海外事業における日本企業の課題とバリューアップ実現のためのアプローチ | KPMG | JP
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海外事業における日本企業の課題とバリューアップ実現のためのアプローチ

海外事業における日本企業の課題とバリューアップ実現のためのアプローチ

本稿では、海外事業において日本企業が直面する課題を明らかにしつつ、課題への個別アプローチを超えた包括的なバリューアップアプローチについて解説します。

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日本企業の海外生産・海外売上高の比率は長年にわたり上昇し続けており、決算短信および有価証券報告書で国別セグメント情報を開示している日本企業の海外売上高比率は既に5割を超える状況です。

一方、海外売上高・海外収益への経営者の満足度は一貫して当初の期待を下回っており、海外事業を拡大しつつも厳しい競争に直面する日本企業の姿が浮かび上がります。

海外事業に期待されるバリューの源泉は、海外市場への参入による収益および利益の増大と、リスクを回避することによる海外事業基盤の防衛にあります。これら2つに資する施策を戦略的かつ計画的に策定・遂行することにより、海外事業のバリューを上昇させて行くことができると考えられます。

本稿は、海外事業において日本企業が直面する課題を明らかにしつつ、課題への個別アプローチを超えた包括的なバリューアップアプローチについて解説します。

なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • 海外市場への参入による収益および利益の増大と、リスク回避による海外事業基盤の防衛という、海外事業にかかわるバリューの源泉たる2つの分野において、経営施策を戦略的かつ計画的に策定・遂行することで、海外事業のバリューを上昇させることが重要である。
  • 一方、「収益・利益の増大」と「事業基盤の防衛」の双方において、海外事業に特有の事情が存在し、課題解決を難しくしている。企業はその解決に膨大なコストを求められている。
  • そこで解決の鍵となるのが、日本本社と海外子会社との間の活発なコミュニケーションと、日本本社による積極的なサポートである。両者の対話と協働を通じて、日本本社が培ってきた経験やノウハウを海外現地の実態に適切に「フィット」させることで、海外事業の包括的なバリューアップが可能となる。

I. 日本企業による海外事業の拡大とその課題

1. 日本企業による海外事業の拡大

日本企業の海外生産・海外売上高比率が長年にわたり上昇し続けています。日本貿易振興機構が発表した『ジェトロ世界貿易投資報告』2017年版によれば、2016年の日本の対外直接投資は1,696億ドルとなり、2015年と比べ24.3%増、これまでの最高増加率であった2013年と比べても9%増となり過去最高増となりました。また、同報告によれば、2016年度の決算短信および有価証券報告書で所在地別セグメント情報を開示している日本企業の海外売上高比率は56.5%という高水準に達しているとのことです。この傾向は他の調査でも同様の結果として表れています。日本の中心的産業である製造業に関する国際協力銀行による『わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告』2017年度版によれば、日本の製造業企業の海外生産・売上高比率は、図表1で示すように過去20年にわたりほぼ一貫して右肩上がりを続けており、金融危機の影響を受けた2008年から2010年の前後ですら横ばいで推移しています。

図表1 日本企業の海外生産・売上高・収益比率の推移

※1(海外生産高)/(国内生業高+海外生産高)
※2(海外売上高)/(国内売上高+海外売上高)
※3(海外事業の営業利益)/(国内事業の営業利益+海外事業の営業利益)
※4各比率は、回答企業の申告値を単純平均したもの
出典:「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告-2017年度海外直接投資アンケート結果(第29回)~」株式会社国際協力銀行 2017年11月22日

なお同調査によれば、2017年度の海外生産・海外売上高比率は2016年度からやや低下してそれぞれ35.0%、38.5%となり、わが国製造業企業の「海外事業展開姿勢に一服感」が見られるとのことではありますが、「ものづくり大国」とも称されるわが国の製造業企業においても「海外生産・海外売上高比率は既に生産・収益全体の3分の1を超えている」というのが実状であることが見てとれます。

このように、国別セグメント情報を開示している日本企業の海外売上高比率が既に5割を超え、製造業に限っても3分の1を超える現状において、今後日本企業は海外のどこで事業展開を進めようとしているのでしょうか。この点については、上記の国際協力銀行の調査が詳細な結果を発表しています。今後10年程度を見据えた長期的有望国は、1位インド、2位中国、3位ベトナム、4位インドネシア、5位タイとなっており、2010年以降はインドが連続して1位を維持する結果となっています。また6位以降は米国、ミャンマー、メキシコ、ブラジル、フィリピンと続いています。ただし、米国・メキシコ両国については、トランプ政権の通商産業政策に対して企業の懸念が見られるとしています。なお同調査の中期的有望国については、1位の中国以下、インド、ベトナム、タイ、インドネシア、米国、メキシコ、フィリピン、ミャンマー、ブラジルの順でトップ10ヵ国が並んでおり、長期的有望国とほぼ同様の結果となっていることがわかります。

これらの結果から、日本企業は今後、中国、インドおよびASEANを含むアジア地域を中心に海外事業展開を進めていくであろうことが理解できます。

2. 日本企業の海外事業の課題

ここまで日本企業による海外事業拡大の現状と今後の見通しを見てきました。一方で、現状あるいは今後の課題としてはどのようなものがあるのでしょうか。これについては定量的な調査結果は限られるものの、上記の国際協力銀行の調査が非常に重要な根源的課題に関する示唆を与えてくれます。この調査によれば、図表2で示すように海外売上高・収益に対する日本の製造業企業の経営者の満足度は、一貫して「やや不十分」と「どちらともいえない(当初目標通り)」の間(5段階評価の結果としては「どちらともいえない(当初目標通り)」の3を下回る2.5付近)を横ばいで推移し続けています。つまり、日本企業のビジネスにおける海外事業の占める割合は拡大を続けている中、企業経営者はその収益結果を「当初の期待を下回る」と受け止め、満足していない状況にあります。

図表2 日本企業の海外売上高・収益の満足度評価

実績
年度
2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度
売上高 2.63
(▲0.01)
2.71
(+0.08)
2.66
(▲0.05)
2.56
(▲0.10)
2.67
(+0.11)
収益 2.56
(+0.02)
2.65
(+0.09)
2.62
(▲0.03)
2.61
(▲0.01)
2.65
(+0.04)

(注1)進出先地域・国ごとの評価点を単純平均したもの。

(注2)( )内の数値は、前回の評価点からの増減。

出典:「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告-2017年度 海外直接投資アンケート結果(第29回)-」株式会社国際協力銀行 2017年11月22日

同じ調査の結果に、海外事業の収益が不十分である理由として、中国・インド・ASEANを含むアジア、北米およびヨーロッパとすべての地域において「他社との厳しい競合」が筆頭の理由としてあげられてます。また、調査結果としては表れていないものの、そもそも「当初目標」の設定が高すぎたのではないか、という可能性も考えられます。KPMGが世界のCEOを対象に行った「グローバルCEO調査2017」によれば、日本のCEOの78%が「自身の判断基準となるデータの完全性に懸念がある」としており、不完全なデータにもとづいた目標設定が行われていた可能性も考えられます。

いずれにしても日本企業にとって海外事業の占める割合は大きくなる、あるいは既に十分大きくなっている一方で、その海外事業は世界各地で厳しい競争環境に影響を受けた結果、収益面において経営者の期待に応えらえられていない、すなわち海外事業が本来期待されたバリューを発揮できていないという、非常に残念かつ厳しい現実が浮かび上がってきます。

II. 海外事業のバリューの源泉と個別課題へのアプローチの難しさ

1. 海外事業にかかわるバリューの2つの源泉

では海外事業にかかわるバリューの源泉は何でしょうか。図表3で示すようにシンプルに2つの分野に分けられると考えられます。

図表3 海外事業にかかわるバリューの2つの源泉

1つ目の分野は、海外市場への参入による収益および利益の増大であり、もう1つは各国の規制を遵守し、企業のコンプライアンスおよびガバナンスリスクを回避することにより海外事業の基盤を守る、あるいは棄損させないことです。本来的には、これらの2つに資する施策を戦略的かつ計画的に策定・遂行することにより、海外事業のバリューを上昇させていくことができる訳ですが、実際に海外事業を運営する現地法人幹部や日本本社経営陣の実務上の悩みは、シンプルとは程遠い多種多様なものであると言えます。

海外子会社経営においては、「現地法人の経営戦略は、グループ全体の経営戦略・中期経営計画と整合性が取れているか」、「計画上の目標は達成可能か」といった経営戦略上の課題、あるいは「現地のオペレーションは十分効率化されているか」、「事業パートナーのパフォーマンスは期待通りか」といった事業オペレーション上の課題、さらには「現地のITシステムの機能に不足は無いか」、「ITシステムに脆弱性は無いか」といったIT関連の課題から、「現地から報告される財務情報の正確性に問題は無いか」、「現地における税務は十分効率化されているか」といった財務・税務関連の課題、果ては「報告・承認プロセスは現実に即した有効なものか」、「出向者はきちんとローカルの管理ができているのか」といった組織ガバナンスの課題や、「現地の法令・規制を遵守できているか」、「不正が起きていないか」といったコンプライアンスの課題まで、尽きることが無い多種多様な悩みがあります。

これらの多種多様な悩みは、本来、先ほど挙げた「海外事業にかかわるバリューの2つの源泉」に鑑みれば、おおまかには「経営戦略、事業オペレーション、IT、財務・税務関連は、主に収益・利益の増大に直結する課題」、また「組織ガバナンスやコンプライアンスは、主に事業基盤の防衛に繋がる課題」であるといった整理をつけることができます。そしてそのような整理をすることで、自社の戦略・目標ならびに現在の状況をベースに、それぞれの悩みを課題として明確化して個別に対処して行くことも可能となります。しかし海外事業に特有の事情が、課題の明確化と解決に向けたアプローチを難しくしているのが実状であり、そうであるが故に海外事業に関する多種多様な悩みが尽きない状況ともなっています。

そこで、海外事業における「収益・利益増大に向けた取組み」と「事業基盤防衛に向けた取組み」の2つのケースを紹介しながら、課題の明確化と解決に向けたアプローチという一連のプロセスにおける海外事業特有の難しさを考察します。

2. 収益・利益増大に向けた取組みにおける困難

まず、「海外事業における収益・利益増大に向けた取組み」のケースとして、事業環境の変化に伴う複数の海外子会社の事業再編を挙げます。
これまで日本企業が海外子会社を設立してきた中国やASEAN地域では、担当する機能や製品毎に複数の海外子会社が設立されているケースが多く、事業環境の変化に対応して国内で事業再編が行われるタイミングで、これらの海外子会社の整理・統合が行われることが多々あります。
このような事業再編にあたっては、一般的なプロセスとして「プランニングフェーズ」から「実務遂行フェーズ」を経て「モニタリングフェーズ」へと移行して行きますが、特に海外子会社を対象とする場合には、この過程において国内とは異なる課題が出てくることが多く、海外事業における課題の明確化と解決に向けたアプローチの難しさとなります。
たとえば上記プロセスの第1段階であるプランニングフェーズにおいては、必要な情報収集や実態把握の難しさに直面することがあります。
具体的には、日本人スタッフのキャパシティ(管理能力・言語・人員数等)の問題により、海外子会社と日本本社との間で必要な情報入手に関する連携が不足したり、あるいは財務・会計・税務等に関する実務のほとんどを現地スタッフが担っているがために、海外子会社の実態が把握しきれなかったりする可能性があります。
特に、日本と制度や慣行が異なる分野については、正確な情報の把握が難しく、結果として限定的な情報にもとづいたプランニングを行わざるを得ない状況にも繋がります。
また、プランニング後の実務遂行フェーズにおいては、日本からの出向者とローカルマネジメントのコミュニケーション不足や、合弁パートナーとの関係性のために、事業再編の意図が事業売却やリストラであるかのように誤って伝達され、現地オペレーションが混乱したり、合弁パートナーに頼っていた取引関係に悪影響が出たりすることもあります。
そしてモニタリングフェーズに至っても、日本本社に対するレポーティング体制が不十分であったり、主要なKPIに関する認識が日本本社と海外子会社で十分共有されていなかったりするがために、モニタリングの精度が低下し事業再編の効果が十分に得られないという結果に終わることもあります。
このように、海外子会社を対象に事業再編を行う場合ひとつをとってみても、海外事業であるがゆえの課題があり、そうした課題を1つひとつ丁寧に乗り越えて行くことが求められることになります。

3. 事業基盤防衛に向けた取組みにおける困難

次に、「海外事業における事業基盤防衛に向けた取組み」のケースとして、海外子会社における贈収賄防止のためのコンプライアンス体制の構築を紹介します。

日本企業が多く海外事業を展開するアジア・ASEAN地域をはじめとする新興国では、贈収賄が商慣行として今なお根強く残り、現地での事業獲得や許認可の取得において公務員への利益供与が求められる場面が多々あります。贈収賄については、既に経済協力開発機構(OECD)が「外国公務員贈賄防止条約」を採択し、日本でも不正競争防止法において外国公務員への贈賄禁止が明確に規定されています。実際、海外事業展開に伴い現地公務員への贈賄・不正な利益提供を行ったことで、日本企業およびその役員が摘発された事例も生じています。また日本の不正競争防止法のみならず、米国の海外腐敗行為防止法 (FCPA)による各国企業の摘発も後を絶たず、日本企業が米国法であるFCPAの規定に違反したことによって、結果として巨額の制裁金を科されるケースも多数発生しているのが現実です。

すなわち、外国公務員への贈賄により摘発されることは、海外事業のみならず自社の存続自体にかかわるリスクであると言っても過言ではなく、経営トップ主導の下、海外事業に対する実効性の高い監督・チェック体制をいかに構築し、実効性のある運用を行っていくかが問われています。

日本企業ではほとんどの場合、本社主導で海外事業のコンプライアンス体制の構築が図られますが、国内におけるコンプライアンス体制構築とは異なり、海外事業を対象とした途端に、当然ながら現地法令・規制へのローカル対応や現地語への翻訳が求められます。さらに、そもそも日本国内で整備していた内容が、日本の国内法の下で日本人にしか通用しない内容であったことをあらためて思い知らされることもしばしばあります。したがって、いざ海外で事業基盤防衛に向けた体制構築を行おうとしても、これまでの経験や実績がまったく通用せず、いちから情報収集を行い、1つひとつローカル対応を進めて行くという膨大な時間と労力を求められることになります。

III. 海外事業の課題への個別アプローチを超えた包括的なバリューアップ

1. 活発なコミュニケーションの重要性

上記の例で見てきたように、海外事業における各種課題へのアプローチは、海外事業特有の課題によって行く手を阻まれることがしばしばあります。そこで鍵となってくるのが、日本本社主導の活発なコミュニケーションによる、各種課題への包括的なアプローチです。

たとえば、「収益・利益の増大」と「事業基盤防衛」という2つの側面のいずれにおいても、課題の明確化と解決に向けたアプローチを行う際には、日本本社と海外子会社との間で、目指す方向性や現状認識の共有が欠かせません。もちろん、企業グループ全体としての経営戦略や中期経営計画の達成という面から、日本本社側の意向が重視されることは否定できませんが、海外子会社を取り巻く現地の事業環境や財務状況、ベンダーの良し悪し、人材の過不足、法令への対応状況等の様々な現地の実態は、実際には海外子会社側に情報があり、それらの詳細を正確に把握できていなければ、日本本社側も的確な判断・指示を行うことすらできないのだということを認識することが重要となります。

そもそも海外事業にかかわるコミュニケーション自体についても、「日本本社と海外子会社との課題に対する温度差や両者間の認識ギャップ」、また「日本からの出向者と現地スタッフの意識ギャップ」がしばしば聞かれるところです。したがって、日本本社と海外子会社の情報共有はもちろん、共有した情報を分析することにより導き出される事業課題の真因やそれに対する重点施策などの具体的なアクションについてまで、両者間で同じ温度感をもって認識を共有することを目的としたコミュニケーションを、日本本社の側から働きかけていくことが重要となります。

2. 日本本社による積極的なサポートがもたらすもの

では、海外事業における課題解決の鍵となる活発なコミュニケーションを、日本本社がサポートしてゆくとは具体的にどうことなのでしょうか。

まず、海外事業における「収益・利益の増大」という局面で見てみます。海外事業全体の戦略策定を行う際、日本本社の経営方針や中期経営計画に沿った事業計画が前提となるのは必然です。しかし、海外事業においては米州、欧州、アジアといった地域毎の特性から域内各国毎の特性まで、それぞれの市場動向や競合状況など事業環境は多様なのが実態です。したがって、まず日本本社側からトップダウンで海外事業拡大などの大方針や目標を示しつつ、各国海外子会社から目標達成に向けた各国の状況に応じた戦略を提案してもらうという双方向のコミュニケーションが重要となります。それを受けたうえで日本本社が最終的に海外事業戦略の取り纏めを行うことにより、海外子会社の高度なコミットメントを伴う実現可能性の高い戦略を策定することが可能となります。実際に海外事業戦略を策定する際には、限られた時間内での策定作業となり、このような段階を丁寧に踏んでゆくことは難しいのが実情ですが、それでも、日本本社側のトップダウンだけで終わらせないということ、それと同時に海外子会社に各国の戦略を任せきりにしないというバランスが重要であり、日本本社が積極的にサポートしつつも日本本社と海外子会社が事業課題の詳細やそれに応じたアクションについて共通の認識に立って、互いに補完しあいながら戦略を策定・実行して行くということが海外事業のバリューアップに向けた有効なアプローチとなるのです。

このことは「事業基盤防衛」に向けた取組みにおいても同様です。海外事業で不正が発生する大きな原因の1つに「一人で何でもできる環境」が挙げられます。これは、特定の業務に長年にわたり携わっている海外子会社の従業員あるいは日本人を含む幹部が、管理権限の分散や適切なモニタリングの不備から、一人で何でもできてしまうがために、結果として多額の横領やベンダーとの癒着によるキックバックの受領など、様々な不正を生じさせるというリスクです。

こうしたリスクを予防・低減するには、まず現地の従業員・幹部に「海外子会社トップあるいは日本本社にいつも見られている」と認識させるようなモニタリング体勢を敷くことが重要となります。特に海外では言語や文化の違いから、出向している日本人トップによるモニタリングが十分ではなく、まして日本本社からは現地のオペレーションの実情はまったく見えないという状況もしばしば見受けられます。このような場合は、日本本社側が適切にサポートを提供しながら、既存の定期報告の様式を改訂し、コンプライアンスの観点にもとづく報告事項を盛り込むなど、日本本社のコンプライアンス重視の姿勢を海外子会社の従業員に示すことが重要です。そして、この定期報告に記載する事項の情報収集という形で、海外子会社の現場にまでモニタリングを行き渡らせることも可能となります。このように、日本本社が積極的にサポートすることにより、シンプルでありながら実効性のあるモニタリングの仕組みを導入し、海外事業にネガティブなインパクトを与えかねないリスクを回避することができます。

3. 海外事業の包括的なバリューアップ

日本本社が活発なコミュニケーションをベースに、積極的にサポートしつつ、現状についての正確な把握・分析を行い、その結果を日本本社経営陣と海外子会社経営陣との間で齟齬なく共有することで、個別課題の分類・整理が可能となり、さらには経営・事業全体における優先順位付けが可能となります。また、対話を通して、海外現地の市場動向や中長期的な競争環境の分析、今後の事業推進に向けた課題の明確化や、必要となる経営資源の特定などを両者で行ったうえで、日本本社がこれまで培ってきた経験とノウハウの一部を海外現地の実態に適切に「フィット」させることで、海外事業を「収益・利益の増大」と「事業基盤防衛」の両面から包括的にバリューアップさせることが可能となるのです。最終的には、海外子会社において自律的かつ継続的に施策が実行され、それを日本本社側がモニタリングしていくという海外事業のPDCAサイクルが成り立つようになります。このサイクル実現による海外事業のバリューアップは、日本本社による積極的なサポートにかかっているのです。

日本企業にとって海外事業展開はチャンスであると同時に、リスクでもあります。海外事業をいかにバリューアップさせることができるかが、今後の日本企業ひいては日本経済全体の発展の鍵と言えます。

執筆者

株式会社KPMG FAS
海外事業バリューアップ(Global Value-up Service: GVS)
マネージング・ディレクター 吉野 眞一
ディレクター 伊藤 俊介

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