影のサプライチェーン | KPMG | JP

影のサプライチェーン

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The Brexit Column - KPMG英国の小売業界担当責任者のPaul Martinは、離脱交渉が合意に至らない場合、EUと貿易を行っている企業には堅実な代替案、別名「影のサプライチェーン戦略」が必要になるとしています。

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先日、Chris Grayling運輸大臣は、Brexit後の価格高騰を避けるために英国産の食物を増産すべきだと強く主張しました。この発言を受け、まるで秋の嵐に吹かれる木の葉のように目まぐるしい報道が続きました。「スパムばかりが食卓に並ぶ日が来る」、「落ち着いて家庭菜園を耕し続けなさい」といったフレーズはさておき、運輸相の発言はビジネス上の差し迫った懸念を浮き彫りにしました。EUとのスムーズな貿易が不可能になった場合、どうすれば陳列棚を満たす量の商品を確保し、顧客を満足させることができるでしょうか。

食品セクターと衣料品セクターは、このシナリオによって特に大きな打撃を受けるでしょう。KPMGは最近、世界貿易機関(WTO)の関税が英国市民の朝食のコストに与える影響を明らかにしました。また、ドーバー港の通関が2分遅くなるだけで、17マイル(約27km)もの渋滞が生じると推定されています。遅れが8分に延びた場合、渋滞の列はエセックスにまで達するとみられています。顧客が今日見つけたドレスを翌日着る予定で、速やかな配達が必要な場合、上記の状況は好ましくありません。

コスト増加と配達時間の遅延という二重苦から逃れるために、企業は何ができるでしょうか。信頼の置ける貿易業者としての地位を確立し、通関手続きを早めるのは効果のある手段でしょう。顧客の期待を把握し、管理することも役立ちます。しかし、英国の輸入食品・飲料の約70%をEUから輸入していることを踏まえると、根本的な問題は「我が社のサプライチェーンは、Brexitがもたらし得る混乱に対処できるか」という点にあります。答えがノーである場合、すべての自社拠点をカバーする「影の調達チェーンおよびサプライチェーン戦略」の立案を検討すべきです。


自社の事業を徹底的に把握
まず、自社のサプライチェーンのあらゆる段階の機能を完全に理解しましょう。原材料や部品の一つひとつについて、どこから入手しているのか把握します。遅延、コスト、調達可否の観点から、Brexitにより打撃を受ける部分がないか検討しましょう。評価対象には主要なサプライヤー(さらにそのサプライヤー)まで含めてください。また、自社製品が輸送される過程も明確にしましょう。製品を輸送するのは自社やサプライヤーでしょうか、それとも第三者の物流業者でしょうか。

次に「影」の部分です。これは新たな価値ある関係を築くことを意味します。例として、これまで繋がりがなかった国において、果物の新たなサプライヤーとなる可能性がある業者と具体的な予備交渉を実施することが挙げられます。また、これまでEUのサプライヤーに求めてきた迅速な調達と同様のことを行える可能性のある、さらに遠方の衣料品工場を探すことも考えられます。

即座に調達契約を結ぶ必要はありません。しかし、最初の契約を吟味することは非常に重要です。また、行動の時期と方法について誠実であることも同様に重要なことです。一部のサプライヤーは、契約締結に関する一定の保証や、場合によっては依頼料を求めるかもしれません。また、製品に関して所定の割合の購入保証を求める可能性もあります。これらすべては、競争優位を得るための価値ある投資といえます。
例えば利益率が低い業界において、EUの生産者からオリーブオイルを購入することによって、EU以外の生産者から若干高額な製品を購入した場合に比べてコストをわずかに削減していたとしても、50%の関税が突然適用されれば、その削減分は帳消しになってしまうでしょう。それに比べれば、今から行動を起こして、サプライヤーを安全に確保する方が良いのではないでしょうか。


国産製品で成功をつかむ
国内サプライヤーの役割が増していることも忘れてはなりません。国内業者であれば、関税は全くかかりません。オリーブオイルを英国で調達しようとは思わないかもしれませんが、現在、漫然とEUから調達している他の製品については、英国での調達が増える可能性があります。例えば、英国が現在EUから輸入している120万トンのトウモロコシの代替品として、農家がトウモロコシの増産を決断することが考えられます。

同様に、英国内で製造される衣料品が急増したとしても驚くにはあたりません。関税や通関の遅れに対処し、商品をすぐに受け取りたいという顧客のニーズを満たすために、一部の製造業者が「英国への移転」を行う動きが見られます。

数年後のスーパーマーケットに並ぶ商品は、現在とは少し異なり、新たな国産品の割合が増えているかもしれません。現在、鶏肉の輸入割合は増加傾向にありますが、鶏の代替品として、英国産のウサギがレストランのメニューに復活してきているそうです。企業が代替案を実行しつつ、顧客の食欲を満たしている好例といえます。こうした成功例は、英国・サウスダウンズ産の最高級スパークリング白ワインでの乾杯に値するものです。

 

本稿は英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。

The Brexit Column

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