ペルーにおける投資・会計・税務の概要

ペルーにおける投資・会計・税務の概要

本稿では、ペルーの経済・社会環境や会計、監査制度、税制等に加え、日本企業のペルー進出にあたっての留意事項について概説します。

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南米大陸の西側に位置するペルー(正式名称:ペルー共和国)は、日本のおよそ3.4倍の国土面積(1,285千km2)に、約3,148万人の人口を擁し、太平洋側に広がる海岸砂漠、国を南北に貫くアンデス山脈、国の東側に広がる広大なアマゾン原生林という3つの気候地域に分けられています。沖合の豊かな海洋資源、金や銅、亜鉛、銀などの豊富な鉱物資源、インカ帝国時代の歴史的遺産、アルパカの毛織物などの地域産品など、とても魅力に富んだ国です。

ペルーは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉参加国でもあることから、昨年11月に安倍首相がペルーを公式訪問し、両国首脳は、「戦略的パートナー」としての政策協議や両国間の租税条約の締結に向けた協議の開始等を表明した「日本・ペルー共同声明」を発表しました。既に、2012年3月1日に、日本・ペルー経済連携協定が発効しており、該当する物品の輸出入については、特恵関税率が用いられています。

本稿では、ペルーの経済・社会環境、日本企業のペルー進出と外資誘致、会計および監査制度、税制およびペルー進出にあたっての留意事項等について概説します。今後、ペルーでのビジネスを検討する際に参考になれば幸いです。なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • 日本とペルーとは二重課税防止協定が未だ締結されていないが、投資する際には、なるべく同協定を締結している国から行う。
  • 投資に当たっては、事前に現地専門家によりフィージビリティースタディ(実行可能性調査)を実施してビジネスの可能性や現地アライアンスの可能性を探るとともに、適切な組織形態、税制恩典の追及等をあらかじめ検討しておく。
  • 経済連携協定のメリットや移転価格税制に配慮した競争力の高い商流を検討しておく。
  • 会計基準はIFRSが用いられ、一定規模以上の企業にはすべて監査法人による外部監査が求められる。

I.経済・社会環境

中南米経済が全般的に落ち込むなかで、ペルー経済は2006年から2015年までの10年間で平均5.9%(2017年は3.88%)という地域内でも有数の成長率を誇っています(図表1参照)。

図表1 ペルーと周辺国の基礎データ

ペルー コロンビア チリ アルゼンチン
総面積(千km2 1,285 1,139 757 2,780
人口(千人) 31,481 48,750 18,196 43,600
名目GDP(百万USD) 180,291 274,135 234,903 541,748
国民一人当たり
名目GDP(USD)
5,727 5,623 12,910 12,425
消費者物価上昇率(%) 3.59 7.51 3.79 N/A
実質GDP成長率(%) 3.88 1.96 1.56 -2.30
政府純債務残高対
GDP(%)
7.53 41.41 -0.85 N/A
失業率(%) 6.71 9.20 6.49 8.47


出典:IMF・World Economic Databases, April 2017

日本とペルーとは、季節も真逆であり、時差は日本の14時間遅れ(サマータイムの実施なし)、東京から首都のリマまでの距離が約15,500kmと、距離的にはとても遠いですが、太平洋を挟んだ対岸に位置することから、中南米地域で最も長い外交関係を有し、1899年から始まった日本からペルーへの移民の子孫が、現在ではペルー国内に数十万人程度いると推定されているとともに、現在、約5万人のペルー人が日本国内に滞在しており、密接な関係を有しております。

ペルーとの貿易関係ですが、2016年度には、1,454億円のペルーからの輸入、775億円のペルーへの輸出がありました。輸入は、銅鉱石や亜鉛鉱石といった鉱産物が輸入全体の約85%、いかや魚粉、果物などの食料品・動物とその加工品が約12%となっており、一次産品の割合が多いのが特徴です。ペルーの国別輸出先で、日本は、中国、アメリカ、スイス、カナダに次いで第5位になります。

輸出は、乗用車やバス・トラック等の輸送用機器が輸出全体の半分強、その他電気・機械製品が約14%、ゴム製品やメッキ鋼板類等が約19%となっており、完成品だけでなく加工のための素材として高度な加工が施されたものが輸出されているのが特徴です。ペルーの国別輸入先で、日本は、中国、アメリカ、ブラジル、コロンビア等に次いで第8位になります。

ペルーは、TPPのみならず、メキシコ、コロンビアおよびチリとの間で、経済的統合を目指すとともにアジア太平洋地域との政治経済関係を強化することも目的とした太平洋同盟を構成しており、各国の証券取引所がまとまって、ラテンアメリカにおける最も大きな市場である南米統合証券市場(MILA)を構成しています。

さらに、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)およびアンデス共同体(CAN)の一員であり、自由貿易協定も、日本のみならず、アメリカ、中国、韓国、カナダ、メキシコ、チリ、欧州連合等と締結しています。

一方で、国民の所得分配の不公平さを表すジニ係数は逓減傾向にありますが、2014年は0.441とOECD平均0.318に比して依然高い点、また、国民の教育水準について、成人識字率が92.9%と、ラテンアメリカ全体の平均である93.4%と比しても低く、チリ98.6%、コロンビア94.7%、エクアドル94.6%、ボリビア93.8%およびブラジル91.8%と比しても相対的に低いことが課題となっています。

II.日本企業のペルー進出と外資の誘致

日系企業の進出動向は、2016年10月1日現在で49社(日本人が海外で興した企業を除く)とまだあまり多くはありませんが、対前年比10社も増えており、徐々に日本企業の進出が増えている国であると言えます。

ペルーへの外国人投資については、必ずしも国内投資家よりも優遇されているわけではありませんが、政府による事前の許可も要せず、一定の制限を除き、ほぼ制約なく合法的に企業活動を行うことが保証されています。配当や会社持分の売却、元本のすべてについて、適切に税金を払った後であれば、自由に国外送金する権利も保証されています。

また、特定の生産セクターや地域の開発を促進するための税制恩典制度も用意されているとともに、特に政府が力を入れている鉱業に関しては、為替、租税およびその管理の安定性を保証することや、利益配当や金融資産の無制限の送金、および、無制限の外貨利用等の恩典が与えられます。

なお、外国通貨にかかる為替管理制度は無く、ペルー国内における外国人投資は自動的に認可されますが、ペルーの民間投資促進庁(PROINVERSION)に登録する必要があります。

日系企業の一般的な進出形態には、現地法人として子会社の設立、または、支店の設立があり、それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。

  メリット デメリット


  • ペルー子会社のリスクは、法定資本への出資金額に限定される
  • 子会社独自の定款や規程を準備する必要がある
  • 公共事業体の入札の際に、外国親会社の経験を考慮に入れてもらえない可能性がある

  • 事業活動の初期段階での市場と商慣行の評価には向いている
  • 公共事業体の入札の際に、親会社の経験も考慮に入れてもらえる可能性がある
  • ペルー支店の活動について、親会社に責任が及ぶ

子会社設立の形態として、大きく分けて株式会社(S.A.)と有限会社(S.R.L.)の2つが挙げられますが、S.R.L.はS.A.に比してより多くの手続きが必要とされるため、通常はS.A.が良く利用されます。

労働法規については、原則として無期雇用契約の形態をとり、有期雇用契約については限定的に例示されていること、外国人の雇用制限があること(全従業員の20%が上限、かつ、外国人従業員の給与総額は全社の人件費の30%以下)、日本とペルーとの間では社会保障協定が結ばれていないため、日本人をペルーに派遣した場合には社会保険料の二重払いの問題が生じること、また、年平均20人以上の従業員を雇用している場合には、利益分配の制度がある(業種別に税引前純利益の5~10%)、といった点に留意する必要があります。

さらに、商業権および工業所有権の保護について、ペルーはアンデス共同体の加盟国であり、その規約にしたがって、工業所有権の保護に関するパリ条約および文学的および美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に加盟しており、また、世界貿易機関(WTO)の加盟国でもあるので、TRIPS協定(知的貿易関連の側面に関する協定)にも調印しています。

III.会計および監査制度

ペルーにおける一般に公正妥当と認められる会計基準は、国際財務報告基準(IFRS)です。これは、IASB(国際会計基準審議会)で承認された基準を、ペルー会計基準委員会(CNC:Consejo Normativo de Contabilidad)が承認する形になります。この他、証券市場監督庁、銀行保険年金監督庁、および、医療サービス監督庁も、会計基準および規則の設定に関与します。

一般会社法(LGS:Ley General de Sociedades)では、その第223条において、財務報告書はペルーにおいて適用される法令および一般に公正妥当と認められる会計基準にしたがって作成し開示しなければならないと定められています。 ペルーでは、財務情報のIFRS適用と同様に、監査においても、国際監査基準(ISA)を採用しています。なお、物品の販売、サービスの提供、および総資産から生じる年間収益が一定額以上(3,000UIT(注)超、約4,396百万円)を超えるすべてのエンティティは、2017年度末より監査法人による監査を受ける必要があります。


(注)UITとは、Unidade Impositiva Tributariaの略で課税単位の意味であり、ペルーの税務・会計で広く用いられる概念です。2017年は
1UIT=4,050ヌエボ・ソル(S/.)で、1S/.=3.244USD=361.02円(2017年4月末現在のTTM)で換算すると約1,462千円になります。

IV.税制

ペルーの企業活動にかかる主要な税金は以下のとおりです。

  税目 課税対象・税率等の概要


法人所得税(IR) 居住法人の全世界所得に対し29.5%
金融取引税(ITF) ペルーの銀行口座の預入・借入等の取引に対し0.005%
暫定純資産税(ITAN) 1百万S/.超の純資産に対し0.4%


付加価値税(IGV) 財またはサービスの価格に対して18%
物品税(ISC) ガソリン、自動車、アルコール飲料、ミネラルウォーター、たばこ等に各々性質に応じた税率


不動産税 地価および建物の公的評価額の0.2~1.0%
不動産取引税 譲渡価額の3%
自動車税 政府承認の参照データ(新車価格に経年調整)の1%

ペルーの企業活動では、所得税(Impuesto a la Renta、以下「IR」という)を中心とした直接税、付加価値税(Impuesto General a las Ventas、以下「IGV」という)および物品税(Impuesto Selectivo al Consumo、以下「ISC」という)を中心とした間接税およびその他の地方税が大きな影響を与えます。また、主要産業である鉱業セクターには、鉱業特別税(IEM:Impuesto Especial a la Mineria)、鉱業ロイヤリティ(REM:Regalias Mineras)および鉱業特別賦課金(GEM;Gravamen Especial a la Mineria)が課されたり、特定地域(例;アマゾン地域)の開発を奨励するためのIGV免除制度があります。

以下、所得税(法人および個人)および付加価値税の概要につき解説します。

1.法人所得税

現在のペルーの所得税の根拠法令は、2004年12月8日に公布された大統領令第179-2004-EF「所得税法統一規則」を基礎として、部分的な改正がなされたものです。この法令は、法人に関する部分と個人に関する部分とが混在しています。ペルーの居住者たる法人や外国法人の支店等の所得税率は従来28%でしたが、2016年12月10日に公布された法令第1261号により、2017年1月1日以降は29.5%に改正されました。


(1)主な特徴

1.居住者たる法人には、その全世界所得に対して課税さ
れる
2.課税所得は、課税対象総収入から、それを生み出すために必要な費用およびその収入を生み出す組織を維持するために必要なすべての費用を減算して算出する
3.ただし、個人的または第三者が負担すべき費用、罰課金、限度額を超えた寄付金や引当金等は損金不算入である
4.国外で発生した費用は、関連証憑で適切に証明された場合に損金算入できる
5.国外で支払った所得税は、税額控除対象とすることができる
6.負債と資本の比率が3:1を超過した場合、超過分の負債に対応する国外関連者への支払利息は損金不算入となる(過少資本税制)
7.タックス・ヘイブン税制(CFCルール)が採用されている


(2)移転価格税制

ペルーでは、OECD移転価格ガイドラインに従い、関連者間取引、もしくはタックス・ヘイブンとの、または、タックス・ヘイブンを経由して行った取引の価格は、「アームズ・レングス」原則(類似した取引条件下における、第三者との間でなされた比較可能な取引において、当事者間で合意された価格)に基づいて、決定されなければなりません。またこれに関連して、税務当局(SUNAT)に対して、事前確認制度(APA)の申請を行うことができます。

なお、2016年12月31日に公布された法令第1312号では、OECDの移転価格税制の行動13に従った改正がなされており、課税対象となる年間総収入が2,300UIT(約3,362百万円)を超える企業は、2016年度からローカル・レポートを(2017年に提出)、共通の経済グループに属する企業群の年間総収入が20,000UIT(約29,243百万円)を超える場合には、2018年からマスター・ファイルを、また、多国籍企業グループの一員である場合には、
2018年から国別報告書を、それぞれ提出する必要がありますが、
具体的な提出期日については未だ発表されていません。


(3)配当への源泉税

従来、配当の分配およびその他の利益分配に対しては、6.8%の源泉税が課せられていましたが、2016年12月10日に公布された法令第1261号では、2017年1月1日以降は原則5%に改正されています。


(4)外国法人の支店および非居住法人に対する所得税

外国法人の支店、代理店、またはその他の恒久的施設が得たペルー源泉の所得については、内国法人と同率の所得税の納税義務を負います。

非居住法人の所得税率は原則30%ですが、特定の所得(例:ロイヤリティ、技術支援による所得等)に該当する場合には、別途税率が定められています。また、非居住者の事業活動に対して、特定の事業(例:保険、航空機リース、航空運輸等)については、グロス収入から一定の割合のペルー源泉の課税所得を得ているものと推定される、推定課税所得の制度が採用されてい
ます。

2.個人所得税

ペルーでは最高税率を30%とする累進課税制度となっており、ペルーの居住者たる個人は全世界所得に対して、非居住者たる個人はペルー源泉の所得に対してのみ納税義務を負います。

なお、ペルーでは相続や寄付行為については、一般的には課税対象とされません。

3.付加価値税(IGV)

食料品や本、ペルー国内の公共交通機関、国際貨物輸送、文化的興業、生命保険等の法律で定められた財やサービスを除き、通常、輸入品やペルー国内で譲渡された財または提供されたサービス等に対しては、18%の付加価値税(うち、16%がIGVで2%が地方振興税)が課されます。なお、アマゾンの居住者がアマゾン地域で行う財の譲渡やサービスの提供については、一定の条件のもと、IGVが免除されます。

V.ペルー進出に際しての留意事項

従来、日本企業のペルーへの進出は、鉱産資源系、農業系、漁業系や大手自動車メーカー等が中心でしたが、2015年に日本企業が現地に100円ショップを開店して盛況である等、従来とは異なった形の業態も進出しています。

日本企業がペルーに進出する際には、以下の点に留意すべきと考えます。

 

  • 投資する際には、なるべく二重課税防止協定を結んでいる国から行い、税の二重払いを避ける。現在交渉中ではあるが、日本とペルーとは未だ二重課税防止協定が結ばれていない。なお、ペルーは現在、アンデス共同体(ボリビア、コロンビア、エクアドル)、チリ、カナダ、ブラジル、メキシコ、スイス、韓国およびポルトガルと同協定を締結している。
  • ペルーに従来存在しない製品やサービス等を、現地企業と組んで提供する。ペルーには既に多くの外資が入り込んでビジネスを展開しているが、その一方で、先進国に比してまだ開拓の余地も残されているのも事実である。進出に当たっては現地専門家によるフィージビリティースタディを実施し、税制恩典等の追及や、適切な組織形態を選びつつ、現地企業と連携しながら現地固有の事情を斟酌してビジネスを進めていくことで、現地のニーズを的確に織り込んでリスクを回避していくべきである。
  • 貿易取引については、経済連携協定等によるメリットを最大限活用しつつ移転価格税制に配慮した、価格競争力の高い商流を構築する。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
中南米デスク
パートナー 赤澤 賢史

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