トルコ投資環境:投資奨励策の拡充

トルコ投資環境:投資奨励策の拡充

本稿では、トルコの投資インセンティブ制度の概要とともに、「スーパーインセンティブ」制度について解説します。

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近年海外からの活発な投資が続いていたトルコですが、2016年以降治安の悪化、政治情勢の不安定化に伴い投資が停滞しています。この状況に対してトルコ政府は、2017年に投資奨励策を拡充しており、新たな投資の呼び込みを図っています。

本稿では、トルコの投資インセンティブ制度の概要とともに、新たな大規模投資を呼び込むための「スーパーインセンティブ」制度について解説します。

なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • 従来の各投資インセンティブ制度につき、VATの還付など拡充が図られている。
  • スーパーインセンティブ制度につき、認定されると手厚い支援策の恩恵が受けられる。
  • 2017年は投資環境が整えば新たな投資の好機といえる。

I.トルコの投資環境の概要

近年、地政学的有利性、若く消費性向の高い国内マーケット、EUとの関税同盟の存在等により、海外からトルコへの積極的な投資が続いていました(図表1参照)。

日本企業の進出については、トルコ企業の買収に加え、投資インセンティブ制度を利用しながら製造拠点の設立も行われています。製造拠点の設立は、従来、マルマラ地域への投資が大半でありましたが、投資インセンティブが手厚い地域への進出も増加しています。こういった地域への進出は現地パートナーとの合弁で行われている場合がほとんどです。

図表1 トルコへの直接投資額

(単位:10億ドル)

トルコへの直接投資額

ただし2016年以降、治安の悪化、政治情勢の不安定化に伴い海外からの投資の伸びが小さくなっています。この状況に対して、トルコ政府は従来の投資インセンティブを拡充するとともに、新しく「スーパーインセンティブ」と呼ばれる投資奨励策を導入し、海外からの投資の呼び込みを図っています。

II.投資インセンティブ制度

1.従来の投資インセンティブの拡充

従来の投資インセンティブの中心となるのが、「地域別投資インセンティブ」です。地域別投資インセンティブは、投資先地域を6つの地域に分け、地域別にインセンティブを与えるもので、各社の進出が進んでいるイスタンブール近郊やエーゲ海地方ほどインセンティブが低く、産業発展が遅れている東部および南東部ほどインセンティブが厚くなっています。奨励策のなかで最も重要な法人税の減免については、従来地域毎に投資総額の15%から60%がその減免枠となっていましたが、2017年の投資については、すべての地域について、15%の枠の増加が認められ、投資総額の30%から75%が減免枠となっています。さらに従来から認められていた機械設備にかかるVAT(付加価値税)の免除に加えて、2017年は建設関連費用にかかるVATの還付が認められるようになり、投資初期のキャッシュフローの改善が見込まれています。

2017年の投資にかかる法人税減免枠の増加、建設関連費用にかかるVATの還付については、特定のセクターで一定以上の規模の投資に認められる「大規模投資インセンティブ」、輸入依存度の高い製品に対する投資に認められる「戦略的投資インセンティブ」にも適用されています(図表2参照)。

 

図表2 投資インセンティブに関する優遇措置

種類 優遇措置

一般投資
インセンティブ

機械設備等について関税およびVATの免除

地域別投資
インセンティブ

投資地域により、機械設備等について関税およびVATの免除、法人税減免枠(30%~75%)、個人所得税および社会保険料の減免等

大規模投資
インセンティブ

地域別投資インセンティブより法人税減免枠で有利

戦略的投資
インセンティブ

基本的に地域別投資インセンティブで最も有利な第6地域と同様

スーパー
インセンティブ

機械設備等について関税およびVATの免除、法人税減免枠(200%)、個人所得税および社会保険料の減免、エネルギー消費支出補填等

2.スーパーインセンティブの導入

また、さらに大規模な投資を呼び込むために、2016年8月に「法律第6745号、プロジェクト投資支援のための法律、法令の変更」が制定され、「スーパーインセンティブ」と呼ばれる新しいプロジェクトベースの投資奨励策が導入されました。

「スーパーインセンティブ」の対象となる投資プロジェクトになるのは、技術移転を促進し、海外への依存を減少させる投資で、投資額は1億ドル以上必要となりますが、認定された場合、投資額の200%の法人税減免、エネルギー消費支出の補填、当局から許認可にかかる直接的なサポート等、一歩踏み込んだサポートが認められます。

III.まとめ

投資環境の悪化に伴い、現在海外からトルコへの投資額は減少傾向にあります。しかし、トルコは、2016年も約3%のGDP経済成長率を実現し、エルドアン政権下において2017年4月には大統領の権限を強化する憲法改正の是非を問う国民投票も賛成多数で終わったことから、政治の安定が確保されつつあり、中長期的には継続的な発展が見込まれます。

昨年度以降、リスクをとった韓国企業の投資に押され気味の日本企業ですが、2017年は過去最大ともいえる投資奨励策を享受できる状況にあります。今後の投資環境の改善を見込めれば、2017年は投資奨励策を活用した新たな投資の好機といえます。

執筆者

KPMGトルコ
イスタンブール事務所
マネジャー 吉原 和行

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