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インドにおける新たな税務計算・開示基準(ICDS)の適用

インドにおける新たな税務計算・開示基準(ICDS)の適用

India News - 2017年3月期より、インドでは所得税計算・開示基準(略称ICDS:Income Computation and Disclosure Standards)が適用されています。これは課税所得を一貫性のある明確な方法で計算し、税務上の取扱いを統一することを目的としています。

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1. ICDSの概要

2017年3月期より、改訂版の所得税計算・開示基準(ICDS:Income Computation and Disclosure Standards)が適用されている。当初2016年3月期からの適用が予定されていたが、1年間の延期を経て、2016年9月に直接税中央委員会(CBDT:Central Board of Direct Taxes)により改訂版ICDSが発表、適用された。これは、課税所得を一貫性のある明確な方法で計算し、税務上の取扱いを統一することを目的としている。
ICDSは、段階的に国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)へのコンバージェンスが進められている新インド会計基準(インド版IFRS:Ind AS)や現行のインド会計基準(I GAAP:AS)との調整も考慮されている。インド会計基準は、インド勅許会計士協会により公表されている。また、同インド勅許会計士協会が会計基準を補足する指針としての会計基準解釈も公表している。
ICDS適用後においては、ASまたはInd ASによって算定された利益に、ICDSに従った適切な調整を加えて課税所得を計算することになっている。
CBDTは、ICDSを導入するにあたり、各方面からの疑問を明確にするため、2017年3月にFAQを公表している。主要なFAQは以下のとおりである。

  1. ICDSは会社が採用する会計基準(I GAAP、Ind AS)に関わらず、事業所得およびその他の課税所得に適用される。ただし、前年度に税務監査の必要のなかった個人等はICDSの適用対象外となっている。
  2. ICDSは会計帳簿の記帳や財務諸表の作成のための規則ではない。
  3. ICDSは最低代替税の課税標準となる会計上の利益の計算には適用されない。
  4. 所得税法とICDSに不整合がある場合には、所得税法が優先される
  5. 2016ー17年度以降、ICDSはどの判例より優先して適用される。
  6. 非居住者に対する技術サービス料のように総額ベースで課税される所得にはICDSが適用される。
  7. 工場の量産開始日までの投資額は税務計算上、損金算入できない。

(1)ICDS導入の経緯

インドにおいては、日本の法人税における法人税基本通達に相当するものがなかった。このため、法人税額の計算方法は明確ではなく、慣例や実務上の解釈、判例によっているところが多く、産業界等から計算方法の明確化が求められていた(図表1)。


図表1 ICDS導入の経過

1996年 中央政府は、所得税法第145条(2)に基づいて2つの会計基準を通知
2010年
12月

CBDTは会計基準委員会を構成し、以下の提案を行った

  • 会計基準は、所得税法第145条(2)に基づいて通知
  • 所得税法第145条(2)の改正
  • Ind ASにおける最低代替税(MAT)算定のための会計上の利益の決定方法
2012年
10月
会計基準委員会の最終報告書と14項目のICDSドラフトを公開
当該ドラフトに対するパブリック・コメントを募集
2014年
7月
インド予算案2014において、所得税法第145条(2)を改正
ICDSは、2015年4月1日から適用
ICDS自体は別途通知
2015年
1月
CBDTは、ステークホルダーからの提案を取り入れ、まずはICDS適用にあたっての経過措置を定め、その上で12項目のICDS草案を発行
ICDS草案に対するパブリック・コメントや提案を2015年2月8日まで募集
2015年
3月
10項目の最終的なICDSを2015年3月31日に通知
リースおよび無形資産に関するICDSは通知されなかった
AY 2016-17(FY2015-16)から適用
2016年
7月
財務省(MoF)は、ICDSの規定の遵守を確実にするために、ICDSの改訂と税務監査の報告を発表
MoFはまた、ICDSを1年延期し、2015年4月1日ではなく2016年4月1日から適用することを発表
2016年
9月
CBDTは、2016年9月29日の通知第87/2016号により、改訂ICDSを通知し、以前の通知第32/2015号を廃止
2017年
3月
CBDTは、ICDSの適用に関連する問い合わせについて、FAQの形で明確化し公表

(2)Ind ASの概要

インドにおける会計処理は、新会社法、インド勅許会計士協会(ICAI:The Institute of Chartered Accountants of India)が公表している会計基準、会計基準解釈に則って行われている。
世界的なIFRSへの潮流の中で、インド企業省は、2015年2月、Ind AS を公表した。Ind ASは、2017年3月期より、上場、非上場、会社の規模等に応じて適用となっている。適用の対象となるのは、保険会社、銀行、ノンバンク以外の業種で、個別財務諸表および連結財務諸表につきInd ASに基づいて作成しなければならない(図表2)。


図表2 Ind AS適用のロードマップ

Ind ASとはIFRSへのコンバージェンスが進めらている新インド会計基準である。2017年3月期より会社規模に応じて順次適用。現行のインド会計基準も引き続き存続。

強制適用 任意適用
フェーズ1
2017年3月期
フェーズ2
2018年3月期
強制適用対象を除くすべての会社
上場会社:
純資産50億ルピー以上
上場会社:
純資産50億ルピー未満
非上場会社:
純資産50億ルピー以上
非上場会社:
純資産25億ルピー以上
上記対象会社の持ち株会社、子会社、ジョイントベンチャー、関係会社


なお、銀行、保険、ノンバンキングは2018年3月期以降、規模に応じて順次適用されるが、対象会社のグループ会社になる場合は対象会社適用年度に適用。

2. ICDSと現行のインド基準(AS)、新インド会計基準(Ind AS)との調整

(1)ICDSとAS、Ind ASの対応関係

ICDSは、ASまたはInd ASによって算定された利益に、ICDSに従った適切な調整を加えて課税所得を計算することを求めている。そのため、ICDSとASとInd ASの対応関係と調整項目を理解しておくことは非常に重要である(図表3)。


【図表3】ICDSとAS、Ind ASの対応

ICDS
基準番号
所得計算開示基準 現行のインド会計基準
(AS)
新インド会計基準
(Ind AS)
ICDS
I
会計方針 第1号、5号 第8号
ICDS
II
棚卸資産の評価 第2号 第2号
ICDS
III
工事契約 第7号 第11号
ICDS
IV
収益認識 第9号 第115号
ICDS
V
有形固定資産 第10号 第16号
ICDS
VI
外国為替レートの変動の影響 第11号 第21号
ICDS
VII
政府補助金 第12号 第20号
ICDS
VIII
有価証券 第13号 第109号
ICDS
IX
借入費用 第16号 第23号
ICDS
X
引当金、偶発債務及び偶発資産 第29号 第37号

(2)ICDSとの差異の分析

ICDSとASおよびInd ASに差異が生じるかどうかは、企業が採用している会計基準とICDSを比較してしていくことになるが、主に差異が生じる項目は下記のとおりである。

  • ICDS II 棚卸資産の評価
  • ICDS IV 収益認識
  • ICDS V 有形固定資産
  • ICDS VI 外国為替レートの変動の影響
  • ICDS X 引当金、偶発債務及び偶発資産

例えば、収益認識についてであれば、下記図表4のように整理できる。


図表4 ICDSとAS、Ind ASの収益認識の差異

ICDS III、ICDS IV AS第7号、AS第9号 Ind AS 第11号、115号
収益認識の考え方は基本的にI GAAPと同様。
しかし、ICDS IVでは完成基準は認められていない。
AS 第9号では、以下の条件を満たす場合に収益を認識する。
(i)所有権の重大なリスクおよび報酬の移転がある
(ii)対価の額に関して重大な不確実性が存在しない
(iii)履行の時点において、最終的な回収を期待することが不合理ではない
企業が、約束された商品またはサービスを顧客へ引き渡し、それらの財またはサービスの対価を獲得した時に収益を認識すべきである。

工事に係る収益認識については、ICDS III及びAS第7号、Ind AS第15号(いずれも「工事契約」に関する基準)において規定されている。

3. ICDS導入後の要求事項

ICDSの導入後においては、税務監査報告書(Form 3CD)と法人税税務申告書において、ICDSの適用状況を開示する必要がある。

  • 税務監査報告書(Form 3CD)については、CBDTが2016年9月29日、1962年所得税法のForm 3CDの税務監査報告書を改訂した。Form 3CDは、ICDSに関する税務調整の詳細およびICDSに従った開示を要求している。企業は、まず、ICDSに基づく税務上の処理と、会計基準に基づく会計上の処理との差異を分析・把握したうえで、Form 3CDに記入していくことになる。
  • 法人税税務申告書については、企業は、ICDSに基づく調整額を開示することになる。この金額は、Form 3CDに記載された税務監査済みの税務調整額と整合することになる。

執筆者

KPMGインド
チェンナイ事務所
アソシエイトディレクター 合田 潤

有限責任 あずさ監査法人
インド事業室
アシスタントマネジャー 山崎 恵美

India News

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