XML電文/金融EDIを基点とする財務のデジタル化・高度化 | KPMG | JP

XML電文/金融EDIを基点とする財務のデジタル化・高度化

XML電文/金融EDIを基点とする財務のデジタル化・高度化

「XML電文」への移行および「金融EDI情報」の拡張を基点に経理・決済業務等の高度化へ繋げていく道程について解説。財務分野周辺における新サービス等の動向についても確認します。

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2020年、ほぼすべての国内企業が利用している資金決済プラットフォームに変革が起こります。これまで長年使われてきた企業間の送金指図で使用する「固定長電文」が廃止され、「XML電文」への移行が計画されています。

一方で、これは企業財務の分野で起こっているデジタル化の潮流における1つのでき事ととらえることも可能です。

企業は、「固定長電文」の廃止への対応ではなく、「XML電文」への移行と「金融EDI情報」の活用を念頭に、財務分野における機能の高度化および企業の競争力強化に繋げて行くことが必要です。

本稿では、「XML電文」への移行および「金融EDI情報」の拡張を基点に、経理・決済業務の高度化、資金管理高度化および財務管理高度化へと繋げていく道程について解説するとともに、財務分野周辺における新サービスや新商品の動向について確認します。

ポイント

  • 2020年の固定長電文の廃止と2018年からのXML電文に係る新システムの稼働は、金融EDI情報の活用による売掛金消込作業の効率化等を通じて経理・決済業務の効率化に繋がる。
  • 受発注情報といった商流EDI情報におけるフォーマット等の標準化および取引先とのやり取りの電子化等と金融EDIとの連携により、受発注から決済に至る資金管理プロセス全体のSTP※1化が可能になる。
  • 受発注と資金決済に係る大量の企業活動に係るデータの活用を通じて資金調達の多様化・資金回収の早期化に繋げることにより、財務管理の高度化および資金効率の向上に繋げていくことが可能になる。
  • オープンAPI、トランザクション・レンディング、電子記録債権といったツールの登場・発展により、中小企業においてもこれまで大企業が受けてきたような財務管理の高度化を実現することが可能となってきている。


※1 Straight Through Processingの略。標準化されたフォーマットを用い、情報システムを連動させることにより、取引の約定から決済に至るまでの一連のプロセスを、人手を介さずにシームレスに行うこと。

I.固定長電文からXML電文への移行の背景

2020年を目途に、企業間の国内送金指図について、現行の「固定長電文」を廃止し、「XML電文」※2に移行する予定となっています。

この背景には、FinTechの進展といった決済サービス分野における環境変化を踏まえ、欧米諸国および主要新興国において、金融機能の中核的基盤である銀行間ネットワークをはじめとする決済インフラの高度化に向けた取組みが強化されていることが挙げられます。こうした動きに対し、日本においても利用者利便の向上とともに企業の国際競争力強化の観点から決済インフラを改革していく必要がありました。

経済活動の基盤となる資金決済プラットフォームである銀行間ネットワークの変革は、多くの企業に一定の影響を及ぼす一大プロジェクトであるものの、企業においては、こうした背景も踏まえ、単に最低限必要な対応のみ実施するのではなく、一連の改革を通じてもたらされる新たな機能を最大限に活用し、自社の競争力強化に繋げていくことが求められます。


※2 eXtensible Markup Language。電文の長さなどを柔軟に設計・変更することが可能な電文方式

II.XML電文・金融EDIを基点とする財務管理の高度化

1.企業に対応を迫る固定長電文の廃止

2015年12月に金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告」において、企業間の国内送金指図における現行の「固定長電文」フォーマットを2020年までに廃止することが提言されました。


“「2020年までに、企業間の国内送金指図について、現行の固定長電文を廃止し、XML電文に全面移行する」”

※金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告~決済高度化に向けた戦略的取組み~(PDF:784kb)」より抜粋


その後、全国銀行協会を事務局として設置された「XML電文への移行に関する検討会」より、2016年12月、図表1に示すようなXML電文への移行イメージを含む「総合振込に係るXML電文への移行と金融EDIの活用に向けて」が公表されました。

「固定長電文」に代わって新たに送金フォーマットとして採用される「XML電文」は、電文に含まれる情報量が大きく拡大するほか、電文の国際規格(ISO20022)であるXML方式を用いること等により情報の互換性に優れているという特徴を持っています。言い換えると、広範かつ多大な影響を乗り越えてでも資金決済プラットフォームの変革を実行するのは、この情報量の拡大と情報の互換性を確保するためということになります。

ユーザーである企業は、単に「XML電文」に対する必要最小限の対応を取ることではなく、この付加機能を最大限使いこなし、以下に取り上げるような観点を含めた「XML電文」および「金融EDI※3」を基点とする財務のデジタル化および高度化へと繋げていくことが肝要です。


※3 EDIはElectronic Data Interchangeの略であり、電子データ交換のこと。企業のコンピュータを通信回線で相互に接続し電子的にデータを交換する仕組み。

図表1 「XML電文」への移行スケジュールおよびプラットフォームの利用イメージ

2.XML電文の標準化と金融EDIの活用による経理・決済の高度化

現行の「固定長電文」では、振込データに付帯可能な受発注情報および資金決済に係る振込情報といった「金融EDI情報」※4として利用できる情報量は、半角20桁までとなっており、扱える文字も、カタカナ・数字・大文字の英語といくつかの記号に限られています。このため、受取企業側で金融EDI情報のみに基づいて売掛金の消込作業を行うことは困難でした。

これに対し、「XML電文」では、当該EDI情報を大幅に拡張することが可能になるほか、ひらがなや漢字、%や英語の小文字など扱える文字の種類も増え、たとえば、「<商品名>おいしい水500ml</商品名>」や「<消費税>8%</消費税>」といった情報を振込データに付帯することが可能となります。

この拡張された金融EDI情報を利用することにより、消込作業を含めた経理・決済事務の大幅な負担軽減が可能になります。これは、単なる「XML電文」への対応を越えて、詳細な「金融EDI情報」といった新たな付加機能を活用した業務効率化の第一段階の対応と言えます。

なお、この「金融EDI」の活用については、購入先企業による「金融EDI情報」の付帯が必要であり、当該企業の協力が欠かせないことに留意が必要です。

 

※4 支払指図等の資金決済データにその支払いと関連する受発注の商流データを併せたEDI情報を「金融EDI情報」という。


3.金融EDIと商流EDIのデータ連携による資金管理の高度化

これまで紙ベースでの管理が多かった受発注情報(商流EDI情報)についても、購入企業と電子的にやり取りを行うことで、受発注から決済に至る資金管理プロセス全体をSTP化し、資金管理の高度化を図ることが可能になります。

このデータ連携の実現には、企業間のやり取りをデジタル化するための購入企業の協力および社内プロセスのデジタル化が必要になります。

また、実際に金融EDI情報と商流EDI情報のデータ連携を図るためには、これまで取引先ごとにバラバラであった受発注に係るデータのフォーマットについても金融EDIとの連携を容易にするよう標準化が重要になります。

この商流EDIフォーマットの標準化については、中小企業庁等において官民連携のもとで標準化の検討が進められており、その議論の動向について適宜フォローするとともに、利用可能となった際には積極的に活用していくことが求められます。


4.データ活用による財務管理の高度化

(1)資金調達の多様化
商流情報のみでは資金回収状況といった企業の信用情報まで把握することは難しく、反対に金融情報のみでは、企業の競争力の源泉等の分析が難しくなります。しかしながら、商流情報と金融情報が結びついたデータを活用することにより、企業活動の実態と信用力の精緻な分析が可能となります。
これまで、株式発行や融資による資金調達は、資金提供者に対して企業活動の実態と信用力を理解してもらうために財務諸表を作成し、監査を受けて財務諸表の内容の正確性の確保を測るなど、相当なコストが発生することから、まとまった金額の資金調達か、既にビジネスおよび財務内容を知っている既存取引銀行を通じた短期資金の調達というのが一般的な資金調達手段でした。

ところが、FinTechの進展は、クラウドファンディングやトランザクション・レンディングといった企業活動を表すデータをもとに資金ニーズや信用力を測定する新たな資金調達手段を生み出しました。商流情報と金融情報を結び付けたデータを保有している企業は、このような新たな資金調達手段の活用も容易になると考えられます。


(2)資金回収の早期化
売掛債権の早期資金化手段として、支払手形の割引やファクタリングといった手段がありますが、金融EDI情報を活用した資金管理プロセスのデジタル化によって、資金回収の早期化が可能になると考えられます。

1つは、購入先企業の協力を前提に受発注・納品から実際の手形振出しまでの期間を短縮することが考えられます。現状の商慣行では取引を1ヵ月単位で締め、その1ヵ月に手形または振込で支払いますが、手形割引やファクタリングは実際に手形が振り出されるまでは実行できません。

これに対して、受発注・納品に係る情報をデジタル化することにより、データ連携を通じて発注・納品・支払等がただちに認識され、早期に締めることが可能になり、購入先企業の早期手形振出しを通じて資金回収の早期化に繋がる可能性があります。

ただし、購入先企業にとって納品都度の手形振出しでは印紙税負担や支払側の支払いサイト短縮というデメリットが発生します。

2つ目の資金回収の早期化手段として、金融EDI情報を活用して、紙の手形ではなく、電子記録債権を活用することが考えられます。

納品時から電子記録債権を発生させることにより、支払側は従来の支払いサイトを維持しつつ、受取側は早期の電子記録債権を担保とした融資やファクタリングを活用できることによって資金効率の向上が可能になると考えられます。

III.財務管理高度化に向けた外部環境の動向

FinTechの進展による主要な変化の1つに、これまでは少数の大企業だけが受けていた高度な金融サービスを中小企業であっても手ごろな価格で利用することが可能になったことがあります。

たとえば、ロボアドバイザーの登場は富裕層向けの金融サービスの一端を広く一般に利用可能としました。販売データや顧客評価を基にしたトランザクション・レンディングやクラウドファンディングの進展により、銀行融資以外の資金調達手段が中小企業にも広がりました。
財務管理の観点では、企業に助言したり、代わりに金融取引を実行したりできる電子決済等代行業者が登場するかもしれません。金融EDIの発展とその前提となる法人向けインターネットバンキングの利用拡大により、電子記録債権の利用拡大、ファクタリング等による資金の早期回収、ひいてはキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)等の指標で測られることが多い資金効率の向上に繋がる素地ができつつあります。

以下ではこうした外部環境の進展についてまとめます。


1.電子決済等代行業者とオープンAPI

2017年5月26日に成立した改正銀行法において、「電子決済等代行業者」に対して登録制が導入され、情報の適切な管理を含む一定の業務管理体制の整備や一定の財務基盤の整備が求められることになります(詳細は、KPMG Insight Vol.25/Jul.2017「ブロックチェーン技術とオープンAPI」を参照)。

API(Application Programming Interface)とは、あるアプリケーションの機能や管理するデータ等を他のアプリケーションから呼び出して利用するための接続仕様等を指します。このうち他の企業等からの外部接続を可能としたAPIを「オープンAPI」と呼びます。
オープンAPIを活用した電子決済代行サービスを活用することにより、企業は、IDやパスワードを業者に渡す必要がなくなるほか、業者がアクセスする情報についてもコントロールすることが可能になります。企業は、自社リソースでの資金管理や財務管理では不十分である場合に、手ごろな価格でこうしたサービスを活用することについても検討する必要があると考えます。


2.トランザクション・レンディング

トランザクション・レンディングは、一般的に店舗やインターネット上での取引・決済・在庫等の受発注情報に基づいて運転資金等の融資を受けることなどを指しています。ネット上のショッピングモールの運営者が店舗の売上げ動向や顧客からの評価等を基に信用リスクを判断し、財務諸表等を徴求することなく、貸出限度額や金利、貸出期間を独自に設定して運転資金等を融資することがあります。

日常的に店舗の売上動向等を把握できている企業相手では、ごく短期の審査で融資判断をすることが可能であり、中小企業にとっても小回りの利く資金調達手段として利用が広がっています。


3.電子記録債権および小切手・手形の電子化

手形の電子版ともいわれる電子記録債権は、電子債権記録機関における電子的な記録で債権の発生・譲渡・消滅を行う仕組みであり、2008年の電子記録債権法の施行以来着実に利用が拡大しています。

紙の手形と比べて、印紙税が不要であること分割譲渡が容易であること等の特徴がありますが、支払企業および受取企業ならびに譲渡する場合の譲受企業において、インターネットバンキングの導入や当事者双方の記録機関への登録が必要になることなどがネックとなり、大きく普及するには至っていません。

しかしながら、XML電文および金融EDIを基点として今後企業の財務分野におけるデジタル化が進展する場合には、企業自身や電子決済等代行業者を通じた財務管理の高度化が進むなかで利用が拡大していく可能性はあります。

また、全国銀行協会からは、紙の小切手・手形自体の電子化についても検討が進められています。これは紙の形で発行され、振り出されるものの、スキャンした画像データのやり取りを可能とするもので、こちらの議論の動向についてフォローしていく必要があります。

執筆者

KPMG ジャパン
フィンテック推進支援室
副室長 シニアマネジャー 保木 健次

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