日常業務の中に潜むもの:賄賂の構造

日常業務の中に潜むもの:賄賂の構造

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近年の現実

  • 諸外国での事業には賄賂や汚職のリスクが伴う
  • 外国政府の役人と接触する機会があれば、常に賄賂授受の可能性が潜む
  • 賄賂は、ほとんどの場合、合法的な支払いとして偽装される
  • 賄賂には、様々な種類があり、調達と販売の両ルートに存在しうる

現在、世界中で、贈収賄・汚職防止法の適用数が空前の高さを記録しています。規制当局は、1977年連邦海外腐敗行為防止法(以下、「FCPA」)といった従前からの法律を適用したり、2010年英国贈収賄防止法などの新しい法律も駆使して汚職と戦っています。

外国で事業を運営している場合、日常業務の中に贈収賄のリスクが潜んでいます。よって賄賂がどのような形で、どこで授受されているかを知るためには、まずその構造を理解する必要があります。

賄賂とは何か?

辞書によれば「賄賂」とは、「責任ある職務にある人物の判断または行為に影響を及ぼすことを目的として提供又は約束される金銭又は便宜」と定義されています。しかし、世界中で発生するほとんどの贈収賄・汚職防止法においては、それ以上の意味も持ちます。

例として、FCPAでは、ビジネスの獲得や維持を目的とする外国政府の役人または機関への「有価値の物品」の支払い、提供、および支払いの約束を禁じています。この際、最低金額は設定されていません。支払われたもの、または約束されたものは無形資産に値し、収賄者へ便益をもたらすことになります。

また、賄賂には、収賄者にその公的立場を悪用させる不正な意図が存在している必要がありますが、英国贈収賄防止法では賄賂は「金銭的または他の利益」と定義されており、不正な意図は必要とされません。39ヶ国が署名しているOECD(経済協力開発機構)の外国公務員贈賄防止法では、賄賂を、意図的に供与される「不当な金銭のやり取りまたは他の利益」と定義しています(2014年7月現在、41ヶ国が署名済み)。

賄賂の例外とは何か?

FCPAにおいて、通常は賄賂とみなされる支払いであっても、許認可の発行といった政府の通常業務を促進または迅速化させることを目的とする場合は、禁止対象にはなりません。また、FCPAのもとで賄賂とみなされる支払いや約束も、当該外国での制定法により合法とされる場合は禁止対象にはなりません。

多くの贈収賄・汚職防止法では、外国の政府役人に対する善意のもてなし、販促活動、製品デモ、およびその他経費の支払いについては、相応かつ合理的な範囲であることを条件に容認しています。

賄賂の経路

ビジネスにおいて賄賂が発生しやすい状況を明確に把握するためには、定期的かつ積極的なリスク評価を実施する必要があります。このリスク・プロファイルを用いることで、内部統制の戦略的実行や、的確な検証の実施が可能となります。多くの場合、賄賂は、合法的な支払いを装い、調達チャネルと販売チャネルのいずれにも潜んでいる可能性があり、また第三者を通して行われることもあります。

次に、組織内における外国政府との接点を確認してみて下さい。まずは、事業免許、税金(VAT)、関税、輸出入、不動産、輸送・出荷、公益事業、および製品の認証・承認を規制する政府機関との交流といった、直接的な接点があります。これらの他に、第三者の仲介による間接的な接点もあります。最も大きなリスクを伴う者、すなわち外国政府と交流のあるブローカー、代理人、荷送人、税関物流業者、再販売業者、および流通業者などを緊密に監視する必要があります。

さらに、信頼できる第三者とのみ取引を実施するために、ベンダー、サプライヤー、および代理人について十分な背景調査の実施が必要になります。第三者が現旧の外国政府役人、もしくは政府役人と緊密な関係にある人物によって保有または支配されているか否か、についての判断が必要です。また、精緻なコーポレート・インテリジェンス・ツールを用いることで、様々なレベルのレピュテーショナル・デューデリジェンスを実施することができます。

一般的に賄賂のリスクが存在する取引

 

  • 過剰な旅費および交際費の支払い返済
  • 小口現金・手許現金および従業員への前渡金
  • 買掛金
  • 費用・出金記録
  • 小切手および電信送金記録
  • 棚卸資産
  • 売上原価
  • 販売およびマーケティング費用
  • リベート・払い戻しや割引

 

どこに賄賂が潜んでいるか?

これを判別するには、取引に関する不十分または架空の説明や、適切な裏付け・記録のない取引、またはまことしやかな取引根拠を洗い出して下さい。これらの要素が含まれる勘定科目については、トレンド分析やデータ分析を実施することにより異常が見つかり、そこから賄賂が潜む先を見つけられる可能性があります。調査のためのサンプリングは、特定のリスク要因(取引相手の種類、取引相手の所在地、記載された取引目的、および政府の接点の可能性等)に基づいて行なわれます。

ほとんどの賄賂は、金額的には比較的少額です。よって、支払いの合法性を評価するため、取引のサンプルを取り、裏付書類を精査する必要になる可能性があります。

旅費や交際費については、領収書原本の取得、関わった個人名や目的、申請と承認が適切に行われているか否か、為替レートの合理的性、経費レポートの正確性を確認して下さい。

そして送受信された各文書における、賄賂の痕跡調査が必要になる場合があります。賄賂は、契約書や合意書、資金調達書類、請求書、発注書、船荷証券や船積書類、銀行取引明細書、書面での通信の中に隠れている可能性があります。また、賄賂は初期的な事業取引の実行後に要求される場合が多いため、請求書や発注書が修正されたもの、もしくは一番最後に発行された請求書には特に注意が必要です。さらに売買契約書について、マージンおよび手数料費用の合理性、ならびに曖昧な取引条件、前渡手数料、多額の解約手数料、および文書を伴わない頻繁な注文変更についても、注意深く調査する必要があります。

最も一般的な偽装手段は、特別な支払いや手数料、相場を上回る手数料、事業紹介手数料、リベート・払戻しや割引、販促・マーケティング費用、調査料、政治献金や慈善寄付、および非経常的な販売費用です。より巧妙な偽装賄賂には、為替換算の操作、異なる通貨での支払い、製品の数量や重量の過大計上、過度に複雑な融資条件、不必要な保険・補償費用等を用いるケースも見受けられます。

これらの賄賂防止には、サプライチェーンや販売網の単純化が有益です。具体的には、業務運営において重要性の低い第三者の排除、複雑な購買・販売プロセスの簡略化、社外文書書式の統一化により、賄賂が潜む可能性のある場所を取り除くことができます。

痕跡がない賄賂の特定

サプライヤー、ベンダー、第三者の代理人を選定するための入札やRFP(Request for proposal、見積・提案依頼)プロセスにおける優遇措置や操作は、ほとんど痕跡を残さない賄賂の温床となることがあります。さらに、以下の取引についても同様の可能性があります。

  • ギフト、贈答品
  • 材料、機器、施設、サービスの利用
  • 送迎や歓待
  • 雇用の提案
  • 奨学金や教育手当

また、賄賂は、現・旧外国政府の役人やその家族に関連する第三者への業務発注という形で行われる場合もあります。特に当該第三者が適格でない、サービスを提供できない、あるいは最低入札価格や見積額を提出していない場合などに該当します。こうした種類の賄賂はどこにも痕跡を残さないことが多いため、発見することは極めて困難です。ほとんどの場合、こうした賄賂を発見する唯一の方法は誰かがそれに気付き、適切な人物に報告することです。

どう備えるか?

賄賂を探し出す最も効果的な方法は、賄賂とは何か、そしてどこを調査すればよいかを理解したうえで、贈収賄・汚職防止のための包括的コンプライアンスプログラムを実施することです。ただし、同じプログラムがすべての企業に有効という訳ではありません。法令遵守プログラムは、各企業のリスク・プロファイルや資源に合わせてカスタマイズする必要があるでしょう。

賄賂防止に向けた積極的な方法を取ることで、どんなに賄賂が頻発しやすい場においてもその発生率を劇的に減少させることができます。賄賂とは実に様々な場所に存在するがゆえに、いかなる場所に潜んでいようとも網羅的にカバーする包括的コンプライアンスプログラムが、重要な機能を果たすのです。

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