RPA高度化に向けた方法論と活用事例 | KPMG | JP

RPA高度化に向けた方法論と活用事例

RPA高度化に向けた方法論と活用事例

本稿においてはKPMGの保有するRPA高度化に向けた方法論について、実際の活用事例を交え解説します。

執筆者

パートナー デジタルレイバー&トランスフォーメーション統括

KPMGコンサルティング

お問合せフォーム

関連するコンテンツ

働き方改革や生産性改善に向けた施策の1つとして、多くの企業で導入が進んでいる仮想知的労働者(Digital Labor:デジタルレイバー)とも呼ばれるロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation、以下「RPA」という)ですが、一定の効果を実感した企業が、昨今増えてきています。効果検証後の次のステップとして、RPA化業務範囲の拡張へと駒を進めますが、新たな壁により推進に困窮している企業が多く見受けられます。次々に誕生していくソフトウェアロボット(以下「ロボット」という)を効率的かつ確実にユーザに定着化させていくにはどのようにしたらよいか、また、その際の運用管理方針や組織体の在り方はどのように定義すればよいかがわからない、といった問題です。
RPAの稼働状況の把握や案件の予実管理、指標による評価もできない状態など、リスクコントロールやガバナンス不在の運用となり、RPA導入範囲の拡張は失敗に終わる可能性が高くなります。
RPA導入の現場において、いま求められているのは大規模なRPA化を支える新たな自動化/自律化のマネジメント方法論です。
本稿においてはKPMGの保有するRPA高度化に向けた方法論について、実際の活用事例を交え解説します。
なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • 100あるいは1,000を超える業務のRPA化にあたり、ロボット開発、運用管理方針や組織体の定義等の難しさに直面している場面が多々見受けられる。
  • リスクコントロールとガバナンスを効かせるために「案件の予実管理」と「RPAの稼働状況の把握」双方の管理基盤の構築と、指標の「見える化」、PDCAサイクルを通じた改善活動を日常オペレーションに組み込むことが重要である。

I.RPAによるビジネストランスフォーメーションを実現するRPA-TOM

1.RPA-TOMとは

TOM(Target Operating Model)とは、オペレーション戦略を明示化したKPMGが保有するフレームワークで、特定の付加価値を提供するために、プロセス・人材・テクノロジーを俯瞰し組織全体の運用管理の在り方を定義しています。RPA-TOMは、特にRPA導入効果の最大化を目的とし、RPAに関する組織の在り方を体系化したものです。

2.なぜRPA-TOMが必要か

RPAの出現により、業務効率化はこれまでにないスピードで実現可能になりました。一方、ただの便利ツールという位置づけでRPAを導入することには様々なリスクがあります。こうしたリスクを解消するにはRPAを運用・管理する組織のTOMを定義、構築し、体系的にRPAを活用することが必要です(図表1参照)。

図表1 RPA適用のリスクとTOMによる解決

3.RPA-TOMの定義・構築のための観点

RPA-TOMを定義、構築するためには、「プロセス」、「組織・ガバナンス」、「テクノロジー」、「パフォーマンス」、「外部委託」、「人材・スキル」の6つの観点を検討します(図表2参照)。本稿では、その中からRPA-TOMの検討において特に重要となる「プロセス」の観点について解説します。

図表2 RPA-TOM標準モデル

4.「プロセス」の検討内容

「プロセス」においては、まず個々の業務に対し、どのような基準でRPA適用可否を判断するのか、どのようなステップでRPAを導入するのか、RPA導入後いかに効率的に運用していくのか、といった「RPA構築・運用」という基本プロセスを検討、定義します。
次に「RPA構築・運用」をサポートするプロセスとして、プロジェクト管理の在り方、開発標準策定、ライセンス・構成管理、インフラ管理等「RPA活用基盤」に関するプロセスの検討、定義を行います。
また、RPA導入効果を維持、改善・成長させるための予算管理、人材・ナレッジ管理、評価・改善等「RPA推進・高度化」のプロセスも重要です(図表3参照)。

図表3 RPA-TOMにおけるプロセスの観点

RPA導入初期において、「RPA構築・運用」プロセスはRPA化を行う業務1つひとつに直結することから、関係者の理解を得られやすい一方、中長期的には、部門レベルや企業レベルで大量な業務のRPA化を行うことから、業務単体のRPA化にフォーカスした「RPA構築・運用」プロセスだけでは不十分となり、RPAの開発から運用までの安定性を確保する「RPA活用基盤」プロセス、経営の観点からRPAの改善・運用を安定的に維持するための「RPA推進・高度化」プロセスが不可欠です。
「RPA活用基盤」、「RPA推進・高度化」プロセスの重要性に注目し、それを専門的かつ効果的に実施する新しい組織が、「RMO(Robotic Management Office)」という概念です。

II.新体系のロボット管理組織:Robotic Management Office

1.RMOが担う業務概要

企業レベルでRPAの導入を推進するうえで、「開発から導入までの推進」、「導入後の安定化」、「定着化の推進」という3つの機能をもつRMOを設置することが有効です。
RMOの主な役割としてオフェンシブとディフェンシブの2点が上げられます。

 

(1)RMOのオフェンシブな役割
オフェンシブな役割として、開発済みロボットの新たな業務適用先候補を提供する役割が挙げられます。業務担当者へのヒアリング結果や業務システム、アプリケーションのログ情報から適用先予測を行い、効率的にロボットの適用先拡大に貢献します。既存ロボットを他の業務に活用できれば、開発に時間をかけずに短期間で業務のRPA化を行うことを可能にします。

 

(2) RMOのディフェンシブな役割
一方、RMOのディフェンシブな役割としては、ロボットの開発から運用保守に至る次の各フェーズに必要な管理の役割が挙げられます。

  1. ロボット開発フェーズ
    利用する業務システムで使用するID/PWを情報セキュリティポリシーに則した形で管理する必要があり、また定期的なパスワード変更にも対応が必要です。さらに、システム等のURL変更に備えてURLを指定するパラメータを一元的に管理することも必要になり、ロボットを利用するうえで管理が必要な情報を安全に運用する役割を担います。加えて、開発コストとリソースの最適な割り振りと予実を管理することも重要な役割です。
  2. ロボット導入フェーズ
    ガバナンスの観点から、管理外で稼働可能な状態のロボットを発生させない管理が必要になり、実行される物理または仮想端末の管理と両者の関係性についても管理を行います。インシデント発生時は、この管理を行うことで端末とロボットをコントロールする役割を担うことからアセット全般のコントローラの役割を担います。
  3. ロボット運用フェーズ
    導入後のロボットの稼働状況とError/Warning状況を把握し、各業務部門においてロボットの稼働が停滞しないよう管理する必要があります。特にError/Warningを起因とした停滞に対しては、迅速に原因究明と対策検討を進めることが求められます。そのほか、改修を含む保守の予実管理も重要です。このフェーズでは、運用にかかわる情報を基にロボットを安定的にドライブさせる役割を担います。


いずれにしても、「正確な情報収集」「ステークホルダへの情報提供」をいかに迅速に行うことがロボットの安定化と定着化に向けた重要なファクターであり、その役割を担うのがRMOです。

2.RMOの管理項目とツール群

RMOが何を管理していくべきかが運用面でのポイントです。RPA化適用業務の検討からロボット開発、導入、保守と、業務のRPA化に関連する管理工程のすべてをカバーすることになり、なかでもRMOが管理すべき項目には、主に次の4点が挙げられます。


(1)ROI(投資対効果)の管理
RPA化全体の効果測定の指標であるROI(投資対効果)の管理。RPAの導入効果を図る最上位の指標となり、次に挙げる管理項目を分析することでその増減要因を把握することを可能にします。


(2)管理・運用の全体管理
ロボットの構成やバージョン管理といった資産面の管理と、運用上の変更や問題点の改善とを合わせて行い、案件全体を管理し把握します。


(3)開発の管理
開発進捗の管理に加えて、開発案件と開発者のスキルレベルをコントロールすることで効率的、かつ精度の高いロボット開発が実現します。開発するロボットの規模や難易度から最適な開発リソースを配置することにより、品質を維持し、スケジュールとコストにおいても最適化が可能になります。

(4)稼働状況の管理
導入したロボットの稼働状況とエラー発生状況の管理では、ロボット導入後に有効に活用されているか、Error/Warningにより稼働が低迷していることがないか等をモニタリングすることが有用です。
これらは、リスクコントロールとガバナンスを効かせるための管理指標であり、「案件の予実管理を行う管理基盤」と「RPAの登録/設定/稼働状況を把握する固有の管理基盤」の双方を構築したうえで運用を行うことが最適な方法と言えます。管理基盤の必要性は規模によって異なりますが、仮に規模が小さい段階でも管理の内容に変わりはありません。

3.RMOにおける運用管理方法

ロボットを運用するうえで得られた管理指標の運用方法も重要な視点と言えます。各指標はBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールなどでダッシュボードを作成し、レポートを行うことで状況を可視化させ、マネジメントの迅速な意思決定を可能にします。定期的な情報のアップデートとそれに対する対応を行うことで安定化を加速させますが、そのためにRPAの導入フェーズに合わせた形で柔軟にKPIを設定し、管理を行います。KPIが超過した際の運用ルールとエスカレーションルールを明確にし、ロボットの適用業務範囲が拡大した場合でもRMOでガバナンスを効かせられる運用を行うことにより、種々の管理データから迅速な対応を可能にします(図表4参照)。

図表4 RMO業務

執筆者

KPMG コンサルティング株式会社
Digital Labor & Transformation
パートナー 田中 淳一
パートナー 田邊 智康
シニアマネジャー 塩野 拓
マネジャー 張 駿宇

IT Advisory
シニアマネジャー 信田 人

お問合せ

 

RFP(提案書依頼)

 

送信