監査のビジネスモデルを変える次世代の監査技術

「ビジネステーマ解説2018」連載第21回 - 不正発見への社会的期待が高まる中、高度なIT技術を用い各専門家協働による次世代の監査技術について紹介する。

不正発見への社会的期待が高まる中、高度なIT技術を用い各専門家協働による次世代の監査技術について紹介する。

後を絶たない不正会計により、監査人による不正発見に対する社会の期待は日々高まっているとともに、とどまることのない技術の進化により、不正を発見する監査技術も劇的に変化しつつある。
あずさ監査法人は、高度なデータ分析、AI、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といった次世代の技術を監査実務に利用することを研究している。この中で、現在の主役は、データを分析して対象項目全体に対して検討を行う「精査的手法」というアプローチ。いままでは、技術的・時間的な制約から、対象項目全てを検討するのではなく、一部の項目を抽出して検討する「試査」によっていたが、対象項目全体をくまなく検討するこのアプローチは、可視化・統計などの技術を通じて、いままで発見できなかったリスク、異常項目を浮き彫りにすることを可能にした。これにより、監査人の経験と勘に頼っていた項目の抽出が、より網羅的かつ客観的となり、より高品質な監査業務の提供につながっている。

次世代監査技術:データ分析による可視化

次世代監査技術:データ分析による可視化

具体的な例としては、昨今の不正事例でも見られる海外子会社・ノンコアビジネスにおける不正を発見する一助となる全子会社を対象とした子会社データ分析があげられる。いままでは、金額的重要性を勘案したうえで、子会社を個別に分析するという手法が主流であり、子会社全てを深く分析することは時間的制約から困難な状況だった。しかしながら、全ての子会社データを取り込んだうえで可視化を行い、様々な視点で容易に分析することができる仕組みを取り入れることで、全体の傾向を把握し、他とは異なる特徴を持った子会社を特定できるというメリットがある。さらに全子会社の財務・非財務データを活用し、機械学習を行うことにより、財務数値の将来予測を行うということも将来的には可能となると考えられる。
これら次世代の監査技術の成功には、会計士の力だけではなく、IT専門家、データ分析者など、多様な専門家の知見が必要不可欠だ。監査は、いままで会計士による労働集約的なビジネスだったが、会計士のみでなく、各種専門家が協働し、また、高度なIT技術が必要となるビジネスへと変革していくだろう。

電波新聞 2018年8月29日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、電波新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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