戦略の見直し: Brexitサプライチェーンの強化

戦略の見直し: Brexitサプライチェーンの強化

Brexitに伴いコストが増加するのを機にサプライチェーンの基盤強化を図ることができると、KPMG英国のサプライチェーン部門担当ディレクターのIain Princeは述べています。

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「Brexitに伴う混乱がサプライチェーンを再構築するきっかけをもたらすか?」
複雑でコストのかかる事業再編を検討している企業は、この質問に違和感を覚えるかもしれませんが、結果的にはそうなる可能性があります。それはサプライチェーンの現状がBrexitにより打ち砕かれるからです。
このところ10年ほどサプライチェーンに関連するコストは安定していましたが、最近は大きな変動が見られるようになり、10%や20%上昇のみならず、中には50%も変動しているものもあります。例えば、以下のようなものです。

  • 2016年6月のEU離脱に関する国民投票以降、ポンドは対ユーロで14%下落。
  • 英国がEUとWTOの最恵国待遇のもとで取引することになった場合、関税が大幅に引き上げられる可能性。例えば、自動車に対する関税は10%、乳製品に対する関税は35%(2017年英国下院図書館)に。加えてさらに国境での手続き、遅延、関税障壁を回避するための陸路・海路の迂回等の負担も。
  • 一部の業界で賃金インフレが上昇し、在英240万人のEU市民の労働者の多くが本国への帰国を決めた場合、さらに上昇する可能性も。
  • 倉庫保管料の上昇。英国大手不動産会社によれば、eコマースによりロンドンやその他の大都市周辺のスペースに対する需要が増加したため、2013年以降、産業施設の家賃は約15%上昇。Brexitによりその需要はさらに増加。
  • 高い在庫水準を維持する必要性とその他の現金需要により、事業の運転資金の必要性は増加。
  • 燃料価格は2014年のピーク時に比べて半分に下落。

このように多くのコストが上昇していることにより、ビジネスは損益計算書と貸借対照表へのダブルパンチを受けています。これまで採算ぎりぎりのライン上にあった事業活動や顧客との契約は、赤字へと転落する可能性もあります。

そのため、企業は現状と将来のコストについて分析する必要があります。収集したハードデータをもとに、サプライヤーや顧客と、あるいは自社内で厳しいディスカッションをせねばなりません。そのためにはまずネットワークの詳細を把握したうえで、通商協定が締結されずにWTOの関税障壁にさらされることとなった場合に、どのような変更が必要となるかを理解する必要があります。

Brexit前であってもこれは想定外の状況を明らかにすることのできる有用な取組みです。例えば、あるクライアントは、自社について、世界中の顧客に向けて「大口注文企業」と位置付けています。しかしKPMGの分析では、実際の注文の70%以上はごくわずかな量であったという結果が出ました。これではBrexit後にハードボーダー(厳格な国境管理)が導入された場合には、事業の継続は難しいと言えるでしょう。しかしこうしたデータに基づいて、当該クライアントは、将来的に持続可能な契約に向け、価格の引上げ、発送回数の減少、最低発注量の増加、サービス内容の変更等について顧客と事実に基づく公平な話合いをすることが可能になると考えられます。

これはどんなときでも財務およびサプライチェーンに変革をもたらすことのできる取組みといえます。とはいえ、企業がこうした話合いをするにはBrexitほどの大きなきっかけが必要なのかもしれません。Brexitは企業が戦術的に管理し、影響の軽減を図る必要のある問題ですが、同時に戦略的な機会をもたらすものでもあることを念頭に置いておく必要があります。

本稿は英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。
Strategy rethink: Strengthening your Brexit supply chain

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