海外企業のM&A成功に向けて | KPMG | JP
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海外企業のM&A成功に向けて

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「ビジネステーマ解説2018」連載第19回 - 海外企業のM&Aを成功に導くために検討すべきガバナンスの在り方について解説する。

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海外企業のM&Aに取り組む多くの企業が最初に悩むのは、ガバナンスである。買収先に対する出資比率や、日本側から送り込む取締役の数、権限規程等が検討の俎上に挙がる。こうした点が重要であることについては論を俟たないが、ガバナンスは本来、多面的であるはずだ。前述の契約や規則によるコントロールのみならず、買収先の経営幹部や従業員といった複数の階層との信頼関係に加え、その顧客や取引先、地元の業界団体・政府機関等とも良好な関係を築くこと、これが広い意味でガバナンスに大きく貢献する。健全な関係がなければ、どんな規則も空文化し、買収先に関する正確な情報が親会社に届かないことは自明であろう。しかし残念なことに、このようなガバナンスを構築するために多くの経営資源を投じている日本企業はまだ少ない。

海外子会社との多面的な関係(例)

一方で、単なる「交流の促進」に時間と労力を費やしたとしても信頼関係が培われないことは、経験者にはよく知られている。ビジネス上の信頼関係は、実際のビジネスや業務を通じて築くのが基本である。そのためには、親会社である日本企業の成長戦略や買収動機が、海外でも通用する説得力を有するものであることはもちろん、買収後に協同して取り組むビジネスや業務のアプローチが、合理的かつ効率的でなければならない。要はビジネスパートナーとして相応しい相手と見なされなければ信頼は得られないのである。阿吽の呼吸と言われる日本人にしかわからない不透明な意思決定プロセスや、担当者が変わればやり方が変わる標準化されていない業務手続き、目的が不明確なまま踏襲されている慣習等は、たとえ国内子会社の管理に支障は無くとも海外企業のガバナンス手法としては難がある。

阿吽の呼吸が通じる企業は海外には存在しない。しかし今後、海外市場で成長するために彼らの力が必要なのであれば、M&Aを契機として検討すべきはむしろ「国内仕様」になっている日本企業の既存の経営やガバナンスのあり方ではないだろうか。場合によっては、買収先の仕組みの方が海外市場の攻略には合理的かもしれない。経済合理性を追求し自らの変革も厭わない、グローバル企業としての柔軟な発想を持つことが海外企業のM&Aを成功に導く出発点となる。

執筆者

KPMG FAS
執行役員パートナー 中尾 哲也

電波新聞 2018年7月13日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、電波新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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