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IFRS第9号がやってくる

IFRS第9号がやってくる

IFRSのヒント - IFRS第9号(2014年版)いよいよ本番年度です。すでに対策は万全でしょうか?新基準適用の最大の難関は財政状態・損益への影響懸念より、むしろ、開示の局面かもしれません。

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IFRSの適用現場から、実務のつれづれを語ります。

IFRS第9号の最終版(2014年版)が公表され早4年、12月決算会社にとってはこの第1四半期から、3月決算会社にとってもこの4月開始の進行年度から、いよいよIFRS第9号の最終版が強制適用となりました。

BS/PLが大きく変わる?

IFRS第9号に移行することで、BSやPLの見え方はIAS第39号下と大きく変わるのでしょうか?
もちろん個別に見れば大きく影響を受ける会社もあります。しかし、多くの事業会社にとっては、大きな影響をもたらさない可能性があります。

  • 金融資産の分類が変わる
    IFRSの金融商品会計では、金融商品は一定の要件で分類され、その分類ごとに決められた測定方法が適用されます。しかし、多くの事業会社ではそれほど複雑な金融商品を持っているわけではなく、重要な金融投資を行っているわけでもありません。そのため保有している金融資産に対して適用される測定方法がIAS第39号での方法と比べてあまり変わらないケースも多いようです。
    但し、いわゆる持合株式などIAS39の下では売却可能金融資産であったものはその会計処理が大きく変わります。株式は原則として純損益を通じて公正価値で測定(FVTPL)することになります。又は、その他の包括利益を通じて公正価値測定(FVOCI)を当初認識時に選択することも可能です。この場合IFRS第9号の下では売却した場合でもその売却損益を純損益に計上できません。
  • 貸倒引当金の引当モデルが変わる
    IFRS第9号では予想損失モデルが適用されます。この結果、IAS第39号の発生損失モデルに基づくより、より早いタイミングで、より多くの貸倒引当金の積み増しが、必要になるといわれています。
    しかしながら多くの事業会社にとってはこれが損益計算に与える影響は限定的と思われます。というのも、多くの事業会社にとって信用リスクの源泉は、主に比較的短期間で回収される営業債権等に限られているためです。予想損失モデルに変更されたからと言っていきなり引当金の額が増える会社はそれほど多くはないと考えられます。
  • ヘッジ会計が変わる
    IFRS第9号のもとではよりリスク管理に即したヘッジ会計の適用が可能となりました。これは、例えばコモディティ・デリバティブなどを使ってリスクヘッジを行っていた会社については朗報といえるでしょう。しかしながら大半の事業会社が行う「ヘッジ取引」とは、日本基準でいえば金利スワップの特例処理や為替予約の振当処理が適用されるような、デリバティブとヘッジ対象の条件が完全に合致しているような単純なものです。このような場合、IFRS第9号のヘッジ会計の適用により、よりヘッジ取引の実態を会計に反映できるようになるということもありません。
    一方、資金調達コストを圧縮するために外貨建で資金を調達し、これを金利通貨スワップで円転していたような場合は、IFRS第9号では金利通貨スワップに含まれる「通貨ベーシス」の影響を別途把握して処理することが求められるようになります。IAS第39号で行っていたように金利通貨スワップを全体としてヘッジ手段に指定すると、完全にスワップと借入の条件が一致していたとしてもヘッジの非有効が生じます。非有効を避けるためには、通貨ベーシス部分をヘッジのコストとして会計処理することが必要になります。このような資金調達をしている会社にとっては、IAS第39号の下でのヘッジ会計のほうが実は適用が簡単だったということも生じます。なおIFRS第9号移行後もIAS第39号のヘッジ会計を継続することは可能です。しかしこれはIFRSの既適用者だけが選択できる処理で、IFRS初度適用者には適用はありません。また、一度IFRS第9号のヘッジ会計を適用するとIAS第39号のヘッジ会計モデルに後戻りはできません。

問題の所在は?

少なくとも事業会社に限ってみれば、IFRS第9号による影響は、実はあまり懸念されないかもしれません。「大きな影響はない」と判断し、IFRS第9号の適用上の課題はほぼないと安心しているような感想を耳にすることもあります。
本当にそうでしょうか?

  • 今回貸倒引当金に関する会計が変わったことの一番大きな影響は、膨大な開示が求められるようになったことです。「予想信用損失モデル」の下で、どうやって信用損失を予想するかは各企業に任せられているため、どのようにモデルを適用しているかについての詳細な開示がIFRS第9号では必要とされています。しかし、一般的な事業会社はそもそもそれほどの信用リスクを抱えていませんし、したがって、例えば銀行で行われるような厳格な信用リスク管理も行っていません(行う必要もありません)。このため、開示要求事項のリストを見て「何をどう書けばいいのかわからない」「開示が作れない」という困難に直面する企業もあるようです。信用リスクに関する開示は「引当額は十分である」ことを示すためのものであり、「貸倒引当金の計上額が少ない=重要性がなく開示は不要」とならないのが難しいところです。確かに新基準が純損益に与える影響は限定的かもしれません。しかし、引当のロジックを新基準に準拠してきちんと整理しておかないと、開示を作るときになって、予想信用損失モデルの枠組みで自社の貸倒引当金の妥当性を説明できないという困難に陥る虞があります。
  • ヘッジ会計も膨大な開示が要求されることになります。リスク管理をどう行っていて、そのもとでどのようなヘッジを行っているかから始まり、ヘッジ手段がヘッジの目的をどのように達成しているか、今後ヘッジの非有効が顕在化する可能性はどの程度あるのか、といったことを説明するための定性的定量的な説明が要求されています。この開示はIFRSにおけるヘッジ会計のロジックを正しく理解していないと作成できません。「条件が一致している単純なヘッジしかしていないからきっと大丈夫」という思い込みだけでは解決できません。なお、IAS第39号のヘッジ会計モデルを継続適用する場合でも、IFRS第9号の導入により改訂されたIFRS第7号に基づく開示が要求されます。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部

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