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新収益認識基準の解説

新収益認識基準の解説

本稿では、収益認識に関する主な論点について概観するとともに、基準導入を受けての2018年度税制改正のポイントについてもお知らせいたします。

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企業会計基準委員会(ASBJ)は2018年3月30日に、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」※1を公表しました。
本会計基準の開発の方針として、国内外の企業間における財務諸表の比較可能性の観点から、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下「IFRS第15号」という)の定めを基本的にすべて取り入れることとされています。この結果、収益の認識時期や収益の額等が、従来の取扱いから変更される可能性があります。ただし、適用上の課題に対応するために、個別項目に対して代替的な取扱いが定められています。
本稿では、収益認識の時期及び収益の額の算定に関する主な論点について、従来の日本基準及び日本基準における実務との比較を概観します。
また、本会計基準は、ASBJが2017年7月に公表した公開草案※2に寄せられた意見を踏まえて検討を行われ、公開草案の内容を一部修正したうえで公表されています。
本稿では、公開草案からの主な変更点についても説明します。最後に、会計基準に対応して行われた2018年度税制改正のポイントについてもお知らせいたします。
なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。


※1本稿では、企業会計基準第29号を収益認識会計基準、企業会計基準適用指針第30号を収益認識適用指針、また両者をあわせて本会計基準といいます。
※2企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」。

ポイント

  • 出荷基準、割賦販売、ポイント引当金の処理等の項目について、収益の認識時点が変更される可能性がある。ただし、出荷基準等、代替的な取扱いが定められている項目もある。
  • 変動対価、返品権付きの販売、本人と代理人の区分等の項目について、認識する収益の額が変更される可能性がある。
  • 公開草案からの主な変更点として、有償支給に係る代替的な取扱いが追加されている。企業は、支給品を買い戻す義務を負っているか否かを判断することが求められる。
  • 本会計基準は、2018年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から、又は2018年12月31日に終了する連結会計年度及び事業年度から2019年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から早期適用できる。
  • 本会計基準の導入に対応して、2018年度税制改正では法人税法における収益認識に関する規定が整備された。返品調整引当金および長期割賦販売の延払基準による収益認識の制度は、経過措置を設けたうえで廃止されることとなった。

I.本会計基準と従来の日本基準及び日本基準における実務との主な比較

1.収益の認識の時期

(1)履行義務の充足時点

本会計基準においては、企業が顧客に約束した財又はサービスを顧客に移転する(すなわち、顧客が当該財又はサービスに対する支配を獲得する)ことにより、履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識することとされています。

本会計基準では、財又はサービスに対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転することとなる要件に該当する場合には、一定の期間にわたり収益を認識することになり、要件に該当しない場合には、一時点(顧客に支配が移転した時点)で収益を認識することになります。


1.出荷基準等

企業会計原則においては、物品の販売に関して、実現主義の原則に従い、商品等の販売によって実現したものに限り収益を認識することとされています。従来の実務においては、売上高を実現主義の原則に従って計上するにあたり、出荷基準が幅広く用いられてきました。前述のとおり、本会計基準では、一定の期間にわたり収益を認識する要件に該当しない場合、一時点(顧客に支配が移転した時点)で収益を認識することになります。ただし、本会計基準では、商品又は製品の国内における販売を前提として、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間※3である場合には、財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものではないと考えられるため、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することも認めるとする代替的な取扱いが定められています。


2.割賦販売

従来は、割賦販売について、割賦金の回収期限の到来の日又は入金の日(割賦基準)により収益を認識することも認められていました。本会計基準においては、商品又は製品の販売時に収益を認識することとなる※4ため、割賦基準に基づく収益認識は認められないことになります。


3.工事契約及び受注制作ソフトウェア

従来の日本基準では、工事契約に関しては、工事の進捗部分について成果の確実性が認められる場合には、工事進行基準が適用されます。また、工期がごく短いものには、工事完成基準を適用できるとされています。
前述のとおり、本会計基準では、財又はサービスに対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転することとなる要件を満たす場合には、一定の期間にわたり収益を認識することになります。
ただし、工事契約及び受注制作のソフトウェアについて、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することを認める代替的な取扱いを定めています。


(2)特定の状況又は取引における取扱い

1.追加の財又はサービスを取得するオプションの付与(ポイント制度等)
従来の日本基準においては、一般的な定めはなく、実務上は、将来にポイントとの交換に要すると見込まれる費用を引当金として計上している処理が多いと考えられます。ポイント制度等において、当該ポイントが重要な権利を顧客に提供すると判断される場合、当該ポイント部分について履行義務として識別し、収益の計上を繰り延べることになります。この場合、顧客に付与するポイントについての引当金処理は認められないことになります。


※3国内における出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数(数日間程度の取引が多いものと考えられる)とされています。
※4契約に重要な金融要素がある場合には、対価の額に含まれる金利相当分の影響を調整する必要があります。

2.認識する収益の額

(1)取引価格に基づく収益の算定

本会計基準では、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(取引価格)に基づいて収益の額を算定することが求められます。


1.変動対価(リベート等)

従来の日本基準においては、一般的な定めはなく、例えば、売上リベートについては、支払の可能性が高いと判断された時点で収益の減額、又は販売費として計上されていることが多いと考えられます。
取引の対価に変動性のある金額が含まれる場合、その変動部分の額を見積って収益の額の算定に反映することが求められます。また、変動部分については、認識した収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、収益を認識することとされています。


(2)特定の状況又は取引における取扱い

1.返品権付きの販売
従来の実務においては、返品に重要性がある場合には、売上総利益相当額に基づき返品調整引当金が計上されていました。本会計基準においては、予想される返品部分に関しては、販売時に収益を認識せず、返金負債を認識することが求められます。返品調整引当金の計上は認められないことになります。


2.本人と代理人の区分(総額表示又は純額表示)

従来の日本基準においては、ソフトウェア取引については一定の定めが存在するものの、一般的な定めはありません。本会計基準においては、企業が認識すべき収益の額を決定するために、顧客への財又はサービスの提供における企業の役割(本人又は代理人)を判断し、企業が本人に該当する場合、総額で収益を認識し、企業が代理人に該当する場合、純額で収益を認識することになります。

II.公開草案からの主な変更点

本会計基準は、ASBJが2017年7月に公表した公開草案に寄せられた意見を踏まえて検討が行われ、公開草案の内容を一部修正したうえで公表されています。本会計基準の最終化にあたっては、本基準の定めに取り入れられている、IFRS第15号の定めが設けられた背景等が追加されたほか、文章表現について、全般的に見直しが行われています。また、寄せられた意見を踏まえて検討が行われたものの、代替的な取扱いを設けなかった項目に関する検討過程について、収益認識適用指針の結論の背景に追加されています。

以下では、公開草案からの主な変更点について説明します。

1.有償支給取引の取扱い(代替的な取扱いの定めの追加)

(1)公開草案に寄せられた意見

公開草案では、有償支給取引※5について、我が国に特有な取引等として設例が設けられていました。これに対し、有償支給取引については、支給品が譲渡された後の取引や契約の形態がさまざまであり、各取引の実態に応じた会計処理が求められるが、設例を設けることで画一的な会計処理が求められるとの誤解が生じるのではないかとの意見が寄せられました。そのため、公開草案で設けていた設例が削除され、収益認識適用指針の代替的な取扱いにおいて、有償支給に係る指針が追加されました。


(2)本会計基準の定め

有償支給取引の処理にあたっては、会計上、企業が当該支給品を買い戻す義務を負っているか否かを判断する必要があります。例えば、有償支給取引において、支給先によって加工された製品の全量を買い戻すことを支給品の譲渡時に約束している場合には、企業は当該支給品を買い戻す義務を負っていると考えられますが、その他の場合には、企業が支給品を買い戻す義務を負っているか否かの判断を取引の実態に応じて行う必要があります。
有償支給取引において、企業が支給品を買い戻す義務を負っていない場合には、当該支給品の消滅を認識することとなりますが、支給品の譲渡に係る収益と最終製品の販売に係る収益が二重に計上されることを避けるために、当該支給品の譲渡に係る収益は認識しないこととされています。
一方、企業が支給品を買い戻す義務を負っている場合には、支給先が当該支給品を指図する能力や当該支給品からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力が制限されているため、支給先は当該支給品に対する支配を獲得していないこととなります。この場合、企業は支給品の譲渡に係る収益を認識せず、当該支給品の消滅も認識しないこととなります。ただし、支給先に譲渡された支給品は、物理的には支給先において在庫管理が行われているため、企業による在庫管理に関して実務上の困難さがある点が指摘されました。この点を踏まえ、個別財務諸表においては、支給品の譲渡時に当該支給品の消滅を認識することができることとされています。なお、その場合であっても、支給品の譲渡に係る収益と最終製品の販売に係る収益が二重に計上されることを避けるために、当該支給品の譲渡に係る収益は認識しないこととされています。


※5収益認識適用指針では、有償支給取引について、次のように説明されています。「企業が、対価と交換に原材料等(以下「支給品」という)を外部(以下「支給先」という)に譲渡し、支給先における加工後、当該支給先から当該支給品(加工された製品に組み込まれている場合を含む。以下同じ。)を購入する場合がある(これら一連の取引は、一般的に有償支給取引と呼ばれている。)。」

2.「可能性が高い」の用語

(1)変動対価の見積りの制限

前述I. 2.(1)1.の「変動対価(リベート等)」に記載のとおり、変動対価の見積りにおいては、その額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めることとしています。
ここでいう「可能性が高い」とは、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が発生する可能性よりも高いという状況に比べ、発生しない可能性が著しく高い状況を示し、IFRSにおける“highly probable”と同程度の可能性を示しています。
これについて、公開草案では、「可能性が非常に高い」との表現が用いられていました。これに対し、この表現が示す可能性の程度を明確にすべきであるとの意見が寄せられたため、当該意見を踏まえて変更が行われたものですが、これは、我が国における他の会計基準等で用いられている表現への変更であり、公開草案から可能性の程度を下げることは意図されていないことに留意する必要があります。


(2)契約の識別における対価の回収可能性

本会計基準が適用される、顧客との「契約」を識別する際の要件の1つとして、「顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと」が求められています。この、対価を回収する「可能性が高い」という表現に関して、IFRS第15号では“probable”という表現が用いられています。IFRSにおける“probable”の意味に照らすと、対価を回収する可能性の方が回収できない可能性よりも高いこと(more likely than not)を示すこととなりますが、我が国の実務では、契約の締結可否を判断する際の回収可能性の検討において、それよりも高い閾値に基づき判断していると考えられることから、「可能性が高い」という表現を用いることとされています。

3.収益の表示科目

審議の過程で、サービスの提供による収益や企業が代理人に該当する場合など、本会計基準に従って認識される収益の表示科目を明確化すべきであるという意見が聞かれました。この点、現在、表示科目として一般的に用いられている売上高は、他の関連する法令等においても広く用いられているものであり、仮にその名称を変更する場合には影響が広範に及ぶこと等から、注記事項と合わせて本会計基準が適用される時(2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首)まで(準備期間を含む。)に検討することとされ(後述 III. 2.「強制適用時までに検討する事項」を参照)、早期適用する場合には、現在用いられている、売上高、売上収益、営業収益などの科目を継続して用いることができる旨が結論の背景に追記されました。

4.注記の記載場所

本会計基準では、顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記することとされています。

当該注記を重要な会計方針の注記として開示すべきか否かについては、強制適用時までに他の注記事項の検討(後述 III. 2「強制適用時までに検討する事項」を参照)と合わせて整理するとされていますが、実務の混乱を避けるため、早期適用時においては個別の注記として開示する旨が会計基準に追記されました。

III.今後の対応

1.適用時期

本会計基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から強制適用されますが、次の早期適用も認められています。

  • 2018年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計基準を適用する。
  • 2018年12月31日に終了する連結会計年度及び事業年度から2019年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から本会計基準を適用する。

2.強制適用時までに検討する事項

本会計基準を早期適用する段階では、各国の早期適用の事例及び我が国のIFRS第15号の準備状況に関する情報が限定的であり、IFRS第15号の注記事項の有用性とコストの評価を十分に行うことができないため、収益を認識する通常の時点の注記(前述II.4.「注記の記載場所」を参照)を除き、基本的に注記事項は定めないこととし、強制適用までに注記事項の定めを検討することとしています。
また、同様に、表示に関する次の事項についても、強制適用時までに検討することとしています。

  • 契約資産と債権の区分表示及び注記(早期適用の段階では、経過措置として、契約資産と債権を貸借対照表において区分表示せず、かつ、それぞれの残高を注記しないことも認められている。)
  • 本会計基準に従って認識される収益の表示科目(前述II.3.「収益の表示科目」を参照)
  • IFRS第15号に定められている損益計算書における顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)の区分表示の要否

3.別途の対応について

今後、本会計基準の実務への適用を検討する過程で、本会計基準における定めが明確であるものの、これに従った処理を行うことが実務上著しく困難な状況が市場関係者により識別され、その旨がASBJに提起された場合には、公開の審議により、別途の対応を図ることの要否をASBJにおいて判断することとされています。

IV.2018年度税制改正

本会計基準の導入を受けて、2018年度税制改正では、法人税法における収益認識に関する規定が整備されました。これらの規定は、経過措置を除き、2018年4月1日以後に終了する事業年度から適用されます。なお、実務上の取扱いの詳細は、法人税基本通達及び財務省の解説(本稿執筆時点において、いずれも未公表)等により明らかにされる予定です。

1.収益認識の時期・収益の額

これまで法人税法における収益の認識については、各事業年度の所得の金額の計算の通則を定めた法人税法第22条等のほか、主に法人税基本通達の定めに依拠していましたが、本年度の改正により、収益の額に関する規定(法人税法第22条の2)が新たに設けられ、収益認識の時期及び益金の額に算入する収益の額が法令上明確化されました。


(1)収益認識の時期

資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供(以下「資産の販売等」という)に係る収益の額は、別段の定めがあるものを除き、原則として、目的物の引渡し又は役務の提供の日(以下「引渡し日」という)の属する事業年度において益金の額に算入することとされました。「引渡し日」には、検収日のほか出荷日等も含まれると解されるものと考えられます。
また、以下の場合には、「引渡し日」に近接する日(以下「近接日」という)の属する事業年度において、資産の販売等に係る収益の額を益金の額に算入することとされています。「近接日」の例示として、法人税法第22条の2において「資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日」が挙げられていますが、より具体的な例示が通達等で示されることが見込まれています。


ケース1

資産の販売等に係る収益の額について、公正妥当な会計基準に従って、「近接日」の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合

ケース2
以下のいずれにも該当する場合

  • 資産の販売等に係る収益の額について、公正妥当な会計基準に従って、「引渡し日」又は「近接日」の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合に該当しない
  • 「近接日」の属する事業年度の確定申告書に、その資産の販売等に係る収益の額の益金算入に関する記載がある


(2)収益の額

1.原則
資産の販売等に係る収益の額として益金の額に算入する金額は、別段の定めがあるものを除き、その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額とされました。


2.貸倒れ・買戻し

資産の販売等につき次に掲げる事実が生ずる可能性がある場合においても、その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額は、その可能性がないものとした場合における価額とされます。

  • その資産の販売等の対価の額に係る金銭債権の貸倒れ
  • その資産の販売等(資産の販売又は譲渡に限る。)に係る資産の買戻し

なお、資産の販売等の対価の額に係る金銭債権の貸倒れが生ずる可能性があることにより、会計上、売掛金等の金銭債権の額としていない金額(以下「金銭債権計上差額」という)がある場合には、その対価の額に係る金銭債権の税務上の帳簿価額は金銭債権計上差額を含む額とされ、貸倒引当金の税務上の繰入限度額の計算上、金銭債権計上差額に相当する額は、損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額等として取り扱われることになります。


3.値引き・割戻し

資産の販売等に係る値引き及び割戻しについては、2018年度税制改正大綱において「客観的に見積もられた金額を収益の額から控除することができることとする」とされており、この取扱いの詳細は法人税基本通達等で示されることが見込まれています。


4.収益計上の単位
収益計上の単位については、2018年度税制改正大綱において「資産の販売等に係る収益の額を実質的な取引の単位に区分して計上できることとする」とされており、本会計基準における収益計上の単位の考え方に沿った取扱いが、法人税基本通達等で示されることが見込まれています。

2.廃止される制度

(1)返品調整引当金

対象事業(出版業、出版に係る取次業、医薬品・化粧品等の製造業又は卸売業)を営む法人のうち、常時、その対象事業に係る棚卸資産の大部分につき買戻し等に係る特約を結んでいるものについては、損金経理により返品調整引当金勘定に繰り入れることを要件として、繰入限度額に達するまでの返品調整引当金の金額を損金の額に算入することとされていました(法人税法第53条)。
しかし、本会計基準の導入により返品調整引当金の計上は認められないことになるため、損金経理要件を満たすことができなくなることから、この返品調整引当金に係る法人税法の規定が廃止されることになりました。


経過措置
2018年4月1日において対象事業を営む法人については、2018年4月1日以後に終了し、かつ、2030年3月31日以前に開始する事業年度(以下「経過措置事業年度」という)において従前の返品調整引当金の規定を適用することが認められますが、繰入限度額は以下のように縮減されます。
 

経過措置事業年度 繰入限度額
2018.4.1以後に終了し、かつ、2021.3.31までに開始する事業年度 従前どおり
2021.4.1~2022.3.31に開始する事業年度 従前の繰入限度額の9/10
2022.4.1~2023.3.31に開始する事業年度 従前の繰入限度額の8/10
2023.4.1~2024.3.31に開始する事業年度 従前の繰入限度額の7/10
2024.4.1~2025.3.31に開始する事業年度 従前の繰入限度額の6/10
2025.4.1~2026.3.31に開始する事業年度 従前の繰入限度額の5/10
2026.4.1~2027.3.31に開始する事業年度 従前の繰入限度額の4/10
2027.4.1~2028.3.31に開始する事業年度 従前の繰入限度額の3/10
2028.4.1~2029.3.31に開始する事業年度 従前の繰入限度額の2/10
2029.4.1.~2030.3.31に開始する事業年度 従前の繰入限度額の1/10

(上記の経過措置事業年度において、本会計基準に従って「返金負債勘定」を設けているときは、その「返金負債勘定」の金額から「返品資産勘定」の金額を控除した金額に相当する金額をその事業年度において損金経理により「返品調整引当金」勘定に繰り入れた金額とみなして、経過措置の規定が適用されることになります。)


(2)長期割賦販売

長期割賦販売(※)に係る収益の額及び費用の額は、その長期割賦販売に係る資産の目的物の引渡し等の日の属する事業年度以後の各事業年度の確定した決算において延払基準(割賦基準)の方法により経理することを要件として、その経理した額を益金の額及び損金の額に算入することとされていました(法人税法第63条)。

しかし、本会計基準の導入により割賦基準に基づく収益認識は認められないことになるため、経理要件を満たすことができなくなることから、この長期割賦販売に係る規定が廃止されることになりました。なお、改正前の法人税法第63条にはファイナンス・リース取引に係る規定も含まれていますが、ファイナンス・リース取引に係る規定は改正後も存置されています。


(※)「長期割賦販売」とは、資産の販売若しくは譲渡、工事(製造を含む。)の請負又は役務の提供(長期大規模工事の請負を除く。)で、以下の3つの要件に適合する条件を定めた契約に基づき行われるものをいいます。

  • 賦払の方法により3回以上に分割して対価の支払を受けること。
  • 目的物の引渡し等の期日の翌日から最後の賦払金の支払期日までの期間が2年以上であること。
  • 目的物の引渡し期日までに支払期日の到来する賦払金の額の合計額が対価の額の2/3以下となっていること。


経過措置

2018年4月1日前に長期割賦販売を行った法人については、2018年4月1日以後に終了し、かつ、2023年3月31日以前に開始する事業年度(以下「経過措置事業年度」という)において、従前の長期割賦販売に係る規定を適用することが認められます。
さらに、その法人が以下の(1)又は(2)に該当する場合には、長期割賦販売に係る未計上収益額及び未計上費用額の取扱いは以下のとおりとされます。
 

ケース 未計上収益額・未計上費用額の処理(i)又は(ii)
(1)長期割賦販売に係る収益の額・費用の額につき、経過措置事業年度の確定した決算において延払基準の方法により経理しなかった場合

(i)その経理しなかった決算に係る事業年度において一括して益金・損金算入

(ii)その経理しなかった決算に係る事業年度以後10年間にわたり、均等額を益金・損金算入

(2)長期割賦販売に係る収益の額・費用の額のうち、2023年3月31日以前に開始した各事業年度において益金・損金算入されなかったものがある場合

(i)2023年3月31日後最初に開始する事業年度において一括して益金・損金算入

(ii)2023年3月31日後最初に開始する事業年度以後10年間にわたり、均等額を益金・損金算入

 

  • 上記の「未計上収益額」及び「未計上費用額」とは、長期割賦販売に係る収益の額及び費用の額のうち、「その経理しなかった決算に係る事業年度」((1)の場合には、「2023年3月31日後最初に開始する事業年度」)開始の日前に開始した各事業年度において益金の額及び損金の額に算入されるものを除いたものをいいます。
  • 上記の(ii)は、未計上収益額が未計上費用額を上回る場合で、かつ、「その経理しなかった決算に係る事業年度」((2)の場合には、「2023年3月31日後最初に開始する事業年度」)の確定申告書等に一定の記載がある場合に限り、適用されます。


なお、法人税法において延払基準により収益を認識した長期割賦販売に係る対価の額については、消費税法上も延払基準を適用することが認められていましたが(消費税法第16条)、この取扱いも廃止されることになり、法人税法における経過措置と類似した経過措置が設けられています。また、改正前の消費税法第16条にはファイナンス・リース取引に係る規定も含まれていますが、ファイナンス・リース取引に係る規定は改正後も存置されています。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部
パートナー 川西 安喜
マネジャー 島田 謡子

KPMG税理士法人
タックステクニカルセンター
パートナー 村田 美雪

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