移転価格税制に関するアップデート
タイニューズレター - 2019年1月1日以降に開始する事業年度が移転価格税制に関する法案の適用対象初年度となり、タイにおける移転価格税制への対応が義務化されます。
2019年1月1日以降に開始する事業年度が移転価格税制に関する法案の適用対象初年度となり、タイにおける移転価格税制への対応が義務化されます。
今回議会承認された法案は、2018年6月に提出された法案から、いくつか変更がありました。
重要なポイントは以下の通りです。
- その事業年度の関連者間取引の金額等、関連者間取引に関する情報を記載した付表の提出が義務付けられる企業の売上基準が、年間売上3,000万バーツから2憶バーツに引き上げられました。当該関連者間取引に関する付表は法人税申告書(PND.50)に添付する必要があるため、提出期限はその事業年度終了日から150日以内です。
- 税務調査官は、移転価格の算定・分析に必要な文書(いわゆる「移転価格文書またはローカルファイル」)の提出を求めることができ、提出を求められた企業は原則60日以内に提出しなければなりませんが、当該対象企業の年間売上基準が、上記同様、年間売上2憶バーツ以上の企業とされました。
- 納税者が税務調査官から移転価格文書の提出を求められた場合の提出期限が、初回のリクエストに限り、通知を受けた日から180日以内に延長されました。
今回議会承認された移転価格税制に関する法律は、国王による署名がされた後、タイ国官報(Royal Gazette)へ公告されます。
KPMGのコメント
本法律により、2019年度より、2憶バーツ以上の売上基準を超える企業は、関連者間取引に関する付表の提出および税務調査官から求められた場合の移転価格文書の提出が義務づけられることになりました。今回の国民立法議会での承認に際して変更があった内容をまとめると、以下のとおりとなります。
移転価格税制の概要
変更前(2018年6月) | 変更後(2018年9月) | |
---|---|---|
開始年度 | 2019年1月1日以降開始年度 | 変更なし |
対象法人 | その事業年度の売上(P/L年間売上)が3千万バーツ以上の法人 | その事業年度の売上(P/L年間売上)が2億バーツ以上の法人 |
義務化されるもの |
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罰則 | 関連者間取引に関する付表や移転価格文書を期日までに提出しない、あるいは提出した書類に不備がある場合には、20万バーツを超えない範囲で罰金を課される | 変更なし |
移転価格調査の時効 | その事業年度の関連者取引に関する付表が提出された日(法人税申告書の提出日)から5年間 | 変更なし |
移転価格税制の対象となることが明らかな企業は、対象初年度の関連者間取引に関する付表や移転価格文書の準備をスムーズに行うため、事前に新法に準拠した移転価格ポリシーの整理や見直し、関連者間取引の整理、現時点での移転価格リスクの有無の確認等を進めることをお薦め致します。これらの事前の対策は、新法に対する法令遵守の観点のみならず、将来の税務調査リスクへの対応策を検討する上でも有効な手段と考えられます。
上記に加え、タイ歳入局は、OECDによるBEPS行動計画No.13に沿って、マスターファイル(最終親会社が作成する事業概況報告書)の作成義務も検討している模様です。これはタイ国外に子会社を有するタイの上場企業などが対象になると考えられますが、今後は国際基準に向けた対応が求められるようになりそうです。