Brexitサプライチェーンを強化する8つの方法 | KPMG | JP

Brexitサプライチェーンを強化する8つの方法

Brexitサプライチェーンを強化する8つの方法

サプライチェーンの構築担当者は、Brexit後の貿易関係がどうなるのかわからないままサプライチェーンを構築しなければなりません。KPMG英国のBrexitサプライチェーン部門統括パートナーのAndrew Underwoodは、サプライチェーンの構築において考慮すべき8つの項目について解説しています。

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主な項目

  • Brexitはサプライチェーン契約を再考するきっかけをもたらすか
  • 貿易障壁の設置後も契約内容を履行することができるか
  • ドーバーとアイルランドの国境問題は見かけ以上に奥が深い


Brexitにより、欧州でのサプライチェーンの運用方法が変わってしまう可能性があります。国境通過の際に生じる交通渋滞は、15ヵ月後のEU離脱後に、農場や工場と顧客をつなぐグローバル物流ネットワークにどのような影響をもたらすのかを示す最もわかりやすい例にすぎません。
しかし、Brexit対策は、Brexitによる影響の緩和だけにとどめる必要はありません。約10%という極めて少数ではありますが、一部の企業はBrexitをサプライチェーンの現状を見直し、対応方法を変える(不採算ラインから撤退する、収益性を上げる等)ための戦略的機会と捉えています。

野心的な目的を持っているか、単に影響緩和のみを望んでいるかにかかわらず、企業は現時点においてすでに十分に練られた計画を持ち、それを実行する準備が整っていなければなりません。重要な問題は、いつ実行に移すか、ということです。これは最終的には新たな貿易協定が締結される、あるいは移行措置が合意に至る可能性に基づく政治的判断になります。しかし2019年3月までにやらなければならないことを考えると、企業のトップマネジメントはただ傍観しているわけにはいきません。早ければ2018年第1四半期にも行動に移す予定だ、という企業が増えてきています。

今回の寄稿は、厳しい運転資金管理から通関での混乱の回避、戦略的機会の活用法といった、最も優先順位の高い課題に取り組む際のヒントを提供する内容となっています。
また、以下はKPMGがさまざまなクライアントと協議して集約した8つの主要課題ですが、各社で検討されることをお勧めします。


1.自社のネットワークを確認することでより大きな課題解決につながる
Brexitは、離脱後に顧客にサービスを提供するためのコスト、特定の市場、製品ライン、顧客に対する戦略的アプローチ、について根本的な疑問を投げかけます。
KPMGが世界的な包装品企業の実態を分析した結果、カスタマーアカウントの10%と、製品の14%については損失計上していることが判明しました。Brexit前の状態でこの数値であるならば、ここにBrexitコストが加わった場合の結果はどうなるのでしょう?しかし、このハードデータをもとに、企業は顧客と(価格や配達頻度について)厳しい協議を行ったり、今後の事業方針について社内での議論に決着をつけることが可能になります。
そのためには、まずネットワークについて把握することが必要です。一部の企業にとっては、それはとても簡単なことです。例えば垂直統合されている企業や主に国内企業で構成されているサプライチェーンを持つ企業の場合、トレーサビリティは高くなります。一方、eコマースのような業種の企業は仲介者として関与することが多いため、製品を顧客まで届ける物流ネットワークについてほとんど把握していない可能性があります。
どちらのケースに該当する企業であっても、Brexit後の環境で発生するコストについて分析するためには、現在のサプライチェーン・ネットワークについて詳細に理解する必要があります。


2.今後も義務を履行できるかどうかを確認する
まず早急に着手すべき重要な作業は、自社で問題となりそうな箇所を契約レベルで把握したのち、貿易障壁の設置後も、現在のネットワークで継続して義務を履行することが可能かどうかを確認することです。例えば、英国の発電所のタービン補修作業を請け負っているエンジニアリング会社が、使用するブレードの在庫をドイツに保管しているとします。もし一定の時間内に(例えば24時間以内)ブレードを取り寄せることができなかった場合、SLA(Service Level Agreement:アウトソーシングサービスの提供者であるベンダーと、サービスの利用者である顧客企業の間で結ばれる、提供サービスの内容や品質に関して定めた契約)の違約条項に基づきペナルティが発生してしまいます。これは英国のサプライチェーンの在庫水準が低下していることを考えると、この先、英国中で多くの企業に起こりうることです。


3.遅延の影響を最も受けやすい箇所を特定する
当然のことながら、国境での手続きの遅れによって、受ける影響の大きさは製品により異なります。たとえ冷蔵車を使っていても、多くの乳製品の品質は時間の経過と共に劣化します。またワクチンのように繊細な医薬品や、フランス、ベルギー、オランダの原子炉から毎日輸送されてくる核同位元素など、半減期が数時間しかないものの場合も同様です。
一方、性質上あまり時間による影響を受けない製品も多くあります(運転資本の削減を目指してやっとそれを実現したところですが)。また、毎日欧州大陸から輸送されてくる大型トラック350台分の自動車部品に依拠しており、生産ラインには1時間分の在庫しか保管していない大手自動車メーカーもあります。サプライチェーンで今後もジャストインタイム・アプローチを採用する予定の企業もあるかもしれませんが、在英企業も、EU27ヵ国にある企業も、もう少し作業場所に近い所に部品を備蓄しておくことが必要になるかもしれません。


4.Brexitに耐性があることを宣伝する
欧州のサプライチェーンの再編はすでに始まっており、古いパートナーシップのみならず新しいパートナーシップにもその脅威が迫っています。英国勅許調達供給協会(CIPS)によれば、英国サプライヤーと取引のあるEU企業の63%が、サプライチェーンの一部を英国から移動させる予定で、EUサプライヤーと取引のある英国企業の40%が国内で代替企業を探し始めているとのことです。
欧州でのビジネスを維持するためには、Brexit対策を講じるだけでなく(イギリス海峡を越えずにすむ場所に製品を備蓄しておく等)、その事実をPRすることが必要です。EUの顧客に対し、これからもSLAの内容を達成できること、あるいは、少なくとも引き続きサービスの提供およびソリューションの追求にコミットしていくつもりでいることを明確に伝える必要があります。


5.「アイルランド問題」は国境問題だけではない
英国のEUとの境界に関する議論は、離脱交渉における論点の1つです。しかしその背後には、グレートブリテン島とアイルランド共和国を結ぶ海路について、Brexit後の役割はどうなるのか?というもう1つの重要な問題が潜んでいます。ドーバー港については多くの注目が集まっていますが、北ウェールズのホーリーヘッドとダブリンの間にある難所のリスクについてはあまり注目されていません。これはアイリッシュ海の両岸のビジネスに影響を及ぼす問題です。アイルランドは多くの英国企業にとって重要かつ魅力的な市場ですが、グレートブリテン島はアイルランドから欧州大陸への「橋」としての役割を担っています。英国経由ならフランスのカレーまで大型トラックで約10.5時間の道のりですが、一方、船の場合はフランスのシェルブールまでは20時間、ベルギーのゼーブルッヘまで38時間かかります。英国とアイルランドを結ぶ海路がこれからも重要な役割を担うのであれば、イギリス海峡の周辺のみでなく、アイリッシュ海の周辺にも今後どのようなインフラを整備すべきか考える必要があります。


6.ドーバー以外にも目を向ける
ドーバー港に向かう車両の交通渋滞に対処するため、オペレーション・スタック(ドーバー周辺の高速道路M20に数千台の大型トラックを駐車させるシステム)が採用されています。しかし、国境での大幅な遅れが生じた場合に問題となるのは、逆方向に向かうインバウンドの製品にも影響が及ぶ可能性があるということです(結局のところ、英国は純輸入国)。そのため、「ドーバー問題の解決策」だけでなく、欧州主要港湾都市であるカレー、シェルブール、ゼーブルッヘ、ル・アーヴルに関する解決策も必要になります。自社で、または外部の物流業者を通じて、これらの港湾都市における対応について調査しておかなければなりません。余談ですが、欧州大陸側の港湾都市でも海峡横断運搬ビジネスの獲得に向けて熾烈な競争が起こっているようです。コスト面のみならず、Brexitに対処するための確固たる計画が、企業が他社から評価される際の重要基準となります。


7.関税率の違いにより事業内容と活動場所が変わる
国によって異なる税負担(法人税等)がサプライチェーン構築において重要な検討要素となり、時間や物流コストよりも重要視されるようになってきています。関税も同じく重要な要素となる可能性があります。これは1つの関税率のみに基づいて、ある製品をA国で製造するかB国で製造するかといった単純な問題ではなく、複数の関税率に基づき、どの製品をどこで製造するかという問題です。
例えば、ある薬を創るための化合物に対する関税よりも、錠剤となったその薬に対する関税の方が高くなり、そしてその錠剤がブリスター・パック(透明なプラスチックで覆ったケース)で包装され箱詰めされると、関税はさらに高くなる可能性があります。そのため、関税が原因で店舗を開設または閉鎖することはないかもしれませんが、どこで何をするかという判断には影響を及ぼす可能性があります。


8.思いがけないところで待っている事業機会を探す
Brexitから恩恵を受けるビジネスはたくさんあります。もっともわかりやすい例は、EU離脱に関する国民投票以降、ポンドが下落したことにより輸出業者のモノとサービスの国際的な競争力が上がっています。この他にも、独創的な発想をする企業にもBrexitは事業機会をもたらしています。
アイルランド事業の将来について検討している会社があります。Brexit前には、アイルランドの工場を閉鎖し、英国にある工場を使ってアイルランドへの製品供給を行う計画でした。しかし、関税や通関での遅れが生じる可能性が出てきたことにより、アイルランドの工場は既存顧客のみならず新規顧客に向けたBrexit対応のソリューションとなりました。いずれビジネスが拡大すれば過剰生産能力により生じるコストは軽減されることでしょう。E5
このロジックは多くの英国企業にも当てはまるはずです。欧州の既存顧客や潜在顧客が直面しているBrexitに伴う課題について調査し、そのソリューションを提供できる会社として自社の価値を高める施策を検討することです。


本稿は英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。

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