移転価格税制に関するアナウンス

ベトナムニューズレター - 2017年度から新しい移転価格税制(Decree20)が適用されています。本ニューズレターでは新規定の内容について解説するとともに法定期限及び必要な対応について説明します。

2017年度から新しい移転価格税制(Decree20)が適用され、本ニューズレターでは新規定の内容について解説します。

1. 2017年度の移転価格税制への対応

スケジュール

会計年度末 開示申告書類および
移転価格文書の法定期限
(会計年度終了後90日以内)
2017年12月31日 2018年3月31日
2018年3月31日 2018年6月29日
2018年6月30日 2018年9月28日


2017年12月31日に終了する会計年度においては、法人税確定申告書に加え、様々な移転価格税制に関するFormを2018年3月31日までに提出しなければならないことに留意が必要です。


移転価格文書化に関する要求事項

Decree 20/2017/ND-CP(以下、Decree 20)で定められている関連者間取引を行う納税者は、2018年3月31日までに、Form01(関連者及び関連者間取引に関する情報を記載した開示申告書類)を提出する必要があります。

なお、ベトナム国内の関連者間取引のみを行う納税者は、課税年度において両関連者が同一の法人税等を適用しており、法人税優遇を受けていない場合には、Form01のセクションII(I 関連者間取引の移転価格の決定に関する情報)及び、セクションIV(関連者間取引の移転価格調整後の業績)の記入が免除されます。しかし、この場合も、納税者はDecree20の免除規定に該当しない限り、移転価格文書を作成・保管し、関連するFormを提出する必要があります。

また、Decree 20に基づき、移転価格文書の作成義務がある納税者は、2018年3月31日までに、以下のFormを提出しなければなりません。

  • Form02 ・ローカルファイル(LF)に必要な情報・資料のリスト
  • Form03 ・マスターファイル(MF)に必要な情報・資料のリスト
  • Form04 ・国別報告書(CbCR)納税者が最終親会社であり、課税期間におけるグローバル連結売上高が18兆ドン(約900億円)以上のベトナム企業のみ。なお、日系企業はForm04の代わりに親会社の国別報告書を準備すれば足りると考えられます。

Form02とForm03の適時な作成及び提出の観点から、納税者は、これらのFormにおいて報告する情報を含むローカルファイルとマスターファイルを作成するとともに、場合によっては年次の法人税確定申告書にて移転価格調整を行う必要があります。納税者が最終親会社でない場合には、最終親会社が提出した国別報告書のコピーを準備する必要があります。最終親会社の所在国において提出義務がない場合、その旨を記載した説明書を提出する必要があります。なお、国別報告書は税務当局から要請される場合に限り提出する必要があります。

前述のFormはマスターファイル、ローカルファイルを含む移転価格文書それ自体ではありません。移転価格文書は、法規制に従い、毎年の法人税確定申告期限までに作成し、税務当局から要請された場合には規定の期限までに提出しなければなりません。


移転価格文書化の免除規定

以下のいずれかの要件を満たす納税者は移転価格文書の作成が免除されます。

  • 年間売上高500億VND(約2億5千万円)未満、かつ、関連者間取引総額300億VND(約1億5千万円)未満
  • 事前確認制度(以下、APA)により税務当局と合意し、APA規定に従いAPA年次報告書を提出している場合(ただし、APAに合意していない関連者間取引については免除対象となりません)
  • 単純な機能を有し、無形資産の開発や使用による収益の計上や費用の発生がなく、年間売上高が2,000億VND(約10億円)未満であり、純売上高に対する利払前・税引前の営業利益(EBIT)に対する割合(営業利益率)が以下の一定率を上回る場合:
    • 販売業5%
    • 製造業10%
    • 加工業15%

税務総局は、2017年11月17日にOfficial Letter No.5316/TCTTTRを発行し、Decree20の第11条第2項cにある「単純な機能」の定義についてガイダンスを提供しました。ガイダンスによると以下の要件を全て満たす必要があります。

  • 戦略的決定を行う機能がない
  • 付加価値の低い取引を行う
  • 在庫リスク及び市場リスクを負わない
  • グループ内の無形資産の開発による収益の計上や費用の発生がない

2. グループ会社間のサービスフィー、ロイヤリティの損金算入に関する規定

Decree20で「実質主義の原則」が導入されたことに伴い、最近の税務調査では、グループ会社間のサービスフィー、ロイヤリティの損金不算入について指摘を受けるケースが多発しています。以下が指摘例です。

  • 会社全体では高い営業利益を達成したにもかかわらず、サービス費用の独立企業間価格を証明できなかった。
  • 親会社または関係会社の委託製造業者であり、純売上高の割合に基づいて計算されたロイヤリティ費用が否認された。
  • 技術援助と技術移転取引との間に費用の重複がないことを証明できなかった。

3. 支払利息の損金算入制限に関する規定

Decree 20の第8条第3項では、課税年度に生じた支払利息は、利払前・償却前・税引前利益(EBITDA、当該利益はその他の収益及び費用を除く)の20%を超えない範囲で損金算入が認められる旨が規定されています。ビンズオン省税務当局は、2017年12月12日に、Official Letter No. 21065 / CT-TTを発行し、関連者からの借入がない場合、関連者及び非関連者双方から借入がある場合の支払利息の損金算入制限に関するガイダンスを提供しました。

  • 借入以外の関連者間取引はあるが、関連者からの借入がない場合、Decree20第8条第3項で規定される支払利息の損金算入制限は適用されない。
  • 関連者及び非関連者の双方から借入がある場合、Decree20第8条第3項で規定される支払利息の損金算入制限は、関連者及び非関連者に対する支払利息総額に対して適用される。

なお、あくまでビンズオン省の見解であり、ベトナム国全体の見解ではないため、注意が必要です。

4. 税源浸食と利益移転(以下、BEPS)行動計画13 - 適用国

BEPS行動計画13は、世界中の多くの国や地域で幅広く適用されています。2018年1月5日までに、62カ国が国別報告書を導入し、31カ国がマスターファイル及びローカルファイルの要求事項を導入しています。他の多くの国々は、近い将来にこれらのルールを導入する予定です。
ベトナムの貿易相手国のほとんどは、移転価格文書に関する行動計画13を全面的に又は部分的に適用しています。例えば、以下の国が挙げられます。

  • ベトナムと同様に、日本、韓国、台湾、中国、オーストラリア、ドイツ、ロシアなどの国々では、国別報告書、マスターファイル、ローカルファイルの移転価格文書化要件を完全に導入しています。シンガポール、米国、カナダ、バミューダ、フランス、イタリアでは、国別報告書を導入しています。
  • マレーシアでは、国別報告書とローカルファイルを導入し、マスターファイルを導入する意向を表明しています(2017年1月1日以後開始する事業年度より適用が予定されています)。英国は国別報告書を適用し、今後、マスターファイルとローカルファイルを導入する意向です。
  • その他の多くの国では、単一の移転価格文書又は移転価格文書全体を導入する意向があります。例えば、以下が挙げられます。
  • 香港では、2017年12月29日に、内国歳入法案(改正)(第6号)2017(BEPS法案)が提出され、移転価格税制の義務化及びBEPS対応が導入されます。それによると、国別報告書、マスターファイル及びローカルファイルの3層構造アプローチに基づいて、移転価格文書の作成が義務化されています。
  • ケイマン諸島では、2017年12月31日に終了する会計年度より国別報告書の適用を公式に宣言していますが、法案は未だ発行されていません。
  • ニュージーランドでは、法案が可決されれば、2018年初頭に国別報告書を正式に法律化する予定です。
  • タイでは、国際的な情報交換及びBEPS対応を目的とした共同プログラムの下、国別報告書を中心に新たな国際税務基準を導入することを目指しています。さらに、2018年1月3日にタイの内閣は、2017年1月1日以降に開始する会計年度に適用される移転価格税制法案を承認しました。

 

2018年2月16日現在の世界各国の移転価格文書の導入状況は以下のとおりです。

国別報告書:各国導入状況のサマリー

国別報告書:各国導入状況のサマリー

マスターファイル/ローカルファイル:各国導入状況のサマリー

マスターファイル/ローカルファイル:各国導入状況のサマリー

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