ネーミングライツから見る観客増加の重要性 | KPMG | JP

ネーミングライツから見る観客増加の重要性

ネーミングライツから見る観客増加の重要性

本稿では、ネーミングライツから見る顧客増加の重要性について解説します。

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現在、日本におけるネーミングライツビジネスは様々な施設で展開されており、日本で初めてネーミングライツを導入した味の素スタジアムやネーミングライツ契約を新たに結び2016年12月から名称が変わったZOZOマリンスタジアムのような大型施設だけでなく、神戸市のバス停や渋谷区立の公衆便所といった施設にまでネーミングライツが売買されている事例があります。
企業がネーミングライツを購入するメリットとしては主にプロモーション効果があると言えます。特にプロスポーツで使用しているスポーツ施設は多くの入場者が見込めるために、施設に企業名や商品名を冠することによって、多くの人々に対して認知度の拡大を図ることができます。さらに、プロ野球やJリーグはシーズン中に毎週開催されることから、テレビや新聞などのマスメディアに取り上げられるなど、大きなプロモーション効果が期待できます。
ネーミングライツを販売する側のメリットとしては収入増加によるスタジアム維持費の負担軽減であると言えます。ネーミングライツの金額が大きく、長期契約であるほど財務安定性を確保することができると考えられます。したがって、ネーミングライツの価値を最大化し、購入した企業と販売した施設運営者の両者がメリットを享受できるようにしていくことが重要です。なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

ポイント

  • Jリーグとプロ野球の入場者数を比較すると大きな差が生じており、プロ野球の集客力はJリーグを大きく上回っている。
  • ネーミングライツの金額とスタジアムの入場者数には相関関係があり、入場者数の多寡がネーミングライツの契約金額に大きな影響を与えている。
  • スタジアムをコストセンターからプロフィットセンターに変えていくためには、まずは観客を増やしていく必要があり、そこから好循環が始まっていくと考えられる。

I. Jリーグとプロ野球の入場者数

ネーミングライツが導入されているスタジアムのみの2016年シーズンの平均集客数をJリーグとプロ野球で比較すると、プロ野球の方が約10倍多くなっており(図表1参照)、試合数がプロ野球の方が多いことから、2016年シーズンの1試合平均入場者数および1試合平均入場率で比較してもプロ野球の方が大きくなっています(図表2参照)。
このことから現状ではプロ野球の方が集客力があると言えます。その理由として、ネーミングライツを導入しているスタジアムの運営に球団が携わっていることが1つの理由ではないかと考えられます。球団とスタジアムの一体経営が行われることで、観客のニーズに応えるようなスタジアム運営における施策をスピーディーに打ち出し、顧客満足度を効果的・効率的に高められているからだと推察されます。

図表1 Jリーグとプロ野球のスタジアム2016年シーズンの年間平均入場者数(ネーミングライツ導入スタジアムのみ)

出典:J.LEAGUE Data Site、NPB.jp を基に作成

Jリーグとプロ野球のスタジアム2016年シーズンの年間平均入場者数(ネーミングライツ導入スタジアムのみ)

図表2 Jリーグとプロ野球のスタジアム2016年シーズンの1試合平均入場者数と1試合平均入場率(ネーミングライツ導入スタジアムのみ)

出典:J.LEAGUE Data Site、NPB.jp を基に作成

国内スポーツ施設のネーミングライツ導入件数

II. ネーミングライツの金額と入場者数の関係

入場者数が多く見込める人気クラブ・人気球団が使用しているスタジアムであれば、実際に観戦に訪れる観客だけでなく、マスメディアなどに露出されることでスタジアム名が人目に触れる機会が多いと言えます。スタジアムのネーミングライツを購入する企業としても、それが人目に多く触れることであれば投資効果が得られると判断できるため、契約金額は大きくなる傾向にあると考えられます。
ここで、2016年シーズンのネーミングライツの年間金額とネーミングライツを導入しているスタジアムの入場者数をそれぞれプロットして分析したところ、両者には強い相関があることが分かります(図表3参照)。
図上のR2とは「寄与率」といい、ネーミングライツの金額がばらつくなかで、入場者数がどれほど影響を与えているかを示したものです。一般的にR2が0.7超では強い相関があるとされています(図表4参照)。

図表3 ネーミングライツの年間金額と年間入場者数の相関関係(2016年シーズン)

出典:J.LEAGUE Data Site、NPB.jp、クラブ・球団公式HP 等を基に作成

図表4 寄与率と相関の説明

寄与率R2 相関の強さ
0 相関なし
0 < R2 ≦0.2 ほとんど相関なし
0.2< R2 ≦0.4 弱い相関あり
0.4< R2 ≦0.7 相関あり
0.7< R2 <1.0 強い相関あり
1.0 または -1.0 完全な相関

III. ネーミングライツの投資効果

ネーミングライツを導入するためには、スタジアムのネーミングライツを購入しても良いと企業に判断されなければならず、投資効果が無ければネーミングライツの購入先が現れることは無いと考えられます。投資効果があるということは、スタジアムの名前が多くの人々の目に触れることで企業の知名度が上がることであり、そのためには前述したように観客を多く集める必要があります。なぜなら、観客を多く集めると新聞やテレビ等のメディアでの露出も増え、さらに多くの人々に認知されることになり、ネーミングライツを購入した企業の知名度もさらに上がることが期待され、投資効果がますます高まると考えられるからです。Jリーグと比較して集客力が高いプロ野球の方がネーミングライツの金額が高くなっていることから、集客力の多寡がネーミングライツの金額に影響を与える1つの要因であり、観客増の必要性は非常に高いと言えます(図表5参照)。

図表5 Jリーグとプロ野球2016年シーズンのネーミングライツの年間平均金額

出典:J.LEAGUE Data Site、NPB.jp、クラブ・球団公式HP 等を基に作成

Jリーグとプロ野球2016年シーズンのネーミングライツの年間平均金額

IV. コストセンターからプロフィットセンターへ

収入源増加の第一歩は観客を増やすことであり、観客の増加がスタジアムのプロフィットセンター化に向けての好循環の始まりであると言えます。観客が増えるということは観戦のニーズが高まっている状態であり、観戦のニーズが高まるとチケット収入、グッズ収入、飲食収入が増えるのはもちろんのこと、放映権が高額で売買され、スポンサーやネーミングライツの金額も大きくなると考えられます。観客を増加させるための1つの施策として、前述したようにクラブ・球団とスタジアムとの一体経営があり、観客の満足度を高め、多くの人にまた来たいと思わせるようなスタジアムになることが最も重要であると言えます。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
スポーツアドバイザリー室
室長 パートナー 大塚 敏弘
スポーツ科学修士 得田 進介

スポーツアドバイザリー

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一般事業会社へのサービス提供で培った知見や経験を活用し、強固な財政基盤の構築と成長戦略の策定、執行を支援します。

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