移転価格税制の施行決定と労働者保護法の改正案の動向

タイニューズレター - 11月22日に、移転価格税制の関連規定が歳入法の修正という形で官報(Royal Gazette)にて公告されました。これにより、2019年1月1日開始事業年度以降、年間売上が2億バーツ以上の法人は移転価格文書の作成・保管が要求されることとなります。

11月22日に、移転価格税制の関連規定が歳入法の修正という形で官報にて公告されました。

また、9月20日に退職給付債務に影響を及ぼす法定解雇金の引き上げを含む労働者保護法の改正案の骨子が国民立法議会にて承認されました。これについては、施行時期は未定です。今後、国民立法議会の検討委員会にて更なる審議が行われることとなります。

1. 移転価格税制の条文

歳入法に以下の移転価格税制の関連規定が追加されました。


歳入法 第71条の2(1)

関連者間取引について、納税者が独立した第三者との取引において適用されるであろう、商業上および金融上の条件と乖離した条件で取引を行っていることが税務調査で発見された場合、税務調査官は、納税者の課税所得を独立企業間取引において獲得したであろう金額に更正する権限を有する。


歳入法 第71条の2(2)

歳入法における「関連者」の定義を以下に定める。

  1. 一方の法人が、他方の法人の株式の総数または出資金額の50%以上を直接または間接に保有する関係にある法人
  2. 同一の者によってそれぞれの株式の総数または出資金額の50%以上を直接または間接に保有される関係にある法人
  3. 一方の法人が資本・経営・支配権の観点において、他方の法人に依存しなければならない関係にある法人で財務省令で定めるもの(実質支配関係にある法人)


歳入法 第71条の2(3)

歳入法では、同条(1)に基づき、税務調査官が納税者の課税所得を更正した場合に、納税者に対して税金の還付申請を認める。納税者は法人税申告書の提出日から3年以内、もしくは税務調査官から更正通知を受けた日から60日以内に税金の還付を申請することができる。

歳入法 第71条の3(1)

歳入法第71条の2(2)に規定する関連者を有する法人は、関連者間取引の有無にかかわらず、歳入局長が定める書式(この書式はまだ公表されていない)に従って、その事業年度の関連者間取引の金額などの関連者間取引に関する情報を記載した付表を作成し、その事業年度終了日から150日以内(法人税申告書の提出期限内)に歳入局へ提出しなければならない。


歳入法 第71条の3(2)

タイ歳入局は、同条(1)に基づき関連者間取引に関する付表を提出した法人に対し、提出日から5年以内に、移転価格の算定・分析に必要な文書もしくは証憑の提出を求めることがある。提出を求められた納税者は、その通知を受けた日から60日以内に提出しなければならない。ただし、税務調査官はその裁量により、通知日から120日を超えない範囲でその提出期限を延長することができる。なお、納税者は、初回のリクエストに限り、180日以内の提出が認められる。


歳入法 第71条の3(3)

その事業年度の売上が2億バーツ未満の法人は、同条(1)(2)の対象外とする。


歳入法 第35条の3

相当の理由なく71条の3に定める書類を提出しない、あるいは提出した書類に不備がある場合には、20万バーツを超えない範囲で罰金を課す。

2. 労働者保護法の改正案

2018年9月20日に国民立法議会にて承認された労働者保護法の改正法案の骨子には、以下の内容が含まれます。

  • 勤続年数20年以上の場合の法定解雇金を最終給与の400日分へ引き上げ(現行法では、勤続年数10年以上の場合の最終給与の300日分の法定解雇金が最高)
  • 産前産後休暇の最大取得期間を現行法の90日から98日(うち45日間は有給)へ拡大
  • 以下の場合には、雇用主が年率15%の遅延利息を支払わなければならない
    • 解雇終了日に支払うと取り決めていた雇用終了日までの賃金が未払いの場合
    • 一時休業中に賃金が未払いの場合 等
  • 雇用主の変更に関する規定を明確化
    “雇用主の変更に際しては、従業員の同意を必要とし、従業員は前雇用主の下で得ていた権利と同等の権利を与えられるものとする、すなわち、新雇用者は、従業員に対する全ての権利と義務を引き継ぐものとする”

KPMGのコメント

2015年5月に移転価格税制の骨子が閣議承認されてから3年半の期間を要しましたが、ようやくタイでも移転価格税制が施行され、2019年1月1日開始事業年度以降、年間売上が2億バーツ以上の法人は移転価格文書の作成・保管が要求されることとなります。

また、昨年の8月に閣議承認された法定解雇金の引き上げについては、今後、国民立法議会の検討委員会にて更なる審議が行われることになっており、昨年同様、施行時期が未定の状態です。この改正案が決算日前までに法施行された場合には、その決算期の退職給付債務の計上に際して年金数理計算の再計算が必要となるため、引き続き今後の動向に注意が必要となります。

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