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ギブ・アンド・テイク

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The Brexit Column - Brexit(英国のEU離脱)をめぐる争いで、完全な勝利を収められる者はいません。企業がある程度確実で短期的な見通しを得るには、誰もが少し譲歩しなければならないと、KPMG英国・ロンドン事務所のMark Essexは述べています。

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Brexitはまるで綱引きのような様相を呈しています。ただし、争っているチームは2つ(英国とEU)ではなく4つ(英国内の残留派、英国内の離脱派、EU政府、英国議会)です。離脱に投票した国民は、自らが思い描くBrexitの実現を目指して綱を引いています。一方、残留派の多い経済界は、混乱と不確実性を最低限に抑えるための合意を求めています。青と黄色の旗を掲げるEUチームは、ほぼ一体となって綱を引いており、ぶれない姿勢を示しています。英国を見せしめとして、他国のEU離脱を防ぐという決意は固いようです。そして、第4の勢力である英国議会は依然として、綱をいつ、どのように、どちらの方向へ引くかといった議論を続けています。

しかし、どのチームも、いかに努力したとしても、この争いに完全勝利できる者はいないということを最終的には認めざるを得ません。すべてのチームが手綱を緩め、ある程度譲歩しない限り、息切れして地面に倒れこむ結果となります。その間、何も合意できないままBrexitを迎える日が近づき、18ヵ月(1年半)後には大きな問題が発生する可能性があります。

理由は単純です。移民と主権に関する離脱派の要求と、ほぼ現状維持という英国企業の要求を同時に満たしつつ、英国議会で過半数の賛成を獲得し、さらに欧州理事会と欧州議会の賛同を得られる条件などはあり得ないことです。

一部の企業経営者は、離脱派の国民を説得して意見を変えるという希望に固執するかもしれません。こうした経営者が説得力のある論拠を提示し、離脱に投票した1,740万人の国民のうち一定割合の意見を変えることによって、十分な人数の英国議員が「国民の意思を実現する」義務から解放される可能性はあるでしょうか。

私はそのようなシナリオに期待していません。企業が「無計画かつ合意のない」離脱シナリオと、それによって発生する可能性のある混乱の影響を遮断するためには、今から数ヵ月後までに対策を開始する必要があります。

私見では、まず、離脱に投票した国民は、自分の行動をすぐに後悔するような事態には見舞われていません。企業は輸入コスト、EU国籍の労働者の英国からの脱出、サプライ・チェーンの混乱や投資意欲の揺らぎを懸念しているかもしれませんが、現時点で消費者にとって目に見える影響はポンド安と、これに伴う1.8%ポイントのインフレ率上昇「のみ」に限られています。

次に、二大政党(自由党と労働党)の党首が国民投票の結果を尊重すると誓約しているため、両党の国会議員は引き続きBrexitを支持する公算が大きいとみられます。近い将来に2度目の国民投票が実施される可能性はないに等しく、この状況は変わらないでしょう。

思うに、メイ首相によるランカスター・ハウスの演説で示された制約の一部を受け入れる代わりに、企業は要求を弱め、交渉が実施される可能性を大幅に高めるというトレードオフ(交換条件)を実現する必要があります。そして、その交渉の概要を把握しなければなりません。これは単一市場および関税同盟からの離脱と、EUからの移民の一部制限を意味します。しかし今、何よりも求められているものは計画実現の確実性かもしれません。

計画が確実に行われるために、欧州に同意してもらうよう説得するには、どうすればよいのでしょうか。私は、英国政府によるランカスター・ハウスでの提案に基づくとともに十分な金額を提示することが、欧州の首脳陣にとって、妥当な貿易協定を英国に提案する動機になり得ると考えます。貿易摩擦がまったく生じないとまではいかなくても、それに近いものは実現できます。また、これまでのように労働力の自由な移動はなくなりますが、離脱派を憤慨させない程度の移動は可能です。

各企業がこの分析に同意するかどうかについては、主に、その企業にどれだけの準備時間が残されているか次第だと思います。

一部の企業は、コンティンジェンシー・プラン(緊急対応計画)を発動して多額の出費をせざるを得ない事態に極めて近づいており、EUとの交渉の早期打ち切りを求める声を支持するほど切迫した状況にあります。このような状況では、1年かけて合意を締結するよりも、計画が確実に行われる可能性を高める方がより重要です。

これらは、欧州で複雑なサプライ・チェーンを構築している企業や、EU域内での事業運営に関して許認可が必要な企業です。こうしたグループ以外の企業は、早期の合意を歓迎するでしょう。合意によって市場参入が制限されるとしても、計画実行の可能性が大幅に高まるからです。これらの企業にとって現時点で最も望ましいのは、英国政府が迅速に行動し、寛大な提案が行われることでしょう。

このような企業と比べると、小売企業や、サプライ・チェーンが比較的単純な企業などには、多少の時間が残されています。これらの企業は現在、不安を感じているかもしれませんが、国民の意見や議会における力関係が十分に変化し、世論と議会がノルウェー型の解決策に傾けば、コンティンジェンシー・プランの実行を延期できる可能性があります。

Brexitに望むものが何であれ、企業は政府に計画実行の可能性を求めることはできません。多くの競合勢力に左右される状況の中で、政府が確実な見通しを提供するのは困難な状況です。


本稿は英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。
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