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2018年2月開催TRGの解説(週刊経営財務2018年4月9日号)

2018年2月開催TRGの解説(週刊経営財務2018年4月9日号)

週刊経営財務(税務研究会発行)2018年4月9日号に、2018年2月開催TRG(移行リソースグループ)に係るKPMG/あずさ監査法人の解説記事が掲載されました。

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はじめに

2017年5月、国際会計基準審議会(IASB)はIFRS第17号「保険契約」(以下、「IFRS第17号」または「本基準書」という)を公表した。IFRS第17号は、原則として2021年1月1日以後に開始する事業年度より適用されるが、本基準書の適用をサポートするため、IASBによりTransition Resource Group(以下、「TRG」という)が設置されている。2018年は、2月、5月、9月及び12月の4回にわたって開催されるスケジュールとなっており、本稿では、2018年2月に開催されたTRGの議論の内容について解説する。なお、文中の意見に渡る部分は私見であり、特に断りのない限り、項番号および付録は本基準書のものを指す。

TRGとは

TRGのWebサイトによれば、TRG設置の目的は、利害関係者がIFRS第17号の適用に係る実務上の諸論点を議論する公的な会議体を提供すること、及び利害関係者の意見や質問をIASBへ伝えるとともにIASBが必要に応じ適切に対処できるようにすることにある。
TRGは、IFRS第17号の財務諸表作成または財務諸表監査を行うことが想定される下記のメンバーにより構成されている。

図表1 TRGのメンバー

メンバー 所属
Vasilka L Bangeova Grant Thornton UK LLP
Laurent Cholvy AXA
Jo Clube Aviva plc
Anne Driver QBE Insurance Group
Sai-Cheong Foong AIA Group Limited
Jens Freiberg BDO AG Wirtschaftsprufungsgesellschaft
Kevin Griffith EY
Francesco Nagari Deloitte
Jeong Hyeok Park Samsung Life Insurance
Roman Sauer Allianz SE
Lesley Thomson Sun Life Financial
Massimo Tosoni Assicurazioni Generali SpA
Mary Helen Trussell KPMG
Gail Tucker PricewaterhouseCoopers
Y ing( Sally) Wang C hina Pacifi c Life Insurance Co., Ltd

出典:TRG Webサイト

実際の議論は、上記メンバーに加え、国際アクチュアリー会(IAA)、証券監督者国際機構(IOSCO)、保険監督者国際機構(IAIS)の代表者、及びIASBのボードメンバーもオブザーバーとして同席したうえで行われる。
TRGの議論に先立ち、IASBへ提出された要望書のうちTRGで取り上げるべき論点が選別される(TRGのWebサイトではSubmission Logが公開されており、寄せられた要望書の一覧を確認することができる)。TRGで議論することが決まった論点については、IASBスタッフの分析を加えたアジェンダペーパーが作成され、TRGのWebサイトに公開される。当日の議論は、IFRS第17号に加え、このアジェンダペーパーも参照しながら行われる。
TRGの議論の結果は強制力を持たず、あくまでも利害関係者(の代表)による公的な場での意見交換であるが、同席しているIASBのボードメンバーやスタッフがIASBとしての見解を述べる場面もあり、日本の保険会社がIFRS第17号に関する実務上の論点を検討する際には、TRGの議論の結果が少なからず影響することが予想される。

2018年2月開催TRGの概要

2018年2月に開催されたTRGでは、以下の議題について議論された。

  1. 単一保険契約からの構成要素の分離
  2. 年次更新契約に係る契約の境界線
  3. 保有する再保険契約に係る契約の境界線
  4. 契約の当初認識時に支払った新契約費
  5. カバー単位の設定方法
  6. 公正価値アプローチを適用する際の新契約費
  7. その他IASBへ寄せられた要望書


1.単一保険契約からの構成要素の分離

法的には単一の保険契約であっても、異なる保険リスクを有する複数の種類の商品や保険カバーが混在している場合がある。例えば、定期保険の生命保険契約に医療特約が付されているような場合が該当する。IFRS第17号は、デリバティブ、投資要素または財及び非保険サービスの分離要件については規定しているが、単一の保険契約に含まれる複数の保険要素をどのように処理すべきかについては明確に規定していない。そこで、TRGは単一保険契約に含まれる保険要素を分離することが許容されるか否かについて議論した。
アジェンダペーパーでは、図表2のような保険契約が例示されたうえで、分離を許容する見解、許容しない見解、原則主義に基づいて(法形式ではなく経済的実態に基づいて)判断すべきとする見解など、複数の見解が提示された。

図表2 アジェンダペーパー01で使用された保険契約の例

この契約は以下のような特徴を有する

  1. 医療特約は、主契約とは別個に販売されない。
  2. 定期保険を保険契約者が解約した場合には、医療特約も同時に解約される。
  3. 医療特約が解約されることはまれであり、多くの場合、定期保険のカバー期間満了まで更新され続ける。
  4. 毎年の更新時に、企業は定期保険契約の価格を再設定したり、定期保険契約を解約することはできない。
  5. 毎年の更新時に、企業は医療特約のリスクを再評価し、それを完全に反映した価格を設定することができる。

出典:TRG アジェンダペーパー01より筆者作成


そのうえで、IASBスタッフは、企業は通常、契約の実態を反映するように保険契約を設計することが期待されており、単一の法的形式を有する契約は、実質的に単一の契約とみなされると分析した。また、このような考え方は、単一契約がIFRS第17号で使用される最小の会計単位であることとも整合するとした。そのうえで、法的な形態が必ずしも契約上の権利及び義務の実態を反映しない場合もありうるものの、リスクの異なる種類の商品が1つの法的な保険契約に混在しているということだけでは「契約上の権利及び契約上の義務の実質を反映していない」と結論付けるには十分ではない旨の見解を示した。
TRGの議論では、すべての保険要素を含む単一の保険契約が最小の会計単位であるというIASBスタッフの見解については合意されたようである。単一の保険契約からの保険要素の分離が許容されるか否かという点については、原則主義に基づいて判断すべきという見解を支持するメンバーが多数であった。また、IASBスタッフの見解と同様に、法的な形態が必ずしも契約上の権利及び義務の実態を反映しない場合もあることを指摘したメンバーもいた。
以上の議論を踏まえると、企業は、事実と状況を考慮した結果として契約の法的形態が契約上の権利及び義務の実態を反映していないと想定される場合には、単一の保険契約から保険要素を分離することが適切であるか否かを判断する必要があると考えられる。
なお、TRGの議論の中で、保険要素の分離は会計方針の選択の問題ではなく、関連する事実と状況を考慮した判断に基づいて行われるものであることがIASBスタッフにより確認された。


2.年次更新契約に係る契約の境界線

IFRS第17号の原則的な方法で保険契約負債を計算する際には、保険契約の将来キャッシュ・フローを見積もることになるが、将来のどの時点までのキャッシュ・フローを保険契約の将来キャッシュ・フローの見積りに含めるべきかを決定する必要があり、この時点を契約の境界線という。

参考条項 契約の境界線の規定(IFRS第17号34項)

キャッシュ・フローが、企業が保険契約者に保険料の支払を強制できる報告期間中又は企業が保険契約者にサービスを提供する実質的な義務を有している報告期間中に存在する実質的な権利及び義務から生じる場合には、当該キャッシュ・フローは保険契約の境界線内にある。サービスを提供する実質的な義務は、次のいずれかの時点で終了する。

(a)企業が特定の保険契約者のリスクを再評価する実質上の能力を有していて、その結果、当該リスクを完全に反映する価格又は給付水準を設定できる。

(b)次の要件の両方が満たされている。

(i)企業が当該契約を含んだ保険契約ポートフォリオのリスクを再評価する実質上の能力を有していて、その結果、当該ポートフォリオのリスクを完全に反映する価格又は給付水準を設定できる。
(ii)リスクの再評価が行われる日までのカバーに対する保険料のプライシングが、再評価日後の期間に係るリスクを考慮に入れていない。

図表3 契約の境界線のイメージ

出典:KPMG IFRG Limited“ Scope and General Measurement Model”より筆者作成

保険契約の中には1年毎に更新されるタイプの契約もあり、更新のタイミングで契約の境界線をどのように扱うかについて、TRGでは議論された。
アジェンダペーパーでは、図表4のような特徴を持った保険契約が例示され、当該2契約について、契約の境界線が1年で切れる見解と、1年超とする見解が提示された。

図表4 アジェンダペーパー02で使用された保険契約の例

例示された契約 特徴
年齢に応じて料率が改定される年次更新契約
  1. 投資要素は含まれていない。
  2. 加入時に診査を受けたうえで引受けられる。
  3. 保険契約者は毎年保険料を支払っていれば、追加の引受診査なしに、契約を更新することができる。
  4. 健康状態により特別保険料が適用される場合や割引が適用される場合を除き、年齢に応じた保険料が設定される。(同じ年齢であれば、新規加入であっても既契約者であっても同じ料率が適用される)
  5. 死亡率、罹患率、解約率等の仮定に基づいて計算された将来の予想キャッシュ・フローにより料率表が設定される。
  6. 保険料の改定は個々の保険契約者単位ではなく、ポートフォリオ全体で行われる。
ユニット・リンク型の有配当契約(上記と同様の特徴を有する保険要素と投資要素を併せ持つ契約)
  1. ユニット・リンク型の投資要素は、常に基礎となる項目の公正価値に基づいて料率設定される。
  2. 保険料は契約者の勘定に累積され、同勘定から保険カバー期間に応じた手数料と、運用資産の資産管理手数料が控除される。
  3. 保険料は、ポートフォリオ・レベルで料率表を再評価することによって毎年料率改定することができ、また、投資要素はユニット・リンクを通じて自動的に料率改定されることになる。

出典:TRG アジェンダペーパー02より筆者作成

これに対し、IASBスタッフは、上記2契約はいずれも契約の境界線は1年で切れるという見解を示した。すなわち、「新しい契約者に適用される保険料と同じ保険料で更新される契約は原則として新契約として扱うべきであり、年齢に応じて保険料率が改定される年次更新契約では、更新後の期間に生じるキャッシュ・フローは既存の契約の境界内に含めるべきではない。また、同様の考え方はユニット・リンク型の有配当契約にも適用され、ユニット・リンク契約によって投資要素が料率改定される場合であっても、企業は保険契約者のリスクを再評価し、ポートフォリオのリスクを完全に反映した保険料を設定できる場合(IFRS17.34(b))に該当する」との見解を示した。
TRGの議論では、上記2契約の例について、契約の境界線を1年以内とすべきとする意見と1年超とすべきとする意見のいずれもあり、統一的な合意はなされなかった。また、あるTRGメンバーは、保険料の再設定に関しては以下のように区別できる点を指摘した。

  • 既存のポートフォリオから発現するリスクを反映したポートフォリオリスク
  • より多くの保険契約者の母集団から発現するリスクを反映した一般的な群団のリスク

このTRGメンバーは、保険料の再設定が、例えば一般的な群団のリスクを反映した保険料率表を使用している場合には、既存のポートフォリオのリスクを完全には反映しないのではないかという意見を述べた。一方で、IASBスタッフは、契約者の年齢に応じて保険料を再設定するという今回の契約例では、ポートフォリオのリスクも再評価されることとなり、更新後のキャッシュ・フローは、保険契約の当初認識時におけるキャッシュ・フローの見積りには含まれない(契約の境界線は1年で切れる)との見解を述べた。
以上の議論を踏まえると、企業は、契約の境界線を決定する際に、すべての契約に係る事実及び状況を考慮して、どのようなレベルでリスクが再評価され、保険料が再設定されるのかを評価する必要があると考えられる。個別契約レベルまたは契約ポートフォリオレベルでリスクが再評価され、保険料が再設定されるケースでは34項の要件を満たし、年次更新契約の場合、契約の境界線は1年に限定される可能性がある。
なお、TRGの議論の中で、契約の境界線を決定する際に考慮すべきリスクとは、保険リスクと金融リスクを含むが、保険契約者から企業へ移転されない失効や費用に係るリスクは含まないことがIASBスタッフにより確認された。


3.保有する再保険契約に係る契約の境界線

アジェンダNo.2でも取り上げられた契約の境界線には、「企業が保険契約者のリスクを再評価・再設定する能力があるか」という規定があり、当該文脈は企業自らが発行した保険契約に対して適用されるようにも読むことができる。この点、契約の境界線の規定は保有する再保険契約(以下、「出再保険契約」という)に対してはどのように適用されるのかを問う要望書が寄せられ、TRGで議論された。
アジェンダペーパーでは、以下のようなIASBスタッフの見解が示された。すなわち、契約の境界線の規定は出再保険契約にも適切に適用されなければならず、出再者が再保険者からサービスを受けられる実質的な権利及び再保険料を支払う実質的な義務を有する場合に、当該権利及び義務から生じるキャッシュ・フローは契約の境界線内となる。この実質的な権利は以下の両方に該当する場合に終了する。

  • 再保険者がリスクの移転を再評価する実務的な能力を有している。
  • 再保険者が再評価したリスクを完全に反映する再保険料や給付水準を設定できる。

TRGの議論においても、契約の境界線の規定は出再保険契約にも適切に適用されるというIASBの見解については合意されたようである。
以上の議論を踏まえると、企業は、再保険の契約の境界線を決定する際に、再保険契約の条件を確認する必要があると考えられる。例えば、再保険者が数か月前の通知により再保険カバーを終了させることが可能で、そのような実務慣行である場合には、契約の境界線が短くなる可能性もある。


4.契約の当初認識時に支払った新契約費

企業は、新契約獲得時に代理店手数料などの新契約獲得に係るキャッシュ・フロー(以下「新契約費」という)を支払う。更新契約を前提とした場合、企業は通常、将来の更新契約の保険料も含めて新契約費を回収することを見込んでいる。しかしながら、更新契約の保険料が契約の境界線外の場合、当初の契約グループの保険料では新契約費を賄いきれず、当該契約グループが不利な契約となる可能性がある。これでは、更新後の保険料もあわせて新契約費を回収するという経済的な実態を反映しないが、このような場合においても新契約費を当初認識時のグループにすべて配分するべきかという要望書が寄せられ、TRGにて議論された。
アジェンダペーパーでは、新契約費は当初引き受けた契約が属するグループにのみ配分される(見解A)、新契約費は当初引き受けた契約が属するグループ及び更新後の契約が属する将来のグループに配分される(見解B)、新契約費は当初引き受けた契約が属するグループにのみ配分されるが、当初引き受けた契約と同一の事業年度に更新された契約は当初引き受けた契約と同一のグループに属するようにする(見解C)、という3つの見解が提示された(図表5参照)。

図表5 アジェンダペーパー04で示された見解のイメージ

出典:アジェンダペーパー04より筆者作成

これらの見解に対し、IASBスタッフは、当初契約の獲得時点で新契約費が無条件で支払われる場合、新契約費は更新された将来の契約が属する将来のグループには関連せず、将来のグループに配分することはできないとの見解を示した(見解A)。また、見解Cについては、IFRS第17号における集約レベルの要求事項が満たされている限り、当初引き受けた契約が更新後の契約と同一のグループに属することは禁止されないが、当初引き受けた契約が不利な契約グループに属する場合は、更新後の契約群は異なるグループになるとの見解を示した。
新契約費は、保険契約グループの販売、引受け及び開始のコストにより生じるキャッシュ・フローのうち、当該グループが属する保険契約ポートフォリオに直接起因するものと定義されている(付録A)。すなわち、新契約費は個々の契約または契約グループ、或いは契約ポートフォリオに直接起因するコストである。そのため、TRGの議論では、新契約費は、当初獲得した契約の属するグループの測定にのみ含まれるというIASBの見解については合意されたようである。一方で、複数のTRGメンバーは、このような会計処理は経済的な実態を反映しないという内容の発言をした。また、あるTRGメンバーは、例えば新契約費が契約獲得時に無条件に支払われるものではない場合、新契約費の一部を更新契約のキャッシュ・フローに配分することが適切である可能性もあり、事実と状況に応じて異なる結果になるであろうことを指摘した。
以上の議論を踏まえると、新契約費を契約獲得時に無条件で支払う場合には、獲得した新契約の属するグループが不利な契約となり、更新後の契約が属するグループとは異なるグループにしなければならない(16項)ということが起こり得ると考えられる。


5.カバー単位の設定方法

契約上のサービス・マージン(Contractual Service Margin、以下、「CSM」という)は、各報告期間に配分され、配分額は保険収益となる。当該配分はカバー単位に基づいて行われるが、カバー単位は、それぞれの契約において提供される給付の量とカバー期間を考慮して決定される(B119項(a))。この点、「提供される給付の量」の定義はどのようなものかという要望書が寄せられ、TRGにて議論された。
アジェンダペーパーでは、投資要素を含まない複数の契約例を用いて、カバー単位の考え方が確認された(図表6参照)。

図表6 アジェンダペーパー05で使用された保険契約の例

  例示された契約 IASBスタッフによるカバー単位の見解
1. カバー5年の建設工事保険
毎年一定額(上限)までの火災被害のカバーを提供する
当該上限の金額を反映する
2. カバー5年で、住宅ローンのデフォルト損失(財産価値の回収額を引いた金額)のカバーを提供する保険
住宅ローン残高は毎年の返済により徐々に減少する
毎期減少する住宅ローンの残高のみ反映され、財産価値は反映しない
3. カバー10年の医療保険
通算で一定額(上限)までの医療費をカバーする
  • 当初は上限の金額を反映する
  • 以後は、過去の給付金請求により減少したカバーを反映して、再評価する
4. 信用生命保険
契約者の死亡時にその時点でのローン残高を支払う
毎期のローン残高(契約上の上限金額)を反映する
5.

超過損害(エクセスロス)の再保険

  • 給付の量は、当初は上限の金額(元受保険契約の超過損害額または再保険カバーの支払上限額)を反映する
  • (再保険カバーの支払上限額がある場合)契約の期待残存期間は、当該上限に達成すると思われる時期を反映する
  • グループの中に異なる上限や残存期間を有する契約が含まれている場合には、その差を反映する
6. カバー5年の製品保証 カバー単位は毎期一定額である
7. 生存年金保険
保険契約者が死亡するまで一定額の年金を毎年支払う
給付の量は一定であり毎年の年金額を反映するが、期待残存期間は確率加重平均を用いて計算するため、カバー単位は毎期再測定すべきである

出典:TRG アジェンダペーパー05より筆者作成

TRGの議論では、IASBスタッフより、カバー単位は失効や解約などの契約期間に影響を与えるイベントを考慮すべきであることが確認された。また、BC279項(a)にて、期待キャッシュ・フローの変動はカバー単位とはなり得ないことが明示されているため、予定保険金額(期待キャッシュ・フローそのもの)をそのまま「提供される給付の量」としては使用しないという点についても確認があった。
アジェンダペーパーの設例及びカバー単位に関するIASBスタッフの見解(図表6)に対しては、各報告期間における最大の保障額をカバー単位とすべきという点には懸念を示すメンバーが複数いた。また、実際の保険契約はアジェンダペーパーの設例よりも複雑であるという意見や、投資要素を含む契約を検討していない段階で、カバー単位について何らかの合意を得るべきではないという意見もあり、今回のTRGでは統一的な合意はなされなかった。
TRGでは、投資要素を含む契約を題材に、次回2018年5月の会議においても本件の議論を続ける予定である。


6.公正価値アプローチを適用する際の新契約費

IFRS第17号へ移行する際の保険契約負債の測定方法として、公正価値アプローチ(移行日現在の保険契約負債の公正価値と履行キャッシュ・フローを比較して契約上のサービス・マージンを算出する方法)が認められている(C20項)。公正価値アプローチを適用する場合の、IFRS第17号の移行日前に発生した新契約費の取扱いについて、TRGで議論された。
アジェンダペーパーでは、公正価値アプローチにおいては、契約上のサービス・マージンは移行日前に発生した新契約費を含まないというIASBスタッフの見解が示された。
上記見解につき多数のTRGメンバーが賛成を表明した。したがって、公正価値アプローチを採用する場合においては、移行日前の新契約費は認識されず、移行日後の報告期間において収益や費用への計上を行う必要はないと考えられる。


7.その他IASBへ寄せられた要望書

上記6つのアジェンダペーパーの他に、アジェンダペーパー07が作成されており、TRGに寄せられた要望書のうち、以下に分類可能なものが整理されている。

  • IFRS第17号の文言を適用するだけで回答可能なもの
  • 要望書の要件を満たさないもの
  • TRG以外の手続により検討する(年次改善の提案など)

アジェンダペーパー07に関しては、主に図表7の項目に対してTRGメンバーよりコメントがあり、IASBスタッフが見解を述べた(IDはSubmission Logのもの)。


要望書の要件

  • IFRS第17号に関連している、又は、IFRS第17号から発生する
  • 実務において多様な会計処理が発生する可能性がある
  • 影響が広範囲に及ぶ(広範囲の利害関係者に関連する)

図表7 アジェンダペーパー07の主なコメント

ID 内容 IASBスタッフの見解
S03 保険契約のグループの財政状態計算書上での表示(グループではなくポートフォリオ単位で表示する方がより適切ではないか) IFRS第17号の要求事項は明確であり、(グループ単位で表示するという)IFRS第17号の当該要求事項は、概念フレームワークの考え方とも整合的である
S04 買収などにより、決済期間にある契約を取得した場合の取扱い(保険収益は予想される保険金の全額を反映すべきかどうか) IFRS第17号の要求事項は明確であり、保険収益は予想される保険金の全額を反映すべきである
S20 修正遡及アプローチを適用する場合のグループの設定方法(C8項及びC10項の考え方とC23項の規定は矛盾するのではないか) C10項は修正遡及アプローチを適用する企業が合理的で裏付け可能な情報を有していない場合の規定であり、公正価値アプローチについての規定であるC23項とは別個の規定である
S23
S27
保険料配分アプローチを使用する場合の「受取った保険料」の定義 「受取った保険料」は、報告時点で実際に受取った保険料であり、期限到来保険料や予想保険料は含まない
S26 保険契約のリターンが、基礎となる項目の償却原価に基づく場合(当該契約は、変動手数料アプローチの対象外となるか) リターンが基礎となる項目の償却原価に基づいているからといって、必ずしも直接連動有配当契約の定義を満たさなくなる訳ではない

Next Step

今回のTRGの議論についてIASBスタッフが作成したサマリは、TRGのWebサイトで確認することができる。次回のTRGは、2018年5月2日の開催が予定されている。

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