銀行業界の動向から見えてくるもの | KPMG | JP

銀行業界の動向から見えてくるもの

銀行業界の動向から見えてくるもの

The Brexit Column - 銀行業界は、Brexit(英国のEU離脱)に関連する課題にいち早く対応しています。KPMG英国のRichard Bernau(ディールアドバイザリー部門担当ディレクター)は、他業種であっても銀行業界のBrexitに対するアプローチから何かを学ぶことができる、としています。

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時には自分自身がちょっとしたトラブルに巻き込まれている、ということを認識することは良いことです。それができないのであれば、心理学者が言うところの「正常性バイアス」問題~人間は、ものごとは正常に進んでいくということを頑なに信じ、事象の変化を計算することなく、全てがうまくいくことを願い、無駄に(おそらく致命的に)待っているため、現実問題を直視せずに過小評価すること~かもしれません。


銀行業界の経営者はBrexitから心理的な影響を受けているかもしれませんが、「正常性バイアス」はこれには含まれません。私が対話をした銀行業界の経営陣は、Brexitが金融サービスに及ぼす可能性のある基本的な影響について100%明確であり、あらゆる課題を解決しています。EUパスポート権の喪失に伴い、英国外にてオペレーション開設を準備している状況をみると、いかに銀行業界が迅速かつ積極的に対応しているか、ということが理解できますが、他業種でも見習うことができると思います。


国民経済における抜本的な重要性や、金融サービスを提供することから発生する税金が、英国政府の国防と運輸にかかる支出とほぼ同額であるという事実にもかかわらず、銀行業界は、最も好かれる機関ではないと思っています。彼らは、決して至れり尽くせりの公的支援を享受することはありません。現状に固執せずに他の誰かに頼ることなく、独自のBrexitへの対応策を導き出す必要性がある、という結論に達したのです。


銀行業界では、クロスファンクショナルチームを動員し、ビジネスモデル、法的構造、権限、規制、顧客への影響、オペレーション、アウトソーシング、データ保護、人事、税務などを管理可能なレベルに分割し、細部にわたるまでこれらのインパクトを評価しています。


こうした類の基本的なアプローチは極めて重要だと考えます。英国に本店のある銀行が、EU27ヵ国の顧客へのアクセスを維持するために、欧州各国にある支店を単純に現地法人化することもなくはないでしょう。それは簡単なことかもしれません。しかしながら、もし彼らが資本、オペレーション、データ、税務などの観点から総合判断したのであれば、収益性の高い部門であったとしても、全社的な観点ではあまり魅力的な選択肢ではないかもしれません。


ここでの教訓は2つあります。まず、縦割りの組織構造ではダメです。会社の税務チーム、人事、規制対応の専門家、弁護士などは、全体像を意識して、互いに何をしているのかを知る必要があります。次に、革新的に考えることです。これまで考えも及ばなかった出入国管理、関税や規制の影響を緩和する解決策が見つかるかもしれません。一方、収益性の観点から、英国内または英国外における事業再編を検討する必要があるかもしれません。


どの業種が銀行から最も学ぶことができるでしょう?航空業界や原子力発電業界であることは明らかであり、これらの業種は銀行と同様に欧州全域レベルでの規制を受けています。仮に、2019年3月までにEUからの離脱交渉が決裂する、または離脱に移行できないような場合、それは一部の銀行業務における「業務停止:ハードストップ」を意味することであり、航空機が離陸できずに足止め状態になることや、原子力発電所が有効な手立てがなくアイドリング状態化することと同じです。これらの業種は、英国のEU離脱に際し、とても不安定な状況におかれています。


銀行業界が有する経験値は圧倒的で、他業種との格差は広がるばかりです(それゆえに他業種が参考にできる教訓もたくさんあります)。というのは、この10年間、銀行業は業界固有の規制に次ぐ規制を経験してきました。バーゼルIII、IVに始まり、MiFID(金融商品市場指令)I、II、そしてリング・フェンス、さらにはGDPR(EU一般データ保護規則:ある銀行幹部は「Brexitよりも影響が大きい」と言及しました)など、銀行業界の規制対応は百戦錬磨で、比類なき実績を有しているのです。


銀行業界の強みは、会社として規制対応に堪えうる強固な体制を構築していることです。
私たちのKPMG担当チームは、銀行や保険会社のクライアントに対して数ヵ月にわたり集中的に関与し、当局の要請に対応すべく、各社のBrexitコンティンジェンシープランの立案支援をいたしました。こうした(切羽詰まった)作業を通じて考え方が変容するのです。このような徹底的な対応をしていない他業種においては、自らを律し、物事を計画立てて進めていくことがBrexit対応の最善の対応策といえます。


一方で、会社のトップダウンでBrexitの対応に取り組めないのであれば、いかなる戦略も機能しえません。組織のリーダーシップは、「考えもおよばないようなこと」を検討し始めなければならず、「恐ろしいことであっても起こりうる可能性がある」、と考え方をあらためなければなりません。


本稿は英語版(原文)のコンテンツを和訳したものです。日本語版と英語版との内容に相違がある場合は英語版が優先されます。
The Brexit Column: What banks can teach us

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