英国外における基盤を強化する | KPMG | JP

英国外における基盤を強化する

英国外における基盤を強化する

KPMG英国・ロンドン事務所のバリュー・チェーン専門家のTim Sarsonは、EU域内に支店または子会社を設立すべきかどうかについては、その企業の業種に大きく左右される、としています。

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EU域内で自由に業務ができる単一パスポート制度、関税の引き上げ、労働者に対する規制、税制の移行など、Brexit(英国のEU離脱)をめぐる問題により、英国企業はEU加盟国に新たな拠点を設立するか、あるいは少なくても既存の拠点を強化する方に向かう可能性があります。しかし、拠点の設立や強化はBrexitの18ヵ月(1年半)前の今、すぐに行うべきでしょうか。それとも、政治交渉の概要が判明するまで待つべきでしょうか。待っていれば、時間や費用、労力は節約できるかもしれませんが、Brexitによって崖っぷちの状況に陥る可能性が高まることになります。

誰がいつ行動すべきかについては、主に企業の業種に左右されます。Brexitによって不都合なことや費用負担に直面する企業は数多くありますが、今適切なところにある拠点を欧州に設立しないことで事業が急停止する可能性がある業界は、銀行、製薬、航空といった規制の厳しい企業です。


一部の企業は今、行動が必要
EU域内に拠点を設立する必要がある業界として最も頻繁に挙げられるのは、金融サービス・セクター(部門)です。これら企業は、他業種に比べてより早く、より踏み込んだ行動を取る必要があり、実際、業界全体としてそのような傾向にあります。しかし、筆者の私見では、その他の規制業種に属する企業の多くが遅れをとっています。こうした企業は、Brexit期限日(2019年3月29日)に、お互いによく似た危機に直面するでしょう。崖っぷちの状況を回避するには、2018年1月または2月までに行動の準備を整える必要があります。

一部の企業は、EU域内に支店や子会社があるので影響を受けないと誤解しているようです。問題は、こうした支店や子会社が、EUや各国規制当局が要求する主要な取引企業ではない点です。多くの企業は、こうした組織の範囲と複雑性を大幅に拡大するか、あるいは新たな事業拠点を設立しなければなりません。これは最大で数ヵ月要すると思われます。

例えば、製薬会社を見てください。製薬会社が生産する医薬品は、世界で最も規制が厳しい製品の1つです。医薬品をEU域内で製造したり、輸入したり、配送したりまたは販売したりするには、規制当局の許認可や承認が必要です。規制当局は、製薬会社のサプライ・チェーンについて、(EU非加盟国であるスイスの製薬大手企業がそうであるように)完璧さが求められています。スイスの製薬会社と同様、英国の製薬会社もまもなく、以下のことが必要になるでしょう。

  • 規制の影響を受ける範囲について確認します。
  • 物流、地理的位置、サプライ・チェーンに基づき、立地が適切であるかを分析します。
  • (独立した子会社ではなく)支店の組織構造が十分であるかどうかを評価します。
  • 英国外で税負担がどれぐらいになるかを確認しなくてはなりません。
  • 新たなインフラの立地を決めたり、建設したり購入したりすることを検討します。
  • 英国の人員を再配置したり、現地従業員を雇用したりします。

上記について、Brexitが実際に始まった時に備え、可能な限り多くの課題が解決できるように整備しておけば、リスクを軽減できる可能性が高まります。


誰もが問題意識を持つべき
規制が比較的緩い業界であれば、状況はより微妙となります。この場合、問題は欧州やアイルランドとの取引停止よりも、EUの基盤喪失に伴う取引の遅延、コスト上昇、複雑化のリスクにあることです。自社の製品がEUの単一基準に適合するか、通関手数料の引き上げの可能性があるか、自社が新たな「EUデータ保護指令」(特にBrexitよりかなり前の2018年5月に施行されるEU一般データ保護規則「GDPR」)に準拠しているかについて、確認する必要があります。

交渉が継続中であるため、市場へのアクセスをめぐる見通しは不透明です。コンティンジェンシー・プラン(緊急対応計画)がすでに策定済みであることについては、疑いの余地がありません。自社が規制対象となるかどうかにかかわらず、Brexitをめぐる計画立案の過程全体を通じて複数の選択条件、つまり「選択肢」を準備しなければなりません。また、業務で発生するリスクを管理するために、相手が銀行、保険、サプライヤー(供給[納入]業者)、顧客いかんにかかわらず、契約の手続きを履行するように確実性を高めなくてはなりません。筆者が提案するのは、できるだけ多くの選択肢を確保しつつ、実際に変更を行う2018年まで待つということです。

待つべき理由は何でしょうか。まず、自社がEU域内の単一パスポート制度の対象かどうかにかかわらず、英国とEUが自国(現地)の規制と同等となるよう、お互いにどのような種類の規制を認めるかについて把握する必要があります。英国がEUの単一市場に類似した枠組みに残留し、多くのEU地域と規則を共有する場合、問題の大幅な軽減が見込まれます。仮にそうでなくても、EUと英国の規制が乖離するまでには時間がかかるでしょう。企業はこうした乖離を監視する必要があります。


組織が解決すべき複数の大きな課題と、はじめに着手すべき点

  • 自社の立場の把握:欧州での事業運営を大幅に変更せざるを得ない場合があります。規制の厳しい業界であれば、問題となるのは費用や不都合ではなく、事業の許認可が得られるかどうかということです。これを遅らすわけにはいきません。
  • 戦略的思考:独立した問題として捉えてはなりません。EU域内での事業の許認可に関することよりも、むしろシステム、サプライ・チェーン、雇用などを包括的に見直す機会として活用しましょう。
  • 競争への参加:将来のEUの政策に影響を与えるためには、欧州本社または子会社を現時点で設立しなければならない可能性があります。EU加盟国において、これまでメンバーに含まれていた英国企業を外すことになれば、防衛、インフラ、アウトソーシングなどの公共調達に依存する英国企業は、競争入札から締め出されるかもしれません。
  • ブランド・パーミッション(信頼度)の獲得:Brexit前でも、欧州の顧客に欧州の企業と認識されることが望ましいかどうかについて考えてみましょう。政治情勢の成り行き次第では、英国のブランドは今後1~2年で打撃を受ける可能性があります。結果として、欧州の顧客対象に、これまでとはまったく別個のブランド戦略を検討しなければならないかもしれません。

本稿は英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。
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