高度な専門性と組織間の連携により全社最適を目指す | KPMG | JP
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高度な専門性と組織間の連携により全社最適を目指す

高度な専門性と組織間の連携により全社最適を目指す

グローバルタックスマネジメントを実現する10のポイント 第6回 - 税務を取り巻く環境は、かつてないほどの複雑化に直面している。こうした環境において、税務リスクの低減と税務コストの最適化を進めるには、組織の整備を進め、効果的なタックスマネジメントが可能な体制を構築する必要がある。こうした組織整備において重要な鍵を握るのが、個々の領域に特化した職能別チームの組成と、事業部や海外拠点への税務担当の配置である。

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多様化・複雑化する税務リスクへの対応が急務

近年、経済のグローバル化が加速し、企業が直面する税務リスクは多様化・複雑化の一途をたどっている。その引き金となったのは、欧米の多国籍企業による過剰な節税がもたらした、BEPSの問題であった。これを機に、2015年に新たな国際課税ルールが導入され、それを受けて日本政府も税制改正の一環として「新移転価格文書化制度」を導入。多国籍企業は税務当局に対して、グローバルな利益配分と税額を明示した文書の提出を義務付けられることとなった。

こうした中、急速に顕在化してきたのが、新興国における課税リスクである。新興国の税務当局は、歳入目標を容易に達成するために、外資系企業をターゲットにした課税を強化する傾向がある。国際ルールの独自解釈や利益移転の疑いをかけられた結果、膨大な追徴課税を受ける例が跡を絶たず、国際的な二重課税リスクもかつてないほど深刻化している。

こうした税務リスクが顕在化しているのは、移転価格の領域だけにとどまらない。関税や間接税の制度や恒久的施設(PE)認定等の国際ルールの解釈も、国ごとに多種多様かつ複雑を極めており、企業の事業運営に無視できないインパクトをもたらしている。

現在、日本企業の間でも移転価格税制への対応が進んでいるが、国際税務リスクへの備えという点では、まだまだ道半ばといわざるをえない。「税務部門の地位向上なくして、税務の最適化は実現できない」でも述べたように、日本企業の税務部門は慢性的な人材不足に悩み、税務申告や税務調査対応といったコンプライアンス業務に忙殺されている。このため、限られた人員が、国内・国際税務や移転価格・関税・間接税など多岐にわたる領域を兼務しており、グローバル企業として最低限必要なタックスプランニングにすら着手できていないのが実情だ。

しかしながら、このような体制下では、複雑化する税務リスクに対応することは極めて難しい。こうした状況を克服するためには、税務部門が職能毎に特化したチームを組成し、スペシャリスト集団として専門性を高めながら、潜在するリスクに目を光らせていくことが肝要である。

「地域」と「機能」の組み合わせでチームを組成する

税務リスクへの対応については、欧米のグローバル企業が先進的な取り組みを行ってきた。こうした企業においては、税務の専門分化が進み、各分野に精通した担当者が、全世界の進捗状況や税務リスクの管理・監督を行っている。BEPS問題を機に、一部の欧米流の過剰なタックスプランニングに対しては逆風も吹いているとはいえ、その極限まで効率化された税務管理モデルには学ぶところも多い。こうした先進モデルを参照しながら、各社の規模や日本企業の実情に即したチーム組成を行うことが重要である。

では、税務の組織整備において、まず押さえておくべきポイントとは何か。それは、「地域」と「機能」の2つの観点からチーム分けを行うことである。

職能別チームの組成

まず、地域面では「国内税務」と「国際税務」で役割を分担し、機能面では、従来の「コンプライアンス」に加えて「プランニング」のチームを組成する。これらの要素を必要に応じて組み合わせ、チームを編成するのが最も基本的な方法である。

例えば、国内で企業買収や事業再編を行う際には、「国内税務」と「プランニング」を組み合わせ、海外企業を対象としたクロスボーダーM&Aの案件では、「国際税務」と「プランニング」を組み合わせたチームを編成する。日本企業においては、とりわけ「国際税務」と「プランニング」に精通した税務人材が不足しており、外部の活用も含めて人材を補充していく必要がある。

しかしながら、企業規模や活動実態によっては、上記の方法に加えて、より一層細分化されたチームを組成する必要がある。本社税務部門には、自社が直面している課題を洗い出し、その解決に資する体制を組むことが求められるのである。

税務上の課題に特化した職能別チームの組成が鍵

職能別チームの組成にあたっては、税務部門の陣容や事業内容、サプライチェーン体制など、企業の個別事情を考慮する必要がある。とはいえ、「移転価格」や「関税」「間接税」など、国際税務の焦点となっている領域においては、個々の課題に特化したチームを編成することが望ましい。

その理由とは何か。移転価格については冒頭でもふれたので、ここでは関税について述べる。

輸入品にかかる関税の税率や課税品目は、国によって千差万別である。同じ商品でも、関税の高い国から輸入すれば、それだけコストがかさんで利益を圧迫する。このため、サプライチェーンの構築にあたっては、輸入先国の関税率に細心の注意を払う必要があることはいうまでもない。

ところが、従来のタックスプランニングにおいては、関税は管理の対象とはなりにくい側面があった。なぜなら、財務諸表において関税は「売上原価」や「製造原価」に埋没していることが多く、経営管理上、関税コストを「見える化」するインセンティブが働きにくいためだ。

しかしながら、国と品目によっては数十%近い関税が課されるケースもあり、その税務リスクには座視できないものがある。同様に、輸入品にかかる消費税(付加価値税)や売上税などの間接税も、欧州では軒並み20%を超えており、これらの受け払いがキャッシュフローに及ぼす影響はけっして小さくない。

したがって、グローバルに税務を最適化するためには、税務部門は移転価格のみならず関税や間接税についても精通し、モニタリングしておく必要がある。それと同時に、自社の事業に照らして、どのような観点から税務リスクと税務コストを管理すべきかを熟慮することが、真に効果的な職能別チームの組成を可能にするのである。

事業部や海外拠点にも税務の窓口を設け、情報を収集

効果的なタックスマネジメントを可能にする組織管理の手法は、それだけではない。事業部や海外子会社に税務担当を配置して本社との機能分担を図ることも、税務インフラ構築における重要なポイントである。

事業部への配置

事業部への税務担当配置がもたらす最大のメリットは、本社税務部門と事業部とのコミュニケーション強化である。「事業計画の策定に税務が関与することが、グローバルタックスマネジメントの第一歩」でも述べたように、日本企業の多くは、税務の充分な関与がないまま事業計画を策定し、結果として過剰な税務リスクを抱え込んでいる。そこで、事業部に税務の窓口をつくることにより、その情報を内部から収集することで税務の全社最適化に向けた突破口とするのである。

一方、海外子会社や地域統括会社に税務担当を置くメリットとは何か。

税制は国ごとに大きく異なるため、現地国の税制に精通していなければ、課税トラブルの発生を未然に防ぎ、適切に対処することはできない。したがって、本社の税務部門だけで全世界の税務管理を行うことは、非効率であると同時に極めて困難でもある。

そこで、各国の子会社や地域統括会社、少なくとも地域統括会社には税務担当を置き、現地の税制や税務に精通した人材を配置する。その上で、本社税務部門と連携して現地の情報を共有し、税務リスク管理の効率化を図るのである。また、現地の税務に精通した人材を自社で確保できない場合は、国際的な会計事務所など、外部の専門家に委託するといった方法も考えられる。

このように、主要な事業部や主要な進出先国・地域に税務担当を配置し、本社税務部門との連携を強化することは、現地での税務調査対応や問題解決を円滑にするのみならず、全社最適の促進にもつながる。税務のネットワークを世界中に張り巡らし、強固な税務インフラを構築することは、グローバルタックスマネジメントを実践する上で欠かせない条件といえる。

成功の鍵は組織間コミュニケーションの円滑化

以上、税務部門の組織整備のポイントについて述べた。しかしながら、仮に税務インフラの整備を行ったとしても、各々の組織やチームが部分最適に走っては意味がない。税務インフラの構築が成功するかどうかは、いかに各組織・チームが互いに連携し、全社最適を追求できるかにかかっている。

例えば、移転価格税制と関税は監督官庁が異なり、互いの興味がトレードオフの関係にあるといわれる。前者では利益に税率をかけて税額を算出するため、売上原価(輸入仕入れ価格)を低めに認定する傾向があるのに対して、後者はインボイス価格(輸入価格)に税率をかけることで税額を算出する一般的な性質上、輸入価格を高めに認定する傾向がある。仮に、海外子会社に利益を配分するため、本社で製造した製品のインボイス価格を値下げして輸出した場合、関税を減らしてコストを下げることはできても、利益が膨らむため法人税は増えてしまう。のみならず、関税は関税当局、法人税は国税当局の管轄下にあるため、どちらか一方の観点から価格の調整を行えば、他方から追徴課税を受けるリスクもある。これは、税務部門内で部分最適を追求した場合に起こりうる問題の1つである。こうした事態を防ぐためには、日頃から各チームがコミュニケーションを欠かさず、情報共有しながら最適解を求めていくことが必要だ。

いずれにせよ、グローバルタックスマネジメントの実践が可能な税務インフラを構築できるかどうかは、税務部門の組織を拡充し、十分な人員を確保できるかどうかにかかっている。そのためには、まずトップマネジメントが税務部門の重要性を認識し、積極的に投資を行うことが必要だ。税務コストの最適化は税引後利益の拡大をもたらし、ひいては財務的な基盤の強化につながる。そのことをよく理解した上で、効果的な税務管理体制(グローバルタックスマネジメント)を構築していくことが求められているのである。

グローバルタックスマネジメントを実現する10のポイント

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