CDP2018質問書の方向性 | KPMG | JP

CDP2018質問書の方向性

CDP2018質問書の方向性

CDP2018質問書に関するコンサルテーションが2017年9月15日に締め切られました。2017年6月29日に公表された気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures: TCFD)の最終提言を受け、特にCDP気候変動質問書には大幅な変更が加えられることが予想されます(CDPは、2018年の変更以降、2020年までは大きな質問書の変更は行わないとしています)。

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最終的なCDP2018質問書は2017年12月に公開される見込みですが、変更の大きな方向性は、ブリーフィング文書やコンサルテーションドラフトから読み取ることができます。ここでは、ブリーフィング文書で説明されている全体的な変更点について概観するとともに、気候変動質問書とウォーター質問書のコンサルテーションドラフト(一般質問書)においてCDP2017質問書から大きく変更されている点を以下に整理します。(なお、コンサルテーションドラフトに対するコメントを受け、最終的なCDP質問書はコンサルテーションドラフトから変更される可能性があることについてはご留意ください。)

全体的な変更点

気候変動、ウォーター、フォレストの別によらず、共通した変更点として以下が挙げられます。特に影響が大きい変更点は最初の3つの変更点であると考えられます。

  • セクター別の質問書の導入
  • TCFDの提言の反映
  • シナリオ分析などの将来情報の増加
  • 他のフレームワーク(DJSI、SASB、GRIなど)との整合性の向上
  • ACT(Assessing low-Carbon Transition)プロジェクトから得られた知見の反映

セクター別の質問書の導入

下表に示す12のセクターに関してはセクター別の質問書に回答し、いずれのセクターにも該当しない企業は一般質問書に回答することになります。例えば、「輸送機器製造」セクターの企業は、気候変動についてはセクター別質問書に回答しますが、ウォーターとフォレストに関しては一般質問書に回答することになります。セクター別質問書には、一般質問書の内容に加え、セクター固有の設問が設定されています。セクター固有の設問は個々のセクションに含まれている形となっており、セクター固有のセクションは設けられていません。また、CDP2018より、スコアリングはセクター固有のものとなります。

クラスター テーマ
気候変動 ウォーター フォレスト
エネルギー 石油・ガス
石炭
電力
石油・ガス
電力
輸送 輸送機器製造
輸送サービス
素材 セメント
鉄鋼
金属・鉱業
化学
金属・鉱業
化学
農業 食品・飲料・タバコ
農産物
紙・林業
食品・飲料・タバコ 紙・林業

TCFDの提言の反映

TCFDの最終提言との整合を図るため、設問が全体的に再構成されています。特に気候変動質問書に関しては、下表に示すように、設問がこれまでの15セクションから8セクションに再構成されており、特にCDP2017質問書のCC2(戦略)の設問がCDP2018質問書では複数のセクションに分散しているのが特徴的です。

CDP2018質問書 対応するCDP2017質問書の
セクション
CC0. イントロダクション CC0
CC1. ガバナンス CC1
CC2. リスク/機会 CC2、CC5、CC6
CC3. 戦略とシナリオ分析 CC2
CC4. 目標とパフォーマンス CC3、CC12、CC14
CC5. 指標 CC7~12、CC14
CC6. カーボンプライシング、排出量取引 CC2、CC13
CC7. エンゲージメント CC2、CC4、CC14
CC8. 回答の承認 CC15

シナリオ分析などの将来情報の増加

TCFDの最終提言を踏まえ、特に気候変動質問書において、シナリオ分析などの将来情報に関する設問が追加されています。詳細については以下において質問書別に解説します。

気候変動質問書のコンサルテーションドラフト(一般質問書)での主な変更点

コンサルテーションドラフトでは多くの新規設問が設定されていますが、これらは「TCFDの最終提言を踏まえて新設された設問」と「それ以外の設問」に大別できます。前者はセクション1~4に、それ以外の設問はセクション5以降に反映されています。
TCFDの最終提言を踏まえて新設された設問は以下のとおりですが、子細に見ていけば、CDP2017質問書における設問と同様の趣旨の設問が少なくありません。新たな対応が必要と思われる設問としては、CC2.1、CC2.2、CC2.3といったリスク・機会の特定に関する設問、CC3.1aやCC3.1bといったシナリオ分析や低炭素経済への移行に向けた戦略に関する設問が挙げられます。

TCFDの最終提言を踏まえて新設された設問

CC1.1b 取締役会や取締役会が指定する委員会が気候変動問題を監督する状況について詳細を回答してください。
CC1.1c 取締役会より下位のレベルで、気候変動に関して責任を負っている経営層の個人の役職または委員会名を記述してください。
CC1.1d 経営層レベルの役職や委員会が負っている責任の内容について記述してください。
CC2.1 御社では、短期、中期、長期の時間軸をどのように定義しているか、回答してください。
CC2.2 どのような気候変動関連リスクと機会が、事業や収益と支出、資産と負債、資本配分に実質的な財務的影響を与える可能性があるかを判断するためのプロセスを回答してください。
CC2.3 気候変動リスクと機会を特定し評価する手順について最も当てはまるものを以下より選択してください。
CC2.3b 気候変動リスクと機会を特定し評価するための、リスク管理の手順について詳述してください。
CC2.3c 以下の要素のうち、気候変動リスク評価で考慮しているかどうかを説明してください。
CC2.7c 財務計画プロセスに、特定されたリスクや機会がどのように反映されたか、説明してください。
CC3.1a 御社が事業戦略を策定する際に気候シナリオ分析を用いているかどうか、当てはまるものを選択してください。
CC3.1b 長期の事業戦略をサポートするために、低炭素移行計画を策定しているかどうか、当てはまるものを選択してください。
CC3.1d 御社で活用している気候関連シナリオ分析の詳細について回答してください。
CC3.1e 御社の低炭素移行計画の詳細を回答してください。
CC3.1g なぜ事業戦略を説明する際に気候関連シナリオ分析を用いていないのか、その理由を説明してください。
CC4.2 CC4.1/a/bへの回答以外で、気候変動関連の目標があれば詳細を回答してください。

ウォーター質問書のコンサルテーションドラフト(一般質問書)での主な変更点

(1)温排水
「W2.1: 貴社の操業全体について、水に関する以下の側面のうちどの側面について定期的に測定およびモニタリングを実施しているかご説明ください。また、実施している理由または実施していない理由についてもご説明ください。」という設問において、「水に関する側面」として"Water discharge quality data - temperature"が追加されており、排水の温度を定期的に測定/モニタリングしている事業所の割合について回答が求められています。W9.4でも同様の選択肢が新設されています。

(2)水の再利用/再生利用
「W2.4: 報告年について、総取水量に対する水の再利用/再生利用量の割合をご回答ください。」という設問が新設されています。W9.1bも同様の趣旨の設問として新設されています。

(3)エンゲージメント
「W10.4: 水に関する政策に対して、直接的または間接的に働きかけを行っていますか。どのような形で協働しているか、以下から当てはまるもの全てを選択してください。」という設問が新設されています。

(4)シナリオ分析
「W11.1: 貴社において長期的な経営目標やそれを達成するための戦略を策定する際、水に関連する課題がどのように考慮されているかについてご説明ください。」と「W11.3: 貴社が長期的な経営目標やそれを達成するための戦略を策定する際に気候シナリオ分析を用いているかどうか、当てはまるものを選択してください。」という2つの設問が新設されています。W11.3の設問に対して「はい」と回答した場合、気候シナリオ分析において水に関連する考慮も行われているかどうかについて回答が求められます。

考察

CDP2018質問書のコンサルテーションドラフトはTCFDの最終提言の影響を色濃く受けています。TCFDの提言では、原則的に4つの中核的要素に関する開示が投資家向けの制度開示書類の中で行われることが想定されています。したがって、CDP質問書にTCFDの提言が反映されているといっても、CDP質問書に回答することをもってTCFDの提言に沿った情報開示を行っているとは言えません。しかし、TCFDの提言が開示を求めている情報と現時点で開示できる情報とのギャップを把握し、TCFDの提言に沿った情報開示を行うための準備を整えるためにも、CDP2018質問書(のコンサルテーションドラフト)に照らして早期に検討を開始することには大いに意味があると考えます。

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