コーポレートガバナンス改革と資本生産性向上に向けた取組み

「ビジネステーマ解説2018」連載第12回 - リスクマネーの供給者として存在感を高めつつある機関投資家の信頼を勝ち取り、資本生産性を向上させるためのポイントについて解説する。

リスクマネーの供給者として存在感を高めつつある機関投資家の信頼を勝ち取り、資本生産性を向上させるためのポイントについて解説する。

持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目的としたコーポレートガバナンス改革は、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードが併存していることからも、機関投資家の存在を強く意識している。その背景にリスクマネーの供給者としての機関投資家の存在感の高まりがある。その機関投資家が日本企業に求めているのは中長期的な資本生産性の向上だ。

資本生産性を向上させるためには自己資本利益率(ROE)や投下資本利益率(ROIC)といった指標がそれぞれに対応する資本コストを中長期的に上回ることが必要である。しかしKPMGが企業と機関投資家に対して実施した調査によれば、資本生産性指標の活用や経営層における資本コストの意識が日本企業では依然として不足していると機関投資家は感じていることがうかがえる。

資本生産性向上に向けて取組みを強化した内容/強化を期待している内容(企業/機関投資家)

現在の事業環境は変化が速く、不確実性が高まる中で経営の舵取りはかつてないほど難しくなっている。それは経営のあらゆる側面においてリスクが高まっていることを指す。リスクの高まりは資本コストの上昇を通じて資本生産性の低下を招き、企業価値を毀損する。機関投資家はこのような事業環境を踏まえESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治))の観点からリスクを見極め、企業の収益機会について把握しようとしている。

機関投資家から信頼を獲得する上でも企業は自社を取り巻く収益機会やリスクについて把握し、持続的成長と中長期的な企業価値向上に向けてリスクテイクができるようにガバナンスを強化していく必要がある。そのために自社の資本コストを正しく認識し、資本生産性の向上に向けた取組みにつなげていくことが重要である。

執筆者

KPMGジャパン コーポレートガバナンス センター・オブ・エクセレンス
有限責任 あずさ監査法人
アドバイザリー本部 グローバル財務マネジメント
ディレクター
土屋 大輔

ビジネステーマ解説2018