サービス産業に希望の光 | KPMG | JP
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サービス産業に希望の光

サービス産業に希望の光

The Brexit Column - Brexit後のモノの移動についての議論の影で、英国におけるサービス産業の将来への関心が薄れてしまっています。しかし、KPMG英国Trade部門担当ディレクターのDavid Slaterは、この重要な業界にとってカンフル剤となりうるものがあるかもしれないと述べています。

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  • EUよりも英国の方が世界各国との間でサービス産業に有利な貿易協定を締結できる可能性がある。
  • サービスの輸出には貿易相手国との距離による影響が少ない。
  • 英国コモン・ローおよび世界的に評価の高い法制度により各国間の規則の調整が容易になる。

英国はEU加盟国との将来の貿易関係を確立する上で適切な議論を行っているでしょうか? 今週、Brexit後の理想的な関税協定に関して白熱した議論が行われました。これがとても重要な議論であることは間違いありませんが、でも同時に一方的な議論であることも事実です。国境管理や物品に関する摩擦のない貿易を実現する方法にばかり気を取られていると、総額920億ポンドという貿易黒字を生みだすサービス産業がないがしろにされるリスクがあります。

これらの業界は英国のEU離脱により大きな課題にさらされています。シティにとっては市場へのアクセスが気がかりであり、法律事務所やKPMGのようなプロフェッショナル・サービスを提供するファームは、資格やライセンスの相互承認制度が維持されることを切望しています。また、大学は共同研究の継続を希望し、放送事業者は「原産地」規則によりヨーロッパ大陸への移転を余儀なくされることを懸念しています。こうした懸念事項はまだまだあります。

こうしたなか、筆者が英国のサービス産業について楽観視する根拠となっている重要な要素があります。EU域外の世界各国との間で英国がサービス・ベースの自由貿易協定を締結し、それがこの極めて重要なサービス産業にとって追い風となる可能性があるということです。これは他国の影響を受けずに独自の貿易計画を立てる英国に対するイデオロギー的偏向に基づく見解ではなく、これまで何十年にもわたりEU域内外においてサービスに関する自由貿易の妨げとなってきた構造的問題を、EU離脱後の英国は回避することができるという理由からです。

例えば、ドイツ企業がスペイン市場への参入を計画している場合、スペインにおいて適用される契約法、消費者保護基準および金融規制について理解する必要があり、おそらくスペインになんらかのユニットを設立することになるでしょう。

各国間の調整が進まない理由の1つは、ヨーロッパの法制度が寄せ集めで作られたもので、大陸法制度が主流となっていることです。英国、アイルランド、キプロスはコモン・ロー(普通法のこと※広義において英米法系を示すもの)を採用していますが、その他の25の加盟国は大陸法を採用しています。しかし、コモン・ローのもとでの判例に基づく判決は確実性が高く、裁判所が過去の判決内容と矛盾する法律の解釈を行う余地が少ないことから、多くの企業はコモン・ローに基づく契約の締結を好む傾向にあります。英国と特に関連のない多くの企業がコモン・ローに基づく契約や英国裁判所での仲裁を選ぶのも偶然ではありません。

EU内の経済産出量の74%をサービス産業が占めているにもかかわらず、2016年のEU域内でのサービス産業の貿易額が8,440億ユーロ(物品の貿易額3.1兆ユーロの4分の1)にしか満たないのは、こうしたEUの法制度の複雑さが原因となっているのかもしれません。


重力に逆らう
EUの法制度が複雑であるのに対し、英国はその法制度の簡潔さが強みになります。コモン・ローに基づく1つの国(スコットランド法のハイブリッド・モデルを除く)であるため、同じくコモン・ローを採用している米国、カナダ、インドはもちろん、その他の貿易相手国との間でも、EUの場合に比べて基準の調整ははるかに容易になります。そしてさらなる英国の強みとして、世界的に評価の高い英国の法制度は、多くの貿易取引において必要とされる紛争解決メカニズムの確立に必要な法的基盤を提供することができるという点も挙げられます。

もしBrexit後の英国の貿易相手国との間に距離があったとしても、サービス産業の貿易額が増加すれば、国際貿易の重力モデルの概念(貿易相手国との距離が近いほど貿易量が増加する傾向にあるという考え方)を覆すことはできると思います。ただし、取引されるものがデータである場合や、FX取引、通信、ソフトウェアのダウンロード、eコマース取引などの場合、相手国との距離はあまり重要な要素ではなくなります。より重要となるのは、世界的に評価の高い英国データ保護法や、取引相手が1つの言語で便利な時間に取引を行うことができるという点です。ここでもまた言語、法律、経度という英国の強みが重要な役割を果たします。

EU加盟国への輸出額ではドイツが英国を上回っていますが、EU圏外の国々に関しては英国が他のどのEU加盟国よりも多くの製品(実に全体の22%)を販売しています。これらの遠方にある市場は成長速度が速いことに加え、サービスに対する需要の割合も「物品」に対する需要に比べて増加しており、3D印刷のようなテクノロジーがその傾向をさらに加速させています。

これが英国のデザイナー、エンジニア、プログラマーが現在置かれている状況の概要です。彼らはBrexitや英国が単一市場や関税同盟から離脱することなど望んではいなかったかもしれませんが、これが現状なのです。このような状況において重要なことは、自分たちの強みとなるものをすべて把握しておくことです。英国企業がEU以外の国々との有意義なサービス・ベースの貿易協定を利用できる可能性が高まったことは、1つの希望にすぎないのです。
 

本稿は英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。

The Brexit Column: A silver lining for the services sector

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