デジタルイノベーション・AIを活用した顧客開拓 | KPMG | JP

デジタルイノベーション・AIを活用した顧客開拓

デジタルイノベーション・AIを活用した顧客開拓

本稿では、デジタルイノベーション・AIなど先進的な技術を活用し、企業が“顧客接点力”を高めることにより、LTVを向上させ、さらには新顧客開拓の実現に向けたポイントについて解説します。

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成熟市場における消費者の嗜好は、かつてないほど多様化し、一方で製品やサービスで明確な差別化が困難になった現代において、多くの企業が、顧客(消費者)の理解を深めるために、デジタルイノベーション・AI(人工知能)の活用を視野に入れた取組みを推進しています。
顧客を理解するという点において、企業が顧客接点力を高めることにより、他社との競争優位を獲得し、自社の顧客を増やし、最も顧客に愛される企業になれると想定されます。さらに、顧客を理解すると同時に、顧客にも自社のこと、また自社の製商品・サービスを深く理解してもらい、顧客にとっていないと困るくらいの距離感を創出することが必要になります。
多くの企業が目指している“顧客接点力の強化”は、デジタルイノベーション・AIの進化を自社に活用することにより、企業の顧客生涯価値(Life Time Value、以下「LTV」という)を向上させ、さらには新規顧客の開拓に結びついています。
本稿におけるデジタルイノベーション・AIは、仮想知的労働者(Digital Labor:デジタルレイバー)とも呼ばれるロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation、以下「RPA」という)やデジタルマーケティング(Digital Marketing)、マーケティングオートメーション(Marketing Automation、以下「MA」という)、人工知能(Artificial Intelligence、以下「AI」という)を包含した近年の技術革新を総称しています。
本稿では、デジタルイノベーション・AIなど先進的な技術を活用し、企業が“顧客接点力”を高めることにより、LTVを向上させ、さらには新顧客開拓の実現に向けたポイントについて解説します。

ポイント

  • 消費者の嗜好は多様化し、製品やサービスで明確な差別化が困難な状況において、企業は他社との競争優位を獲得する必要がある。
  • 企業は、顧客(消費者)の理解を深めるために、デジタルイノベーション・AIの活用を視野に入れた取組みを推進していく必要がある。
  • デジタルイノベーション・AIを活用することにより、企業の“顧客接点力の強化”が加速し、LTVの向上、さらには新規顧客の開拓が実現できる。

I.デジタルイノベーション・AIの進化

ディープラーニングを中心としたAIは、識別・予測の精度が向上することにより適用分野が広がり、かつ複数の技術を結合することで、幅広い分野で実用化されています。
画像認識技術の領域においては、認識精度の向上により、広告、医療分野における画像からの診断などへの活用、またマルチモーダルな抽象化技術により、感情理解・行動予測が可能となり、多くの企業がビッグデータの活用に取り組んでいます。
さらに、行動とプランニング技術における自律的な行動計画が可能となり、自動運転や、ロボットなどの取組みが現在行われている状況であるといえます。
将来的には、行動に基づく抽象化という技術発展により、環境認識能力の向上による介護ビジネスへの適用、感情労働の代替などが、実現されると推測されます。
企業がデジタルイノベーション・AIの進化を自社に活用することにより、LTVの向上、および顧客の新規開拓を行ううえで、今後さらに顧客志向の企業を目指し、企業にとってのLTVを向上させる必要があります。

II.LTVの向上に関する主要な論点

多くの企業がLTVの向上において、既存顧客とのリレーションの強化、新規顧客の開拓においても、ペイドメディア(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ等)から、オウンドメディア(企業サイト、自社コミュニティー、メールマガジン等)に誘引し、顧客との接点の強化に取り組んできたと認識しています。

  1. 顧客データの統合化と拡張
  2. マーケティングインテリジェンス
  3. カスタマーエクスペリエンス(CX)

上記取組みにより、顧客の視点にたった製商品・サービスを顧客に提供している企業が他社との競争に勝利し、顧客に必要とされる企業になってきました。
昨今のデジタルイノベーション・AIの進化により、消費者は多くの情報を取得しやすくなったため、多くの企業は、さらに顧客志向を追求し、顧客の期待を超えていくことが必要になると想定されます。
この章ではこれらのポイントを中心にLTV向上に向けた取組みにおける主な論点を解説します(図表1参照)。

図表1 LTV向上に向けた取組み

1.顧客データの統合化と拡張

これまで多くの企業はLTVの向上、および新規顧客開拓に向けたデータの活用として、自社に蓄積されたデータ(たとえば、購買履歴やサイト閲覧履歴)、デジタルマーケティング、ソーシャルメディアなどの技術を活用した取組みを進めてきており、さらにデジタル化の流れにより、さらに取組みを加速させています。
当項ではデジタルイノベーション・AIを活用した顧客データの統合化と拡張を実現していくための3つのステップを論じ
ます。

 

(1)顧客データの統合
顧客データ統合という観点では、複数の事業における製商品・サービスを顧客に提供している場合(企業の買収・合併などによる顧客データ統合も含む)、まずは部門や事業部といった範囲のなかで、顧客データの統合を実践していく必要があります。その際、名寄せ(データの重複排除)や関連付け(関連性のあるデータを新たなキー項目をもって紐づける)を実施し、顧客を一意にとらえることを実現します。さらに、部門や事業部を横断した全社視点でのデータ統合へと進めます。この際、BtoBビジネスであれば帝国データバンクやDUNSナンバーのような不変のコードを利用し、またBtoCビジネスであれば全社的にCIFコードの採番ルールを統一したうえで、全社横串の顧客データ(統合顧客ID)として全体最適を実現します。

 

(2)顧客データの関連付け
自社の顧客が一意に特定されたうえで、LTVの向上に向けた取組みとして、顧客の家族情報、顧客の交友関係などの関連付けを行い、企業は顧客自身の情報のみならず、顧客を取り巻く情報を含めて、顧客データの管理を実現します。

 

(3)顧客データの拡張
さらに昨今では、自社内の顧客データにとどまらず、外部の顧客データまで収集範囲を拡大しているケースが見られます。たとえばソーシャルネットワークサービスで自社製品についてつぶやかれている潜在顧客のeメールアドレスを取得しマーケティングに活かす。また、インターネットポータルで自社製品を検索している潜在顧客のクッキーIDを取得し当該ユーザにバナー広告を配信する、などといった施策を実現します。

2.マーケティングインテリジェンス

統合・拡張されるデータを如何に活用していくかといったマーケティングインテリジェンスの領域についても革新的変化が進んでいます。
当項ではデジタルイノベーション・AIを活用したマーケティングインテリジェンスに関する3つのステップについて論じ
ます。

 

(1)顧客データの可視化(ビジネスインテリジェンス)
顧客データの可視化のステップにおいては、「顧客データを見える化し、人が考える」というマーケティング方針が主となります。統合化や拡張された顧客データをCRM(顧客関係管理)や予約管理ツールなどの顧客管理システムを用いて検索可能な状態にします。
また、当該データを基に、担当者が判断したうえで顧客フォローやリテンションを進めていきます。

 

(2)顧客データプロセスの定型化(MA/RPA)
顧客データプロセスの定型化のステップにおいては、基本的に「人が考えたことを自動的に実行する」ことに重きを置きます。日々増加していく見込み顧客の行動(自社のウェブサイト訪問の有無、メール開封の有無など)に応じ、ホットリードを特定し追加のダイレクトメールを一斉送信する(マーケティングオートメーション)、また、CRMに表示されている見込み顧客データや予約管理ツールに格納されている予約済みの顧客データに関し、手動でエクセルに転記する作業をロボットに代替させるRPA、などと言ったように顧客データを扱うプロセスを定型化し、自動化していく施策を実現させています。

 

(3)顧客データ蓄積と傾向分析(Big Data Mining)
さらに昨今では、顧客データ蓄積と傾向分析のステップに進んでいるケースも多々見受けられます。当ステージでは、「大規模データに対し、ソフトウェアが考えて示唆を生む」ことにフォーカスしています。日々大量に増加し、蓄積されていく数テラバイトといった既存顧客・見込み顧客のデータを人間がオペレーションしていくことは困難であるため、ビッグデータマイニング技術を用いて、顧客の嗜好やシーズナリティを考慮したレコメンドをクイックにマーケティング担当者に提示する、といった傾向分析を基とした施策を実現させています。

3.カスタマーエクスペリエンス(CX)

そして、「統合化・拡張され、マーケティングインテリジェンスにより可視化された大量データ」を最終的に顧客体験にどう活かすか、といった問いに対しては、デジタルイノベーション・AIを活用した「顧客開拓を促進するカスタマーエクスペリエンスの自動最適化」に答えがあると考えます。
たとえば銀行のコールセンターでは電話問い合わせをAIの「音声認識」でテキスト化し、AIの「自然文解釈」で意味を理解し、膨大なマニュアルから「適切な回答の上位候補」をオペレータに瞬時に表示するといった施策が採用されています。また、顧客からの問い合わせ窓口チャネルにチャットを採用し、質問や要望に対しAIがより適切な回答を選択し返答する、といった施策(チャットボット)を導入しているケースもあります。機械学習の技術により、ユーザからの質問や要望が進むにつれ最適な回答を返すようプログラミングされており、いわば、人間が介在することなくカスタマーエクスペリエンスが自動最適化されていくことが実現できていると考えられるの
です。
いずれも、デジタルイノベーション・AIの進化を企業が活用することにより、これまでにないカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供することでLTVの向上、およびさらなる顧客開拓のドアを開いているケースといえます。

III.企業のデジタルイノベーション・AIの活用

企業がデジタルイノベーション・AIを活用するためには、自社のデジタル化後の姿をやみくもに描くのではなく、自社のデジタル化の状況を評価し、自社のビジネスの方向性に整合したデジタル化施策の立案を行う必要があります。
この章では、企業におけるデジタルイノベーション・AIの活用に向けた推進プロセスにおける主な論点を解説します。

1.デジタルイノベーション・AI活用推進のプロセス

デジタルイノベーション・AI活用に向けた主要なプロセスは、以下から構成されます(図表2参照)。

  • デジタル化への取組み状況の収集
  • デジタル成熟度アセスメント
  • デジタルイノベーション施策の策定
  • デジタルイノベーション施策の実行

そのなかで最も重要なプロセスはデジタルイノベーション・AI活用に向けた、始動時における「デジタル化への取組み状況の収集」と「デジタル成熟度アセスメント」により、競合他社のデジタル化への取組み状況と自社とのかい離をまず認知することが必要です。

図表2 デジタルイノベーションプロセス

(1)デジタル化への取組み状況の収集
デジタル変革実現に向けた5つの視点
自社のデジタル化への取組み進度を評価・特定する際には、社内の課題や問題を想定や仮説ベースで単に収集するのではなく、デジタル化の変革がどのような構成要素から成り立っているかを考慮し、網羅的なアプローチを採る必要があります。
KPMGは、デジタル技術の革新とそれに付随する破壊的影響が急速に進展するなかで、企業が “デジタル経営改革”を成功裏に進めるための羅針盤となる成熟度評価の分類を規定しています(図表3参照)。
当成熟度モデルは、5つの領域と22テーマのカテゴリーで構成され、KPMGのメンバーファームの知見を基に、5段階の成熟度レベルの判定が可能となっています。
特に「顧客対応のデジタル化」の領域では、下記4つのテーマにおけるデジタル化の推進状況の情報を収集できます。

顧客対応のデジタル化領域の4テーマ:
・顧客の魅了・取込み・囲い込み
・既存顧客との関係性深化
・潜在顧客へのアプローチ
・顧客接点業務の自動化・効率化

「顧客の魅了・取込み・囲い込み」においては、「ポイント制度による顧客誘引・リピーター醸成ができているか」、「既存顧客との関係性深化」においては「VoC(Voice of Customer)をデジタル化し、顧客からの要望やクレームに迅速に応えられているか」、「潜在顧客へのアプローチ」においては「デジタルマーケティングやマーケティングオートメーションの技術を用いて未到達な顧客の誘引ができているか」、「顧客接点業務の自動化・効率化」においては「例として、チャットボットを利用したカスタマーサポート業務の自動化ができているか」など、顧客に関連したデジタルイノベーションにおける自社のコンディションが明確化されます。

図表3 デジタル成熟度アセスメントモデル

(2)デジタル成熟度アセスメント
競合他社と比較した自社の成熟度評価
5段階で判定された自社のデジタル成熟度レベルからのみでは、優先的に施策、検討すべきデジタル課題対象を判断・決定することは難しいといえます。この際、KPMGがHarvey Nash社と共同で実施したグローバルCIOサーベイの最新の調査結果に基づいた、他社の成熟度診断スコアの平均値をインプットすることで「競合他社のデジタルへの取組み進度と自社とのかい離の評価」をすることが可能です(PDF図表4参照)。
次頁の例から、たとえば「顧客対応のデジタル化」の「既存顧客との関係性強化」への取組みは他社と比較して遅れている、と客観的に評価できます。
このようなプロセスを経て、デジタルイノベーションの始動時においては効率的かつ有用なアプローチで施策化の検討対象の選別を実施していくことが重要です。

IV.おわりに

デジタルイノベーション・AIなど先進的な技術を活用し、企業が“顧客接点力”を高めることにより、LTVの向上、さらには新規顧客の開拓の実現に挑戦しています。
KPMGコンサルティングでは、国内外のデジタルイノベーション・AI活用の先端事例、および自社への活用に向けた改革の圧倒的知見を基に最適に導入を支援します。

執筆者

KPMGコンサルティング株式会社
SSOA(シェアードサービス・アウトソーシング・アドバイザリー)日本統括
デジタルレイバー・コグニティブ・イニシアティブ日本代表
一般社団法人 日本RPA協会 専務理事
パートナー 田中 淳一
ディレクター 宇都野 好弘
シニアマネジャー 塩野 拓

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