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The Brexit Column - 農業と食品産業は、Brexit(英国のEU離脱)によって極めて大きな変化に直面する可能性があります。KPMG英国・ロンドン事務所の食品/飲料セクター責任者のChris Stottは、こうした業界の企業は、今すぐに計画立案を開始する必要があるとしています。

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Brexitは農業/食品セクターの関係者にとって、収穫期の空を覆う雲と同様に、先行き不安の材料となってきました。それも当然のことです。英国がEUから離脱することに伴い、英国市民の生活様式や、食品/飲料に支出する金額、スーパーマーケットの棚に並ぶ果物や野菜の種類にまで、大きな影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、ジャガイモを例にとりましょう。ジャガイモを栽培する農家から、それを販売する卸売業者、冷凍チップスを生産する工場、ポテトグラタンを提供するレストランに至るまで、フードチェーン全体が影響を受けます。

英国政府の交渉結果に左右される部分は大きいものの、企業は受け身の傍観者でよいというわけではありません。労働力とサプライチェーンの確保と共に、ポンド安による輸出機会の活用を検討する必要があります。

DEFRA(英国環境・食料・農村地域省)のデータによると、農業/食品セクターが英国経済に占める規模は1,100億ポンドに上ります。英国では食料品の48%を輸入しており、29%はEUからの輸入が占めています。輸入だけでなく輸出も活発で、昨年の輸出額は過去最高を記録(FDF:英国食品製造業出展)しました。

ONS(英国国家統計局)によれば、英国に居住するEU国籍市民は、食品製造業における労働力の3分の1を占め、食肉加工業ではその割合が3分の2にまで上昇します。ピーク時に農家が雇用する臨時労働者は75,000人に上り、ほぼ全員がEU市民です。また、英国のホスピタリティー産業に関するKPMGのレポートでは、ウェイターとウェイトレスの4分の3がEU市民であることが明らかになりました。

筆者が直接話した農家や経営者が警戒しているのは、無理もないことです。こうした農家や経営者は、ヒトとモノの流れの変化や、EUの共通農業政策に基づく補助金の削減によって大きな打撃を受けます。

生活賃金制度や年金自動加入制度によって人件費が上昇しているうえに、ポンド安で輸出価格が押し上げられインフレ圧力がすでに高まっている中、Brexitの結果が不調であれば、さらに圧力が上昇することになります。英国民の朝食に関する最近のKPMGのレポートによれば、Brexitによって再びWTO(世界貿易機関)の関税規則が適用されることとなった場合、英国の伝統的な朝食であるフライアップの材料にかかる費用は、13%増加して1世帯あたり26.61ポンドとなります。


古き良き時代への回帰?
今年、ポンド安による輸入コストの上昇を理由に、すでに複数の企業が破産申請しました。筆者(KPMG UK Chris Stott)は今後も破産件数が増えると予想しています。製パンや青果といった分野では、事業に最低限必要な規模の確保を必要とする企業により、統合が進むとみられます。

幸いなことに、スーパーマーケットの棚から食品がなくなり、英国の食料事情が脅威に晒されるとは思いません。単一市場の成立以来、英国市民は、商店に膨大な種類のフランス産アーティチョークやスペイン産チョリソーが並んでいるのを見慣れるようになりましたが、関税同盟と単一市場に参加できなくなれば、欧州から輸入される生鮮食品を安く十分に確保できるかは不明です。とはいえ、パスタが見慣れない異国の食べ物であった時代や、夏場以外は新鮮なトマトをほとんど食べられなかった時代に戻るわけではありません。

Brexitによって、郊外の芝生が農園に変わるほどの変化は起きないにせよ、長期的にみて、業界の再編や自給率向上の機会は生まれるでしょう。自ら選択するか、必要に迫られるかを問わず、英国は自給自足による持続可能性を促進し、世界をリードする農業技術会社を生んだ科学技術の専門知識を活用すべきです。

食生活のトレンドが健康志向に移行したときと同様に、食品産業は商品の製法を再検討し、嗜好性や利便性など、消費者が要求するものに焦点を当てることにより、環境に適応する必要があるでしょう。消費者は、英国産の高品質な食品に高い金額を支払うことに慣れる必要があるかもしれません。

大部分がEUとの交渉次第であることは否めません。しかし、先見的な企業は自社の供給ラインについても考える必要があります。英国や欧州の既存ラインを維持するか、米国で新たなラインを開くか検討しなければなりません。さらに、労働力を引き付け、維持すると共に、新技術を活用できないかどうか検討し、労働力を確保する必要があります。

ポンド安で恩恵を受けている企業は、農家を見習って、状況が良好なうちに備えを進めるべきでしょう。現在は、事業を批判的な目で見直し、新たな製品や市場を模索する良い機会かもしれません。しかし同時に、未知の世界へと不用意に飛び込まないよう注意する必要があります。

本稿は英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。
The Brexit Column: Sowing the Seeds

Brexit(英国のEU離脱)に関する解説

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