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仮想通貨に係る税制と今後

仮想通貨に係る税制と今後

本稿では、Fintechの代表的な分野として仮想通貨に焦点をあて、現行税制、ICOの税務上の取扱いについて解説します。

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現在IT技術を活用した様々なサービスや仕組みが誕生しており、特にブロックチェーン技術を活用した仮想通貨はFintech領域における代表的な存在となっています。仮想通貨に関する税制については、平成29年12月1日に国税庁から「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」が公表され、個人における仮想通貨を使用する場合の所得計算方法について、事例と共にその取扱いが示されています。

本稿ではFintechの代表的な分野として仮想通貨に焦点をあてて、現行税制に基づく課税上の取扱いについて触れながら、さらに、仮想通貨による資金調達手段の一つであるICOに関する税務上の取扱いは上記国税庁の公表内容だけでは解釈することができない点や、今後の仮想通貨マーケットの発展が期待されている中で、税制面からこれを支援する可能性についても言及していきます。

なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • 仮想通貨に関する所得税法上の課税関係
    • 雑所得として累進課税
    • 基本的な課税場面
  • 仮想通貨に関する法人税法上の課税関係
    • 評価損益の取扱い
    • ICOに関する課税上の取扱い
  • 仮想通貨に関する消費税法上の課税関係
  • 今後の仮想通貨に関する税制改正要望

I.仮想通貨に係る税制

1.資金決済法における法的位置づけ

2016年6月に資金決済に関する法律(以下「資金決済法」という)が改正され仮想通貨が法的に位置づけられ、同法第2条第5項において、仮想通貨とは、「物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代理の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く、次号において同じ)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」及び「不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの」と定義されています。

上記定義の通り、仮想通貨により物品の購入や役務提供を受けることができると同時に、仮想通貨それ自体を交換することも可能とされており、様々な使用場面が想定されることが分かります。

これらの使用場面に係る税務上の取扱いに関して、2018年8月1日現在、消費税及び所得税の取扱いが段階的に明示されているものの、法人税に関しては特別な定めがないため、企業会計基準委員会が2018年3月14日に公表した実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」、及び既存の法体系の枠組みの中で解釈することになると考えます。

2.所得税法上の取扱い

(1)原則、雑所得として累進課税
2017年9月に国税庁のタックスアンサー内で、ビットコインを使用することにより生じた利益は所得税の課税対象となり、原則として雑所得に区分されることが示されました※1

雑所得に該当する場合、仮想通貨の使用により生じた利益は不動産所得や事業所得等の他の所得と合算し、累進税率により最高45%(復興特別所得税及び住民税も考慮すると最高56%)の税率により課税されます。例えば、給与所得を有する個人が、仮想通貨の使用による利益を得た場合、給与所得と仮想通貨の利益を合算した所得金額の多寡に応じた税負担が生じます(図表1参照)。また、年末調整により所得税額が確定し納税も完了する給与所得者であれば、その雑所得の金額が20万円を超える場合には確定申告が必要となります。一方で、仮想通貨の使用により損失が生じた場合、雑所得は事業所得や不動産所得とは異なり、他の区分の所得金額と相殺(以下「損益通算」という)することができず、さらに、損失を繰り越して翌年以後の所得金額から控除する事も認められていません。したがって、仮想通貨の使用による利益は累進税率により課税されるにもかかわらず、その損失は所得税法上考慮される事なく課税関係が終了します。

 

※1 国税庁HP/タックスアンサー/No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係

図表1 給与所得を有する個人が、仮想通貨の使用による利益を得た場合の税負担

(2)基本的な課税場面
資金決済法における仮想通貨の定義の中に、物品を購入する取引だけではなく、売却や交換可能な財産的価値であることを規定していますので、平成29年12月1日に国税庁個人課税課より公表された「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」の中で、所得税法においてもそのような取引を「使用」の範囲と捉えて、個人の確定申告における具体的な所得計算方法が示されています。

例えば、Day1に2,000,000円で4ビットコインを取得し、Day2で155,000円の商品購入に0.3ビットコインを支払った場合、保有するビットコインの使用時点での商品価値と当該ビットコインの取得価額との差額である5,000円が所得金額となります。

155,000円 - (200万円/4BTC)× 0.3BTC = 5,000円
商品価額 - 1BTC当たり取得価額 × 支払ビットコイン=所得金額

 

(3)国外転出時課税制度は対象外
国外転出時課税制度とは、国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなること)をする時点で、1億円以上の有価証券等、未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引を所有等している場合には、一定の居住者に対して、国外転出の時に、対象資産の譲渡又は決済があったものとみなして、対象資産の含み益に対して所得税が課税される制度です。

仮想通貨は上記の有価証券等その他のいずれの資産にも該当しないことから、現行法令上は国外転出時課税制度の適用はないものと考えますが、今後の改正等に留意が必要です。

3.法人税法上の取扱い

(1)原則、評価損益は損金・益金不算入
法人税の課税所得は、法人税法で規定する「別段の定め」があるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算します。現在、仮想通貨独自の「別段の定め」はないことから、仮想通貨に係る税務処理は、会計処理及び既存の法体系の枠組みの中でその取扱いを検討する必要があります。

仮想通貨の会計処理に関しては、2018年3月14日に企業会計基準委員会より実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理に関する当面の取扱い」が公表されています。

例えば、活発な市場が存在する仮想通貨はその市場価格をもって時価として期末評価を行い、取得価額との差額は当期の損益として処理することが明記されていますが、税務上は、一定の事由に該当する場合を除き(例えば、売買目的有価証券や短期売買商品を保有する場合や、保有する棚卸資産が著しく陳腐化した場合等)、評価損益は損金及び益金の額に算入しないこととされているため、原則として期末保有仮想通貨について評価損益が認識されるべきではないと考えるのが基本的な考え方になると考えます。

 

(2)ICOに関する課税上の取扱いの検討
IPOという用語になぞらえて、ICO(Initial Coin Offering)という仮想通貨を用いた資金調達がありますが、上記の会計実務対応報告にはICOに係る会計処理は検討範囲に含まれておらず、会計及び税務のいずれにおいてもその取扱いが不明瞭となっており、実務において相談を受けるケースが多くあります。

上記(1)のとおり原則は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される必要がありますが、既存の法人税法の枠組みの中でのみ、その取扱いを考えた場合、大きく分けて、以下の3つの税務処理が想定されると考えております。

  1. 資本取引(発行時:資産と資本金が増加)
    法人税法における資本等取引とは「法人の資本金等の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(中略)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。」(法人税法第22条第5項)とされています。ここで、資本金等とは、法人の株主から出資を受けた資本金、資本剰余金、並びに企業組織再編が行われた場合に増加又は減少する資本金及び資本剰余金などが該当する旨が定められています。
    実際に行われているICOによるトークンの発行及び仮想通貨の取得は、取得した法人の資本金や資本剰余金の増加を伴う性質のものではなく、通常は資本取引には該当しないと考えられます。ただし、仮想通貨の調達見合いで投資家に発行する「トークン」を保有することで発行会社から収益の分配を受ける権利を有することとなる場合等、今後の法整備により、発行会社に対する有価証券として取り扱われる場合には、資本取引として取り扱われる可能性もあると考えます。
  2. 負債取引(発行時:資産と負債が増加)
    資金決済法に定める前払式支払手段に該当する場合には、負債取引として整理することも考えられます。例えば、仮想通貨を払い込むことで、発行会社のサービスが受けられるプリペイド型のICOで、払い込まれた仮想通貨の返済時期や金額、実質的に弁済義務が生じる旨が定められていると解釈される場合には、負債取引として整理する余地があると考えられます。
  3. 収益取引(発行時:資産と収益が計上)
    現行法人税法上は、仮想通貨に関する「別段の定め」が設けられていないことから、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものと考えられ、ICOが上記のいずれにも該当せず会計上の収益として取り扱われる場合には、税務上も益金計上すべきと考えます。

 

(3)海外でのICOはタックスヘイブン対策税制の検討も
日本国内での法的制約の観点から、国内でのICOが見送られ、海外で法人を設立しICOを実行するケースが見受けられます。国によっては、ICOから生ずる収入は、ICO実施時のタイミングでは収益として認識されず、実際にICO実施企業による役務提供が行われた時点で初めて課税される国もあるため留意が必要と考えます。ただ、安易にそのような国でICOを目的とした法人を設立した場合に、その国がタックスヘイブン国(所得に対する税の負担が著しく低い国)であると、本邦のタックスヘイブン対策税制により、合算課税の対象となる可能性があるため、外国法人を用いたICOのストラクチャリングにあたっては、税務専門家も交えた慎重な判断が求められると考えます。

4.消費税法上は非課税取引

消費税は国内において事業者が事業として対価を得て行う取引について課税されますが、消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないものや、社会政策的見地から非課税取引として一定の取引には消費税を課さないという配慮がされています。この点、仮想通貨を売却した場合の消費税法上の取扱いについて、2017年6月30日以前は、上記の非課税取引のいずれにも該当しないことから課税取引として消費税が課されていましたが、資金決済法により仮想通貨が支払手段として法的に位置付けられたことに伴い、税制改正により2017年7月1日以後に行う仮想通貨の売却については、消費税が非課税とされました。また、支払った消費税の仕入税額控除額を算定する際に使われる「課税売上割合」の算定上、分母及び分子のいずれにも含めないという整理がされました。

II.仮想通貨に関する税制改正要望

1.雑所得による総合課税から申告分離課税へ

上記I.2.(1)でも述べた通り、仮想通貨を「使用」した場合は、原則として雑所得に区分され、その所得に対して最高45%の税率による累進税率により所得税が課税されます。また、雑所得の金額の計算上生じた損失は繰越控除が認められていません。

雑所得の区分には、累進税率による総合課税と、一定の税率による分離課税の2種類の課税方式があります。仮想通貨を含む通常の雑所得に関する課税は前者の方式ですが、先物取引と呼ばれる取引に係る所得には後者の方式が適用され、かつ、その年において損失が生じた場合には一定の要件の下で、その損失の金額を翌年以後3年以内の各年分の先物取引に係る雑所得等の金額から繰越控除することが認められています。

この分離課税が適用される「先物取引」の範囲は限定列挙されており、商品先物取引等、金融商品先物取引等、カバードワラントの差金等決済に該当する取引のみが対象となります。この点、仮想通貨はそのいずれにも該当しないことから、現行の先物取引の枠組みには含まれないこととなります。

そもそも先物取引に係る雑所得が導入された目的は、委託者保護の強化や監視・監督体制及び紛争処理体制の充実などを内容とする市場基盤の整備拡充が図られた上で、個人投資家のより一層の市場参加を通じて商品先物リスク・ヘッジ機能等を向上させ、ひいては法人投資家など幅広い投資家の参加を促していくことにあったことを踏まえますと※2、仮想通貨に関しても、我が国は世界に先駆けて資金決済法を改正し、仮想通貨取引の法的整備を行っていることから、税制面からもこれを支援する事で、仮想通貨マーケットへの更なる市場参加者の呼び込み等を促し、将来的な発展に寄与できると考えています。

具体的には、仮想通貨取引に係る雑所得の金額についても、先物取引と同様に分離課税方式を導入し、また、損失の繰越控除制度を設けることで、先物取引と同様の課税環境を整えることが考えられます。

とは言え、仮想通貨独自の税制を取り入れるには政策的に非常に長い期間が必要となり、また、今後様々な新しい利用状況が生じることが想定されるため、まずは現状の税制改正で対応できる範囲を目標に現行の課税制度が見直されることが期待されます。

 

※2 「DHCコンメンタール所得税法」 第一法規 武田 昌輔 監修

  現行の取扱い 改正要望
(1) 最高45%の税率による所得税の累進課税 20%の一定の税率による所得税の申告分離課税
(2) 損失の繰越控除不可 翌年以降3年間繰越控除

2.その他

(1)マイニングに係る費用収益対応の原則のあてはめ
マイニングでは、機材(マイニング装置)を動かす電気代等の費用と、報酬として得られる仮想通貨の収益の課税時期を合わせることが経済的な実態とも合っているため、暦年ベースとされている課税単位の例外として、マイニングに係る費用を収益の発生時まで繰り延べることが考えられます。

 

(2)仮想通貨同士の交換に係る課税時期の繰延べ
仮想通貨の「使用」には、仮想通貨同士の交換も含まれていますが、海外で取引を行う場合や、マイナーな仮想通貨の場合には、円相場がないため市場価格の把握が困難であるものも存在し、また仮想通貨での納税も認められていないことから、実務上、納税者において申告・納税の困難性が生じることや、課税当局側においても、同様の困難が生じるものと推測されます。そこで、一定の条件を付した上で、仮想通貨間の交換時においては損益を認識せずに、法定通貨への交換や決済手段としての利用するタイミング等、その円価額が明確になるタイミングまでその課税を繰り延べることが考えられます。

執筆者

KPMG税理士法人
FinTech
パートナー 渡邉 直人
アシスタントマネージャー 松浦 尚人

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