固定資産評価額の適正化 - 直近の判例による評価の見直しおよび是正手続きへの影響 - | KPMG | JP
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固定資産評価額の適正化 - 直近の判例による評価の見直しおよび是正手続きへの影響 -

固定資産評価額の適正化 - 直近の判例による評価の見直しおよび是正手続きへの影響 -

本稿では、固定資産評価額の適正化について、現行制度や潜在的問題点等も含め、固定資産審査員会に対する審査の申出等の是正手続きおよびそれに係る直近の判例の影響を中心に概説します。

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今般の企業を取り巻く環境の変化に伴い、Corporate Real Estate (企業不動産、以下「CRE」という)の戦略的管理・運用の必要性が高まり、多くの企業にて、不動産の取得・保有等のコストの減少を図り、CRE全体の価値向上を達成する方法としての「固定資産評価額の適正化」が検討され、または、対応がなされています。
平成30年度は、固定資産税等の課税標準算定の基礎となる「固定資産評価額」の3年に一度の見直しがなされる年度(基準年度)にあたり、今年の4月にはその見直しがなされること、また、当該固定資産評価額に不服がある場合に、納税者側から各自治体の固定資産評価審査員会に対して一定期間内に審査の申し出を行うことができる制度が設けられていることから、固定資産評価額の適正化の検討および対応をされる良い機会であると思われます。
本稿では、固定資産評価額の適正化について、現行制度やその潜在的問題点等も含めて、固定資産審査員会に対する審査の申出等の是正手続きおよびそれに係る直近の判例の影響を中心にその概要を述べていきます。
なお、本文中の意見に関する部分は、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • 平成30年度は、固定資産評価額の見直しがなされる3年に1回の「基準年度」に該当する。
  • 固定資産評価額の算定根拠・過程に誤りが生じている可能性があるが、固定資産評価額の適正性(算定根拠・過程)について確認する機会が納税者に十分に与えられず、誤りがあっても顕在化しがたい。
  • 基準年度において見直された固定資産評価額に不服がある場合は、固定資産評価額が登録された旨の公示から納税通知書の交付を受けた日以降3ヵ月以内に、固定資産評価審査員会に対して審査の申出を行うことができる。
  • 東京都等の一部の自治体においては、建設当初の再建築費評価点に係る不服は、審査の申出の対象外と取り扱われ、納税者の是正手段が残されていなかったが、直近の判例により、是正の道が開かれた。
  • 固定資産評価額の適正化による不動産に係るキャッシュ・フローの改善により、不動産価値の向上も期待できる。

I.「固定資産評価額」とその実務上の問題点

 

  • 固定資産評価額は、固定資産税、不動産取得税等の不動産の取得および保有に伴って課される税金の課税標準の基礎となる評価額であり、固定資産評価基準に基づき算定される。
  • 固定資産評価額は、必ずしも不動産鑑定評価額等の時価とは一致しない。
  • 固定資産評価額を算定する各自治体の担当者は、必ずしも不動産の鑑定評価・建築の専門家ではないため、専門知識の欠如から算定根拠・過程に誤りが生じている可能性がある。


1.「固定資産評価額」とは
「固定資産評価額」は、土地・家屋に係る固定資産税、都市計画税、不動産取得税および登録免許税といった、不動産の取得および保有に伴って課される税金の課税標準算定の基礎となる評価額で、総務省の定める固定資産評価基準に基づき土地・家屋の所在する各自治体により算定されます。


2.固定資産評価基準に基づく評価制度の概要とその問題点

(1)適正な時価と固定資産評価額の関係
固定資産税は、賦課期日(毎年1月1日)現在の固定資産(土地、家屋および償却資産)の所有者に対し、当該固定資産の所在する市町村により課される税金ですが、その課税標準は、賦課期日現在における「適正な価格」とされております。しかしながら、固定資産の所在、立地条件、用途、形状、構造等は多様であり、固定資産毎の適正な時価を算定して課税標準とすることは、課税実務上は困難であり、自治体毎の評価手法の相違または評価者の個人差による評価の不均衡が生じる可能性があります。そのため、自治体または評価者により生じ得る評価の不均衡を解消し、公平な課税負担となるように、固定資産評価基準に基づき定められた画一的な方法により算定された「固定資産評価額」を「適正な価格」とする取扱いが採られております。


(2)固定資産評価制度の問題点

前述のとおり、固定資産評価額は、各自治体により固定資産評価基準に基づき算定・決定されますが、土地・家屋の事実関係に即して固定資産評価基準に従い評価を行う必要があるため、一定程度の土地・家屋の鑑定評価・建築等に係る専門的な知識が要求されます。しかしながら、各自治体の評価担当者は、必ずしもこうした専門家ではないと考えられ、その結果、専門知識の欠如により固定資産評価額の算定根拠またはその過程に誤りが生じている可能性があります。たとえば、埼玉県新座市では専門チームが全件調査を行い約2,800件の過徴収がなされていることを確認し、納税者への還付手続きが行われました。
現行制度においては、土地・家屋の所有者(納税者)に対して各自治体により決定された固定資産評価額と課税標準額および税額のみが通知され、その評価額の算定根拠および過程は非通知となっています。なお、各自治体により決定された固定資産評価額は、固定資産課税台帳に登録され、固定資産税(土地・家屋)の納税者(および納税者から縦覧することについて委任を受けた者)は、その価格が適正であるかどうか、他の土地・家屋と比較できるようにするため、土地および家屋の固定資産評価額等が記載された帳簿(「土地(家屋)価格等縦覧帳簿」といいます)を縦覧できる制度が設けられており、納税者に対して一定の配慮がなされています。しかしながら、当該縦覧制度で確認できるのは固定資産評価額のみで、その算定根拠および過程は開示されておりません。そのため、納税者側に固定資産評価額が適切に算定されているかを確認する機会が十分に与えられているとは言えません。また、納税者側も、各自治体により決定された固定資産評価額に対し特に疑念を持って検証を行うことはせず、そのまま固定資産税等の納税を行っている場合が殆どであると思われます。
このように、元々、固定資産評価額と正常取引価額(時価)とは必ずしも一致しないため納税者側にて価額の妥当性が想定し難い状況のうえ、固定資産評価額の算定根拠等について納税者が確認できる機会が十分に与えられておらず、固定資産評価額の算定に誤りがあってもそれが顕在化しない点が、現在の評価制度における大きな問題点の1つであると考えられます。

II.固定資産評価額の是正手続き

 

  • 基準年度であれば、納税通知書の交付を受けた日後3ヵ月以内に固定資産評価審査委員会に対する審査の申出が可能。
  • 基準年度以外でも、固定資産評価額の算定上の誤りを発見した場合は、是正を申し立てることはできる。
  • 建設当初の再建築費評価点に係る不服は、審査の申出の対象外と取り扱われ、納税者の是正手段が残されていなかったが、直近の判例により、是正の道が開かれた。


1.固定資産評価審査委員会に対する審査の申出
固定資産課税台帳に登録された土地・家屋の価格(固定資産評価額)に不服があるときは、納税者は、固定資産課税台帳に価格等が登録された旨の公示の日から、納税通知書の交付を受けた日後3ヵ月以内に、各自治体に設置された固定資産評価審査委員会に対し、「審査の申出」をすることができます。 固定資産評価審査委員会に対する申出は、上記の期間内に固定資産評価審査委員会に対して審査申出書を提出する方法でなされます。
なお、固定資産台帳に土地・家屋の固定資産評価額が、固定資産課税台帳に登録されるのは新築家屋を除き3年に一度の基準年度であることから、原則として、基準年度以外は当該審査の申出を行うことはできません。


2.審査の申出以外の方法による是正
上述のとおり、固定資産評価審査委員会に対する申出は、原則として基準年度以外は、行うことはできません。しかしながら、地方税法第417条第1項において、「市町村長は、公示の日以後において固定資産の価格等の登録がなされていないことまたは登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、ただちに固定資産課税台帳に登録された類似の固定資産の価格と均衡を失しないように価格等を決定し、または決定された価格等を修正して、これを固定資産課税台帳に登録しなければならない。」と規定されており、固定資産評価額の算定に誤りがある場合は、市町村長はただちにこれを修正すべきとされております。したがって、固定資産評価額の算定根拠等に誤りがあることを発見した場合には、当該誤りを市町村長に指摘のうえ、是正の申立てを行い、これを市町村長に認めさせることで、固定資産評価審査委員会に対する審査の申出に依らずとも、固定資産評価額の是正が可能です。
東京都23区や名古屋市等一部の自治体では、3年に一度の審査の申出のみ受理し、かつ、受理された場合でも建築当初の評価の妥当性について争うことは実質的には不可能でした。また、上述の地方税法第417条第1項に基づき申出を行った場合においても、納税者による申出は重大な錯誤にあたらず価格を修正するに至らず棄却する立場をとっていました。しかしながら、平成27年9月の東京高裁の判例によれば、建築当初の評価額に誤りがあったこと等を理由として、これを争うことができるのは、建築当初の評価において適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や、建築当初の評価の誤りが重大で、それを基礎に評価することが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるような場合に限られるとする自治体の主張は認められず、新築時の評価基準の誤りを是正する納税者側の主張が認められる判決がなされました。
当該判決およびその後の他の事案における判決を受けて、建築当初の評価の錯誤に係る審査の申出につき、従前のとおり、その審査の対象外として簡単に棄却できなくなりました。事実、東京都の固定資産評価審査委員会が平成27年度の固定資産評価額の審査の申出につき納税者側の主張を認め、評価の見直しに関して柔軟な対応を図る兆候がみられています。

III.おわりに

現行制度上、固定資産評価額の算定根拠等は納税者に対してあらかじめ開示されていないため、仮に固定資産評価額の算定に誤りがあった場合においても、通常、納税者はそれに気付かず、課税通知にしたがって固定資産税等を過大に納付してしまうことが殆どだと思われます。固定資産評価額の算定根拠等を確認し、その算定に誤りがあった場合には、上述の地方税法第417条第1項の規定およびその立法趣旨に照らしても、適正な税負担となるように評価額の是正をもとめることは、納税者側に当然認められるべきものであり、また、自治体においても類似の固定資産の価格と均衡を失しないように修正に応じるべきものと考えます。
固定資産評価額の是正は、その算定根拠および過程の検討等を行ううえで、建築・税務等の専門家の助力が必要な部分もあり、是正に対する自治体の反応は、自治体毎にかなり差異はありましたが、昨今の固定資産評価額の是正に関する判決を受け、納税者側の主張につき簡単に棄却できなくなっている傾向にあると考えます。
KPMG税理士法人は、固定資産評価額の是正について多くの実績のある一級建築士事務所と提携し、固定資産評価額の適正化に関する業務を提供しております。具体的には、固定資産税納税通知書および課税明細書、土地・家屋の登記簿謄本、償却資産税申告書の写しをご提供頂き、同時に税務代理権限証書に基づき各自治体から課税根拠資料である評価書を入手し、設計図面や工事明細書などとの照合・分析を行います。仮に、評価額が不適切であると判断される場合には、クライアントと協議のうえで、再建築表点数に関して審査の申出などを行います。これら一連の手続きには、一般的には数ヵ月から1年を要します(具体的なスケジュールは図表1参照)。

図表1 適正化業務のスケジュール

したがって、今年の4月に見直される平成30年度の固定資産評価額につき是正を求めるためには、今から対応を図る必要があります。
固定資産評価額の是正・適正化をご検討ならびに実行される場合には、そのお手伝いをさせて頂くことも可能ですので、その際は担当者にご連絡頂ければ幸いです。

執筆者

KPMG 税理士法人
トランザクション アドバイザリーグループ
パートナー 松本 直之
シニアマネージャー 柿園 明彦

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