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IFRS保険会計Q&A(第4回)(週刊経営財務2017年11月6日号)

IFRS保険会計Q&A(第4回)(週刊経営財務2017年11月6日号)

週刊経営財務(税務研究会発行)2017年11月6日号に、国際会計基準審議会(IASB)が2017年5月に公表した「IFRS第17号『保険契約』」に係るKPMG/あずさ監査法人の解説記事が掲載されました。 第4回は、変動手数料アプローチ(VFA)を解説しています。

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はじめに

約20年に及ぶ議論を経て、2017年5月に国際会計基準審議会(IASB)がIFRS第17号「保険契約」(以下、「IFRS第17号」または「本基準書」という)を公表した。本連載では、難解といわれるIFRS第17号を分かりやすく解説するため、IFRS第17号の適用にあたり検討が必要となる主な論点をQ&A形式で説明する。第4回目の本稿では、変動手数料アプローチ(VFA)の各論点を取り上げる。なお、文中の意見に渡る部分は私見である。

(注)特に断りのない限り、項番号および付録は本基準書のものを指す。

Q1.変動手数料アプローチ(Variable fee approach)とはどのようなアプローチですか。

A1.VFAもビルディング・ブロック・アプローチ(BBA)と同様に4つのビルディング・ブロックにより保険負債を測定します。ただし、BBAでは保険契約に係る投資ポートフォリオの成果は保険契約負債の測定には直接影響を与えないのに対し、VFAでは、企業が保険契約者に請求する報酬を、基礎となる項目(保険契約者に支払われる金額の一部を決定する項目を意味する)のリターンに連動した変動手数料とみなすため、当該手数料の性質を忠実に再現するために、BBAにおける契約上のサービス・マージンの測定方法等を一部修正しています(BC241項)。


Q2.VFAの適用が認められるには、どのような要件がありますか。

A2.VFAの適用が認められる保険契約は、以下の条件を満たす直接連動の有配当契約です(B101項)。

  • 契約条件で、基礎となる項目の明確に識別されたプールに対する持分に、保険契約者が参加する旨が定められていること。

契約条件は、書面、口頭、企業の取引慣行に含意されている場合など、法的強制力があれば該当します。また、基礎となる項目のプールは、契約で明確に識別されている限り、どのような項目で構成されていてもよく、また、必ずしも企業が保有している必要はありません。

  • 企業は、基礎となる項目に対する公正価値リターンの重要な持分に等しい金額を保険契約者に支払うと予想していること。

ここでの重要な持分であるか否かについては明確な基準はなく、企業の判断によります。

  • 保険契約者に支払うと見込んでいる金額の変動の重要な部分は、基礎となる項目の公正価値の変動に応じて変動すると企業が予想していること。

なお、直接連動の有配当契約の定義に該当するか否かの判定は、当初認識時にのみ行い、契約内容の修正がある場合などを除き、事後的な再評価は要求されません(B102項)。


Q3.日本で、VFAの適用が認められる保険契約にはどのようなものが考えられますか。

A3.一般的に、日本における変額保険のような保険契約が該当すると考えられます。日本における変額保険は、契約者から払い込まれた保険料を有価証券等で運用し、保険金や解約返戻金がその運用実績に応じて変動するしくみの生命保険であり、保険会社が収受する手数料も運用実績に応じて変動します。保険業法において、運用の成果を他の保険商品と明確に区別して経理することが求められているため、特別勘定を設けて運用することになります。これらの特徴から、変額保険について、保険契約者が特別勘定の運用資産(これが基礎となる項目に該当する。)の運用成績に応じた配当等を受領する旨が約款上明確であり、保険会社は特別勘定の運用資産の運用成績に応じ、当該運用成績の重要な部分を保険契約者に支払うと予想している場合、A2.に記載の条件を満たすと考えられます。


Q4.VFAではどのように保険負債を測定するのでしょうか。

A4.VFAは、BBAと同様に4つのビルディング・ブロックにより保険負債を測定しますが、直接連動の有配当契約における保険契約者への支払義務は、基礎となる項目の公正価値(保険契約者勘定残高)から企業が収受する変動手数料を控除することにより計算されるという考え方に基づいており、基礎となる項目と保険契約者への支払義務の関係は図表1のように考えられています。

図表1 変動手数料アプローチによる測定

例えば、VFAの適用要件を満たす変額保険では、特別勘定で運用される投資信託の純資産価額から保険関係費(保険契約の維持管理等に係る手数料、M&E費)を差し引いた純額が、保険契約者に対する支払義務に該当し、保険負債を構成します。また、変動手数料は、基礎となる項目の公正価値に対する企業の持分から、基礎となる項目に対するリターンに基づいて変動しない履行キャッシュ・フローを控除して計算されるため(B104項)、この変動手数料の期待値が契約上のサービス・マージン(CSM)に相当することとなり、CSMの測定方法等がBBAとは異なることになります(45項)。


Q5.VFAによる保険負債の測定には、どのような特徴がありますか。

A5.VFAによる保険負債の測定は、基本的にBBAと同様に行いますが、事後測定においては、直接連動の有配当契約の特性を反映するという目的を達成するため、以下のような2点でBBAとは異なる特徴があります。

(1)将来サービスの変動から生じる将来キャッシュ・フローの変動は、すべてCSMで調整します(B110項)。

基礎となる項目の公正価値に対する企業の持分の変動のうち将来のサービスに関するもの(B112項)、および基礎となる項目のリターンに基づいて変動しない将来キャッシュ・フローの変動のうち将来サービスに関係するもの、割引率およびリスク調整の見積の変更等(B113項)については、CSMを調整します。このため、BBAと異なり、金融変数の仮定の変更についても、サービスに対する変動手数料の一部として認識してCSMを調整します。たとえば、金利が低下した場合は、BBAでは、貨幣の時間的価値および金融リスクの影響の変更は未稼得利益(つまり、CSM)の金額に影響を与えないため、純損益又はその他の包括利益(OCI)のいずれかで処理されますが、VFAでは、基礎となる項目に対する企業の持分はサービスに対する変動手数料の一部と考えられているため、金融変数の仮定の変更は手数料の変動としてCSMで調整されます。

(2)当期簿価利回り法が認められています。当期簿価利回り法とは、保険金融収益・費用の金額を運用資産側の投資収益・費用の金額と一致させ、差額をOCIで認識する方法であり、企業が実際に基礎となる項目を保有している場合に会計方針として選択できます(89項、B134項)。

基礎となる項目の公正価値の変動のうち、(1)以外の項目はCSMの調整とせずに、保険金融収益・費用として純損益に認識されますが(45項、87項、B111項)、保有する運用資産の会計方針によっては、資産サイドから生ずる純損益の認識額との間にミスマッチが生じる可能性があります。このような場合には、当期簿価利回り法を採用することで資産サイドから生ずる純損益の認識額とのミスマッチを回避することができます。


Q6.VFAを適用した場合の実際の会計処理はどのようになりますか?

A6.以下の設例にて説明します。

  • 100件の変額保険契約から成る保険契約グループがある。
    カバー期間は3年で、以下のいずれかを保険契約者に提供する。
    • 生存時には、保険契約者勘定残高。
    • 死亡時には、170の死亡給付保証と保険契約者勘定残高のいずれか多い方。
  • 各契約の一時払保険料150は、当初認識直後に受け取る。
  • 企業は、各年の年末に、保険契約者が1人亡くなると見込んでいる。
  • 年2%のM&E費が、保険契約者勘定残高より差し引かれる。
  • 企業は、毎年10%の利益が生じることを見込んでいる。また、リスクフリー・レートを6%とし、非金融リスクとしてのリスク調整を25として決定した(初年度に12のリスク調整がリリースされる)。

(1)当初認識時における保険契約グループの履行キャッシュ・フロー及び契約上のサービスマージン(CSM)の算定は、下表の通りです。

上記に関する仕訳処理は以下となります。

(A)一時払保険料の現在価値15,000(=150×100件)を計上します。

(B)将来キャッシュ・アウトフロー総額の現在価値は、各期の予想死亡保険金の支払合計とカバー終了時点の予想満期返戻金支払の合計から、各期の予想年間手数料の合計を控除し、さらに、貨幣の時間価値を控除し、最低死亡保証のオプションのコストを加算することで、14,180と見積り計上します。

(C)前提条件より、非金融リスクに係るリスク調整は25を計上します。

(D)CSMは上記の差額795となります。

(2)X1年度末における、保険契約グループの基礎となる項目(保険契約者勘定残高)は以下の通りです。

※基礎となる項目からの死亡保険金支払162が死亡給付保証170を下回るため、企業は差額について別途給付する必要があります。

(3)X1年度末において、履行キャッシュ・フローは当初認識時の見積り通りに発生したとすると、保険負債の変動は以下の通りになります。

(4)(2)および(3)における仕訳処理は以下となります。

(E)一時払保険料の収受により、当初認識時点で予想した一時払保険料に関する保険負債を取崩します。

(F)一時払保険料で収受した金額はそのまま保険契約者勘定残高に預け入れます。

(G)実際の運用利回りに基づき、基礎となる項目(保険契約者勘定残高)の当期の公正価値の変動1,500(=15,000×10%)を計上します。

(H)当期簿価利回り法に基づき、当期の利回りに相当する投資収益1,500と同額を保険負債の利息として保険金融費用に計上します。当期の公正価値の増加額1,500から、年間手数料として企業が収受する額30(=1,500×2%)を控除した1,470を保険負債の増加額として計上します。貨幣の時間価値及び金融リスクの影響67を計上します。

(I)年間手数料として330(=(15,000+1,500)×2%)を基礎となる項目から控除します。

(J)死亡保険金支払予定額170を取り崩し、同額の保険収益を計上します。実際の死亡保険金支払額170を保険サービス費用として認識します。基礎となる項目の公正価値は162であることから、差額8は企業が別途負担します。

(K)(J)で保険収益・保険サービス費用として計上した金額のうち、保険契約者勘定残高である162(=(15,000+1,500 - 330)/100)は投資要素の返金に該当するため、保険収益及び保険サービス費用からそれぞれ控除します。

(L)非金融リスクに係るリスク調整のうち、当期減少額12について、保険負債を取崩し、保険収益を計上します。

(M)CSMの当期償却額300を保険収益として計上します。1年目の償却前のCSMの残高は892(=795+30+67)になります。1年目は100の保険契約のカバーを提供しており、各年の年末に保険契約者が1人亡くなると見込んでおり、2年目は99、3年目は98の保険契約のカバーの提供を見込んでいるため、CSMの償却額は300(=892×100/(100+99+98))となります。

(5)(1)および(4)の仕訳結果は以下となります。

X1年度末勘定残高
Cash 322 保険負債
(COF)
15,413
運用資産(基礎となる項目) 16,008 保険負債
(リスク調整)
13
    保険負債
(CSM)
592
保険サービス費用 8 保険収益 320
保険金融費用 1,500 投資収益 1,500


以上の仕訳処理を行った結果、X1年度の純損益計算書(関連する項目のみ例示)は以下のとおりとなります。日本基準の場合は、払込保険料15,000がトップラインとなりますが、VFAを適用した場合には、変動手数料相当(厳密には変動手数料から構成されるCSMの償却)がトップラインの主な構成要素となる点が特徴といえます。
 

X1年度 純損益計算書
保険収益 320
(予想保険金及び費用) (8)
(非金融リスクに係るリスク調整の変動) (12)
(当期のCSM償却額) (300)
保険サービス費用 8
保険引受損益 312
投資収益 1,500
保険金融費用 1,500
投資損益 0
純利益 312

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