2015年M&A見通し調査レポート

2015年M&A見通し調査レポート

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ブーム復活: 企業成長戦略をリードするM&A

序文

米国のM&Aが、ようやく景気後退前の水準を取り戻しました。2014年第3四半期までのM&A取引金額は、約1兆ドルに到達。同期間中のM&A件数は5,843件と過去最高水準を記録し、前年同期と比べ取引件数で7%増、取引金額で33%増となりました1。現在のM&A環境の特徴としては大型案件が多く、キンダー・モルガンによる関連会社の統合(710億ドル)や、メドトロニック・によるコヴィディエンの買収(430億ドル)などが挙げられます。これらのことから買い手企業は、戦略や成長目標に見合う対象企業であれば高額な買収金額を支払う用意があると見受けられます。

世界的な経済、市場に対する懸念にもかかわらず、米国のM&A当事者は低金利、記録的な株高、雇用者数の改善、豊富な手元資金という追い風を受けています。

市場の方向性をより正確に理解するため、弊社KPMGは雑誌「Mergers & Acquisition」の協力のもと、735名を超すM&Aスペシャリスト(米国企業、プライベート・エクイティファンド、投資銀行)を対象とした調査を実施しました。回答者は楽観的な市場を反映し、今年は活発な投資活動を実施すると答えています。79%(昨年は66%)が自社またはファンドが2014年に少なくとも1件の買収を行ったと回答しており、17%が2件、12%が3件、そして13%は非常に意欲的で10件以上の買収を実施したと答えています。

買収機運の高まり

米国経済と市況が好調な状態を維持するとの予測に基づき、回答者の実に82%が2015年に1件以上の買収を計画しており、19%は2件、11%が3件、さらに10%が11件以上の買収を行う予定であると回答。ここ数年に比べてかなり多くの買収が予想されると報告している。

Transactions&Restructuring(現Deal Advisory)代表・Dan Tiemann(以下、ティーマン)は、「消費者マインドの回復や、好調なクレジット市場、予想される本業成長の限界を背景に、米国企業やスポンサーは、バランスシート上の現金やプライベート・エクイティ(PE)の手元資金を使った買収活動による成長に意欲的になっている。」と説く。

Q: 2015年のM&Aの活発化にもっとも影響を及ぼす要素とは?

ディール・アドバイザーによると「豊富な手元資金と良好な資金調達環境」により、取引は増加する。



戦略的機会が買い手を牽引

米国企業はつねに成長機会に目を光らせている。適切な買収対象企業を見つけるため、回答者の35%は買収候補の事業部、製品、および/または資産のポートフォリオを月次で調査し、27%は四半期ごとに調査している。

興味深いことに、2015年の望ましい出口戦略を尋ねたところ、回答者の64%がストラテジック・バイヤーへの売却と回答した。約18%はフィナンシャル・バイヤーへの売却、10%はIPO、8%はリファイナンスか借入の調達を行うと答えた。しかし、PEファンドは2015年に確実に活発化する予測で、回答者の85%は少なくとも1件の投資を見込んでいる。KPMGのPE担当National Sectorリーダー・Marc Moyers(以下、モイヤース)は、「PE投資家は昨今の全般的な経済動向、有利な借入条件、十分な利用可能資金という好条件に後押しされている。彼らの課題は、質の高い資産を妥当な価格で調達し、意義あるリターンを得ることだ。」と述べる。

2014年は多数の大型案件の成立により、世界中のM&A取引金額の増加率が取引件数の増加率を大きく上回った。この現象について質問したところ、複数の回答者が買収企業は過去の経験に学び、戦略的に適合する投資先の選定により注意を払っている、と述べた。ある技術投資アドバイザーは「顧客の投資先選定基準が厳しくなっているため、取引件数は予想ほど増加していないが、選定基準や成長計画に見合う対象企業に対しては、顧客はプレミアムを支払う意向を持っている。」と述べている。また、ある工業生産企業幹部は「各社は投資案件の質により慎重になっている。つまり、投資家もより批判的な視点から、堅固な成長戦略を求めるようになっており、数ではなく質を重要視している。」と語る。

Q: 2015年にM&Aを実施するおもな理由とは?

M&Aへの強い関心の一方、回答者はさらなる売上増加のために、別の戦略を遂行する意向もある。もっとも回答が多かったのは、新製品開発による売上増加計画であった(38%)。次に多かったのは地理的拡大(28%)、そして新規分野への参入計画(18%)と続いた。

取引金額は増加の見込み

フェイスブックによるワッツアップの190億ドル買収といったトップニュースとなる大型M&A取引があるものの、ほとんどの回答者は今後のM&A環境も中小規模の取引が主流になると考えている。しかし取引金額においては昨年を上回ることが予想される。そして全回答者の半数は、自社が行う買収案件1件当たりの平均企業価値を250百万ドル以下と回答。また約27%が予想される平均取引金額を250百万ドルから499百万ドルと回答し、16%が500百万ドルから999百万ドル、6%が十億ドルから5十億ドルで、5十億ドル超という回答者は1%未満だった。昨年の調査では、回答者の77%が自社による買収取引の平均企業価値は250百万ドル以下になると予想していたのは興味深い。取引が大型化する理由の一つには、企業利益とそれに基づく評価額の上昇が挙げられる。

弊社KPMGのM&A TAX担当National Sectorリーダー・Phil Cioffi(以下、チョフィ)は税金問題の複雑性を認識しながら、「M&A取引プロセスにおいてできるだけ早い段階で税金問題の特定と対処が可能であれば、取引金額に非常に有益な効果をもたらす」と語る。「主要な取引条件が決定されるまで待ってはならない。買い手は税務リスクに対処する機会や、最も効率の良い買収ストラクチャー?ならびに効果的な買収後の統合プロセスを採用する機会を逃してはならないのです。」

取引のリスクには要注意

M&A取引の規模が拡大するにつれ、成功に伴うリスクも大きくなる。M&Aの成功に最も重要な要素として一番多かった回答は、統合計画の的確な実行であった(43%)。これに関してティーマンも「最初の数ヶ月のロードマップを含む100日計画を策定することで、統合成果は大幅に改善し、取引が成功するチャンスが高まる」と述べている。その他の要点には、正確な企業価値評価(26%)や効果的なデューデリジェンス計画(18%)が挙がった。統合に関するも最も困難な課題には、社風や人事関連の問題(53%)、製品・サービスの統合と合理化(32%)、経理・財務の移行(25%)、顧客・サプライヤーの統合と合理化(23%)が続いた。つねに挙がるデューデリジェンスの難題には、将来の収入源評価(51%)、収益の質に関する課題(42%)、社風や人事関連(28%)、コストシナジー分析および資産の質(それぞれ24%)などが含まれた2

事業売却についても課題は存在する。回答者によると、事業売却時に発生する事業分離に関する最重要課題は、業務上の連携・関係の明確化(28%)である。事業分離に関するその他のおもな課題には、取引パラメータの理解(17%)、移行サービス契約範囲の合意(16%)、買い手がスタンドアローンコストを数値化する支援(13%)が挙げられた。「買い手は、データ重視型のデューデリジェンスを実施することで、エグゼキューション関連など多くの課題が緩和されることを知っておく必要がある。また売り手は、データ重視型の分析を用いることで、売却プロセスを促進し、より高い売値をつけ、売却後に起こりうる価値の損失を最小限に抑えることができる。」と、ティーマンは語る。

今年いくつかの大型案件に重大な影響を及ぼしたことからもわかるように、税金は依然として重要な課題であり、M&A取引からより多くの利益を得るためにも、できるだけ早い段階で考慮すべきものである。回答者の大半(70%)は、税金問題を取引当初から考慮していると回答。約26%が、主要な取引条件が設定された後に税金問題を検討しており、税金問題をまったく考慮しないという回答はわずか4%であった。約42%の企業幹部が、税金問題の複雑さは特に以前と変わらないと考える一方、39%は油断した場合に陥る税務上の「罠」が増えていると感じている。

ここの部分に上記Cioffiの税金に関わる挿話がはいるのではないでしょうか?

業界のトレンドおよび課題

予想通り、M&Aが最も活発化すると予想される業界は、変革が最も進行する業界であった。

Q: 2015年に最も活発にM&Aが行われると予想される業界は?

最も活発にM&Aが行われると回答者が予想した業界は、ヘルスケア関連であった(84%)。また多くの取引が実施されると予想される他の業界には、テクノロジー/メディア/通信(62%)、エネルギー/石油・ガス(36%)、コンシューマープロダクツ(34%)が挙げられた3

各業界、それぞれ特殊な取引環境ならびに業界特有の課題や機会に取り組んでいる。

ヘルスケア

案の定、ヘルスケア業界の回答者の大部分(74%)が、2015年の取引活動を牽引する最大の要因は患者保護並びに医療費負担適正化法4への業界対応と答え、続いて中核事業の統合や競争(45%)、顧客層拡大(26%)が挙げられた。もっとも活発なサブセクターに予想されたのは、病院(66%)、マネージド・ケア(37%)、診断(21%)、医薬品/バイオテクノロジー(21%)であった。M&A当事者にとって最も困難な課題には、規制/政治的課題、適切な対象企業の特定、買い手と売り手間の企業価値評価の相違(すべて42%)が挙げられた5

テクノロジー

この業界のM&Aを牽引する主要なトレンドには、モバイル・テクノロジー(54%)、クラウド(48%)、データ・アナリティクス(47%)、セキュリティ(38%)が挙がる。収益拡大と費用削減以外にテクノロジー企業がM&A取引を実施する目的としては、知的財産権/優秀な人材の獲得(50%)、新製品強化を目的とするボルトオン買収(42%)、革新的な技術や製品の取得(41%)、市場参入(41%)、既存のテクノロジー・プラットフォームの拡大(40%)と続く。また今回の調査で、業界幹部が今年の取引における一般的な課題に挙げた回答のうち圧倒的に多かったのは、買い手と売り手間の企業価値評価の相違(67%)。他に、適切な対象企業特定の難しさ(39%)や、買い手と対象企業間の買収完了後の導入戦略に関するすり合わせ問題(25%)も挙げられた。

エネルギー

同業界で取引を牽引する要因には、中核事業の統合や競争への対応(54%)、地理的拡大(39%)、新技術および製品・サービスの拡大(ともに35%)が挙がった。もっとも一般的な課題として、不確かな規制環境(48%)、買い手と売り手間の企業価値評価の相違(46%)、将来の業績予測(35%)、不安定なエネルギー価格(33%)が続いた。

コンシューマープロダクツ

回答者によれば、この業界における最も重要なM&Aのトレンドは、統合や競争への対応(41%)、製品・サービスの拡大(39%)、顧客層拡大(36%)である。一方、売却については非中核事業を売却する機会(58%)、好調な事業を現金化する機会(43%)、不採算事業を売却する機会(30%)が挙げられた。また最大の課題には、買い手と売り手間の企業価値評価の相違(52%)、適切な対象企業特定の難しさ(30%)、将来の業績予測(27%)が挙がった。

金融サービス

当業界の幹部は、M&Aを牽引する最も重要な動向として、顧客層拡大(42%)、大企業に有利となる規制の増加(40%)、中核事業の統合と競争への対応(38%)を挙げた。最も魅力的な分野に挙げたのは、金融テクノロジー(26%)、銀行(21%)、保険(17%)だった。金融サービス業界に対する政府の監視はますます強まっており、業界幹部はM&A当事者にとって最も困難な課題は、不確かな規制環境と政府の監視の強化(58%)と見ている。また、買い手と売り手間の企業価値評価の相違(50%)、適切な対象企業の特定(40%)も課題として挙げられた。

一般製造業

この業界における主なM&A誘引「M&A実行の理由?」は、市場アクセス(51%)、技術的進歩(31%)、コスト削減(28%)のニーズであった。事業売却理由には、非中核事業を売却する機会(73%)、好調な事業を現金化する機会(38%)、不採算事業を売却する機会(32%)が挙げられた。M&A取引実行における最も一般的な課題は買い手と売り手間の企業価値評価の相違(61%)で、適切な対象企業特定の難しさ(39%)、将来の業績予測の難しさ(36%)と続いた。

米国の牽引

Q: 2015年の主な投資先となる地域または国とは?

今日に至る今年の米国向け投資額は、世界中の取引総額の44%超という記録的なシェアを占めた。投資家にとって、米国の相対的に健全な成長率、経済の回復、そして自由な金融市場が魅力となっている。また回答者は、投資先としての米国の人気は来年も続くと予想している。弊社KPMGのM&Aグローバルヘッド・Phil Isom(以下、アイソム)は、「買収企業はつねにクロスボーダー取引の機会を注視しているが、世界経済の不確実性が投資判断に影響を与えている。他の市場に比べて米国市場は魅力的で安定しているものの、長引くドル高が米国資産を狙う外国人投資家にとってはマイナスに影響するだろう」と述べる。

政府による金融政策は中程度重要

金利や連邦準備制度理事会(以下、FRB)6の政策が見出しを飾るのはつねだが、回答者は政府の政策は自社のM&A戦略にあまり影響を及ぼさないと回答。利上げ予想が向こう2年間のM&Aに与える影響に関する問いには、46%がまだ何とも言えないと答えたのに対し、34%は大きな影響はない、そして20%は取引件数が減少すると答えた。企業やファンドの資金調達または借り換えの判断に及ぼすFRBの政策の重要性についても、回答にばらつきが見られた。39%が、FRBの政策による影響は「中程度」と回答し、32%が「弱い」、15%が「ない」と続いた。

Q: FRBの金融政策が資金調達や借り換えに関する判断に及ぼす影響は?

過半数を超える回答者(54%)が来年下半期に金利が上昇すると見込む一方、23%は2015年の前半か2016年に金利が上昇すると予想している。現在の低金利環境は株式市場に好影響を与え、S&P5007の終値は今年になって数回更新された。現在の株価は高すぎるか?という質問に対して、過半数が「高すぎる」と回答。その回答は全体の59%で、残り41%は高くないと答えた。アイソムは、「資本市場と債券市場の見通しは引き続き明るく、M&Aはまだ債券市場の膨大な流動性を使い切っていない。この流動性により借入コストが低下し、M&A向けのより柔軟な借入パッケージが可能となり、市場におけるM&Aの拡大をさらに加速させている。」と評する。

結論

M&Aプロフェッショナルはここ数年、景気停滞が過ぎ去るのを待ちわびていました。そして2014年を境にM&A当事者が意欲的にM&Aを受け入れたため、回答者は2015年も非常に活発な年になると予想していることが明らかになりました。健全なクレジット市場、多額の内部留保金、雇用者数の増加といった経済基調のすべてが、回答者の回答を裏付けています。M&Aに意欲を示す一方で、M&A当事者は取引の成功には優れた戦略、包括的なデューデリジェンス、的確に策定された統合計画が必要であることを認識しています。そして、これら極めて複雑なプロセスを軌道に乗せて初めて、買収による株主や投資家のリターン増加を享受できることになります。

KPMGのM&Aプラクティス

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あらゆる取引には税金問題がつきものです。事業買収・売却・合併・再編のいずれを行うにしても、それに伴う税金問題を理解し、準備しておくことで取引リスクを軽減し、チャンスを広げることが可能になります。弊社M&A Taxプラクティスでは、お客様の事業ライフサイクルを通じて効果的なタックスプランニングを策定する事により、お客様をご支援いたします。

PE業界は、資本市場に並ぶ重要な投資先へと成長しました。ファイナンシャル・エンジニアリングの域を超えて価値拡大、業績改善、既存資産運用の向上からの成果を求める企業にとって、PEは格好な選択肢となっています。PEプラクティスでは、この業界特有の課題に対する支援とともに、PEサイクルの重要な局面を乗り切るサービスをご提供いたします。KPMGの豊富な経験とグローバル・ネットワークを活かしたさまざまなサービスを通じ、お客様やお客様のポートフォリオに高い付加価値を生み出すパートナーとして、ご用命下さい。

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  1. トムソン・ロイター
  2. 複数回答可。
  3. 昨年度の調査で最も活発な動きが予想された業界は、テクノロジー/メディア/通信、ヘルスケア/医薬品/ライフサイエンス、金融サービス、エネルギーであった。「マージャーマーケット」によれば、2014年の第3四半期までの期間に行われた取引の大半を占めた業界は、エネルギー、鉱業/ユーティリティ、コンシューマープロダクツ、工業/化学、金融サービス、テクノロジーであった。
  4. 正式名称The Patient Protection and Affordable Care Act (PPCAC)
  5. 複数回答可。
  6. 正式名称Board of Govenors of the Federal Reserve SystemまたはFederal Reserve Board, FRB
  7. 正式名称Standard & Poor’s 500 Stock Index

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