委員会の時間効率の最大化に協力して取り組む

2022年度版 取締役会の重要課題

国が規制の解除に焦点をあて、企業が将来に向けて新たな態勢を整えるなか、パンデミックの時代においては戦略・組織・経営力のレジリエンスが大きな差別化要因となることがますます明らかになっています。あらゆる業務のリモート化から従業員の心身の健康への注力、顧客業務のデジタル化の深化、サプライチェーンの再調整に至るまでの劇的な混乱や転換に迅速に適応する能力が、生き残りや成功へのカギとなっています。

前例のない出来事が続いた過去2年間は、明らかに、取締役会による監視を含むコーポレートガバナンスのプロセスが試された期間でした。気候変動リスク、サイバーセキュリティリスク(ランサムウェア攻撃を含む)の増加、経済およびサプライチェーンの課題、急速に変化する規制環境、そしてグローバルなリスク環境に影響を及ぼすそのほかの要因を含む環境・社会・ガバナンス(Environment, Social, Governance, ESG)への対応を求める動きは、ESG対応において先手を打っている企業の取締役会においても引き続き課題となるでしょう。

端的に言うと、取締役会は重要な時期にあります。ある取締役が最近述べた所見のとおり、取締役会は「発想と志向を転換し、リセットする」ことを会社に働きかける必要がありますが、現在はその「一世代に一度の機会」です。

我々の独自調査研究、知見、そして取締役や産業界のリーダーとの意見交換を活かし、取締役会が2022年度の重要課題を検討・実行する際に留意すべき8項目を以下に提起します。

  • 戦略と将来の展望に対する取締役会の関与を深める
  • 気候変動リスクと多様性・公平性・包摂性(diversity, equity, and inclusion, DEI)を含むESGをリスクと戦略の議論に組み込む
  • 株主、アクティビスト、およびそのほかの利害関係者に対して積極的に関与する
  • 人材・人的資本管理・CEOの後継者育成計画を優先事項とする
  • サイバーセキュリティおよびデータの機密性保護について、データガバナンスとして総合的に取り組む
  • 危機に対する会社の予防・準備の取り組みを再評価する
  • 企業トップの姿勢を整えるための支援をおこない、組織文化を注意深く監視する
  • 取締役会の人材と多様性について戦略的に検討する

詳細については、下記リンクより全文をダウンロードしてください。

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この文書はKPMGLLPが発行したOn the 2022 audit committee agendaOn the 2022 board agenda をベースに作成したものです。翻訳と英語原文間に齟齬がある場合は、当該英語原文が優先するものとします。