破壊的イノベーション ~破壊から破壊的創造へ、企業が生き残るための戦略とは | KPMG | JP
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破壊的イノベーション ~破壊から破壊的創造へ、企業が生き残るための戦略とは

破壊的イノベーション ~破壊から破壊的創造へ、企業が生き残るための戦略とは

本稿では、破壊的イノベーションについての考察およびデジタルトランスフォーメーションを可能にする4つの要素について解説しています。

執筆者

Partner, Digital Solutions & Innovation

KPMG Consulting Co., Ltd.

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「ディスラプション」を直訳すると「破壊」という日本語になりますが、海外では「創造的」という意味が付け加わりポジティブに捉えられるようになりました。KPMGのグローバルCEO調査2017のなかから「多くのCEOが破壊をチャンスと捉えている」という結果からもみてとれます。破壊的イノベーションに対する負のイメージを払しょくし、チャンスとして受け入れる体制に変わること、これをデジタルトランスフォーメーションと考えます。近年テクノロジーが進化するスピードは飛躍的に早くなり、破壊的イノベーションが起きる周期は短くなっています。この厳しい状況のなか、日本の企業がこの変革を遂行できるようにサポートすることが我々KPMGの役目だと思っています。
かつて日本の企業は破壊的イノベーションがお家芸でした。先達は、どのような方法で実現してきたのかなども考察し、4つの項目にまとめました。
なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

図表1 デジタルトランスフォーメーション

破壊的テクノロジーの波、次々に押し寄せる波に対処する改革がデジタルトランスフォーメーション

I.破壊的イノベーション

日本の携帯電話は「ガラケー」として比類ない進化を遂げてきたにもかかわらず、スマートフォンによって破壊的な影響を受けました。このような破壊的イノベーションは、これからも起こると考えられます。しかも技術の飛躍的な進歩によって、一回ではなく、何回も波のように押し寄せてくると考えられます。図表2に示す6項目は、多くのテクノロジーのなかで、近い将来に破壊的イノベーションを起こすと考えられるテクノロジーです。

図表2 破壊的イノベーションを可能にする最新トレンド

クリプトグラフィー
(暗号化)
新しいビジネスモデルはブロックチェーン暗号化技術を使用して開発され続けている
ゲノム 新技術によるゲノム(遺伝子)シークエンス配列は新医療科学の道を切り開き個人に合わせた薬の開発を可能にした
ビッグデータ デバイスから膨大な量のデータを処理する機能により生産者消費者に予測分析(Predictive Analytics)を可能にした
3Dプリンター 3Dプリンターの可能性はジャンルに関わらず、あらゆる製品に衝撃を与えている
AR(拡張現実) 設計、メンテナンス、ユーザー安全面の観点からもARは大きな影響を与えている
機械学習 「コンピュータの暴走」などサイバー攻撃の脅威から身を守るため、セキュリティ強化機械学習(Machine Learning)は不可欠となる

ここで、携帯電話よりもう少し前まで遡ると、ウォークマンのような独創的な製品が生まれ、破壊的イノベーションによって今日の発展の基礎を築いてきたと言っても過言ではありません。当時の日本にとって破壊的イノベーションは、お家芸だったのです。しかし国際的に一定の地位を確立すると、競争力を維持するために効率を追求する「持続的イノベーション」に傾向していくようになりました。その転換は企業が成長するうえで不可欠ではありますが、故に携帯電話の例が示すように「イノベーションのジレンマ」に陥ることもありました。かつて「破壊的イノベーション」をお家芸にしていたにもかかわらず、時が経ち、今では、破壊的イノベーションがポジティブに受けとられているようには感じられません。本稿では、先達の経営者の考えを参考にしつつ、破壊的イノベーションについてどう取り組むべきかについて考え、まとめました。

1.破壊的イノベーションの定義

破壊的イノベーションとは、既存事業の秩序を破壊し、業界構造を劇的に変化させるイノベーションのことを指します。最も古い破壊的イノベーションを考えると「火」にたどり着くのではないでしょうか。火を熾す技術を得ることによって人間は、一歩抜け出すことができました。さらに田畑を耕すという技術を得て狩猟の生活から解放され定住で安定した生活ができるようになり、蒸気機関や電気に関する技術を習得することで快適な生活を送ることができるようになりました。その1つ1つは、歴史のなかで起こった代表的な破壊的イノベーションの例です。

2.破壊的イノベーションの事例

もう少し身近な破壊的イノベーションの例として、氷の商売があります。昔、湖に張った氷を切り出し、馬車で運んで売っていました。1890年代に入り、工場で大量に氷を生成することができるようになると、氷の希少性は薄れ、馬車の代わりにトラックで搬送するように変わりました。さらに1920年代に入り冷蔵庫が普及すると、買いに行かなくとも家庭で氷が生成できるようになり、氷の商売は、廃れていきました。このように破壊的テクノロジーは、これまでの商売の仕方を根底から変えてしまいます。音楽の業界では、生演奏から始まり、蓄音機、ラジオ、ウォークマン、CDプレイヤー、iPod、スマートフォンと絶え間なく破壊的イノベーションが続き、機器の機能や形状が変化し、企業も変遷してきました。しかも、この音楽の事例が示すもう1つ重要な要素は、この破壊的イノベーションが起こる周期がどんどん短くなっているということです。

3.テクノロジーの指数関数的な進歩

破壊的イノベーションの周期が短くなった要因は、テクノロジーの進歩が速くなったことに関係しています。テクノロジーの進歩は、飛躍的に向上しており、たとえば図表3が示すコンピュータの性能は指数関数的に進歩していることがわかります。しかもこれからも向上を続け、2060年頃には1秒間の処理能力が人類すべての脳の処理能力に達し、しかもそれにかかる費用が1,000ドルと想定されています。

図表3 コンピュータ性能の指数関数的な進化

4.近未来のテクノロジーメガトレンド

テクノロジーの進歩を背景に、破壊的イノベーションが次々と起きようとしています。図表2に示した6項目だけでなく2031年までに破壊的イノベーションを起こす可能性のあるテクノロジーが続きます(図表4参照)。10年の間にさまざまなテクノロジーが開花し、実用化されるとみており、さらに、これらのテクノロジーによって絶え間なく、破壊的イノベーションが起き、メガトレンドになると考えています。

図表4 破壊をもたらすテクノロジートレンド

5.破壊的イノベーションが与える影響

企業の平均寿命は、企業間の競争激化により、年々短くなっています。しかも破壊的イノベーションは、この平均寿命をさらに短くする可能性があります。知らないうちに破壊的イノベーションが起こり、知らないうちに影響を与え始めていたとしても不思議ではありません。どんな業種でも、もう破壊的イノベーションが起きることは避けては通れない状況にあります。破壊的イノベーションを起こすためには、どうすべきかというより、破壊的イノベーションが起こったときに、どうすべきか、何をすべきかが問われることになります。トレンドを見極め、これまでのテクノロジーを捨て新しいテクノロジーを取り込むことができるか、そのような覚悟が今、企業に問われています。そのための改革がトランスフォーメーションです。

II.デジタルトランスフォーメーション

破壊的イノベーションが起きたとき、該当する部署が、現在の技術を捨て、新しい技術に切り替える判断を下すことは難しくなると考えられます。なぜならそれが会社にとって正しい判断だとしても、その組織にとっては、これまで培ってきた技術、エコシステム、さらには人を守るため、決断することが難しいと考えられるからです。
この破壊的イノベーションの波が絶え間なく押し寄せる環境下では、サイロ化した組織の壁を越え、会社全体のことを考えるチームが必要です。破壊的イノベーションのコアを理解し、取り込むべき技術、自社の技術を客観的に評価し、残す技術と捨てる技術を見極め仕分けする能力が必要になります。
デジタルトランスフォーメーションとは、破壊的イノベーションを起こす企業になることだけでなく、破壊的イノベーションが起こったときに、平然と、次の一手が打てる企業になることです。

図表5 バズワードからデジタルトランスフォーメーションへ

次から次へと出てくるバズワードに惑わされることなく、破壊的イノベーションの本質を見極め、どんなデータと組み合わせれば新しいことができるのか、先を見抜く千里眼を養うことも重要です。たとえば監査のためだけに使っていたデータを、AIを活用して経営のために使うことができないかといった発想です。会社で眠っているデータと、雲のようなバズワードの中から使える技術を探しだし、アクションが打てるところまで具現化する能力もデジタルトランスフォーメーションの重要な要素になります(図表5参照)。

III.改革を成功させるための4つの要素

デジタルトランスフォーメーションを実施するためにはこれまでと異なるガバナンスが必要になります。このガバナンスがうまく機能しないと、デジタルトランスフォーメーションは、うまくいかない、つまり成功のためのカギです。このガバナンスを機能させるためにプラクティスが必要です。さらにそのプラクティスに従いプロジェクトを遂行するためには、マインドセットが必要になります。そして最後がテクノロジーになります。つまり、改革を成功させるためにはガバナンス、プラクティス、マインドセット、テクノロジーの4つが重要です。どれか1つが欠けても、この改革はうまくいかず、会社の経営基盤は危険にさらされることになるでしょう。この4つの要素を整えることでデジタルトランスフォーメーションを成し遂げ、会社の風土、体質が備わって初めて、破壊的イノベーションが生まれる土壌が作られます。また逆にこの土壌ができれば、破壊的イノベーションが作られなくても、破壊的イノベーションが脅威では無くなります。企業にとって脅威とは、破壊的イノベーションを生み出せない事ではなく、破壊的イノベーションが起こった時に対応できない、対処できない体質こそが企業の脅威となるのです。

1.ガバナンス

ここで示すガバナンスとは、マネジメントと組織(チーム)の新たな関係を指します。過去の経営者の言葉を借りるとすると、サントリーの創業者鳥井信治郎氏の言葉「やってみなはれ」がぴったりです。まったく先が読めない状況下で、見切り発車しなければならない、そのような状況で権限を委譲する必要があります。見えない霧のなかで方向性だけを確認し、マネジメントは判断し、責任者は責任を負い、チームは動きださなければなりません。これまで以上に権限委譲を行う覚悟と、また任された側は、その責任を負う覚悟が必要になります。したがってガバナンスは、4つの要素のなかで最も重要であると同時に、最も難しい項目でもあります。これまでの典型的なマネジメントは、できるだけ多くの人が評価して承認し、皆で管理し、進めることでした。しかしそれでは、決断が遅れてしまう可能性がでてきました。
その一方で、今は利益を生んでいる花形な部門であっても、破壊的イノベーションにより、減衰することがわかっていれば、考えなければなりません。先の見えないなかでの判断、先が見えるが厳しい決断、マネジメントにはますます難しい舵取りが要求されます。またプロジェクトの責任者も、これまでと異なるスキルが要求されます。計画どおりに進めることが評価されていたKPIが変わります。責任者は、MVP:Minimum Viable Productを定義し、プロジェクトチームにその制作に関する権限を委譲しなければなりません。しかも失敗することが、マイナスではなく、失敗から学び、早く次の一手が打てる能力を評価しなければなりません。
権限を委譲するときは、完成品が見えていない状況で開発の承認を与えることであり、与えられたチームも、失敗するかもわからない条件で責任を負うことになります。したがって権限を委譲する側も、権限を委譲された側もこれまで以上に、会社への貢献という使命感と顧客の信頼を裏切れないという緊張感が必要になります。

2.プラクティス

ガバナンスについて新たな権限移譲とその責任について述べてきました。それを実行に移すことができるのは、プラクティスが確立されていることが前提になります。つまり権限の移譲は、実行できるという確信があってこそ成り立ちます。そのために綿密なフレームワークを固める必要があります。図表6がそのプラクティスになります。プロジェクトチームを、テクノロジーを受け持つデベロップメント、設計を受け持つデザイン、プロジェクトを管理するマネジメントに分け、それぞれの工程でそれぞれの役割を果たすことができるように設計しています。このきっちりしたフレームワークがあって初めてマネジメントは責任者に、責任者は、チームに権限移譲をできるようになります。

図表6 プラクティスのフレームワーク

3.マインドセット

これまでと異なるガバナンス、フレームワークが整ったプラクティス、これらを基にプロジェクトを遂行できるようになるために人材の育成は不可欠です。しかもこれまでと異なるマインドセットをもった人材の育成が必要になります。不確実な状況下では失敗を恐れずにリスクが取れるマインド、チームと常に目的を共有することができるマインド、さらに顧客志向、部門間協力、向上心、探求心、創造性がキーワードになります。そして最後に、古い技術を捨てる決断をする場合、いろいろなところから抵抗を受ける可能性があります。しかしそれを遂行しなければならない時に欠かせないマインドは公平であり、正義感のある高い透明性です。

4.テクノロジー

テクノロジーは、重要な要素の1つですが、デジタルトランスフォーメーションを考える場合、テクノロジーから始めるべきではありません。ガバナンスを固め、プラクティスを固め、人材を育成し、どのテクノロジーを取り込むかを考えるべきだと思います。

IV.まとめ

  1. 破壊的イノベーションは、日本の企業が得意だったお家芸の1つです。過去を振り返ることによってもう一度、破壊的イノベーションを起こす土壌を育むことができると考えています。そしてKPMGは、そこに貢献できると思っています。
  2. 破壊的イノベーションは、技術の進化が指数関数的に早くなったことにより、次々と押し寄せてくるでしょう。対症療法ではなく、本当の改革が必要です。
  3. 今のプロジェクトを管理するという考えに、そろそろ限界が見えてきました。先が見えないなか、事を進めていかなければなりません。そのための体制を築くことがデジタルトランスフォーメーションです。

執筆者

KPMG ジャパン
Digital360
パートナー Denley Tim

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