税務部門の展望

ベンチマーク調査では、税務関連ソフトウェアの活用が限定的であるため、税務部門が効率性向上の機会を逸している可能性が示唆されています。

ベンチマーク調査では、税務関連ソフトウェアの活用が限定的であるため、税務部門が効率性向上の機会を逸している可能性が示唆されています。

効率的かつ効果的な税務部門には、説明責任が明確で、専任とシェアードサービスの適切な業務配分がされ、数々のプロセスやITシステム・ソフトウェアを最大限活用することにより一貫性や、品質、効率性が向上するといった仕組みを兼ね備えている特徴があります。では、現在企業は、将来の課題に立ち向える税務部門を作り上げるために、必要な人材、プロセス、IT技術への投資準備は行っているのでしょうか?

調査結果は、集中化と標準化の傾向が続くことを示唆しています。税務部門の人員を増やすことは、税務責任者の将来への投資において最優先課題であり、回答企業の半数が、税務部門の正規職員の人数が増えると見込んでいます。移転価格関連ソフトウェアが多くの企業で取り入れられている一方、税務関連ソフトウェアの活用が限定的であることは、税務部門の効率性向上の機会を逸している可能性を示唆しています。

 ビジネスパーソン

改善の優先度

回答企業の大部分が、税務部門の体制は、より集約化する傾向にあると回答しています。

人材配置と業務配分

回答企業の3分の1強が、税務部門の所属人員は今後5年間で変化なしと回答した一方で、回答企業の半数以上が、税務部門の正規職員の人数が増加すると回答しました(回答企業の5社に1社が、税務部門の所属人員が20%以上増加すると見込んでいます)。
回答企業の47%が、外部税務サービス専門家のリソースの一部共同利用がある程度増加するであろうと予測しています。また、同程度の割合の企業が移転価格や買収案件、財務シェアードサービスセンターのような主要機能について、専門的知識を集約した拠点(CoE)の活用を今後増加させていく予定です。
また、少数派ではあるものの、グローバル税務部門を遠隔地から支援するためにバーチャルな作業環境の活用や、人件費が相対的に安価なオフショア人材の活用も視野に入れているようです。また、各種人材確保のオプションに対し、利用の削減を検討している企業はほとんどありませんでした。


“バックオフィスの役割は、より少ないリソースでより多くのことをすることを常に求められてきましたが、それは税務においても同様です。昨今、多くの税務部門において、その役割の中で付加価値を生む部分をより強化するために、反復的処理の自動化及び標準的な税務コンプライアンス業務のアウトソーシングに取り組んでいるところが見受けられます。それが適切に行われれば、税務部門の専門家たちは解釈及び分析、意思決定及び戦略、自身の最も深いスキルの活用並びに事業へさらに付加価値を与えることに専念することができます。” Sean Bloodwell, Head of Global Compliance Management Services, KPMG International

税務テクノロジー

税務関連ソフトウェアの活用がいまだ限定的であることは、税務部門の効率性向上の機会を逸している可能性を示唆しています。コンプライアンス業務に使用するソフトウェアは、現在最も一般的に使用されているソフトウェアで、使用中の企業の12%が、現在のソフトウェアの変更を予定しており、未使用の企業の20%が、今後5年間でコンプライアンス業務に使用するソフトウェアを購入予定とのことです。

市販の汎用パッケージソフトである未払税金計算システムと文書管理システムは、上記ソフトウェアに次いで一般的に使用されており、回答企業の4分の1が導入しています。一方で、ソフトウェアの変更や利用を増大させていく点について積極的に検討している企業はほとんどありませんでした。また多くの企業では、税務調査支援、国際貿易、ワークフロー関連業務において、税務関連ソフトを使用していない状況です。

利用が大幅に増大すると見込まれるソフトウェアは、国別報告書作成に関するソフトウェアです。現状、わずか14%の企業しか利用しておらず、そのうち、ほんの一部の企業が、改訂のための投資を計画しています。しかし、38%の企業が今後5年間で国別報告書の作成ソフトウェアを購入する予定とのことでした。自社ERPシステムから得られる税務関連情報に対する満足度については、4分の1の企業の回答に曖昧さが残り、現在のERPシステムに満足していると回答したのは、全体の4分の1以下となりました。
今後5年間で、税務情報を提供するシステムに見込まれる技術的変化は以下の分野となります(ランク順)。

  1. 全社的財務ITシステムを税務業務へも活用
  2. 連結会計システムのデータを税務業務にも利用
  3. ITリソースを利用し、必要な税務データの把握
  4. 税務データウェアハウスの利用
  5. 税務特有のシステムへの投資
  6. 業績予想システムにおける税務データ分析機能及び総勘定元帳などの帳票システムにおける税務データ分析機能

”各国の税務当局も、組織が適切な人材をそろえ、維持し、目的達成を促す適切なテクノロジーを導入するという同様の課題に直面していますが、技術進歩や各国当局間でのベストプラクティスに関する情報共有などを通じて着実にキャパシティを拡大し、各国税務当局は目覚ましい進歩を成し遂げつつあります。FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)の透明性要件や国別報告書、自動情報交換条項のような情報共有要件及び各国における税制改正など、過去数年間における税務に係る様々な政策は、IT技術の発達に因るところが大きいと言えるのではないでしょうか。税務責任者としては、これら技術を自社の税務部門でも大いに活用し、時代に遅れをとらず、さらには価値の実現をも目指す必要があります。”Tim Gillis, Global Head of Tax Technology & Innovation, KPMG International

重要なポイント

  • 税務部門における業務集中化は今後も継続する傾向で、税務責任者におけるプロセス改善の最優先事項は、各種プロセスの標準化となっています。
  • 回答企業の半数以上が、税務部門在籍の正規職員数は増加すると回答しており、5社に1社は、20%以上の増加を予測しています。
  • 税務コンプライアンス業務用のソフトウェアが、現在最も広く一般的に使用されていますが、未使用の企業でも、5社に1社が今後5年間にソフトウェアの購入を検討しています。
  • 回答企業の多くが、今後5年間に国別報告書作成システムへの投資を予定しています。
  • 4分の1以下の税務責任者が、自社のシステムから取得した税務データの信ぴょう性について不安があると回答しています。
  • 税務責任者が、投資の優先分野としてあげた上位3項目は、人員増加、税務テクノロジー、プロセス最適化でした。

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