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平成30年3月期決算の留意事項(税務)

平成30年3月期決算の留意事項(税務)

本稿では、大企業(主に資本金1億円超の法人)の平成30年3月期の税務申告および繰延税金の計算に影響のある項目から5つにフォーカスし、改正のポイントについて解説します。

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「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という考え方のもと平成27年度および平成28年度の税制改正において段階的に行われた、法人実効税率の引下げと欠損金の繰越控除の制限拡大がいよいよ最終段階を迎えようとしています。また、平成29年度税制改正では、役員給与の取扱いが見直されたほか、税額控除の対象とされる試験研究費の範囲に新たなサービスの開発に係る費用の追加等が行われました。

本稿では、大企業(主に資本金1億円超の法人)の平成30年3月期の税務申告および繰延税金の計算に影響のある項目から5つにフォーカスし、改正のポイントについて解説します。

なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

I.法人実効税率の引下げ

1.法人実効税率の引下げ

外形標準課税の対象法人(期末資本金の額が1億円を超える法人で、電気供給業、ガス供給業および保険業を行う法人等以外)の法人実効税率が、平成30年4月1日以後に開始する事業年度から引き下げられます。平成30年3月期の法人税申告書等に適用する税率に変更はありませんが、繰延税金の計算には留意が必要です。

図表1および図表2は、法人事業税および地方法人特別税が損金算入されることを考慮し、所得800万円超に対する税率(図表1は標準税率、図表2は東京都の税率)を用いて計算した実効税率を示しています。

図表1 標準税率

図表2 東京都の税率

(平成31年10月1日以後に開始する事業年度については、地方法人特別税が廃止(法人事業税に復元)されるほか、法人住民税の税率の引下げおよび地方法人税の税率の引上げが行われますが、内国法人の実効税率への影響は軽微なものにとどまります。)

2.法人事業税の税率改正に伴う負担変動の軽減措置

法人事業税については、平成27年度および平成28年度の2年間で、所得割の税率が1/2に引き下げられた一方、外形標準課税(付加価値割・資本割)の税率は2.5倍に引き上げられました。そこで、所得に比して外形標準課税の課税標準が大きい法人の急激な負担増加を緩和する措置が、付加価値額(付加価値割の課税標準)が40億円未満である法人について、設けられています。その軽減措置は、図表3に示すように逓減する仕組みです。

図表3 外形標準課税の負担変動の軽減措置

A =(a)-(b)

(a): その事業年度における法人事業税の合計額
(b): その事業年度の課税標準に平成28年3月31日現在の税率を乗じて計算した法人事業税の合計額

 

3.所得拡大促進税制の要件を満たす場合の付加価値割の特例

外形標準課税(付加価値割)の税率引上げが企業の賃上げへの取組を阻害しないようにするため、所得拡大促進税制(III.をご参照ください。)の要件を満たす法人については、付加価値額の計算上、図表4の金額を控除することを認める3年間の特例措置が設けられています。3月決算法人の平成30年3月期は、この措置の最終適用年度となります。

図表4 控除額

(当期の給与等支給額-基準事業年度の給与等支給額)×雇用安定控除調整率

雇用安定控除調整率=(収益配分額-雇用安定控除額)/収益配分額

II.欠損金の繰越控除

欠損金の繰越控除制度の控除限度額および繰越期間については、以下のように改正が行われています(図表5参照)。

図表5 欠損金の繰越控除

(欠損金の繰越控除制度とは、(1)青色欠損金の繰越控除制度、(2)連結欠損金の繰越控除制度等をいいます。なお、中小法人や一定の新設法人等については、繰越控除限度額の制限を受けません。)

III.所得拡大促進税制

平成29年度税制改正では、企業に賃上げインセンティブを与える観点から所得拡大促進税制の見直しが行われ、青色申告法人である大企業(中小企業者以外)の平成30年3月期については、要件(c)が厳しくなる一方(図表6参照)、控除額が拡充されました(図表7参照)。要件(a)の率の引上げも予定どおり行われています。

図表6 要件(全てを満たすこと)

(a) 当期の給与等支給額 ≧ 基準事業年度の給与等支給額×105%
(b) 当期の給与等支給額 ≧ 前期の給与等支給額
(c) 当期の平均給与等支給額 ≧ 前期の平均給与等支給額×102%


用語の意義

  • 給与等支給額:国内雇用者に対する給与等の支給額で、各事業年度の法人の所得の金額の計算上損金の額に算入されるもの
  • 国内雇用者:法人の使用人(役員の特殊関係者および使用人兼務役員を除く。)のうち、その法人の国内の事業所に勤務する雇用者として労働基準法に規定する賃金台帳に記載された者
  • 基準事業年度:平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度(3月決算法人の場合、一般的には、平成25年3月期となります。)
  • 平均給与等支給額:継続雇用者に対する給与等支給額の平均値

図表7 税額控除限度額

(i)+(ii) (法人税額の10%が上限)

(i) (当期の給与等支給額 - 基準事業年度の給与等支給額)×10%
(ii) (当期の給与等支給額 - 前期の給与等支給額)×2%

IV.試験研究費の税額控除

1.税額控除限度額の見直し


(1)総額型税額控除

平成29年度税制改正により、総額型の税額控除限度額が試験研究費の増減に応じた金額とされ、青色申告法人である大企業(中小企業者以外)の平成30年3月期における税額控除限度額は、図表8のようになります。

図表8 税額控除限度額(試験研究費×税額控除率)

増減試験研究費割合 税額控除率
5%超の場合 9%+(増減試験研究費割合 - 5%)×0.3
(上限:2年間は14%、それ以降は10%)
5%以下の場合 9% - (5% - 増減試験研究費割合)×0.1
(下限:6%)

 

税額控除額の上限

  • 原則:法人税額の25%
  • 特例:法人税額×25%+法人税額×{(試験研究費割合 - 10%)×2}
    (上限:法人税額の35%)
    2年間の時限措置、試験研究費割合が10%超であり、かつ、高水準型税額控除を適用しない場合に限る。


用語の意義

  • 増減試験研究費割合:[1]/[2]
    [1]:当期の試験研究費 - 比較試験研究費
    (マイナスの場合、そのマイナスの額)
    [2]:比較試験研究費
  • 比較試験研究費:当期前3年以内に開始した各事業年度の試験研究費の平均値
  • 試験研究費割合:当期の試験研究費/平均売上金額
  • 平均売上金額:当期および当期前3年以内に開始した各事業年度の売上金額の平均値
  • 2年間:平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する事業年度


(2)オープンイノベーション型税額控除

特別試験研究費(大学等との共同試験研究・大学等への委託試験研究の費用等)については、(1)の総額型税額控除に代わり、オープンイノベーション型税額控除の対象とすることが認められています。オープンイノベーション型税額控除の限度額は平成29年3月期と同様ですが、共同試験研究・委託試験研究の相手方に支払う費用の範囲に間接経費(光熱費等)を含むこととする等、運用における見直しが行われました。


(3)上乗せ税額控除

時限措置である上乗せ税額控除については、増加型が廃止され、高水準型が2年間(平成31年3月31日までの間に開始する事業年度まで)延長適用されることになりました。

 

2.試験研究費の範囲

従前の製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究のために要する費用に加え、対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究費(データの収集・分析、サービスの設計・確認の業務等に要する一定の費用)も、試験研究費の税額控除の対象として取り扱われることとされました。

V.役員給与

平成29年度税制改正において、役員給与の規定が大きく見直されました。以下は改正後の役員給与の取扱いの概要です。

 

1.損金算入される役員給与の3類型

損金算入される役員給与の3類型(以下の(1)から(3))の改正の主なポイントは以下のとおりです。

なお、株式・新株予約権が交付される給与が(2)または(3)の給与とされるためには、「適格株式」・「適格新株予約権」が交付されるものであることが必要です(図表9参照)。

図表9 適格株式・適格新株予約権

適格株式 市場価格のある株式または市場価格のある株式と交換される株式(役務の提供を受ける法人または関係法人が発行したもの)
適格新株予約権 その行使により市場価格のある株式が交付される新株予約権(役務の提供を受ける法人または関係法人が発行したもの)
関係法人 役務の提供を受ける法人の50%超を保有する法人(保有期間要件あり)

 

(1)定期同額給与

定期給与の各支給時期における支給額から源泉所得税、特別徴収される住民税および社会保険料等を控除した後の金額(手取り額)が同額である場合には、その定期給与の各支給時期における支給額は同額であるものとみなすこととされました。


(2)事前確定届出給与

  • 事前確定届出給与の対象となる給与が、[1]確定した額の金銭、[2]確定した数の株式・新株予約権および[3]確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式・特定新株予約権の3類型とされました。下線部分が新たに追加されたものです。これにより、対象期間経過後に確定数の株式を交付する、いわゆるリストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)等が事前確定届出給与の対象に含まれることになりました。
  • 事前確定届出給与の要件の1つである「定期同額給与および利益連動給与以外の給与」が、(3)の改正に伴い、「定期同額給与および業績連動給与以外の給与」と改正されました。


(3)一定の業績連動給与(改正前:利益連動給与)

平成29年度税制改正前は、業務執行役員に対して支給される利益連動給与で、4要件([1]支払法人要件、[2]算定方法要件、[3]支給時期要件、[4]損金経理要件)を満たすものが損金算入されることとされていましたが、平成29年度税制改正において、新たに業績連動給与(業績を示す指標を基礎として算定される額・数の金銭・株式・新株予約権による給与等)が定義され、業績連動給与のうち、4要件を満たすものが損金算入されることとされました。改正の主なポイントは以下のとおりです。

  • [1]支払法人要件については、従前の非同族会社だけでなく、非同族会社による完全支配関係がある同族会社(たとえば、上場会社の100%子会社)も要件を満たすこととされました。
  • [2]算定方法要件を満たすための指標については、従前の単年度の利益を示す指標に加え、(i)利益、(ii)株価および(iii)売上高((i)または(ii)の指標と同時に用いられるもの)を示す指標が加えられたほか、複数年度の指標を用いることも認められることとなりました。
  • 損金経理により引当金勘定に繰り入れた金額を取り崩す方法も、④損金経理要件を満たすこととされました。
  • 金銭の支給のほか、株式・新株予約権の支給も対象となりました。これにより、業績連動指標に応じた数の株式を支給する、いわゆるパフォーマンス・シェア等も、4要件を満たすことにより、業績連動給与として損金算入できることとなりました。

 

2.その他の関連改正

  • 特定新株予約権(付与された役員・使用人が権利行使したときに給与所得課税が生じる、いわゆる税制非適格ストックオプション)に係る費用については、従前は、役員に係る費用であっても、1.で述べた損金算入される役員給与の3類型に該当するか否かにかかわらず、権利行使時に損金の額に算入することが認められていました。しかし、平成29年度税制改正により、役員に付与した特定新株予約権に係る費用については、1.(2)または(3)の給与に該当する場合のみ、損金の額に算入されることになりました。
  • 役員給与のうち退職給与については、従前は、1.で述べた損金算入される役員給与の3類型に該当するか否かにかかわらず、損金の額に算入されていましたが、平成29年度税制改正により、業績連動給与に該当するものについては、1.(3)の給与に該当する場合のみ、損金の額に算入されることとなりました。

 

3.適用時期等

これらの改正は、原則として、平成29年4月1日以後に支給に係る決議(その決議が行われない場合には、その支給)をする給与について適用されますが、新株予約権および特定譲渡制限付株式に係る改正(確定した数の特定譲渡制限付株式が事前確定届出給与とされる改正を除く。)ならびに退職給与に係る改正については、平成29年10月1日以後に支給に係る決議(その決議が行われない場合には、その支給)をする給与について適用されます。なお、いずれの役員給与も、不正経理によるものおよび不相当に高額であるものは、従前どおり、損金の額に算入されません。

執筆者

KPMG 税理士法人
タックステクニカルセンター
パートナー 村田 美雪
マネジャー 風間 綾

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