税務アップデート

税務アップデート

「税務アップデート」では、米国の税務に関する立法、司法、行政動向のうち、在米日系企業に影響が大きいと思われるものについて最新情報を提供しています。

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2015年7月

「高速道路法案」成立

7月31日、「2015年地上輸送および退役軍人医療選択肢改善法(下院法案第3236号)」がオバマ大統領の署名により、成立しました。

この法案は、高速道路信託基金への資金拠出および同基金からの支出に関する権限を2015年10月29日まで延長するもので、連邦運輸保安局(TSA)の手数料に関する改正や退役軍人医療問題対策に加え、高速道路網整備を数ヶ月間実施するための約50億ドルの財源の確保を目的とした以下の税法改正条項が含まれています。

  • 原則として、パートナーシップおよびSコーポレーションの申告書の提出期日を3月15日(課税年度末から2ヶ月半後)、Cコーポレーションの申告書の提出期日を4月15日(課税年度末から3ヶ月半後)とする。これらを反映し、Cコーポレーション、パートナーシップ、トラスト、従業員福利厚生プラン、非課税団体等の申告書提出期日延長申請手続を改正することを財務省に命じる。
  • 遺産税の納付義務を有する遺産に対し、被相続人の死亡時に、IRSおよび相続人への相続資産の時価に関する報告を義務づける。
  • 住宅ローンの債権者の様式1098上の報告項目に、ローン実行日、未返済元本残高、担保物件の所在地を追加する。
  • 時効の6年間への延長の理由となる収入の重大な申告漏れの有無の決定において、簿価の過大申告を収入の申告漏れとして取り扱う。
  • 雇用者が確定給付型年金プランの資産の超過分を退職者医療年金口座および退職者団体生命保険の掛金に充当することを認める特例措置を2025年まで延長する(当該措置は2012年に立法化され、当初2021年12月31日で失効予定となっていた)。

これらの財源確保を目的とした税法改正に加え、この法案には、2016年1月1日以降に販売もしくは使用される液化天然ガス(LNG)に対する物品税を1ガロンあたり24.3セントから14.1セントに、同じく液化石油ガス(LPG)に対する物品税を1ガロンあたり18.3セントから13.2セントに引き下げる条項も含まれています。

「イノベーション・ボックス」制度導入草案を発表

連邦議会下院政策委員会の有力メンバーであるチャールズ・ブスタニー議員(共和党、テキサス州選出)およびリチャード・ニール議員(民主党、マサチューセッツ州選出)が「イノベーション・ボックス」制度の導入に関する草案および解説を発表し、一般からの意見を公募しました。

この草案によれば、イノベーション・ボックス制度は、知的財産の譲渡および知的財産を利用した製品の生産に対する法人税負担を大幅に軽減するもので、納税者の当該年度のイノベーション・ボックス所得もしくは課税所得のいずれか低い方の71%の特別控除を認めるものです。これにより、イノベーション・ボックス所得に対する実効税率は、約10パーセントとなります。ただし、この特別控除は、欠損金の計算上勘案することはできず、この控除により欠損金を創出もしくは増額することはできません。

連邦議会上院財政委員会の国際税務に関する税制改革ワーキング・グループは、その最終報告書(2015年7月7日付)の中で、他の提案とともにイノベーション・ボックス制度の導入を推奨しています。この報告書によれば、同様の制度は世界11カ国で導入されており、OECDのBEPSプロジェクトにおいても導入を認めるコンセンサスが形成されつつあることから、こうした国際税務のトレンドに乗り遅れることは、「米国における知的財産の創出と保護、これらに付随する国内の製造活動、雇用、税収の維持に重大な致命傷をもたらしかねない」として、米国の税務政策の早期転換が必要であるとしています。

下院政策委員会メンバーがパートナーシップの税務調査ルール変更を提案

連邦議会下院政策委員会のメンバーであるジム・レネイシー議員(共和党、オハイオ州選出)およびロン・カインド議員(民主党、ウィスコンシン州選出)は、パートナーシップに対する税務調査のルールを変更する「パートナーシップ税務調査簡素化法案(下院法案第2821号)」を提出しました。

同法案は、原則として、税務行政公正化および財政責任法(TEFRA)の規定と選択手続を行っている大規模パートナーシップに関する規定を一本化するものです。この法案は、成立すれば2019年以降に終了するパートナーシップの課税年度に適用されますが、成立日の翌日以降に開始する課税年度への早期適用を選択することもできます。

この法案は、下院政策委員会のキャンプ前委員長(共和党、ミシガン州選出)により前会期の議会に提出された税法改正案に含まれていたものとほぼ同じ内容となっています。現時点では、オバマ政権は、この法案に対する賛否を公式に明らかにしていませんが、2016 年度の大統領予算教書にも、類似の改正案が含まれています。なお、この法案は、税収増に繋がる可能性があるため、他の税法改正案の財源として利用される可能性もあります。

ニューヨーク州:投資資本の特定に関するガイダンス

ニューヨーク州税務当局は、州法人税法上、投資資本を特定する手続に関するテクニカル・メモランダムを発表しました。

最近成立したニューヨーク州税法改正規定(2015年1月1日以降に開始する課税年度に適用)によれば、適格投資資本から生じる投資所得は、納税者の事業所得から除外され、投資資本自体も事業資本課税標準から除外されます。

適格投資の要件は、ユニタリー事業を営んでいない法人の株式で、①内国歳入法第1221条の規定に基づく「キャピタル・アセット」であること、②一年超の期間投資資産として保有されていること、③譲渡時に連邦税法上長期キャピタルゲインもしくはロスが発生すること、④2015 年1月1日以降に取得された株式については、通常の事業活動で顧客への販売を目的として保有されたことがないこと、⑤内国歳入法第1236条(a)(1)の規定に基づき、株式の取得日の営業終了までに投資目的で保有する資産として会社の記録上明確に特定されていること、とされています。

今回発表されたテクニカル・メモランダムでは、投資資本の特定のための手続が詳細に規定されています。なお、投資資本となる可能性がある既存の株式やオプションについては、納税者は原則として2015年10月1日までに特定手続を実施する必要があります。また、2015年10月1日以降に取得する株式については、取得当日の営業終了までに投資資本として特定する手続を整備しておく必要があります。

ワシントン州:B&O税、事業活動認定基準、未請求資産に関する税法改正

7月8日、次の条項を含むワシントン州事業・職業(B&O)税法および売上・使用税法の改正法案が州知事の署名により成立しました。

  • ロイヤリティー収入に関するB&O税の優遇税率の撤廃
  • B&O税法上の事業活動認定基準の変更
  • クリック・スルー・ネクサス制度の導入
  • 製造およびR&D機器に関する売上・使用税の免税規定の変更
  • 納付延滞ペナルティーの引き上げ
  • 未請求資産ルールの施行規定の変更

このうち、事業活動認定基準の変更は2015年9月1日、その他の変更は2015年8月1日付で適用されます。

2015年6月

BEPS: 上院財政委員長と下院政策委員長が財務省に議会への協力を要請

ワシントンDCで開催されるOECD国際租税会議に先立ち、6月9日、連邦議会上院財政委員会と下院政策委員会の委員長は、ルー財務長官に対し、OECDの税源侵食・利益移転(BEPS)プロジェクトの提案に関して議会への協力を要請する公開書簡を送付しました。

上院財政委員会のハッチ委員長(共和党、ユタ州選出)および下院政策委員会のライアン委員長(共和党、ウィスコンシン州選出)は、この書簡において、財務省がBEPSプロジェクトに安易に追随する姿勢を見せていることに懸念を示し、特に米系多国籍企業のマスターファイルを外国政府が秘密保護の保証や必要性の証明なしに取得できることを問題点として指摘しました。

報道によれば、財務省は現行の内国歳入法の規定に基づき国別報告書の作成・提出を納税者に義務づける権限を有しており、IRSは今年中に報告手続に関するガイダンスを発表する予定であるとされていますが、両委員長は、情報を要求・収集し、外国政府と共有する権限について疑問を呈し、米系多国籍企業の国別報告書を収集したり、外資系多国籍企業の米国子会社を通じてマスターファイルを取得する権限を財務省およびIRSが有する法的根拠を示すよう求めました。また、両委員長は、①米国で活動する外資系多国籍企業の国別報告書その他の移転価格文書化資料の使用方法、②米系多国籍企業の企業秘密が含まれているマスターファイルを外国政府が直接入手することの正当性についても説明を求めており、回答がなければ国別報告書やマスターファイルの収集を禁止する手段を議会として講じると警告しています。

さらに、両委員長は、BEPSプロジェクトの提案に含まれている恒久的施設に関するルールの変更、租税条約の一般租税回避防止規定(GAAR)の適用、支払利息の損金算入制限規定の導入等についても懸念を表明しています。

両委員会のメンバーの多くはBEPS対応を行政府ではなく立法府の管轄と捉えており、この公開書簡は、ハッチ上院議員と下院政策委員会のキャンプ前委員長の従来の主張と同一線上のものですが、一般的な批判に終始せず、国別報告制度の導入に関する財務省の法的権限を問うことで一歩踏み込んだ内容となっています。

貿易法案に含まれる税法改正条項

連邦議会上下両院で可決され、大統領の署名により6月29日に成立した2015年特恵関税延長法(下院法案1295号)には、貿易関連の時限措置の延長とともに、財源確保を目的とした以下の税法改正条項が含まれています。

  • 情報開示報告書の提出漏れに対するペナルティーの大幅引き上げ(多くの場合、2倍もしくは3倍)
  • 支払調書の提出漏れに対するペナルティーの大幅引き上げ(多くの場合、2倍もしくは3倍)
  • 2020年中の法人税予定納税期日の変更
  • 米国機会税額控除、ホープ奨学金税額控除、生涯学習税額控除、適格授業料等の控除を申請している納税者に対し、教育機関から費用に関する証明書を取得することを義務づけ
  • 内国歳入法第911条に基づく海外役務所得控除を受けている納税者に対し、給付付き子女税額控除を否認

テキサス州:事業税率を引き下げ

6月15日、2015年事業税減税法(下院法案32号)がアボット知事の署名により成立しました。この法律は、テキサス州事業税率を恒久的に引き下げるもので、2016年1月1日以降に提出される申告書に適用されます。

一般税率は1%から0.75%に引き下げられ、卸売および小売を主たる事業とする納税者に適用される0.5%の税率は0.375%に引き下げられます。

また、小規模事業者への救済策として、総収入が1,000万ドル以下の事業体については、簡易申告と低減税率の適用が認められていますが、対象が総収入2,000万ドル以下の事業体に拡大され、低減税率は0.575%から0.331%に引き下げられます。

カリフォルニア州:宇宙運輸活動に関する規則策定プロジェクト

カリフォルニア州税務当局(FTB)は、宇宙運輸活動に関する規則策定プロジェクトに関する公聴会を7月9日に開催することを発表しました。この公聴会では、人や貨物の宇宙への輸送から生じる収入の源泉地の決定方法に関する規則を策定するプロジェクトのあり方を探るため、業界関係者や実務家から規則草案に織り込むべき税務上の問題点について意見を募ることが予定されています。

公聴会で議論されるトピックには、①宇宙運輸活動をどの様に定義すべきか、②宇宙船等はどの時点で宇宙に到達したと見なすべきか、③宇宙運輸活動からの収入を州間配賦比率の計算上どう反映すべきか等が含まれます。また、FTBは、宇宙活動にはリスクが伴うため、失敗したミッションからの収入に関する規則が必要となり、納税者が課税対象となっていない管轄を源泉地とする収入に関する規定上、宇宙空間をどう取り扱うかについても、新たな視点での検討が必要になるとしています。

カリフォルニア州:州間事業者のみに合算申告を義務づける法律に違憲判断

カリフォルニア州控訴裁判所(第4管区)は、州内のみで事業を行う納税者に限り合算申告と個別申告を選択することを認める法律が合衆国憲法の通商条項に違反するとの納税者の訴えを退け、州税務当局の主張を支持した下級審の判断は誤りであったとの逆転判決を下しました。

カリフォルニア州税法上、複数の州に跨り単一事業(ユニタリー・ビジネス)を営む関連会社グループには合算申告が義務づけられていますが、カリフォルニア州内のみで単一事業を営む関連会社グループは、合算申告と個別申告を選択することが認められています。本件原告の納税者は、複数の子会社を有するオートバイ業者ですが、州間事業者と州内事業者で異なる取り扱いは、合衆国憲法の通商条項に反するものであると訴えていました。

控訴裁判所は、納税者により取り扱いが異なっていることを認め、過去の判例に基づき、州内事業者と州間事業者で異なる取り扱いが通商条項上の差別に該当することを納税者は立証済みであるとして、裁判を下級審に差し戻し、州間事業者への差別が容認されるべき正当な理由があるとの州税務当局の主張について審議することを命じました。

2015年5月

財務省による米国モデル租税条約改正案

5月20日、財務省は、米国モデル条約について、次の5項目の改正を行うことを提案し、一般からのコメントを募集しました。

  • 「課税対象外の恒久的施設」に関する規定導入案
  • 「国籍離脱企業」による支払いに関する規定導入案
  • 「特別税制」に関する規定導入案
  • 恩典制限条項の改定案
  • 将来的な税法改正に関する規定導入案

財務省の発表によれば、これらの改正案の主眼は、①租税条約締結相手国の税制が将来的に改正されても租税条約締結時の交渉で米国が獲得した恩典のバランスを維持できるようにすること、②インバージョン取引により税務上の居住地を変更する企業に対して租税条約の恩典を否認すること、の2点となっています。

改正案のひとつは、特にロイヤリティーや利子収入等の受動的所得について、特定の国で極端に低い税率を適用する「特別税制」が採用された場合に、税源侵食と利益移転(BEPS)プロジェクトの趣旨に従い、納税者が租税条約と当該特別税制を組み合わせ、租税条約締結相手国で税金を全く支払わない、もしくは極めて少額の税金しか支払わないという「無国籍所得」や「二重非課税」の発生を回避することを目的としたものです。

もうひとつの改正案は、米国法人のうち、内国歳入法の規定による「国籍離脱企業」の定義に該当する法人による配当ならびに課税ベースを圧縮する支払い(利息やロイヤリティー等)に対して源泉税の減免を認めないことでコーポレート・インバージョンのメリットを減少させることを目的としています。

また、BEPS対策の一環として、居住地国での課税回避を目的として租税条約の恩典が不適切に利用されることを防止するため、居住地国外に所在する恒久的施設に帰属する所得として条約締結相手国により課税されない所得について条約の恩典を制限するルールならびに企業による税源を侵食する過大な支払いを制限するルールを強化するとしています。

恩典制限(LOB)条項の改正は、現行の「派生的恩典」ルールを改訂し、第三国の居住者による所有等を含む広義の所有権の定義に基づく条約恩典の付与に関するルールを見直すものです。

財務省は、これらの改正案についての一般からのコメントを募集しています。米国モデル条約は、2006年から改正されていません。

上院財政委員会の税制改革分科会の提案提出を延期

5月21日、ハッチ上院財政委員長(共和党、ユタ州選出)とワイデン委員(民主党、オレゴン州選出)は、税制改革分科会による提案作成の期限を延期すると発表しました。

個人所得税、事業所得税、貯蓄・投資、国際税務、地域開発・インフラ整備の5つのトピック毎に設置された分科会は、上院財政委員会に5月25日の週に提案書を提出することになっており、3月以来ミーティングを重ね、議会、政権、納税者、その他の関係者との意見交換を行うとともに、一般からのコメントを募集し、1,400通以上の提案書を受領しました。

今回の延期は、2つの点で注目されています。第一に、2016年の大統領選挙に向けた運動が今夏本格化すると、税制改革のような複雑で争点の多い法案を可決するのは不可能になると見られていることから、上院財政委員会が分科会の提案に基づくアクションを起こす時間的余裕が少なくなることです。第二に、超党派の分科会の提案には具体的な税制改革案が含まれないのではないかとの懐疑的予測がある一方、ハッチ委員長とワイデン委員は分科会による具体的提案の作成に依然希望を残しているものと思われます。

IRSが収益認識に関する新会計基準についてのコメントを募集

5月29日、IRSは、米国財務会計基準審議会(FASB)および国際会計基準審議会(IASB)により発表された収益認識に関する新会計基準が納税者の税務会計方針に与える影響についてコメントを募集する公告2015-40号を発表しました。

会計上の収益認識のタイミングに関する新基準は、多くの納税者の税務上の所得認識のタイミングにも影響を与える可能性があります。次の納税者については、特に影響が大きいものと考えられます。

  • 工事進行基準を適用している場合。
  • サービスの提供による対価を受領している場合。
  • 商品の販売において占有改定による所有権移転を行っている場合。
  • 商品の販売と返品がある場合。
  • 製品保証による収入がある場合。

新基準の適用による影響は、特定の業界において大きいものと考えられており、例えば、ソフトウェア、娯楽、製造、建設等の業界では、財務会計上の収益認識のタイミングが大きく変ることが予想されています。

IRSによれば、連邦税法上の会計方針の変更にはIRSの承認が必要となります。公告2015-40号では、新基準を連邦税法上の会計方針として容認すべきか、新基準の適用にあたってどの様な税務上の会計方針変更手続が必要となるか、会計方針変更に関する現行のIRSの申請承認手続は妥当か等、検討を要する基本的な問題点や手続上の課題が存在するとされています。

新基準の適用により、財務会計と税務上の取り扱いの差異が新たに出現もしくは拡大することが考えられることから、IRSおよび財務省は、新基準に関するガイダンスを発行すべきか、またガイダンスが必要となる場合、その範囲、内容、形式をどうすべきかについて、一般からのコメントを募集しています。コメントの提出期限は、2015年9月15日となっています。

The information contained herein is of a general nature and based on authorities that are subject to change. Applicability of the information to specific situations should be determined through consultation with your tax adviser. This article represents the views of the authors only, and do not necessarily represent the views or professional advice of KPMG.

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