新収益基準のインパクトと対応方法Part3 | KPMG | JP
close
Share with your friends

新収益基準のインパクトと対応方法Part3

新収益基準のインパクトと対応方法Part3

本稿では、クイックレビュー(簡易的な影響分析)を中心に新収益基準の対応を解説します。

関連するコンテンツ

平成30年3月30日、企業会計基準委員会(ASBJ)から、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準(以下、「基準」という)および企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、まとめて「新収益基準」という)が公表されました。新収益基準の対応には基本となる進め方があります。それは、最初にクイックレビュー(簡易的な影響分析のこと)を行い、新収益基準のインパクトをつかんだうえで、3つのフェーズ(分析フェーズ、設計フェーズ、導入フェーズ)に分けて進めるというものです。
本稿では、クイックレビューを中心に新収益基準の対応を解説します。

ポイント

  • 新収益基準の導入プロジェクトは、それぞれがユニークだが、プロジェクトの進め方には基本となるステップがある。
  • クイックレビューとは、企業が新収益基準を導入した場合の影響について、短期間に把握する手法である。
  • 新収益基準の導入は、企業の実態(とくに成果)をより適切に把握するチャンスになる。

I.導入ステップ

KPMGが米国や欧州において手掛けるIFRS15号やTopic606の導入プロジェクトでは、それぞれが異なる課題に直面し、進め方もそれぞれがユニークです。
なぜ、ユニークなのでしょうか。それは、この会計基準が顧客との「契約」をベースにしているからです。同じ業種・業態であっても契約の内容は様々です。加えて、企業の経営方針や営業戦略、値決めや契約の単位、販売から経理処理に至るまでの業務プロセス、そしてこれを支えるシステムのすべてが異なります。こう考えると、企業によりその進め方がユニークになるのは当然でしょう。
だからと言って、それぞれのプロジェクトが好き勝手に進めているわけではありません。これらのプロジェクトの進め方には基本となるステップがあります。それは、最初にクイックレビュー(簡易的な影響分析のこと)を行い、新収益基準のインパクトをつかんだうえで、3つのフェーズに分けて進めるというものです(図表1参照)。

図表1 導入ステップ

II.クイックレビュー

1.クイックレビュー概要

クイックレビューとは、企業が新収益基準を導入した場合の影響について、短期間で把握することを目的に行う調査のことです。クイックレビューで把握した事実に基づいて、企業が対応すべき課題の整理と重要性の評価、課題ごとに対応の方向性を検討し、対応に要する期間(できればコストも)を見積ります。
クイックレビューの結果、新収益基準の導入で大きな影響がないなら、大がかりな対応は必要ありません。ただその場合でも、クイックレビューの結果を監査人に説明しておく方が良いでしょう。クイックレビューで検討した内容に漏れや不足があるかもしれませんし、仮になかったとしても、企業と監査人とのコミュニケーションは重要です。

2.クイックレビューの成果物~提言書の記載方法

クイックレビューの成果物が「新収益基準の対応についての提言書」です。ここには、緊急に対応すべき事項、経営判断を仰ぐ項目や意思決定までの期限も記載します。いくら立派な提言書を作成しても、そのまま放っておいては意味がありません。次のアクションに繋げる必要があるのです。なお、新収益基準への特段の対応が必要ない場合でも、提言書の作成は必要です。提言書を作成し、報告することが、責任の明確化になるからです。
提言書には、まず調査の目的、方法、範囲といったものを記載します。次いで、新収益基準の導入で財務諸表にどのような影響があるか、新収益基準に対応するために業務プロセスやシステムをどのように見直す必要があるか、その方向性を示します。この記載にあたっては、(1)事業の観点(たとえば、企業が営むビジネスや組織の区分など)、(2)新収益基準の論点の観点(新収益基準の導入が、収益認識の金額や時期などに影響を与える可能性のあるもの。たとえば、契約の結合、契約の変更、変動対価など)、(3)取組み内容の観点(たとえば、業務プロセス(内部統制)やシステム、財務会計と管理会計など)の順番で書きます。
最後に、新収益基準の対応のために必要な体制、スケジュール、コストの概算を加えます。これを経営層に報告し、新収益基準の対応のためのプロジェクトについて了解をとるのです。

III.プロジェクトスケジュール

1.プロジェクトスケジュール~対応の考え方

海外の対応事例を参考にして、想定される標準期間は、分析フェーズで3ヵ月、設計フェーズで6ヵ月、そして導入フェーズで6ヵ月です。合計すると15ヵ月です。「なんだ、これくらいか」と、安心しないでください。これは、実際のプロジェクトの平均期間ではなく、あくまで(机上で想定する)一般論です。それでは、ここで標準的なプロジェクトスケジュールを視覚的に示しましょう(図表2参照)。

図表2 プロジェクトスケジュール

新収益基準のプロジェクトにもデットラインがあります。新収益基準は平成33年4月1日以降に開始する年度の期首から、連結決算と単体決算に適用されます。加えて、平成30年4月1日以降に開始する年度の期首から、または平成30年12月31日から平成31年3月30日の間に終了する年度末決算からこの会計基準を早期に適用することも可能です。
企業によって新収益基準への対応のデットラインは違うでしょう。ただ、対応にあたっての考え方は同じです。それは“逆算する”ことです。自分たちの企業が新収益基準への対応で何が必要になるか、対応すべき項目に優先順位をつけます。それに必要な期間はどれくらいか、を考える。そのうえでデットラインから逆算すれば、少なくともいつからスタートすべきかがみえてきます。

2.新収益基準の導入~企業が飛躍するために

新しい会計基準の導入というと、どうしても「対応」というイメージが先行します。“やらなければならない”という受け身の姿勢です。これは仕方がないかもしれません。
しかし、同じ対応であっても、発想を変えれば、見える景色は変わります。新収益基準の導入を機に、今までおかしいと感じていた商流を見直す。契約形態を考える。取れなかった情報を取れるようにする。管理会計のあり方、そして経営のあり方を振り返るチャンスと捉えるのです。会計基準は、企業の実態を表現する手段です。目的ではありません。
では、新収益基準を導入する目的とは何でしょうか。それは、企業の実態(とくに成果)をより適切に表現すること、これを通じて、経営者や管理者がより正しい経営判断ができるようにすることです。さらに、財務諸表を通じてその読者が企業について適切な理解をできるようにすることです。であるならば、新収益基準の導入は、今までの自分を振り返る機会になるはずです。新収益基準の導入を機に、多くの企業が飛躍の原動力を得ることを願っています。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
アカウンティングアドバイザリーサービス
マネージング・ディレクター 山本 浩二

このページに関連する会計トピック

会計トピック別に、解説記事やニュースなどの情報を紹介します。

このページに関連する会計基準

会計基準別に、解説記事やニュースなどの情報を紹介します。

お問合せ

 

RFP(提案書依頼)

 

送信