中国子会社 経営管理上の落とし所を探る(後編)

本稿では、中国でビジネス展開をするうえでの頻出する12の経営課題のうち、「人件費」、「資金繰りと外貨管理」、「減損」、「会計不正」、「贈収賄」、「法令改正」について取り上げます。

本稿では、中国でビジネス展開をするうえでの頻出する12の経営課題のうち、「人件費」、「資金繰りと外貨管理」、「減損」、「会計不正」、「贈収賄」、「法令改正」について取り上げます。

ハイライト

中国は、ビジネス展開するうえで無視することのできない巨大市場です。しかし、中国では独自の法規制がネックとなりビジネスが進まないということがあります。税務や会計上の問題と認識していたところ、重要な経営課題が潜在している場合もあります。中国子会社の経営課題については、「会計や税務および法務の視点をしっかりと押さえ、経営管理上の落とし所を探るというアプローチ」が必要と考えます。

そこで前後編2回にわたって、中国でビジネス展開をするうえでの頻出する12の経営課題について取り上げます。前編(既に3月号でご紹介済み)では、「発票基準と月次決算」「滞留債権」「輸入価格の決定」「滞留在庫」「原価計算制度」「会計士事務所の選定」の6つを取り上げました。

本稿後編(5月号)では、「人件費」、「資金繰りと外貨管理」、「減損」、「会計不正」、「贈収賄」、「法令改正」の6つの経営課題をご紹介します。

なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。本稿は2018年4月10日時点の法令・基準・通達等を基に作成しております。

ポイント

  • 中国子会社の経営課題については、日本本社のマネジメントは現地担当者任せにせず、主体的に関与すべきである。
  • 日本本社の関与の前提として、「経営課題に対応した会計や税務および法務の視点をしっかりと押さえ、そのうえで経営管理上の落とし所を探る」というアプローチが必要である。
経営・税務・会計の相関図

I.人件費の高騰

経営課題の背景

年々人件費が高騰し、企業の経営を圧迫しています。


1.法務の視点

中国では賃金給与が高騰していますが、制度上は社会保険料、経済補償金、残業代、労働組合費もこれに連動して増加しますし、ビザの取得も厳しくなりました。

中国の社会保険制度には、養老保険、医療保険、失業保険、労災保険、生育保険(育児保険)等があります。これらは、会社および従業員が毎月賃金給与の一定割合を負担する確定拠出型の年金制度で、外国人も含め全従業員が加入しなければなりません(人力資源社会保障部令第16号、人力資源社会保障庁[2011]113号)。

労働契約法上では、工場閉鎖等による労働契約解除等の際には雇用者が従業員に支給する補助金である「経済補償金」が必要です。

残業代は総経理や副総経理等の高級管理職にも支払う必要があります(労働契約法第10条・労働法第44条を斟酌)。現地で遅くまで残務処理をしている日本人の高級管理職もあくまで会社の使用人ですので残業代の未払いには注意が必要です。

労働組合員が25名以上いる場合、企業は社内に労働組合(工会)を設置し、労働組合費として毎月の全労働者の賃金総額の2%を負担しなければなりません(労働組合法第10条および42条)。

外国人のビザ規制に関しては、2017年には、特定地域で外国人労働者をハイレベル人材(A類)、専門人材(B類)、一般人材(C類)に分類し、就労ビザ割当管理を試験的に実施しましたが(外国専門家局2016年151号)、一般人材のビザの発給条件が厳しすぎて企業に必要な人材が確保できない問題が起き、その後、ビザの発給条件を若干緩和して全国レベルで施行されています(外国専門家局発[2017]40号)。


2.会計の視点

2014年7月から確定拠出型と確定給付型の「退職後給付制度」が国際財務報告基準(IFRS)の動向を踏まえて中国でも基準化されましたが、これは会社に退職金制度がある場合を前提にしています(企業会計準則第9号)。また、従業員年次有給休暇条例(国務院令第514号)を前提に、有給休暇に対する引当金も2014年7月から規定されました(企業会計準則第9号第8条)。ただし、税務上これら負債性引当金(見積負債)は原則的に有税(損金算入は不可)となります(企業所得税第10条)。


3.経営管理上の落とし所

上述のとおり、コストアップの要因は、賃金給与の高騰だけではなく、労務法制度に関する項目の負担の増大も大きく影響しています。しかし、労働法規に関するコンプライアンスの遵守は必須ですし、労使の良好な関係の維持からもコスト削減は難しいでしょう。

中国政府も人件費の高騰を鑑みて、政府の方針である「第13次5カ年計画」に従い、社会保険料率を引き下げていく方針を示しています。しかし、人件費が急激に下がることはないと思われることから、今後は経営資源の適正な配分、機械化等、労働生産性を向上させるような中国での働き方改革も検討すべきです。

II.資金繰りと外貨管理

経営課題の背景

毎月の資金繰りと外貨送金や外貨決済に苦慮しています。


1.法務の視点

中国で資金調達をするには、親会社や海外の金融機関から外貨借入(外債)を行うことも多くあります。従来からは「投注差」といわれる投資総額と登録資本の差額を限度額とする「投注差方式」での運用がなされていました。この方式による外貨借入限度額の算定式は以下のとおりです。


外貨借入限度額(投注差方式)=[批准証書の投資総額 - 登録資本金額]


投注差方式以外に新たに会社の純資産にマクロ政策係数を乗じる「マクロプルーデンス管理方式」も2016年5月から導入されました。この方式による外貨借入限度額の算定式は以下のとおりです。


外貨借入限度額(マクロプルーデンス管理方式)=[純資産×クロスボーダー融資レバレッジ係数×マクロプルーデンス政策係数]


当初は融資レバレッジの係数は1でマクロプルーデンス政策係数も1でしたが、2017年1月からは融資レバレッジ係数が2とされ、外貨借入枠が純資産の2倍まで拡大されました(人民銀行発[2016]132号、人民銀行発[2016]18号、外貨管理局発[2016]16号、人民銀行発[2017]9号)。なおこのマクロプルーデンス管理方式は、一度選択したら従来の投注差方式に戻すことはできません。

中国は資本流出規制が依然として厳格で、中国から日本本社への資金還流策は限られていますが、代表的なものとしてはコミッション(営業紹介手数料)、配当金、ロイヤリティの3種類があります。

中国でコミッションとして認定されるのは、日本本社が中国国外の取引先を紹介した場合のみです。一般企業は収入の5%までが企業所得税法の控除限度額ですが(財政部・国家税務総局[2009]29号)、国内の役務提供ではないので源泉企業所得税(10%)は課税されず、増値税(6%)の源泉徴収義務が発生します。

配当金の場合、企業所得税10%が源泉徴収されます。1件当たり5万米ドル以上送金する場合には、事前に国税局に税務届出(案)表の提出が必要ですが、5万米ドル未満であれば金融機関で納付済書類(完税書)の審査のみです(2013年40号公告)。

ロイヤリティの場合、送金時に企業所得税(10%)、増値税(6%)、付加税(0.65%)が源泉徴収されます。

外貨管理法では、貿易取引(たとえば債権の回収)とサービス取引(たとえば技術支援費)は本来別々の取引であるため、これらを相殺することはできず多くの日系企業が依然として苦慮しています。

2015年には多国籍企業グループのクロスボーダー外貨集中管理が、資本取引のあるグループ内(国内営業収入合計10億人民元以上、国外営業収入合計2億人民元以上等の条件あり)に限って認められるようになり(人民銀行発[2015]279号)、少しずつですが規制が緩和されています。


2.税務の視点

マクロプルーデンス管理方式の導入によって外貨借入枠が純資産の2倍まで拡大されましたが、親会社から借入を増加する場合には注意が必要です。利息が損金算入できることを利用して、資本金より過大な借入により租税負担の軽減をしようとする行為を規制する「過少資本税制」が中国にもあります。関連企業からの借入金(債権性投資)と払込資本(権益性投資)の比率である[負債:資本比率]の基準値を超過する部分の利息支出は、課税所得から控除することができません。[負債:資本比率]の目安は、金融業は[5:1]、その他企業は[2:1]です(財政部・国家税務総局[2008]121号)。

移転価格税制で税務当局に提出する「特殊事項文書」には過少資本の状況を記載することになります(2016年第42号公告第17条)。


3.経営管理上の落とし所

上述の外貨借入に関しては、外貨管理局の政策を勘案するとおそらく将来はマクロプルーデンス管理方式に収束するのではないかと思われます。

外貨管理については、全国レベルの法令が公布されていますが、実務上、地域ごと銀行ごとに解釈と運用が若干異なる場合がありますので現地の執行・運用状況まで見極めることが必要です。

資金調達や外貨送金は、金融当局の認可から民間の金融機関の審査に移管されつつあります。しかし、民間の金融機関に対する金融当局からの窓口規制も依然存在するので、金融機関の担当者とは連絡を密にし、できるだけ最新情報を入手するように努めるべきです。

III.稼働率の低下に伴う減損

経営課題の背景

工場の稼働率が低下し、現地の会計士事務所からは遊休資産の減損処理が要求されています。


1.会計の視点

固定資産が間もなく遊休状態となる、使用が中止される、又は予定より早期の処分が計画されている、市場価格の大幅な下落等がある場合は「減損の兆候」があると判定します。次に「当該資産の公正価値から処分費用を控除した後の金額」と「当該資産の見積将来キャッシュフローの現在価値」を比較して高い方を「回収可能金額」とし、「回収可能金額」が当該資産の帳簿金額より低い場合、「減損と判定」し「減損損失引当金」を計上しなければなりません(企業会計準則第8号、企業会計制度第59条)。対象に国有資産である土地等が含まれている場合の評価は、政府認定の資産評価事務所の法定評価報告書が必要となります。


2.税務の視点

企業所得税では、減損損失は有税(課税所得から控除不可)となります(企業所得税実施条例第55条および第56条)。

休止固定資産は「使用停止月の翌月から減価償却を停止しなければならない」と規定されているため(企業所得税実施条例第59条)、休止固定資産について実施した減価償却は有税処理となります。


3.経営管理上の落とし所

減損損失や休止固定資産に対する減価償却は企業所得税法上、有税となるため会計処理が進まない可能性があります。これでは日本の会計基準とは齟齬をきたしますので、日本本社は現地で有税となっても会計処理をすすめるべきと指示する必要があります。なお中国で減損処理を進めるにあたっては、現地の子会社や会計士事務所と日本本社の減損基準(たとえば資産のグルーピングや回収可能金額の算定方法等)のすり合わせを事前にしっかり行うことも連結決算を円滑に行うポイントです。

稼働率が低下する局面では、潜在していた過去の会計不正や不良債権や不良在庫、遊休資産等の問題が一気に顕在化する傾向があるのは日本と同じです。景気の動向を読み、ビジネスの再構築、経営資源の再配置、会計処理の適正化等に係る経営判断が必要となります。

IV.会計不正防止策の構築

経営課題の背景

内部統制制度を整備したいが、コスト等の関係から現地法人に人材を配置することは難しく、日本から内部監査にいきますが、言葉等の問題から、会計不正のある問題点に切り込めない。


1.法務の視点

中国の会計法では、違法な会計帳簿の設置や不正会計処理を禁止しており(会計法第16条、26条)、会計処理の偽造や会計資料の隠匿では刑事責任を追及され(会社法第43条、44条)、5年以下の懲役、2万人民元以上20万人民元以下の罰金が科されます(刑法第162条の1)。


2.会計の視点

過去の事例にはファミリー(親族)企業等を利用した売上の循環取引、在庫の架空計上、減価償却の一部停止、資金の横領等の傾向があります。企業グループ内では非中核部門で、成長が見込めない状況で本社から利益目標達成の過度の強いプレッシャーがかかる場合に発生している傾向があります。連結決算ベースでは重要性が低い子会社に発生した会計不正でも、予想以上にインパクトが大きく、日本本社の決算発表の延期と連結決算の訂正に至る事例も発生しています。

最近の行政処罰の事例としては中日合弁企業では、売上の過小計上と資金横領を行ったとして、会計法および会社法違反、企業所得税および増値税脱税に問われたケースがあります。


3.経営管理上の落とし所

日本本社がグローバル・ベースでの不正防止ポリシーを策定する必要があると思います。これには職務分掌、担当者のローテーション、ITセキュリティー、定期的なチェック体制、信頼できる会計士事務所の選定方法等を織り込み、現地に即した社内規程と運用マニュアルに反映させて運用させるようにすべきです。

定期的なチェック体制では、少なくとも子会社のヒト(モニタリング)、モノ(棚卸立会)、カネ(債権・銀行預金残高確認、現金実査)を確実におさえ、帳簿の数字との不整合を徹底して究明します。外部の専門家の力を借りることも必要です。

V.贈収賄の防止策の構築

経営課題の背景

取引先に心付けを贈るべきか?購買担当者は取引先の業者からのリベートを受け取っているらしい。


1.法務の視点

中国には「商業贈収賄」という不正競争防止法の観点から定められた対公務員規制よりも広義の独自の規制があります。これは商取引上において公平の原則に反して、不当な経済的利益を提供または取得し、取引の機会や競争上の優位性の獲得の誘導行為を禁止する規制です。収賄者は取引相手の従業員、委託を受けた企業や従業員、職権を利用して取引に影響を及ぼす企業や従業員です。贈賄者には10万人民元から300万人民元以下の罰金が課され、情況が重い場合は「営業許可証」が没収されビジネスができなくなります。従業員が贈賄した場合、従業員個人の行為と証明できなければ、会社の行為とみなされます(不正競争防止法第7条、第19条)。金額が比較的大きい場合には、5年以下の有期懲役等となります(刑法第163条)。

収賄の立件基準としては、個人5,000人民元以上、会社10万人民元以上、贈賄は個人1万人民元以上、会社20万人民元以上ですが(公安機関管轄刑事事件立件訴追規定(二)2010年)、これは犯罪成立要件ではなく、当該以下の金額でも追訴を受ける可能性があります。取引先が国有企業の場合、不正競争防止法以外に刑事責任を追求される場合もあります(刑法第391条)。

最近の日系企業が受けた行政処罰事例では、販売奨励金をギフトカードで企業・個人に支給する行為が、商業賄賂に該当するとされ、不正競争防止法違反として行政処罰で罰金10人民万元が課されたケースがあります。


2.会計の視点

贈収賄は、従業員による当局や会社役員への告発で発覚することが多いようです。従業員が収賄するリベート、金券、カード、海外旅行等はアンダーテーブルで会計帳簿には記載されません。会計帳簿に値引きや割引やコミッションの旨が記載されておらず、密かに現金やその他の方法で割戻金を払うことは贈賄と見なされる可能性があります。資金源としては、会社担当者が引取業者と結託して廃材、作業屑、備品等を売却する場合の代金の一部や、ファミリー(親族)企業等に工事を発注した場合の代金の一部が小金庫にプールされ裏金として利用されていることもあります。


3.経営管理上の落とし所

特に贈賄に関しては日本本社が「重要な取引を失ってもコンプライアンスを優先する」という強い指導方針を明文化することが大切です。方針、発注、受注、入札、申請、贈答、交際費、経理処理など定めたグローバル・ポリシーを日本本社が策定し、現地子会社に社内規程や運用マニュアルに反映します。取引先との契約書に反贈収賄条項を規定することも検討すべきです。内部通報制度、購買管理規程の制定、購買先選定過程におけるモニタリングの実施、購買先と購買担当者の定期的な見直し等も規定し運用すべきです。

VI.頻繁な法令改正

経営課題の背景

突然の法令改正に伴い予定していた新ビジネスの展開が困難になった。


1.法務の視点

法令改正は突然行われるように見えますが、実は中国政府の長期的方針や「5ヵ年計画」、5ヵ年計画をブレークダウンした計画に基づいて法令化がなされており、事前に予測可能なものもあります。

長期タームでは、過去の中国政府の長期的な方針のもとに経済政策が規定されてきました。日本からの第1次投資ブーム(1986-1988年:外資規制緩和)、第2次(1995-1997年:南巡講話、外商投資誘致)、第3次(2003-2005年:WTO加盟)を経て、2008年には外資優遇税制が解消されました。中国政府が今後、経済成長のエンジンを華為、アリババ、騰訊(テンセント)などの中国のIT企業に位置付けようとするのか、今後も特定の分野は外資の力を借りようとしているのかどうか見極める必要があります。

中期タームでは、政府の「5ヵ年計画」に注目すべきです。最近では2016年3月公布の「第13次5カ年計画」ですが、法令の施行は当該計画をブレークダウンした産業別、都市別計画に基づいていることが多いです。

製造業については「中国製造2025」(国務院発[2015]28号)では、中国の製造業はコアの基礎技術や生産技術、重要基礎材料、産業技術基盤が脆弱であると自己分析し、今後は集積回路や専用設備、情報通信設備、オペレーションシステム、工業用ソフト、ハイレベルNC工作機械、ロボット、新エネルギー自動車、特殊新材料、バイオ医療などの高機能医療機器等を重点分野と位置付けていくことが記載されています。

たとえば、2017年9月公布の省エネのための乗用車の平均燃費規制(CAFE)および新エネルギー車(NEV)を一定の割合で生産販売することを要求する「クレジット管理実施弁法」(第44号)も、これらの計画に沿ったものです。これにより中国の日系の完成車メーカーや販売会社は、中国国内での大きな戦略転換を強いられることになりました。

また2017年6月から施行された「サイバーセキュリティ法」(インターネット安全法)は、ネット犯罪やサイバーテロ等から国家安全を確保するために、中国でインターネット環境の情報運営者に中国国内で収集した個人情報や重要データの中国国内での保存を義務付けています(同法第37条)。これにより中国IT企業は外資系IT企業より国内の事業基盤はより強固になりますが、国境を越えたデータの流通が阻害されると、一般の日系企業でも、たとえば中国の顧客情報を基にした商品開発や、サプライチェーンの運用に支障がでてくる恐れがあります。

短期タームでは、法案草案(起草趣旨)や公開質問(法令草案意見募集稿)などが記載された国務院の立法業務計画が参考になります。たとえば「外国投資法」(草案)が公布されると、中外合弁企業法、中外合作企業法、独資企業法の「外資3法」が統合され廃止される予定なので、これらの外資3法に準拠して作成された合弁契約書や定款の改訂が必要になるでしょう。


2.税務の視点

税制の分野では、第13次5ヵ年計画によると消費税の整備、資源税拡大、不動産税の立法、関税の整備、通関と政府情報の一体化、税収徴収管理の整備、電子インボイスの推進等が今後注目すべきポイントです。

直近の動向としては、2018年4月4日に財政部及び国家税務総局が公布した増値税率変更についての通知第32号により、減税規模をさらに進めるために2018年5月1日から貨物の販売及び輸入等に係る増値税率17%が16%へ、引き下げられます。詳細については、今後の通達等の公布がまたれるところです。


3.経営管理上の落とし所

新エネルギー車規制やサイバーセキュリティ法でもわかるように、中国政府は約13億の人口を基に、中国独自の法規制と技術により、中国独自の巨大なマーケットを形成し、世界経済に大きな影響を及ぼすようになってきました。この傾向は今後も続くと思います。

この中国マーケットで勝負してゆくには、中国政府の政策を冷静に分析し、今後の方向性を洞察力をもって見極め、ビジネスへの影響を検討し、戦略を再構築し、子会社経営を適時に軌道修正していく臨機応変さが特に日系企業には強く求められていると思います。

また中国は特定の地域で法令を先行的に試行してみて、支障があれば軌道修正したうえで、細則まで決まっていない段階でも法令を全国展開し施行するという良い意味でスピード感のある柔軟な姿勢も持っています。公布された個々の新法令等については、各地域での実際の執行状況まで見極める姿勢も日本本社には要求されていると思います。

執筆者

KPMG/有限責任 あずさ監査法人
グローバルジャパニーズプラクティス
中国事業室
シニアマネジャー 増田 進

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