KPMGベトナムニューズレター 2017年3月号 - 1 | KPMG | JP
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KPMGベトナムニューズレター 2017年3月号 - 1

KPMGベトナムニューズレター 2017年3月号 - 1

2017年、ベトナムの移転価格税制を取り巻く環境は重要な転期を迎えています。2006年に移転価格税制基本法令が施行されてから10年以上が経過しました。政府から税制改革を委任された財政省は、BEPSを踏まえた規制変更を実施し、2017年2月24日付で政府は移転価格税制に関するDecree20を発行しました。

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従来以上に、ベトナム投資を行う多国籍企業及び海外投資を行うベトナム企業は、移転価格税制に対して慎重に対応し、どこで経済活動を行い価値が創出されるかに留意し新規制に備える必要があります。また、マスターファイル、ローカルファイル及び国別報告書のコンプライアンスの要求事項に対応する必要があります。

当Decreeは2017年5月1日から有効となり、2017年課税年度から適用されます。

I. 移転価格税制に関するDecree - 改正点

1. 新しい報告制度及び文書化要求事項

1.1 移転価格の同時文書化
現時点の同時文書化には、経済協力開発機構(以下、OECD)のBEPS行動13の文書化要求事項の適用及び実施を含んでいます。当Decreeの規定は、従前のCircular66/2010/TT-BTCの規定と比べ、より明確で厳格なものとなっています。移転価格文書には以下を含みます。

i. マスターファイル:多国籍企業グループの全体像に関する資料。

ii.ローカルファイル:ローカル納税者の関連者間取引に関する詳細な情報に関する資料。

iii. 国別報告書:多国籍企業の経済活動の所在、所得、納税額等に関する資料。

 

国別報告書については、以下の対応が必要です。

1)納税者がベトナム国外に最終親会社を有している場合
最終親会社がその所在国で国別報告書を税務当局に提出する義務を負っている場合、納税者は最終親会社の国別報告書のコピー又はForm4(当Decree提供Formに従った国別報告書)をベトナム税務当局に提出することを求めています。ベトナム税務当局に国別報告書を提出しない場合、納税者は書面で説明資料を提出しなければなりません。

 

2)最終親会社がベトナム会社の場合
各課税年度において18兆VND(約789百万USD)以上のグローバル連結売上がある場合に国別報告書が必要になります。

移転価格文書は毎年の法人税確定申告書を提出するまでにベトナム語での作成・保管が求められており、通知書により税務当局の要請がある場合に提出が必要となります。移転価格税務調査時には税務当局から通知書を受領してから15営業日以内に移転価格文書を提出しなければなりません。

税務調査以外で移転価格文書を提出する際は、納税者は税務当局から通知書を受領してから30営業日以内に移転価格文書を地方税務当局に提出しなければなりません。合理的な理由がある場合、提出期限は当初の提出期限より15営業日を上限として1度だけ延期することができます。

 

移転価格文書作成の免除規定
多国籍企業の移転価格文書作成の免除規定を導入しています。

  • 売上高、関連者取引の総額:納税者の年間売上高が500億VND(約2百万USD)未満かつ関連者間取引総額が300億VND(約1百万USD)未満の場合
  • 事前確認制度(以下、APA)により当局と合意した納税者は、APA規定に従いAPA年次報告書を提出します。APAでカバーされていない関連者間取引に関しては、納税者は前述の移転価格文書の要求事項を遵守する必要があります。
  • 単純なルーティン機能を有し、無形資産の開発や使用による収益の計上や費用の発生がない納税者の利益規準:納税者の年間売上高が2,000億VND(約9百万USD)未満であり、純売上高に対する利払前・税引前の営業利益に対する割合(営業利益率)が下記を上回る場合:
    • 販売業:5%
    • 製造業:10%
    • 加工業:15%

なお、上記に関わらず、納税者は以下の関連者間取引の申告書類の作成が必要となる点はご留意ください。

 

1.2 作成必須の開示申告書類 - Form01
作成必須の関連者間取引及び移転価格情報の開示申告書類には、分析方法、取引金額、関連者間取引の種類、関連者の所在国等の情報が含まれます。当書類は会計年度終了後90日以内に提出が必要です。これらの情報はForm01として毎年の法人税確定申告書とともに提出されます。Form01の重要な変更点は、納税者の業績に応じて自発的な移転価格調整を求めていることです。Form01には以下の3種類があります。

i. 製造業、販売業及びサービス業の納税者

ii. 銀行業の納税者

iii.証券会社及び証券投資の資金管理会社である納税者

 

ベトナム国内の関連者間取引のみを行う納税者は、課税年度において両関連者が同一の法人税率を適用し法人税優遇を受けていない場合、Form01のセクションIII(関連者間取引の移転価格の決定に関する情報)、セクションIV(関連者間取引の移転価格調整後の業績)の記入が免除されます。しかし、この場合も、納税者はForm01の基礎であるセクションI(関連者の情報)、セクションII(移転価格文書の提出・開示義務免除を申請する場合)において免除の根拠を申告する必要があります。

2. 新しい原則及び規定

以下を含む、多くの新しい原則及び規定が導入されています。

i. 「実質主義の原則」、移転価格分析は単に契約条件のレビューにとどまるのではなく、価値創造構造を勘案し実質的に分析することになります。ただし、実務上は納税者の証明責任を軽減させるために、税務当局は、事業要因及び実態に照らして実際の取引をレビューする前に契約条件を検討することとなる可能性があります。

ii. 独立取引に照らした関連者間取引の比較可能性分析の手法(独立企業間価格)
iii. 無形資産の開発、改良、維持、保護及び活用(DEMPE)機能に関する検討

上記原則の適用により、関連者間取引が税収減少をもたらしていると考えられる場合、税務当局は関連者間取引を否認、再評価することが可能となります。

 

2.1 関連者の定義の変更
当Decreeでは関連者の定義から、販売及び仕入を支配している場合(すなわち、売上高の50%以上の販売先又は仕入高の50%以上の仕入先)が削除されました。

関連者の判定の際の数値基準に変更がなされています。例えば、直接又は間接的な出資関係の数値基準が20%から25%に変更されました。債務保証又は貸付の資本に対する比率が20%から25%に変更されました。

また、当Decreeでは、関連者の定義に、(1)他の企業への出資又は企業の事業経営を直接行うことにより支配している個人、(2)他の企業の経営に対する意思決定権がある企業を追加しています。

 

2.2 独立企業間取引に沿っていない関連者間取引の税額控除、グループ会社間のサービスフィー、借入利息に関するガイダンス
掲題のグループ間取引は、複雑な国際タックスプランニングにおける利益移転手法として広く認識されています。同様に、中間品又は半製品に対しては適切とはいえない、無形資産の使用の対価としてロイヤリティ支払を行うベトナム国内企業の調査件数が増加することが見込まれます。適切に文書化していない場合、これらの取引はベトナム税務当局により利益移転リスクのある税務上慣行とみなされる可能性があります。

 

独立企業間取引に沿っていない関連者間取引
独立企業原則に準拠しない、又は納税者の収益、事業及び生産活動への付加価値の創出に寄与しない関連者間取引は損金不算入項目となります。例えば、以下が含まれます。

  • 納税者の事業活動に関連していない関連者への支出費用
  • 事業活動を行っているものの、資産規模、従業員数、実施機能が、納税者から支払いを受けた関連者の事業取引の価値や所得に見合わない関連者への支出費用
  • 納税者が権利及び責任を有さない資産、商品、サービスに対する関連者への支出費用
  • 法人税を徴収しない国又は区域の居住者である関連者への支払費用で、納税者の収益、生産及び事業活動への付加価値の創出に寄与しないもの。

 

関連者間のサービス取引に関する規定
サービス費用は、以下の要件を満たす場合、損金算入費用として認められます。

  • 経済的、財務的、商業的価値があり、納税者の生産又は事業活動に直接便益をもたらすサービス費用
  • 独立企業がサービスに対して支払うと考えられる条件と同様の条件により提供されたと判断されるグループ内サービス費用
  • サービス費用は独立企業原則に基づき算定され、類似サービスの移転価格分析方法はグループ内で一貫して適用するとともに、納税者の見解をサポートするために十分な根拠資料を整備する必要があります(例:契約書、根拠資料、インボイス、算定方法、グループ内サービスの割当率の決定要因及び価格決定方針に関する情報)

当Decreeは、サービス費用が損金不算入とみなされる事例を提供しています。例えば、他の関連者に利益及び価値を生成することのみを目的とするサービス費用、関連者の株主に便益を与えるサービス費用、重複サービス費用を挙げています。

 

借入利息の損金算入制限
課税年度に生じた借入利息は、利払前・償却前・税引前利益(EBITDA)の20%を超えない範囲で損金算入が認められます。

 

2.3 ベンチマーク目的で使用される比較対象の階層
当Decreeでは比較対象選定の優先順位について規定しています。また、他国で外国の比較対象を選択する際は定量的及び定性的な比較可能性、重要な差異に関する分析の要求事項を規定しています。優先順位の規定は以下のとおりです。
i. 納税者の内部の比較対象

ii. 納税者と同一の国、領域に位置する比較対象

iii. 同様の産業環境、経済発展水準を有する地域に位置する比較対象

 

2.4 商用データベース、公開情報/データではない、非公開比較対象データの使用に関する明確化
Decreeドラフト段階では、非公開の比較対象データは、商用データベース、公開情報とともに移転価格税務調査中に税務当局の移転価格リスク評価のためのみに使用されると理解されていました。しかし、当Decreeでは最終的に明確になっておらず、税務当局は、移転価格リスク評価、税務調整のために、異なる情報源、すなわち、商用データベース、公的に利用可能なデータ(政府機関が提供する独自のデータベース及び情報を含む)を使用するかもしれないといった旨の曖昧な記載がなされています。

ただし、移転価格税務調査では、納税者が法定期限内に所定のフォーム、移転価格文書を提出しない場合、税務当局は非公開の比較対象データに基づき納税者の取引価格、利益を再評価する事例が多く見られます。なお、納税者が適切かつ立証的にベンチマーク分析を実施していれば、当ベンチマーク分析は税務当局に受け入れられる可能性が高い状況です。

 

2.5 税務当局が移転価格調整を行うより明確な根拠
税務当局が以下のケースで取引価格、利益率、利益分配率、課税所得、税額を調整することに関するより明確な根拠が示されています。

  • 納税者が移転価格の申告をしていない、十分な申告をしていない、Form01を提出していない場合。
  • 納税者がForm02(ローカルファイル)及びForm03(マスターファイル)に従い移転価格文書の十分な情報を提供していない場合。納税者が定められた期間内に税務当局の要求事項を満たす比較分析、関連者間取引の価格決定の基礎となる、移転価格文書、データ、根拠文書を作成していない場合。
  • 納税者が比較分析、関連者間取引の価格決定に際して、虚偽かつ不当な独立取引情報を使用した場合。納税者が違法、不適切又は不明確な情報源に基づき関連者間取引に適用される取引価格、利益率、利益分配率を決定し、文書、データ、根拠資料を作成した場合。
  • 当Decree第11条(上述の免除規定及びForm01)の規定に従わない納税者

多額の追徴税額、ペナルティ、遅延利息の発生を避けるために、法律で規定されている税務当局が移転価格調整を行うケースに関して特に注意して対応することを強くお勧めいたします。

II. 重要な管理上のポイント

1. 移転価格税務調査

税務当局は移転価格専門チームを設け、税務総局及び地方税務当局レベルで移転価格税制の法令順守をより徹底させるための施策を展開しています。

財政省によると、2016年度、税務調査は84,472社を対象に実施され、追徴税額は17.164兆VND(約752百万USD)となりました。そのうち、移転価格税務調査は329社を対象に実施され、追徴税額及びペナルティは6075.2億VND(約26百万USD)、繰越欠損金の減額は5兆6122.1億VND(約246百万USD)となりました。

財政赤字を一定水準(Resolution 25/2016/QH 14にて国会に承認された国家予算では2020年までにGDP3.5%)まで引き下げるため、税務当局の財政管理施策の一環として、今後、税務調査がより活発となる見込みです。

2. 移転価格事前確認(APA)

財政省より2013年12月20日に発行されたCircular201/2013/TT-BTCでは、自国、二国間、多国間形態のAPAが可能とされています。現在、申請書類作成、国内審査、相互協議等、ステータスは異なるものの、APA申請の数は10件を超えています。KPMGはベトナムで初めてのAPA取得をサポートしました。

3. 移転価格に関する税務当局への抗弁、税務裁判、相互協議手続

ベトナム法令及び租税条約上、掲題の抗弁手続をとることは可能です。ただし、実務上は、税務当局への抗弁プロセスは様々な要因により長期化することもあり、また、税務裁判は事例が少なく、相互協議手続もコストに見合わないケースもある点はご留意ください。

納税者が税務当局へ回答及び協議が求められる税務調査の最中に、税務当局の見解に対して内容を吟味し、準拠、反論することが一般的に効果のある手法と考えられます。

4. 移転価格税額調整

法律及び実務上、独立企業間価格を用いていない、関連者間取引を報告していない、移転価格文書を提出していない等の場合は、適切な法人税算定のために、税務当局が、取引価格、利益を調整します。

5. ペナルティ

税務行政法に従いペナルティが算定されます。具体的には、罰金は追徴税額の10%又は20%(課税年度の法令に従い決定)、遅延利息は0.03%/日、0.05%/日、0.07%/日(課税年度の法令に従い決定)で算定されます。なお、指摘事項の背景、状況によっては、悪質な罰金として追徴税額の100%から300%が課される可能性もあります。

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