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BEPS行動計画13対応 ロシアにおける移転価格文書化関連の税制改正

BEPS行動計画13対応 ロシアにおける移転価格文書化関連の税制改正

2017年11月27日、連邦法No.340-FZ「多国籍企業グループの文書および情報の国際自動交換の実施のためのロシア税法典第一部の改正に関する法律」が施行された。

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移転価格文書化関連の税制改正の概要

改正法はグループ連結売上高が500億ルーブル以上(最終親会社がロシア税法上の居住者である場合)の多国籍企業グループを構成するロシアの納税者、あるいは、最終親会社がその税務管轄国・地域において前事業年度に国別報告書の作成義務を負っている多国籍企業グループを構成するロシアの納税者に対して、以下の移転価格文書の作成を義務付けるものである。

  • ロシア納税者が多国籍企業グループの構成会社等であることの通知(「国別報告に関する通知書」)
  • 国別報告書
  • マスターファイル
  • ローカルファイル
  • ロシア税法典105.15条に規定する移転価格文書(新たに法律に追加された情報含む)


多国籍企業グループとは、資本や支配を通じて構成される企業集団(法人格のない拠点を含む)で、以下すべての条件を満たすものである。

  • ロシア法令により連結財務諸表を作成する場合、あるいは株式の取引認可を得るとしたならば同証券取引所のルールにより連結財務諸表を作成することになる場合
  • 少なくとも一つの事業所がロシアの税法上の居住者(以下「ロシア居住者」という)である、あるいはロシアにおいて課税対象となる外国企業(例:外国企業のロシアに所在する恒久的施設)であること
  • 少なくとも一つの事業所がロシア居住者ではない、あるいは外国において課税対象となるロシア企業であること


法令において多国籍企業グループの定義の詳細は明らかにされていないが、本稿にて紹介する新規定は、ロシアの法令等に従って連結財務諸表を作成する必要のない非上場の多国籍企業グループには適用されないものと解釈される。しかしながら、OECDのガイドラインは、上場か非上場かに関わらずすべての多国籍企業グループにBEPS行動計画13を適用するとしている。

従って、非上場の多国籍企業グループは本改正による新たな要求事項への遵守に特に留意すべきであり、ロシア税務当局に国別報告書の作成義務の有無を確認することも一策であろう。また、その非上場の多国籍企業グループが国別報告書を導入している外国に子会社や恒久的施設を有する場合、国別報告書をその拠点所在地において提出義務が生じる可能性もあることも留意すべきである。


多国籍企業グループの構成会社等とは、以下を指す。

  1. すべての多国籍企業グループの独立した事業単位
  2. 前事業年度末時点で、多国籍企業グループを構成する法人で、重要性や規模の観点のみによって連結対象から除外されている拠点
  3. 上記1.2に該当する法人等のすべての恒久的施設

改正法における移転価格文書および報告に関する主要な要求事項

  国別報告に関する通知書 国別報告書
適用開始年度 2017年度
(2016年度より任意提出可能)
2017年度
(2016年度より任意提出可能)
提出期限 事業年度終了から8か月以内 (1)事業年度終了から12カ月以内
(2)当局の求めに応じて提出が必要(ロシア税法において提出義務がない場合)税務署は納税者に3か月以上の提出猶予期間を与える必要がある。
罰則 RUB 50,000
通知義務不履行、提出遅延、不正確な通知を行った場合。
(2020年度より適用)
RUB 100,000
報告義務不履行、提出遅延、不正確な報告を行った場合。
(2020年度より適用)
作成言語 ロシア語。 原則ロシア語。
多国籍企業グループの最終親会社がロシア居住者でない場合は外国語も認められる。
ロシア語の報告に加えて追加情報を提供する際には、納税者は外国語で提供する権利を有する。
報告者 多国籍企業グループを構成するロシア居住者。 (1)多国籍企業グループの最終親会社であるロシア居住者
(2)(1)以外の多国籍企業グループを構成するロシア居住者
免除規定 多国籍企業グループの最終親会社が当該納税者を含む「国別報告に関する通知書」をロシアで提出している場合。 多国籍企業グループの最終親会社が所在国・地域・地域において国別報告書を提出し、当該所在国・地域とロシア当局の間で情報の自動交換が行われる場合。
様式 所定の電子様式 所定の電子様式
主な内容
  • 構成会社等の登記情報詳細
  • 多国籍企業グループの構成会社の位置付け
  • ロシア連邦が特定した戦略的企業リストに含まれる会社か否か
  • 最終親会社に関する情報
  • 一つの事業所が代表会社として、ロシア国内の他の構成会社等の代理として提出を行う場合には、その根拠。

所在国・地域に関連する下記情報;

  • 非関連者からの売上高
  • 関連者からの売上高
  • 税引前利益
  • 発生税額
  • 納付税額
  • 資本金および利益剰余金
  • 従業員数
  • 有形固定資産
  • 多国籍企業グループを構成するに至った日付

※納税者は、IFRS、現地会計基準のいずれか採用している基準をもとに報告書を作成することが認められる。

 

  マスターファイル ローカルファイル
適用開始年度 2017年度 2018年度
提出期限 当局の求めに応じて提出が必要。
当局の提出要請のタイミングは、通常は、事業年度終了から12-36カ月の期間。
税務署から要請された場合には、3か月以内に提出が必要。
当局の求めに応じて提出が必要。
当局の提出要請のタイミングは2018及び2019年度は翌年12月末以降、2020年度以降は翌年6月1日以降。
税務署から要請された場合には30日以内に提出が必要。
罰則 RUB 100,000
提出遅延の場合
(2020年度より適用)
RUB 100,000
提出遅延の場合
(2018年度より適用)
作成言語 ロシア語。
ロシア語の報告に加えて追加情報を提供する際には、納税者は外国語で提供する権利を有する。
ロシア語。
ロシア語の報告に加えて追加情報を提供する際には、納税者は外国語で提供する権利を有する。
報告者 多国籍企業グループを構成するロシア居住者
(多国籍企業グループの最終親会社であるロシア居住者がマスターファイルをロシア税務署に提出済の場合、税務署は同グループの他のロシア居住者に提出を要請することはできない)。
同一の多国籍企業グループを構成する外国の他事業所と移転価格税制の規制対象取引(以下「規制対象取引」という)のあるロシア居住者。
免除規定 - -
様式 指定なし 指定なし
主な内容
  • 持ち株、支配構造
  • 事業内容、戦略
  • グループの売上の5%以上を構成する
  • 要製品の内容
  • 重要な契約
  • グループの各構成会社等の機能分析
  • 重要性のある組織再編
  • グループが保有している無形資産
  • 取得している事前確認(APA)の情報など
ロシア税法典105条15項に定められる内容と同様(改正により追加された情報に留意要、詳細は下記「ローカルファイル」参照)。

同一事業年度においてマスターファイルに記載されている情報は再掲する必要はなく、マスターファイル参照とすればよい。

本改正に際して貴社が対応すべき主な事項

国別報告に関する通知書および国別報告書

国別報告に関する通知書

複数の事業所をロシア国内に有する場合には、ロシアにおいて国別報告に関する通知書を下記のいずれかの方法で提出する必要がある。

1.それぞれのロシア事業所から通知書を提出
2.一つの事業所がグループのロシア事業所を代表して通知書を提出

一つの事業所がロシア国内のグループの構成、詳細をとりまとめ、所定の様式にて提出することが推奨される。


国別報告書

国別報告書は、最終親会社がロシア居住者である場合には、必ず提出が必要となる。

最終親会社がロシア居住者でない場合には、ロシア税務当局より国別報告書の提出を求められる可能性がある。国別報告書の提出期限は別途ガイドラインに規定されるが、税務署に要請された際には最短で3か月後に提出が必要である。

ロシア居住者で下記のいずれかに該当する納税者は、国別報告書を提出しなくてもよい。

1.当該納税者の国別報告書を最終親会社がロシアにおいて税務当局に提出している。
2.最終親会社の所在国・地域が以下のすべての条件を満たしている。
 

条件 多国籍企業グループを構成するロシア納税者が対応すべき事項
ロシア同様の国別報告書の作成義務がある。 外国政府における国別報告書の実施概要は以下のKPMGウェブサイトより確認できる。
BEPS Action 13:Country implementation summary(English PDF:2.12MB)
グループの最終親会社の所在国・地域において適格な作成義務が実施されているか否かを確認することが推奨される。
ロシア政府と租税条約を締結しており、国別報告書の情報交換が行われている。 ロシア連邦税務当局は、情報交換規定を含めた適格な国別報告書の作成義務を導入している国・地域のリストについて、本改正法施行から6か月以内に発行しなければならないとされている。
グループの最終親会社の所在国・地域が当該リストに含まれているかを確認し、更新情報をモニターすることが推奨される。
Country-by-Country exchange relationships
国別報告書の自動情報交換義務を組織的に履行しない国・地域のリストに記載されていない。 ロシア連邦税務当局は本改正施行から12か月以内にリストを発表する予定である。
最終親会社の所在国・地域がリストに含まれていないか確認を推奨。
最終親会社が国別報告書を提出している。 最終親会社の所在国・地域の所管当局より国別報告書が提出されている旨の確認を取得することが推奨される。


3.納税者が前事業年度の連結売上高500ルーブル億未満の多国籍企業グループを構成する事業所である。

※OECDガイドラインとは異なり、ルーブルへの換算は、報告対象の前事業年度における平均為替レートが用いられる。

規模やグループ構成会社数にもよるが、国別報告書の作成・提出にあたっては、多くの情報を収集する必要があるので、遅くとも提出期限の3~4か月前より報告書の作成を開始することが推奨される。

各国当局に提出される情報の整合を担保するため、国別報告書におけるロシアの事業所に関するデータは最終親会社により十分に確認されるべきである。
 

マスターファイル

ロシアに所在する多国籍企業グループの最終親会社は、法律に定められる要件と様式に従って、マスターファイルを作成しなければならない。


マスターファイルが外国の最終親会社によって作成される場合、マスターファイルの中で用いられている手法がロシア移転価格規制を遵守していることを確認の上、ロシア当局に求められた場合に提出できるよう、ロシア語へ翻訳しておくことが推奨される。


マスターファイルに所定の様式はないが、以下の項目を含まなければならないとされている。

  • 多国籍企業グループの持ち株・組織構造
  • 多国籍企業グループの活動内容(業績を牽引する主な要因、主要な5種類の製品に関するバリューチェーン、グループ会社間の役務提供契約、グループ各社の機能、グループの再編など)
  • グループが保有している無形資産(研究開発に関する戦略、無形資産取引に関する対価の設定方法)
  • グループ内金融に関する情報
  • ロシア税法典が想定するその他の情報


改正法では、OECDガイドラインの様式に加え、マスターファイルに含めるべき追加的な情報を規定していることに留意が必要である。特に、取引価格合意書や税務上の取扱いに関する各国当局からの事前確認文書の概要や一覧、簡潔な説明、を提出する必要があることを特筆しておきたい。これらの情報の準備にあたっては、各国・地域間の収益配分に影響するグループ間取引に適用される税金や納税を管理監督する当局の関与があってはならない。


上記の規定はロシア連邦におけるマスターファイルの作成に適用されるものである。
ついては、マスターファイルに関してロシア同様の要求事項がある国・地域に登録されている構成会社等がある場合には、その内容を確認することが肝要である。

いくつかの国・地域では、マスターファイルの作成を要請されるグループ連結売上高基準が、ロシア税法において国別報告書の作成を要請される基準より低く設定されている。(例:オランダ EUR 50mil, スペイン EUR 45milなど)従って、海外でマスターファイル作成を義務付けられる多国籍企業グループの数は、ロシア税法により国別報告書の作成を義務付けられる多国籍企業グループの数よりも著しく多くなる可能性があるので留意を要する。

ローカルファイル

所定の様式は定められていないが、多国籍企業グループの構成会社等は、個々の規制対象取引(あるいは、同種の複数の規制対象取引)毎にローカルファイルを準備する必要がある。

ローカルファイルは、ロシア税法典105.15条に規定される移転価格文書と同様に、経済分析の結果を踏まえた規制対象取引に関する情報を含んでいなければならない。


ローカルファイルは外国の関連者あるいは多国籍グループの構成会社との規制対象取引(あるいは、同種の複数の規制対象取引)に関して、改正後のロシア税法典105.15に基づき以下の追加情報を含む必要がある。

  • ロシア居住者の経営・組織構造、各種報告を提出する所管当局を特定できる情報および事業を実施している管轄地域
  • 規制対象取引の価格決定に影響を与える重要な契約書の写し
  • 規制対象取引の取引価格合意書の写し及び税務上の取扱いなどに関連して外国の当局などから取得した事前確認文書などの写し(ロシア当局が関与していないもの)
  • 監査報告書(法定監査義務があるあるいは任意監査を実施している場合)


現行の移転価格文書のテンプレート(多国籍企業グループを構成するロシア居住者が使用可能なもの)を外国の相手先とのグループ内取引という観点で確認を行い、上述の追加情報を確認することが推奨される。

上記の規定はロシア連邦におけるローカルファイルの作成に適用されるものである。(規制対象取引のある)グループ拠点がローカルファイルの作成義務を導入している国・地域(例:オランダ、ドイツ、スペインなど)に所在している場合には、同国・地域の規定を考慮すべきである。


2018年4月
KPMGロシア モスクワ事務所 グローバルジャパニーズプラクティス

執筆者

KPMGロシア
モスクワ事務所 グローバルジャパニーズプラクティス
シニアマネジャー 大西 洋平
マネジャー 柴田 曜

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