2014年M&A見通し調査レポート

2014年M&A見通し調査レポート

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2014年復調の兆しをみせる米国M&A取引活動

序文

昨年は、企業幹部にとって景気回復を予想させる一年でした。ダウ・ジョーンズ指数は15,000ポイントを超え、企業は記録的なペースでIPOを行い、ヨーロッパの情勢も安定したように見られました。しかしながらベライゾン・コミュニケーションズが、ボーダフォンとの合弁会社であるベライゾン・ワイヤレス株の45%を1,300億ドルで買収・完全子会社化するなど、大型案件があったにも関わらず、M&A市場は比較的静かでした。トムソン・ロイターによると、2013年1~9月の9ヶ月間における世界のM&A取引金額は2%上昇したものの、取引件数は13%減少しました。

取引件数については、今後の増加を示唆する要素がいくつかあります。企業は引き続き多額の現金を保有し、金利は歴史的な低さを留めています。にもかかわらず、連邦準備制度理事会の金融政策およびヘルスケア改革の導入への不安に加え、高止まりしている失業率が、アメリカのビジネス界を慎重にさせています。そこで弊社KPMGは、M&A市場の現状をより深く理解するため、雑誌「Mergers & Acquisition」と協力して1,000名を超すM&Aスペシャリスト(米企業、プライベートエクイティ企業、投資銀行勤務者)を対象とした調査を実施しました。

調査結果

M&A取引活動は堅調に推移する見込み

調査参加者は全般的に、ディール環境に対して比較的明るい見通しを持っている。回答者の約63%が、2014年に買収を行う予定であると回答した。

Q: 2014年のM&A取引活動の活発化にもっとも影響を及ぼす要素とは?

回答者の21%が2014年の買収予定は1件と回答し、16%は2件と回答。2014年に買収予定はないと回答したのはわずか16%に止まった。

自社および助言先クライアントが関与する取引数が増えると予想する理由を尋ねたところ、多くの回答者が、経済の回復基調、経済的な不安材料の減少、今までM&Aを控えていた企業の今後の活発化への期待、などを挙げている。一般製造業の経営企画担当役員は「経済状況の改善と不安要素の減少」を理由に、M&Aの増加を予定していると回答。またある投資銀行家は「来年(2014年)が今年(2013年)ほど悪くなることはありえない」ため、ディールは増加すると楽観視している。

来年(2014年)の取引活動を活発化させる要素はいくつかある。もっとも回答が多かったのは多額の内部留保金(25%)だった。その他の重要な要素には、新興国経済におけるビジネスチャンス(17%)が挙げられ、有利な条件での信用枠の取得(16%)、消費者マインドの回復(16%)、株式市場の回復(9%)と続いた。

弊社KPMG全米地区Transactions&Restructuring代表のDan Tiemann(以下、ティーマン)も、M&A市場は間もなく回復に向かうと見込み、「企業幹部たちは世界経済の回復基調や不安要素の減少により、安心感を得ている。多額の内部留保金と魅力的な投資機会は、米国企業の取引増加につながっていくだろう。」と語る。またPE担当National Sectorのリーダー、Marc Moyers(モイヤース)は、今後12~18ヶ月の間にPEバイヤーも活発化していくと予想し、「多くのPEファンドは多額の未投資資金を抱えており、おもに新興国市場や平均以上の成長が見込める分野での魅力的な投資機会を模索している。」と述べている。

成長が取引を牽引

今日、M&A当事者の取引意欲を促進する要因は何か?買収を行うおもな理由として回答は、好機(18%)、顧客層拡大(17%)、地理的拡大(17%)の順に続いた。

Q: 利益拡大やコスト削減のほかに、2014年にM&A取引を実施するおもな理由とは?

また多くの回答者が新製品の導入(9%)を回答した。過去2年でM&A取引の重点項目に変化があったか、という質問に対しては、コスト削減より成長に焦点を当てるようになったという回答が見られた。ある石油ガス会社幹部は、「非中核事業の売却から新規事業分野の拡大へシフト中」と答えた。

昨年は大型取引がいくつか実施されたが、これからはミドル・マーケットがもっとも活発になると見込まれ、回答者たちも取引規模は引き続き小規模に止まると予想している。

Q: 2014年における、貴社の買収案件ごとの予想平均企業価値は?

4分の3以上の回答者(77%)は、自社の行う取引価値は250百万ドル以下になると予想。さらに、12%の回答者は250百万~499百万ドルの間、わずか3%が10億~50億ドルの予定と回答した。弊社PrincipalそしてCorporate Finance & RestructuringのUSリーダーであるPhil Isom(以下、アイソム)は、今後も市場ではこうした小規模案件が大半を占めるだろうと予測し、その理由として「構造的な改善は見られるが、今の経済にはまだ不確実な要素が多く、こうした小規模取引の方が資金調達や統合が容易である。」と述べている。

株主価値の創出は極めて難しいプロセスだ。もっとも多くの回答者が取引成功に必要な要素として挙げたのは、統合計画の的確な実行だった(38%)。

Q: M&Aの成功にもっとも重要な要素は?

またその他の重要な要素として、正確な企業価値評価および取引価格(29%)や効果的なデュー・デリジェンス(20%)と続く。一般的な経済状況を重要とする回答は少数だった(10%)。

業界のトレンドおよび課題

M&Aプロフェッショナルが今後もっとも活発な動きが見られる業界と考えるのは、予想通りの業界だった。

Q: 2014年のM&A市場がもっとも活発と予想される上位2業界とは?1

もっとも回答が多かったのは、テクノロジー/メディア/通信(44%)で、僅差2位につけたのはヘルスケア/医薬品/生命科学(41%)だった。また回答者は金融サービス(28%)やエネルギー(27%)の分野でも、多くの買収が行われると見込んでいる。これに関してティーマンは「もっとも構造改革が進んだり、規制が多い業界に、最大の統合機会が訪れる。ヘルスケアや金融サービスに関する規制の増加および絶え間ない変更、石油・ガスの生産拡大、そして常に進化を続けるテクノロジー業界では多くの投資機会が作り出されるだろう。」と述べている。

M&Aに対する展望や重要課題は業界によって異なるが、一般的には企業価値評価の相違や適切な対象企業の不在等である。政府の監督下にある業界にとっては、不確かな規制環境もまた難題である。業界ごとの回答は、各業界に属する100名を超えるM&A担当幹部の回答をまとめたものである。

テクノロジー/メディア/電気通信

この分野でM&Aを促進するもっとも重要なトレンドには、コンバージング・テクノロジー(52%)、クラウド・コンピューティング(43%)、データ・アナリティクス(43%)、モビリティ(43%)、ソーシャルネットワーキング(20%)が挙げられた1。同業界の企業がM&Aを模索するおもな理由は、不足機能を補う買収、新製品強化(19%)、新規売上拡大領域への参入(18%)、テクノロジー・プラットフォーム拡大(14%)、顧客ベース拡大(14%)等だった。取引実行における最大の課題は、買い手と売り手間の企業価値評価の相違(51%)、適切な対象企業の不足(24%)、適切な対象企業特定の難しさ(23%)、買い手と対象会社間のポスト取引戦略に関するすり合せ問題(19%)1と続いた。

ヘルスケア/医薬品/生命科学

同業界に関してもっとも多かった答えは、予想通りに患者保護並びに医療費負担適正化法3への対応で、回答の73%を集めた。その他には、中核事業の統合や競争への対応(61%)、製品・サービスの拡大(22%)、地理的拡大(17%)が挙げられた 。またこの業界の一般的な課題には、不確かな規制環境(62%)、買い手と売り手間の企業価値評価の相違(38%)、将来の業績予測不可能(37%)、適切な対象企業特定の難しさ(27%)4が挙った。オンライン保険市場「エクスチェンジ=取引所」5に関する今後の対応について、同業界M&A幹部の38%は不明、30%は企業ベースの健康保険を維持する予定、24%は変更予定はなし、8%が可能な限り迅速に従業員の「エクスチェンジ」利用へ移行する予定、と回答した。

金融サービス

金融サービスにおけるもっとも重要なトレンドとして挙がったのは、中核事業同士や競合企業との統合(48%)だった。次に、大規模企業に有利となる規制の増加(42%)、地理的拡大(27%)、技術的進歩(25%)、製品およびサービスの拡大(23%)と続いた。同業界にとっての課題には、不確かな規制環境(57%)、買い手と売り手間の企業価値評価の相違(34%)、将来の業績予測不可能(34%)、適切な対象企業特定の難しさ(32%)等だった。また、金融サービス幹部がもっとも魅力的な分野として挙げたのは、金融テクノロジー(20%)、銀行(18%)、スペシャルティ・ファイナンス(16%)、保険(16%)だった4。

エネルギー/石油・ガス

石油・ガス業界に見られる重要なトレンドには、水圧破砕を含む新技術(52%)、地理的拡大(35%)、製品・サービスの拡大(18%)、顧客拡大(13%)等が挙げられ、当事者にとっての最大の課題としては、不確かな規制環境(38%)、買い手と売り手間の企業価値評価の相違(37%)、不安定なエネルギー価格(36%)、将来の業績予測不可能(28%)が挙がった。

コンシューマーマーケット

この業界が挙げた買収活動を牽引するおもな要因は、中核事業同士や競合企業との統合(62%)、製品・サービスの拡大(40%)、地理的拡大(31%)、顧客拡大(30%)4だった。売却の誘因は、非中核事業を売却する機会(62%)、好調な事業を現金化する機会(44%)、不採算事業を売却する機会(35%)4と回答。また最大の課題には、買い手と売り手間の企業価値評価の相違(53%)、将来の業績の予測不可能性(40%)、適切な対象企業特定の難しさ(32%)、買い手と対象会社間の買収後戦略に関するすり合わせ(20%)が挙がった。

一般製造業

一般製造業のトレンドとして、市場アクセス(44%)、コスト削減(43%)、サプライヤー・ベースの統合(38%)、技術的進歩(28%)が挙がった4。売却を誘発するものとしては、非中核事業を売却する機会(69%)、不採算事業を売却する機会(38%)、好調な事業を現金化する機会(35%)が挙げられた4。取引実行におけるもっとも一般的な課題としては買い手と売り手間の企業価値評価の相違(59%)、将来の業績の予測不可能性(42%)、適切な対象企業の特定(34%)、買い手と対象会社間の買収後戦略に関するすり合わせ(19%)と続いた。

米国の牽引

Q: 2014年M&A市場でもっとも活発に取引が行われると思われる、上位2地域または国とは?

もっとも多くの回答者(83%)が、米国および北米がもっとも盛んな取引活動地域になると予想。

M&Aの実行が多いと予想されるその他の地域には、西欧(29%)、中国(29%)、アジア(中国とインドを除く)(15%)が挙がった6

アイソムは「近年のハイリスク投資環境において、北米は比較的健全な財政状態と成長率を保つことで収益性の高い投資先とみなされ、欧州の債務危機は多くの機会を創出している。そして、成長を追い求める人々が常に興味を示すのは新興国市場だ。」と述べている。

デューデリジェンスおよび機会の不在

回答者にとってのデューデリジェンスにおける最大の課題に挙ったのは、将来の売上げの変動性評価(34%)だった。その他重要な課題には、対象企業の利益の質の評価(19%)、対象企業の資産評価(11%)、コストシナジー分析(9%)、対象企業の社風評価(9%)が含まれた。

弊社M&A TaxのリーダーLisa Madden(マッデン)は、税金関連の問題もできるだけ早い段階で検討する必要があると助言する。「どの取引においても税金関連の分析は重要です。税金は政府が新たな規制を発表するたびに変わるため、買い手も売り手も変更が発生しそうな場合は、取引の構造や将来の収益性に及ぼす影響を把握しておく必要があります。」と述べる。大多数の回答者が取引の初段階で税金の影響を考慮すると回答(70%)したのに対し、残る26%は取引の主要な条件や構造が決定したのちに税金問題を検討すると回答。また、多数の回答者(39%)は、税金問題を考慮することにより、取引の内容がより複雑で大変ものになると回答した。

同様に、統合に関する問題も重要課題となるため、できるだけ早期の検討が必要になる。回答者にとって、もっとも重要な統合問題は社風および人事に関する問題(30%)で、製品およびサービスの統合/合理化(20%)、経理および財務システムの移行(12%)、顧客およびサプライヤーの統合/合理化(11%)と続いた。

2014年のM&A活動水準に関する予想は概して楽観的だが、回答者は既存の課題に対して強い警戒心を持っており、約3分の1(32%)の回答者が適切な機会の不足を取引活動を妨げる最大の要因に挙げている。取引を遅らせるその他の要因には、景気後退への懸念や成長率の鈍化している現在の環境(29%)、規制関連(18%)、社債発行の可能性およびコスト(12%)が挙がった。

政府の意思決定による影響

連邦準備制度の決定は、資金調達の判断にどのような影響を及ぼすか?40%の回答者が、連邦準備制度の政策は資金調達または借り換えの判断に「ある程度」の影響を及ぼすと回答し、続く32%のが、影響は「少い」あるいは無いと答えた。

金利の上昇も予想されるものの、M&Aに対しては明確な影響を及ぼさないと予見されている。半数以上(53%)がまだ何とも言えないと答えたのに対し、30%は金利上昇による取引への影響は無いとし、17%は取引件数が減少すると回答した。さらに、2014年のクレジット市場での資金調達に関わるアンケートでは、39%の回答者が未定、36%は予定有り、19%は予定無し、と回答した。

興味深いことに、ほぼ半数の回答者(50%)が財政支出の削減によるM&Aへの影響はないと考えている。財政支出の削減により買収取引が増加するという回答者と、減少するという回答者の割合はどちらも9%だった。

Q: 連邦準備制度の金融政策が資金調達や借り換えに関する判断に及ぼす影響は?(五者択一)

コーポレート・バイヤーがやや有利

2014年に有利なのはコーポレート・バイヤーかPEファンドかという問いに対し、コーポレート・バイヤーと答えたのは33%、PEファンドと答えたのは28%、どちらも有利でないという回答は19%だった。

回答者は、コーポレート・バイヤーが有利だと思う理由としてシナジー実現の能力があり、高い価格を支払うことができることを挙げた。また企業は多額の現金を保有しており、上昇した自社株を使用することも可能であることなども挙げた。

圧倒的多数の回答者(61%)が、売り手にとって望ましいエグジット戦略はストラテジック・バイヤーへの売却であると考えている。17%の回答者はフィナンシャル・バイヤーへの売却が望ましいと回答、12%はIPOが望ましいエグジット戦略とし、ほかに11%の回答者が借り換えあるいは社債発行が望ましいと答えた。

Q: 2014年に有利なのはコーポレート・バイヤーかPEファンドか?

Q: 2014年におけるエグジット戦略としてもっとも望ましいのは?

結論

企業およびPEファンドは多額の投資可能資金を有し、各幹部は現在のM&A取引環境を比較的前向きに受け止めていることが窺い知れます。金利は低く、米国経済は回復に向かい、欧州の債務危機といったグローバルな問題も解消されつつあります。こうした状況下、2013年のM&A市場は期待されたほどの動きはなかったものの、弊社の調査参加者たちは2014年の取引数は増加すると予想し、また買収を通じた成長機会を模索する予定であると回答しています。但し、M&A市場が回復しても買収企業には対象企業の不安定な収入源や収入および資産の質を客観的に評価するデューデリジェンスの課題が残ります。これらM&Aを利害関係者の価値増大につなげるためには、しっかりとしたデュー・デリジェンスと統合プロセスが重要になります。

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1. 複数回答可

2. 原文ではDiversified Industrials:(自動車、化学、重工業等を含む、一般製造業)

3. 正式名称The Patient Protection and Affordable Care Act (PPCAC)

4. 複数回答可

5. 2013年10月1日にオバマ大統領の医療保険改革法に基づき創設

6. 複数回答可

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