ビッグデータ時代の終焉

ビッグデータ時代の終焉

本稿では、ビッグデータ時代の終焉が到来しているという認識を示したうえで、経営に求められる備えについて解説します。

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データをビッグなまま取得・分析・処理することでビジネス上の潜在的な核心であるインサイトを得ようとするビッグデータ時代は終わりを迎えようとしています。
本稿では、ビッグデータ時代の終焉が到来しているという認識を示したうえで、経営に求められる備えについて解説します。
なお、本文中の意見に関する部分については筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • データをビッグなまま取得・分析・処理することでビジネス上のインサイトを得ようとするビッグデータ時代は終わりを迎えようとしている。
  • ビッグなデータからインサイトを見つけ出すことに特化したデータサイエンティストは存在意義を失いつつある。一方で、ハードウェアを含めたシステム・トータルの性能を最大限に引き出し設計できるアーキテクトが今後、最も必要になる人材である。
  • 今後は、低消費な電力構造を前提としたアーキテクチャの活用、知識として真に意味のあるデータの絞り込みがビジネスの成否の鍵となる。

I.ビッグデータは過去の思い出~データサイエンティストよ、さらば~

1.人工知能に必要な要素

人工知能に必要なのは、「アルゴリズム」、「知識」、「アーキテクチャ」の3つです。ビッグデータ時代に成功してきた企業は、3つのバランスを取りながら自社の人材、マーケットにおける状況にあわせて、自社の強みを活かすことができる領域に対して重点的に投資を行ってきました(図表1参照)。

図表1 人工知能に必要な3つの要素

出典:KPMG

2.今起きている変化

しかし、アルゴリズムの複雑化、データ量の爆発的増加、ハードウェア性能の相対的な不足等、今、3つの変化によってバランスが崩れ始めています。これまで優位を保ってきた企業も変化の波に飲み込まれ、競争環境、市場動向に大きな変化が生まれやすい状況です。
具体的な事象として、大量データの中から価値あるデータを探索していたデータサイエンティストの存在意義が揺らいでいます。ビッグデータ時代に活躍したデータサイエンティストが今後も自社に競争優位をもたらすか疑うべきです。一方で、複雑なアルゴリズムを使いこなすデータサイエンティストやハードウェアを含めたシステム・トータルの性能を最大限に引き出し設計できるアーキテクトが求められています。FPGA※1等の半導体の回路設計、仮想化基盤等インフラ、アプリケーションフレームワーク、業務アプリケーションにいたる全レイヤーを俯瞰することができるアーキテクトは今後、最も必要になる人材です。ハードウェアの低価格化を背景として、データをビッグなまま取得・分析・処理することでビジネス上のインサイトを得ようとするビッグデータ時代は終わりを迎えようとしています。
人工知能は、真に意味のあるデータ、つまり知識を必要とすること、またハードウェア性能の限界を前提としたアーキテクチャの構築と真に意味のあるデータ、自社の競争力ある中核となるコアコンピタンスを支えるデータを選別する必要性に気付いた企業がビッグデータの次の時代に優位に立つ可能性が高いと言えます。たとえば、自動車業界におけるコネクティッド・カー、家電業界におけるコネクティッド・家電ではコネクティッド基盤に係る取組みが注目されています(図表2参照)。

※1 Field programmable gate array:システム設計者が現場でプログラムできるデバイス

図表2 ビッグデータ時代から今起きている変化

出典:KPMG

3.今後予想される変化

筆者は今後予想される変化として、まず、アルゴリズムがさらに複雑化したうえでパーソナル化すると予測しています。また、IoT(Internet of Things)の取組みの進展に伴い、発生するデータ量は爆発的に増加するものの、データの発生源に近いエッジ部分で、真に価値のあるデータに絞り込みビッグでないデータを活用できると予測しています。最後に、アーキテクチャについて、現在のエネルギー事情を踏まえると、電力消費の少ない半導体チップの利用が必須となることが予想されます。その理由背景として、2011年に米国のクイズ番組でクイズ王に勝利したIBM Watsonは、サーバーラック10本分ものコンピュータ・パワーを必要としたと言われています。また、米国は2030年に、データセンターの電力消費が全産業の電力消費の半分を占める※2といわれており、今後、アルゴリズムがパーソナル化した場合に、電力消費に占める割合はさらに増大し、電力供給能力に対して電力需要が大幅に上回る可能性が高く、消費電力を抑えたアーキテクチャの開発が極めて重大な企業経営上のテーマとなると予想されます(図表3参照)。

※2 情報処理推進機構(IPA)ニューヨークだより2012年7月「米国IT業界の省エネルギーに関する取組み」

図表3 今後予想される変化

  今後
アルゴリズム 再帰的アルゴリズムのパーソナル化
知識 データの発生源で価値あるデータに絞り込み
アーキテクチャ 推論エンジンを搭載した専用マシンでエッジ処理
超低消費電力チップの利用

出典:KPMG

II.経営に求められる今後の備え~ようこそ、アーキテクトたち~

1.3つの要素の強みを次世代に

「アルゴリズム」、「知識」、「アーキテクチャ」の3つに関して自社の強みを点検、再認識することから始めることを推奨します。強みを見出した領域に重点的に投資をすることで競争力を持続させることが重要です。なぜなら、「アルゴリズム」、「知識」、「アーキテクチャ」は、自社のビジネスのコアな部分のノウハウ、知恵が結集される特性を有するため、将来にわたって競争力を持続させる効果を享受することができます。一過性のコスト削減、業務効率化に対する投資は将来に向けた強みの蓄積に結び付きません。3つの分野に投資をするとノウハウと知恵の蓄積を進めることができ、形あるものとして次世代に自社の強みを引き継ぐことができます。

2.脳型AIチップの可能性

特にアーキテクチャについて、ヒトの脳を参考にして開発されたニューロモーフィック(人工知能)・チップに注目すべきです。1つのチップがミツバチのニューロンと同程度の処理能力を有し、エッジ(データの発生源に近い場所)に配置することで、超低消費電力で真に意味のあるデータに絞り込むことができるうえに学習データを活用してさらに高度なアルゴリズムに成長させることができます。

3.今後求められる人材

ハードウェアとソフトウェアの垣根を越えてビジネスの変革に真正面から取り組むアーキテクトの確保を急ぐ必要があります(図表4参照)。

図表4 コネクティッド・サービスにおいてアーキテクトが果たす役割(例)

出典:KPMG

アーキテクトを確保し、先端技術を活用したビジネスに関する研究・調査を今はじめることが自社の将来の強みをもたらすと言えます。一時的なコスト削減、業務改善に目を奪われることなく継続してコアコンピタンスを強化する取組みに投資を振り向ける、未来を見つめる視点こそ、今求められています。

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執筆者

KPMGコンサルティング株式会社
Advanced Innovative Technology パートナー 林 泰弘

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